ポパイのホウレンソウ

パイプの本当の中身は何なのか?


October 1939, drawn by Joseph Musial

Source: AlterNet, DrugReporter
Pub date: February 8, 2005
Subj: What's In Popeye's Pipe?
Author: Dana Larsen, Cannabis Culture
http://www.alternet.org/drugreporter/21206/


ポパイは世界で最もよく知られ愛されているアニメのキャラクターだ。彼が誕生して以来、パイプをふかしたポパイの姿は世界中の何百万という子供の心をとらえ、伝説のセイラーマンのように強くなろうとホウレンソウを懸命に頬張るのが世界的な現象になった。

ところでよく考えてみると、ポパイにスーパーパワーをもたらすホウレンソウだが、実は別の魔法の草の比喩なのではないか? 世界中の子供たちがあこがれるヒーローは、本当は、禁じられた草、つまりカナビスのヘビー・ユーザーなのではないか?

証拠としては状況証拠しかないが、どう見てもそうとしか思えない絵を合わせてみれば、少なくともこの記事の読者の多くは、ポパイのパワーの源泉であるホウレンソウが明らかにカナビスのミラクルパワーを意味していることに頷いてくれるに違いない。


コミックのキャラたち

ポパイは、1929年に漫画家エルジー・シーガーによって生み出されてから、数多くのライターやアーティストによって受け継がれてきた。ポパイが最初に登場したのはシーガーの連載漫画シンブル・シアターで、当初はマイナーなキャラクターだった。

シーガーは、オリーブ・オイルと弟のカストル、フィアンセのハム・グレイビーの冒険物語を書き続けてきたが、10年程経って新しい冒険で船に乗って外洋航海に出発することになった。そのために、カストルとハムは波止場へ行ってポパイという名前の水兵を雇った。

すぐに、ポパイはシンブル・シアターの主役の一人に昇格した。1年のしないうちにハム・グレイビーはお払い箱になって、ポパイがオリーブの恋人になった。でっぷりした体型でハンバーガー好きな食いしん坊のウィンピーが加わったのは3年後で、ませた赤ん坊のスウィーピーはさらにその4年後に登場した。

最初のころは,ポパイの驚異的なパワーについては何の説明もなかった。3年程するとポパイがホウレンソウを頼りにするという構図がジョークの一種として定着した。シーガーが亡くなってから10年程してマンガが動画のアニメーション化される頃になると、ポパイが魔法の草を一飲みするのが敵と最後の決着をつけるシーンの定番となった

シーガーのオリジナルは、後の短篇アニメのように単純ではなく、ストリーや登場人物はもっと複雑でニュアンスに富んでいた。シーガーはポパイの世界に奇想天外がキャラクターをたくさん登場させた。その中には、魔笛のフルートで空を飛んだり魔法をかけたりする海婆シーハグや、金持もバンライプルの美しい娘でオリーブとポパイを取り合うジェーン、わけのわからないことしか喋らない間抜けのアリス、ポパイのパワーにも匹敵する怪力の持ち主トーアなどがいる。

シーガーの筋立ては大人のユーモア満載で、トーアがポパイに片想いして 「イカス奴」 と呼んで頭にキスしたりする。ポパイの数々の冒険の中には、スピナチョビアと呼ばれる島を発見し、男だけの王国の独サイ者になったりするものもある。


ホウレンソウ = カナビス

このように最初はたわいないものだった。では、ポパイが実際にストーナーだったという証拠はあるのだろうか?

まず第一に、ポパイが登場し始めた1920〜30年代には、「ホウレンソウ」 はカナビスを示す非常にポピュラーな隠語だったことがあげられる。その例とすれば、1938年に人気のあったジュリア・リー&ボーイフレンズというジャズバンドが録音した 「ホウレンソウ・ソング(The Spinach Song)」 がある。この曲は何年ものあいだカナビスの濃い煙が漂うクラブで、ジュリアの 「スイート・マリファナ」 といったヒット曲と一緒に演奏された。このように、ホウレンソウにまつわるポピュラー・ソングは明らかにカナビスを意味するものだった。

次に、当時の反マリファナ・プロパガンダではカナビスの使用が人並以上のバカ力をもたらすとされ、メディアは、カナビスを吸うと異様に強くなって弾丸さえ弾き返すと誠しやかに主張していた。こうしたことを考えれば、ポパイがホウレンソウを一飲みすることで強力なパワーを得ていたには、明らかにカナビスに関係していたように見える。

さらに、ポパイは 「セーラーマン」 として、遠い世界のエキゾチックなハーブのことをよく知っていることが期待されていたとしてもおかしくない。実際、アメリカ文化に最初にカナビスをもたらしたのは、遠洋航海でハーブを持ち帰った水兵たちだった。

シーガーは、コミックの場面の中で、明らかにドラッグに関係するストリーも作っている。1934年のバンリップルの金山がワーカーの盗みにあって倒産の危機に直面する話では、ポパイは、鉱山のマネージャーが草むらで根っ子に得体の知れないドラッグ浸してイチゴを育て、部下に与えているのを発見する。ドラッグの入ったイチゴを食べると、人は狂って暴力的な犯罪を喜んで行うようになってしまう。

ポパイもそのイチゴを食べておかしくなり、友達や仲間を殴ったりするようになってしまった。そこで、正気に戻ったポパイは 「メーソレン(myrtholene)」 という人を楽しくする伝説のドラッグを5ガロンほど根に注ぎながら、「人間はハッピーなときには、悪いことなんか何もやらなくなるもんさ」 と言う。


カナビスを示唆する場面

シーガーは1938年に亡くなり、以後何十年間は他の人たちによって続けられた。漫画は印刷物の他にもアニメになったり映画になったりした。製作者によってポパイのキャラクターはいろいろに味付けられたが、カナビスを示唆する場面はずっと続いた。

例えば、1960年代に製作されたポパイのアニメの多くでは、ポパイが明らさまにパイプでパワー・ホウレンソウを吸う場面が出てくる。

さらに、当時のコミックやアニメでは、ポパイはバードシーズという名前の犬が登場する。この 「フラワー・チュルドレン」 時代にポパイの犬にこのような名前を付けた作家は、当然のことながら、カナビスが禁止される前まで、アメリカでは鳥の餌としてカナビスの種が最も多く使われていたことを知っていたに違いない。

また、1954年の 「愉快なギーク伝説(Greek Mirthology)」 というアニメでは、少し違ったドラッグ・シーンも出てくる。その中で、ポパイは親戚の子供に自分の祖先であるヘラクルスについて話している。ポパイそっくりのヘラクルスがスーパーパワーを得るシーンでは白胡椒を鼻から吸っている。しかし、話の終わりでは、ヘラクルスはホウレンソウのパワーに気がついてそれに乗り換える。これは、カナビスのほうが鼻で吸うコカインなどよりも良いというメタファーなのではあるまいか?

別のアニメでは、ポパイがホウレンソウを慎重に育てているシーンもあるが、カナビスの栽培を連想させる。クローンを作るように、注意深く植物の先端をカットして根の培養液に浸してから外の庭に移植している。そればかりではなく、一本一本にスペシャル栄養ミックス液を哺乳びんで与えたりもしている。カナビス・グローワーの間では、こうしたユニークなポパイの世話の仕方がカナビスの場合と同じであることは広く知られている。


俺は俺なんだ

ポパイの有名な台詞 「俺は俺なんだ (I Yam What I Yam)」 とカナビスの関係についても触れておかねばならない。このフレーズは旧約聖書の中で、モーゼに名前を尋ねられた神が 「わたしはある(I am that I am)」(Exodus 3:14) と答えた言葉がもとになっている。

この場面では、炎にせず、燻した魔法の草の煙越しに神がモーゼに教えを説いている。ラスタファリアンをはじめ初期のいろいろなキリスト教宗派では、聖書に伝わる燻した草がカナビスのことを意味していると信じられている。

こうしたことから、「俺は俺なんだ」 というフレーズは、ポパイが自らの内にある神の意識を高めるために燻したカナビスを使っていたと解釈することができる。


ボリビア純正のホウレンソウ

ポパイのマンガの中でカナビスのことを明示的に書いたものはなかったが、唯一直接的に表現された話が1980年代にイラストレーターのボビー・ロンドンによって出版されている。その中で、ポパイとウインピーは 「ボリビア純正のホウレンソウ」 を船積みしている。ボリビアのカナビスは良質で知られている。

ロンドンは1986年から1992年までキング・フューチャー・シンジケートで、ポパイの秘密めいた活動について日刊で連載し、大人の政治論争をテーマを題材にしたことで知られている。彼は、ポパイにかかわる以前には、短命だったが、エアー・パイレーツというコミックブックで、マウスのミッキーとミニーがセックスしたり、ハイになってドラッグを密輸したりする話も描いていた。

やがてロンドンは、堕胎問題を風刺する話を書いてポパイの製作を首にされてしまった。それ以来、ポパイの新しい話は作られていない。今でも新聞などで見かけるが、どれも古いものをそのまま再録したものだ。


ポパイ神話

ポパイの多くのカナビスを匂わすシーンはそれが意図的だったかそうでなかったかは別にしても、ポパイの冒険のなかに潜んでいる深い意味合いについて驚きを隠さない人たちもいる。作家でコンピュータ・アーティストのミカエルもその一人で、次のように分析している。

「ポパイの特徴は、古代の海洋時代の自然のサイクルに回帰しようとする意識から出でくるものです・・・本、聖書、航海日誌、地図、ペナント、セール、ロープ、ペンキやニス、ランプの油、シーリング剤、こうしたものはすべてヘンプから作られています。これに対して、ブルートは工業社会や地主からなる貪欲で毒々しい連合体を象徴しているのです。」

「どちらも、アブラの精であるオリーブ・オイルの気を引こうと躍起になりますが、ブルートはポパイが強敵であることを知るようになって、彼を抹殺しようと企て、ポパイを鎖につないで、オリーブ・オイルを捕まえて迫ろうとします。しかしその瞬間、ついにポパイはパイプに入ったホウレンソウを一服。ヘンプの力で鎖を断ち切って邪悪な連中をやっつけて、オリーブを工業社会の汚染や抑圧から救い出すのです。」

「開放されて自然のサイクルに回帰することができた幸せなオリーブの姿を見たポパイは、微笑んで、パイプを吸いながら、こちらに向かってウインクしてみせるのです。」

こうした見方は、ポパイの作家たちが意図して以上の深読みと言えなくもないが、カナビス・コミュニティの一部でポパイが偶像視されている理由を見事に説明している。