カナビスは脳に障害を起こさない

ヘビー・長期の使用、メタ分析研究

Source: WebMD Medical News
Pub date: July 1, 2003
Subj: Heavy Marijuana Use Doesn't Damage Brain
Author: Sid Kirchheimer
http://www.webmd.com/mental-health/news/
20030701/heavy-marijuana-use-doesnt-damage-brain


国際精神神経学学会ジャーナルの7月号に掲載されたメタアナリシス研究の結果によると、カナビスの使用は、長期にたとえ毎日常用していても永続的な脳のダメージにならないことが明らかになった。また、他の専門家たちも、カナビスは、広範囲な病気の治療にあたって安全で効果的に利用できると言う。

過去に行われた主要15研究を分析した新しい研究によると、長期のカナビス・ユーザーが記憶力や学習能力に与えるダメージは「非常に僅か」に過ぎず、さらに、思考試験の点数もノンスモーカーと変わらなかった。

分析の対象になったそれら研究では、700人あまりのカナビス常用者と484人のノンユーザーについて、反応時間、言語力、運動能力、記憶力、新しい情報の学習能力などの脳の機能的側面から調査している。


意外な結果

「ここ数年来、カナビスの長期使用が脳に障害を引き起こすかどうか論争になっていたこともあって、今回の意外な結果には多少驚いています」 と研究を率いた精神科医で、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部にある医療カナビス研究センターのイゴール・グラント博士は語っている。

「ヘビーユーザーではある程度の違いが出てくると予想していたのですが、実際の違いはごく僅かしか見られませんでした。」

15件の研究のカナビス・ユーザーは、3ヶ月から13年間に、週または月に数回、あるいは毎日常用していたが、アルコールや他のドラッグで典型的に見られるような脳へのダメージに比較して、カナビスではあまり目立たない、と言う。

しかしながら、「どの研究も被験者は成人が対象で、神経システムが発達中の12才前後の未成年の場合とは条件が異なっていますので、そのまま未成年にも当てはまるとは言えない可能性もあります。」


カナビスの医療利用における安全性の分析

現在、多くの州では、法を改めて一部の疾患の治療にカナビスを利用可能にしようとする動きが出てきているが、グラント博士の分析はこうしたことが背景になって実施された。

今年の始めには、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、メイン、ネバダ、オレゴンに続いて、メリーランドが、エイズや多発性硬化症、ガン、緑内障などの疾患にともなう痛みなどの症状の軽減にカナビスを利用できる11番目の州になっている。

また、医療カナビスは、オランダで処方箋で利用できるようになっているほか、イギリスでも今年末にはカナビスで作った新薬が認可される見通しになっている。

アメリカでは、カナビスの活性成分であるTHCを化学合成して作ったマリノールが、エイズ患者の食欲減退にともなう体重減少の治療に使う処方医薬品として全国で利用できるようになっている。

グラント博士は、自身の所属する研究センターでは、現在、カナビスを治療に使う際の安全性と効果について11件の研究が実施されており、その一環として、カナビスの長期・頻繁な使用が引き起こす慢性的な毒性について分析した、と語っている。

「他の研究でカナビスに医療効果があることが明らかにされれば、今回の結果は、安全性の許容レベルを計る上で役立つはずです。ダメージが長期でヘビーなユーザーにだけ限られるものだと分かっていれば、ストリートよりも安全な医療環境下で、短期間のカナビス治療を受けても目立った副作用は見られないことになります。」


カナビスは治療効果の高い薬

今回の発見について、カリフォルニアで2万人余りの医療カナビス患者を診察したトッド・ミクリヤ医師は、特に驚くほどのことでもないと指摘している。ミクリヤ医師は、以前には国立精神衛生研究所で非公式のカナビス研究の主任を勤め、最近ではカナビスの医療治療に関するハンドブックも出版している。

「ちょうど今、1863年にイギリス政府がインドで初めて行った包括的なカナビスの毒性研究の論文を復刻しているところですが、当時でもカナビスの毒性を見出すことは難しかったようで、グラント博士と同じ結論に達しています。」

「このことは100年以上も前からよく知られてきたことで、政府の行ってきた似たような研究で得られたさまざまな結果からもわかります。カナビスには毒性はない一方で、薬として高い効能を持っています。」

実際、カナビスは、アメリカでも1930年代までは医療治療に利用されていた。

ハーバード大学医学部名誉教授で、1960年代から医療カナビスの研究を続けてきた精神科医のレスター・グリンスプーン博士は、今回のグラント博士の発見について、これまでのカナビスの安全性の証拠を補強したもので、「カナビスについて研究してきた者にとっては、目新しいことは何もありません」 と語っている。

「カナビスは極めて安全で毒性のない薬物で、およそ30以上の疾患に治療効果があります。このことに多くの人が気付くようになれば、カナビスは21世紀のアスピリンと呼ばれるようになると考えています。」

参考:
Grant I, Gonzalez R., Carey C.L., Natarajan L., Wolfson T.(2002). Non-acute (residual) neurocognitive effects of cannabis use: a meta-analytic study. Journal of the International Neuropsychological Society : JINS, , 9, 679-89.

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