小児とカナビス

幼児期の発達異常にカナビノイド医薬品の可能性

Source: AlterNet
Pub date: March 15, 2005
Subj: Pot Pediatrics
Author: Paul Armentano
Web: http://www.alternet.org/drugreporter/21504/


人間が自然に体内で生成する 「カナビス」 が幼年期の健康と幸福の鍵になっているのだろうか? イスラエルの科学者たちが、この問題に挑み出した答えは、誰しも驚かざるを得ないものだった。

イスラエル・ユダヤ・サマリア大学行動科学部のエスター・フライド博士の研究テームは、最近2件の論文を発表し、脳内のカナビノイド・レセプターと体内で自然に生成される情報伝達分子が 「妊娠初期からすでに存在し」、出生前後の 「生命の成長にとって重要な役割」 を演じている可能性のあることを明らかにした。

神経内分泌レターおよびヨーロッパ薬理学ジャーナルで、フライド博士は、「人間の幼児の成長に、エンドカナビノイド・システムが大きな役割を果たしていると思われる」 と指摘している。

エンドカナビノイド・システムは、脳内のカナビノイド・レセプターと内因性(エンド)カナビノイドが結合して神経伝達などをコントロールしている仕組みのことで、薬理的にはカナビスに含まれるTHCなどの各種の外因性成分とも結合して同じような反応を引き起こすことが知られている。

フライド博士は、動物内のこのエンドカナビノイド・システムが、胎児の着床、神経の発達、神経防護作用、記憶の発達、口を動かす能力の発達、新生児の乳の吸引、などの成長に重要な役割を演じていると書いている。例えば、胎児が着床は、エンドカナビノイドのアナンダミドが局所・一時的に減少するすることで達成されると考えられている。

また、フライド博士は、エンドカナビノイド・システムがうまく働かないことが、特に、成長不良で体重が増えない発育不全症候群などの幼児の発達異常に関係しているのではないか、と考えている。実際に、動物実験では、カナビノイド・レセプターをブロックして機能しないようにしたマウスが、体重が増えずに1週間以内に死んでしまうことが示されている。

妊娠中のカナビス使用が新生児の発達を損なうかについては、現在までのところ、相反する研究結果が示されており、科学者の間ではコンセンサスは形成されていないが、フライド博士は、カナビスを使った妊婦から生まれた新生児に僅かな認知欠陥が起こったという研究もあることから、妊娠した女性はカナビスを使わないほうがよいとも書いている。

だが、一方では、小児の医薬品としてカナビノイドを利用することに対しては、小児腫瘍の研究や脳損傷などの重度の神経障害の事例研究で「素晴らしい臨床結果」が報告されているとして強く支持し、カナビノイド派生医薬品が、その他にも嚢胞性線維症にともなう幼児期の痛みや胃炎などの治療にも使えるのではないかと述べている。

また、カナビノイド・レセプター・システムが幼児期に序々に発達していくことから、「大人に比較すると、子供はTHCやエンドカナビノイドの精神的副作用を受けにくいと考えられる。したがって、子供の場合は、カナビノイドを応用した医薬品に対して、副作用が少なくよりポジティブに反応する可能性がある」 と指摘している。

博士は、結論として、「このような医薬品については、新奇性もあり、まだ実現にはほど遠いと言わざるを得ないが、小児用医薬品の分野でカナビノイドの将来性は約束されているように思える」 と書いている。小児用医薬品としては、悪液質(重度の体重減少)、嚢胞性線維症、発育不全症候群、拒食症、炎症、慢性痛、などが考えられる。

南カリフォルニア大学のミッチ・アーリーワイン教授は、「カナビノイド・システムが人間の正常な発達に基本的な役割を演じていることは明らかで、カナビス医薬品が病気の子供の治療に大きな可能性を持っていることには疑いの余地はありません。薬の安全性が十分に確かめられれば、特に、嚢胞性線維症や発育不全症候群などで温情的な臨床試験を行うことが、次の重要なステップになります」 と語っている。