From Hempire Cafe

保守州でも医療カナビス支持

カソリック保守地盤のロードアイランド州

Source: The Boston Phoenix
Pub date: 08 Jul, 05
Subj: Rhode Trip
Autor: Ian Donnis
Web: http://www.thehempire.com/pm/comments/P/3799_0_1_0/


アメリカで最も小さい州でカソリック教徒が大半を占め、プロビデンス(神意)という州都を持つロードアイランド。ここで医療カナビスが支持されたのは何故か? また、このことはアメリカ全体にはどのような影響を与えるのだろうか?

連邦最高裁が病気治療にカナビスを使っている患者でも起訴可能とする連邦政府支持の判決を出してから24時間も経っていない6月7日、ロードアイランド州議会は一方的多数で医療カナビスを支持する姿勢を示し、州の住民を別にすれば全国には驚きを持ってむかえられた。

ちょっと目には、州下院での52対10という超党派での圧倒的な法案支持は奇妙に見えるかもしれない。確かに、ロードアイランドでは無所属や民主党系の議員が多数を占めているもののほとんどの議員は上流社会の保守系で、しかも、この法案には強く反対していたドナルド・L・カーシエリ州知事も共和党で人気が高い。だが、この全米一小さい州の住民たちは、自分の身近の誰かがガンやエイズや多発性硬化症などの難病治療に医療カナビス使って癒されていることを見ており、法案の通過を当然のこととして受け止めている。

例えば、今回の法案の作成では特に目立った活動で先導役を努めてきたトーマス・C・スレター州議会議員(プロビデンス-民主、64才)は、30年来の海兵隊退役予備兵で退役軍人クラブ会館を我が家のように思っているような感じの人で、カナビスの娯楽利用には強く反対している。だが、医療カナビスに関しては、彼自身がガンの治療を受けたり、身内のなかにも病気に苦しむ人がいたりして問題が身近だったこともあり、これまで一貫して支持を表明してきた。

スレター議員は、医療カナビスを自分では使わないがと断った上で、一部の人には主に精神的な面で癒し効果があるので合法化すべきだと主張している。また、ガンやエイズなどの病気の広まるに従って 「人々はこうした病気がどんな悲惨なもの実感できるようになってきたのです。ここでは誰でもがコミニティの知り合いや親類の中に病気の人がいて、何とかしてあげたいと思っているのです」 と言う。 温情を土台とした彼の確固たる取り組みは、賛否を決めかねている同僚の決心を後押して確実なものに変えていった。

また、レイモンド・J・スリバンJr議員(コベントリ-民主)も次のように語っている。 「テーブルをはさんで、自分にはもう7ヵ月、うまくいっても9ヵ月しか残されていないと訴えている人のことを想像してみてください。そして残りの日を過ごすには、食べるのも緊張をほぐすにもカナビスが唯一の救いなのですと聞かされたら、それがどのようなものであれ、正面を向いて犯罪ですなどといえますか? 私にはできない。これはカナビスを合法化しろという話ではないのです。税収を増やせというような問題でもありません。人生の最後の段階をむかえている人や深刻な病気に苦しんでいる人の癒しの問題なのです。」

ロードアイランド州議会に医療カナビス部会が設けられたのは1990年後半だが、突然、広範な政治的支持が勝手連のようなかたちで出来上がったというほど話は単純ではない。実際、何年にもわたるローダ・ペリー州上院議員(プロビデンス-民主)などのキャンペーンがあってはじめて法案を通過させることができた。法案の作成で中心的な役割を演じたペリー議員は、証言で、彼女の甥のエドワード・ホーキンス(41)が昨年エイズでどれほど苦しんで死んでいったかを切々と訴えた。

ペリー議員は自他ともに認めるリベラル派ながら、最近では、エイズ・プロジェクトやアメリカ自由人権協会の州支部に加えてロードアイランドの医師会や看護師協会の団体などからも支持を受けている。このことは、保守的な州でも住民投票や各種の世論調査でカナビス問題がいかに中心課題になってきたかを反映している。

今回、ワシントンDCに本部を置くカナビス・ポリシー・プロジェクト(MMP)もロビイストの強力を得て、カーシエリ州知事の医療カナビス反対声明に対抗して電話作戦やテレビ・コマーシャルを使いロードアイランドで強力な政治キャンペーンを繰り広げたが、やはり最大の要因はロードアイランド人独特の市民の親密さが事を動かしたといえるだろう。この市民感覚は、政治の堕落は認めないという海洋州の公正感が育んできたものだ。言い替えれば、百万人程の小さな州であるからこそ、他のどの州よりも早く個人の考え方が政治に反映したのだ。

かくして法案は6月28日、大半の地味でありふれた案件の場合と同じように、最終ハードルの州上院を審議無しの34対2で採択された。しかし翌日には、カーシエリ州知事はすぐさま拒否権を行使した。

州知事の拒否権に対しては、法案の継続が投票で支持されない限り2007年6月30日に失効するという条項を加えた修正案が再度提出され、7月6日に上院は28対6で知事の決定を覆した。9月中には下院でも投票が行われるが、法案が成立する(4分3の賛成が必要)とアメリカでは11番目に医療カナビス法を持つ州になる。

ロードアイランド医療カナビス法案は、州公認の医師が 「慢性的または衰弱した」 症状に苦しむロードアイランド住民にカナビスが役立つと認定した場合には医師や患者や介護人は州から起訴されることはない、という内容で、カナビスの入手経路については特に定めていない。つまり、州の発行した公認カードを持つ患者は違法なカナビスを手に入れる前提になっており、一度に栽培あるいは所持できるカナビスは12本または2.5オンスまでとなっている。

いずれにしても、最終的には、6月6日にライヒ-アシュクロフト裁判で連邦最高裁が認めた連邦政府の医療カナビス禁止措置に対抗できるようなものは何もない。裁判後にブッシュ政権の麻薬対策本部長ジョン・ウォルターズが発表した声明で、この裁判の決定は「政治問題としての医療カナビス問題の決着を示している」 と述べている。

「医薬品の安全性と有効性の決定に関しては、わが国は世界でも最も高い基準と最も洗練された研究施設を持っており、われわれの医療システムは、一般の意見ではなく科学的な証明にもとづいている。科学的な研究のデータでは天然の植物の喫煙が安全で効果があると決定づけるものはない。国とすれば、医薬品を装ってドラッグ政策を先導しようとする動きに惑わされず、国民が医師から処方される医薬品に効果があり安全であることを保証しなければならない。」

しかしながら、医療カナビスの恩恵を認めた幾多の研究を掲げて支持する人たちは、州政府の医療カナビス法が非現実的だと言い張る連邦政府の主張に対して、ロードアイランドでの出来事は痛烈な批判を加えた、と喝采を送っている。先週発表されたMPPの声明では、「最近行われたライヒ-アシュクロフト裁判の連邦最高裁の決定は、州政府が医療カナビス法を制定する権利を奪ったものではなく、州の医療カナビス法を憲法違反だなどと宣言した判例はこれまでもない」 と指適している。

連邦医薬品政策局では、カーシエリ州知事の拒否権が覆されるのを防ぐために、ジョン・ホルトンとパトリック・ローヤル下院議員二人を派遣してロードアイランド議会でロビー活動を行っているが、その理由を問われたMPPの広報責任者ブルース・ミルケンは 「これは彼らが嘘をついているのを見破られる恐れがあることに気付いたからです・・・彼らが間違っていることがきわめてはっきりと証明されてしまうわけです。ロードアイランドで医療カナビス法が成立すれば、国家的な快挙です。彼らはそれを必死になって避けようとしているのだと思います」 と答えている。

カーシエリ州知事の報道官ジェッフ・ニールは、「知事の医療カナビス反対の理由は知事の信念にもとずくもので、ドラッグの生産や配布のコントロールが十分できないことと、違法なカナビスが州内に蔓延してしまい街のどこででも簡単に入手できるようになってしまうことを危惧したものです」 と語っている。ロードアイランド州警察や家庭裁判所長官も法案に反対している。MPPが組織したロビー活動については 「一州一州切り崩していく戦略で、州を選びそこで議論を駆り立て、それを糸口にこの問題を広く国民的な話し合いに持っていこうとしているのだと思います」 と述べている。

知事はまた、ロードアイランドでの医療カナビス法に反対する理由として連邦最高裁の判決をあげているが、それは、知事が2004年に連邦食品医薬品局の警告にもかかわらずカナダからの処方医薬品を輸入を認める法案を通して、結局、連邦法に従うように命令されたことがトラウマになっている、という批判もある。

また、医療カナビスの問題は、連邦政府がとりわけ若者のドラッグ戦争に莫大に資金を費しているにもかかわらず何故いまだに違法ドラッグがこのように広く使われているのか、といった疑問とも共鳴して、さらに大きな問題にもなっている。

医療カナビスが子供たちをドラッグに手を出しやすくさせる環境をつくるという議論もある。しかし、1994年に多発性硬化症と診断されたワーウイックの女性ロンダ・オドネル(42)さんは 「そのような主張はナンセンスの固まりです」 と語っている。「連邦政府は対テロといった看板ばかりではなく、医療目的でカナビスを使っている人たちことも後回しにしたりせずもっと気にかけるべきだと思います。」

もと看護婦の彼女は、カナビスが自分の足のこわばりや焼けるような痛みを緩和してくれるかについてはわからないとしながらも、恩恵を受ける人もいるはずだという希望を抱いている。また、医療カナビスを支持してテレビのコマーシャルに出演し、選挙民の声を議会に届けて法案への関心を高めた。「どのようにすればシステムがうまく機能するかは、結局、人間の問題だと信じています。」

民主党関係者は、ホワイトハウスのロビー活動で医療カナビス法案に対する支持を切り崩せないと考えている。実際、市長の拒否権は上院で28対6で覆えされており、おそらく数週間以内に行われる下院の票決でも支持がそのまま続く可能性が強い。

知事や関係者は医療カナビス法で違法なカナビスの使用が増えることを懸念しているが、大半の識者はロードアイランドにカナビス・ユーザーが押し寄せてくるようなことはないだろうと見ている。実際、5年前にメイン州で医療カナビスが導入されたときにはそのような悪影響はほとんど起こらなかったと言われている。

また、州の認可を受けた患者であってもカナビスを違法なところから入手しなければならないが、連邦政府から起訴されるようなことはほとんどないようだ。連邦麻薬局ニュー・イングランド支部のアンソニー・ペティグリュー報道官は、医療カナビスの概念については承知していないがと断わりながら、「それは医薬品ではありませんし、医学的な価値についても証明されていません」 と述べている。「連邦政府の調査では、治療センターにやってくるティーンエイジャーは他のドラッグに比較してカナビスが毎年増えています。… 麻薬局では病気の人や臨終間近の人たちをターゲットにしたようなことはありません。栽培や流通に関与した犯罪者が目的です。大がかりな密売組織を解体することに焦点を当てています。」

ロードアイランドの人々はもともとカナビスの使用に関しては寛容だった。数年前にも連邦上院議員のリンカーン・チェーフィーが若い頃カナビスを吸っていたことが暴露されたがほとんど騒ぎにはならなかった。最近の連邦薬物乱用精神健康局の調査でも、州の南部でカナビス使用の頻度が高まっていることがわかっている。連邦最高裁判決の後に発行された共和党寄りのプロビデンス・ジャーナルの社説でさえ、医師がカナビスを処方できるように国の法律を制定するように連邦議会に呼びかけている。

すでに、アラスカ、カルフォルニア、コロラド、ハワイ、メイン、モンタナ、ネバダ、オレゴン、バーモント、ワシントンの10州で医療カナビスが合法化されているが、リベラルで有名なマサチューセッツ州のようなところも同じような住民投票が控えている(先の10州でもバーモントとハワイ以外は住民投票でカナビス法が成立している)。マサチューセッツのドラッグ政策フォーラム理事のウイットニー・テイラーは、トーマス・マクギー州上院議員(リン-民主)が提案した法案が6月はじめの上院法務委員会で大変反応がよかった、と述べている。

しかし、見通しがはっきりしているとも言い難い。テイラー理事は、ガンに病んだ義父が死期を向かえてカナビスのおかげで家族と一緒にディナーを囲むことができたと自らの体験を語っているが、彼女のような医療カナビス擁護者でさえ、一般市民の要望と政治支援の仕組みの間にある現在のズレは悩みの種になっている。「どのように法を実施してシステムの実効をあげるかが次の挑戦です。」

MPPでは、ニューヨークやマサチューセッツ、コネチカットに続いてイリノイやミネソタといった州でも組織化の努力を続けているが、医療カナビスにはまだ困難な闘いが残されており、状況も波乱含みだ。「この問題が終息してしまうようなことはないと思います。」  とロードアイランド大学政治科学教授のマーク・ギネットは述べている。「この問題はゲイの権利の問題と似ています。ゲイの支持者たちは根気よく問題を提起し続け、あらゆる障害を乗り越えてだんだんと認知されるようになっていったのです。」

ロードアイランドから学ぶべきことは何だろうか? 物事の支持を取り付けるには、結局、草の根の組織化と思いやりの気持ちに帰着する。MPPのミルケン氏は、コミュニティの身近なところで活動する必要性を切々と訴えている。「そして、思慮深く、現実的で、反対サイドからのナンセンスな主張にもフランクに対応する心がけが大切です。魔法の公式などありません。自分の側にある真実に支えてもらいながら勉強を忘れないことだと思います。」

「より重要なことは、少なくともドラッグ政策に良識をもって現実的に向き合おうとする姿勢においては、一般市民の方か議会やホワイトハウスよりも数歩も先を行っているということです。もちろん、一般市民の中にもドラッグの乱用を嫌がる人もいます。ドラッグの誤用を事前に抑え込もうと考える人もいます。でも、そうした人たちも交えて物事をオープンな気持ちで見つめるように努め、その上で、もしガンや多発性硬化症の患者さんがカナビスから少しでも安らぎが得られるとしたら、彼らをドラッグ戦争の犠牲にする道理はないのではと語りかけるのです。」