ドイツ隣接のオランダ・フェンロー市

国境にメガ・コーヒーショップをオープン


OASE-ROOTS

Source: Marijuana.com
Pub date: March 15, 2004
Title: Dutch Mega McDope will open on German border shortly
http://www.marijuana.com/drug-war-headline-news/
11990-dutch-drive-through-coffeeshop-reduce-nuisance-drug-tourism.html


オランダ南東部リンブルグ州のドイツ国境の街であるフェンロー市(人口3万5000人)は、主にドイツから大挙押しかけてくるコーヒーショップ目当てのドラッグ・ツーリストの多大な迷惑に悩まされてきたが、これに対処するために、市議会は、国際的な非難を受けながらも新しいメガ・コーヒーショップを作ることを認めたライセンスを発行した。

市は、中心部で2軒のコーヒーショップを経営していたオーナーと交渉して店を閉鎖する代わりに、郊外の国境近くにあったかつてのトラック検問所を譲渡して新たにコーヒーショップのライセンスを発行することに合意している。オランダのドナー司法大臣も、新しいコーヒーショップを作ることに対して黙認する意向を示している。

論議を醸している新しいコーヒーショップはドイツ国境から200メートルしか離れていない。フェンロー市は、1500万人を擁するヨーロッパ最大のドイツ・ルール川工業地帯から車で30分のところにあり、オランダ機械工業の中心地アイントホーヘンを結ぶ中間点に位置している。第2次大戦後は週末に安い生活用品やチーズを求めてドイツ人ツアー客がたくさん訪れた。

EUの発足で国境の検問がなくなると、ベベリディングウェハ(開放道路)のトラック検問所も閉鎖されて廃墟になっていたが、そこが、まもなくメガ・コーヒーショップに生まれかわってオープンすることになる。新しいコーヒーショップは、市の中心部にあった2軒のショップの名前をつなげてOASE-ROOTSと呼ばれることになっている。

フェンロー市のヤン・シュリーエン市長は、新しいコーヒーショップが分かるような道路標識などは設置しないと強調している。ドイツ人ツーリストの中にはドイツの警察官が見張っているのではないかと不安視する人もいるが、市長は、「ドイツ国境からのどこからも見えない位置にある」 と語っている。また、譲渡にあたっては、店のそばにある200台の駐車スペースも含まれている。

今回の決定のあたっては、市では3年前から 「ヘクター」 プロジェクトを立ち上げて、ドラッグ関連の迷惑や犯罪にどのように対処すればよいのか検討してきた。中心部への車の乗り入れによる渋滞も深刻だった。ヘクターは、古代トロイの英雄から名付けられた名前で、国を守るために闘ったことで知られている。

2002年のフィラデルフィア・インクワイアー誌 によれば、カナビスを買いにフェンローを訪れるドイツ人の数は一日2000〜4000人で、5軒ある公認のコーヒーショップか違法のドラッグハウス数十軒のいずれかでカナビスを入手している。

ヘクター・プロジェクト の対応は3つの政策で構成されている。第1が、市の狭い中心部に集中する迷惑を減らすことで、次いで、それに組み合わせて違法ドラッグの取引に使われている建物などの不動産に対する取締りを強化してコントロールし、最後に、1〜2軒のコーヒショップをドイツ国境に移転することが掲げられていた。この中で最も論議を呼んだのが3番目に移転計画だった。


世界中から非難を受けても、われわれには他に選択肢がない

ヘクター・プロジェクトは、秘密裡に行われることなく国際的にも知られていた。国連の国際麻薬統制委員会(別名 ドラッグ禁止教会)は、この迷惑削減プロジェクトに懸念を示し続けてきた。毎年発行する年次報告書ではドラッグの害削減政策を批判し、警察によるゼロトレランス政策を称賛してきた。2001年の報告書 も同じで、そこには次のように書かれている。
当委員会は、フェンロー市の地元当局が、カナビスを販売するドライブ・スルー型のコーヒーショップを開くことを広く公表していることに困惑している。このことは、当局がより活発にドラッグの配付に組織的に関与しようとしていることを示している。オランダは1970年代に導入された政策をいまだ維持し、いわゆるコーヒーショップでのカナビス製品の使用や販売を容認して国際麻薬統制条約を順守義務を果していない。

オランダのドナー司法大臣もフェンローの動きは快く思っていない。オランダの第1政党であるキリスト教民主連盟(CDA)は、近い将来には、コーヒーショップでの外国人に対するカナビス販売を禁止したり閉鎖することを検討していると表明して、外国政府の禁止論者たちをなだめようと努めてきた。

しかし、1週間ほど前に議会でフェンローの決定について問われたドナー大臣は、オランダ政府の意向に添ったものではないとしながらも、店を閉鎖するつもりはないと語っている。2月には、議会のCDAが、たとえ同党が国境地帯にコーヒーショップを作ることを考えるにしても、まず最初にフェンロー市のすべてのコーヒーショップを閉鎖すべきだと主張している。

フェンロー市議会側は、市を人質にするような国内外のモラルに基づいた政策には拒否する立場を表明している。シュリーエン市長もそれに反対している政党がないことを確認している。地元CDAのリーダーも、周囲の住民の苦情は察するに余りあるとしてこの決定を支持して、「ライセンスされたコーヒーショップをまず閉鎖しろという考え方は間違っていると思う」 と加えている。

シュリーエン市長は、国境のコーヒーショップ批判については甘んじて受けつもりだとして、「フェンローはいま世界中から非難を受けていますが、われわれには他に選択肢がないのです」 と語っている。

ドイツ側では、国境への移転計画については穏やかな反応を示している。オランダ国境に接するネッタテル市議会は、中心部のドラッグ・ツーリストの迷惑を減らそうとしているフェンロー市側の願いは理解できると表明している。


ケルクラーデ市もフェンローの実験に賛同

国会のCDAのモラルの押しつけを拒否している地方CDAはフェンローだけではない。フェンロー市の南部に位置する国境の街であるケルクラーデ市のジョス・ソム市長(CDA)も最近、「フェンロー市の問題は、ここでも同じ」 だとして、コーヒーショップをドイツ国境側に移すという実験に賛意を示している。ケルクラーデ市には3軒のコーヒーショップがあるが、迷惑に悩まされているのは同じで、違法販売をする店も増えている。

ケルクラーデのカナビス客の95%はドイツ人だと見積もられている。市長は、「彼らは、たった5グラムのカナビス入手のためにやってくるのではありません」 と前置きして、「ヨーロッパの政策は現実に対応していません」 と語っている。

ドナー大臣の外国人のコーヒーショップ入店を禁止するという提案についても市長は厳しく批判している。「全く馬鹿げています。コーヒーショップに入れなかったすべてのドイツ人客がどうするか考えてみてください。20軒の違法販売店が120軒になるだけです。砂に首を突っ込んで現実を見ていないのです。そんなことをしたら、市の権威は失墜してしまいます。それでもカナビスの使用と販売を認めないほうがよいと言うのでしょうか?」