オランダ政府、医療カナビス販売開始
Source: Radio Netherlands
Pub date: September 01, 2003
Title: Cannabis as a prescription drug
Auther: Anja van den Dam and Theo Tamis
http://www.radionetherlands.nl/currentaffairs/ region/northamerica/can030901.html
オランダ政府は、慢性的な病気の患者を治療に使う処方鎮痛薬としてカナビスの販売を薬局で開始した。これまでも政府はカナビスの医療使用については黙認を続けてきたが、今回の販売開始にともないオランダは、麻薬に関する国連のルールに準拠して正式に医療カナビスを提供する世界で最初の国になった。
カナビス・サティバは、何千年も前から治療薬として使われてきた。5千年前に中国で強力なハーブ治療薬として見出され、ヨーロッパではナポレオンの時代に医療利用が始まった。ほどなくカナビスの鎮痛・鎮静効果は西側諸国の医師に受け入れられ、さまざまな疾患に処方されるようになった。イギリスのビクトリア女王は、1890年頃に生理痛の治療にカナビス・チンキを使ったと言われている。
対立する評価
しかし19世紀後半を過ぎると、カナビスを治療薬とし使用することについては賛否対立する議論が語られるようになった。20世紀に入ってより強力な合成薬品が開発されると、その陶酔効果ばかりではなく、本当に医療効果があるのかという疑問や治療薬として標準化できないという問題が指摘されるようになった。今日では、カナビスを継続的の使っているとうつ病や統合失調症のリスクが増えると警告する専門家もいる。
だが、そうした懸念があっても、癌やHIVや多発性硬化症のような深刻な病気に苦しむ患者たちは、鎮痛薬としてカナビス使い続けている。オランダ保健省の推計では、現在、7000人以上の人が医療目的でカナビスをコーヒーショップで購入して使っている。大臣は、今回、正式の医薬品として医療カナビスを薬局を通して提供することで、利用者数が倍増すると見込んでいる。
最後の手段
国連の単一条約28条では、医療用にカナビスを使う場合には、政府機関がすべての生産物を物理的に所管して流通させることを要求しているが、オランダ政府は、今回の医療カナビス販売開始については国連の規制を遵守したものであり、従来の治療法が効果がなかったり副作用が大き過ぎると医師が判断した場合に限って最後の手段として処方できる、と強調している。
医療カナビスの生産は正式にライセンスされた2社が担当し、栽培したカナビスはコーヒーショップに行くことはなく、政府が独占して流通させることになっている。ライセンスの一つを持つジェームス・バートン氏はアメリカから移住者で、四方を運河に囲まれた彼の温室栽培場は研究所並の環境に調整され、39台の防犯カメラと警備員で完全のガードされている。
追跡可能な管理
バートン氏は、毎月約10Kgの医療カナビスを、ラベル貼られた小さな容器に小分けして保健省に納め、保健省が全国の薬局に供給することになっている。
「植物には一本一本に個別の番号が割り当てられていて、栽培開始日、認識番号、作物番号が付けられています。すべてのカナビスは追跡可能で、どのように処理されたか分かるようになっています。」
バートン氏はカナビスの医療価値について、「非常に多くの病気に効く驚異の薬」 だと絶賛している。実際、彼には、カナビスによって自分の視力失われずに済んでいるという特別の思い入れがある。
「私の家系は、遺伝的な欠陥から男性全員が緑内障で、完全に盲目かまたは多少視力が残っていても法的盲目のどちらかになっています。私は、軍の勤めていた若いころはカナビスを吸ったこともなかったので、やはりそのうち盲目になると思っていました。」
自らを研究対象に
従来の治療法が効かない分野でカナビスが効くことが明らかになってくるとともに、バートン氏は、アメリカの学術センターや病院行っている研究の対象に志願して、アメリカ政府が栽培しているカナビスが自分の目にどのような効果があるか調べてもらった。
しかし、1980年代の始めにロナルド・レーガン政権が誕生して、「Just Say No!」 政策が行われるようになると、すべてのカナビス研究は中断されてしまった。やむなく、バートン氏は自分で医療カナビスの栽培を始めた。
しばらくしてそれが発覚して、1年間投獄され、自宅と車も没収されて、彼はオランダに移住してきた。「当時は、カナビスを栽培できるのは世界でオランダだけだったのです。しかも、ロッテルダムには世界で最高レベルの目の病院もありましたから。」
それから20年、バートン氏は、オランダ政府公認のカナビス・サプライヤーになった。バートン氏は、「すぐにでも、研究用カナビスをここからアメリカに輸出することになるかもしれませんよ」 と皮肉を込めて頬を緩ませた。
|