イギリス・ドラッグ乱用諮問委員会

答申無視すれば辞任すると抗議

Source: The Guardian
Pub date: 14 January 2006
Subj: UK: Expert Advisers Threaten Revolt Against Clarke
Author: James Randerson
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=10535


イギリスでは昨年の3月に、チャールス・クラーク内務大臣が、カナビスが精神病を引き起こすという新たな研究が提出されたとして、ドラッグ乱用問題諮問委員会(ACMD)に対してカナビスの分類を見直して現在のC分類から元のB分類に戻すかどうかを諮問していたが、今月発表されることになっている報告書では、戻すべきではないという答申が出される見込みになっている。

こうした結果はクラーク大臣が期待していたものではなく、大臣は委員会の答申を無視して分類変更を強行することをほのめかしている。しかし本紙の得た情報によると、こうした動きに対して委員会の上層部のメンバーは、もし政府がB分類へ戻すならば、委員会を辞任するという書簡を内密に提出したと伝えられている。

委員会のメンバーが懸念しているのは、今回発表されると予想されている答申がクラーク大臣の意向と正面から対立していることで、変更が強行されれば先例化されてダメージが将来にまで影響する恐れがあるとしている。

ドラッグ治療チャリティ、ターニング・ポイントの代表で、ACMDの委員でもあるビクター・アドボワール卿は、「この問題が、大衆受けを狙ってますます政治問題化してきていることを危惧しています。内務大臣が委員会の諮問答申を無視することは非常に重大な問題です。委員会は、かつてロングヘアーのヒッピーだった人たちのグループとは違うのです。イギリスでも最高の薬理学者たちで世界的にも名の知られた人たちの集まりなのです。そんな彼らの出した意見を、大臣は根本から拒否すると言っているのです」 と語っている。

C分類に留めるべきだとする答申では、「当委員会は、カナビスとその製品が精神病を引き起こすとする最近の研究を検討した結果、分類を変更すべきだとは勧告しないという結論に達した。確かに、カナビスに害があることには疑問の余地はないが、その害の程度は、個人的あるいは社会的レベルにおいてB分類の他のドラッグと同等とまでは言えない」 と主張している。

報告書では、現状を維持すべき理由として、カナビス喫煙による精神病の発症リスクが非常に低いこと、カナビスの害がアンフェタミンなどの他のB分類のドラッグに比較してずっと少ないこと、B分類からC分類にダウングレードされた以降も、未成年や若年成人のカナビス使用率が増加していないこと、の3点を指摘している。

先週、クラーク大臣はタイムス紙上で、「カナビスの分類でダウングレードしたことで私が最も心配しているのは、カナビスの法的位置付けに関してドラッグを購入する人たちが、合法化されたと誤解して混乱していることなのです。私は、カナビスのダウングレードが間違っていたと主張している人がたくさんいることに非常に共感を覚えています」 と話している。

ACMD技術委員会のメンバーで、かつてドラッグ法医学サービスの代表を務めていたレズリー・キング氏は、もし内務大臣が諮問委員会の答申を無視するようなことになれば、ACMDの信頼性に対して 「計り知れない悪影響」 をもたらすことになると語っている。

また、オックスフォード大学の薬理学者でACMDのメンバーでもあるレズリー・アーバーセン教授も、大臣が無視すれば、「嘆かわしい先例」 になると懸念を示している。委員会のメンバーたちが本当に辞任を考えているのかどうかという質問には、「他のメンバーがどう考えているか私からは言えませんが、多大な努力と時間を費やして出した結論が無視されて価値のないものだと言われれば、誰だってどう思うかは極めて明解なことです」 と答えている。

ACMDのメンバーで、ドラッグスコープに理事長を務めるマーティン・バーネス氏は、辞任することになると認めている。「もし政府が諮問委員会の勧告に従わないのであれば、まずもって、そうできないという説得力のある理由を明確に示すべきだ、とわれわれメンバーは考えています。」