自動車事故の最新研究
カナビスのリスクは
アルコール許容基準よりも低い
デール・ギーリンガー博士
Source: Oaksterdam News
Pub date: 1 February 2006
Subj: New accident studies confirm cannabis is less a driving hazard than alcohol
Author: Dale Gieringer, Ph.D
Web: http://www.oaksterdamnews.com/content/view/86/1/
2005年9月にメリーランド大学医学部のカール・セーデルステレーム博士が発表した研究によると、ドラッグ尿テストでカナビスに陽性反応の出たドライバーは、必ずしもドラッグ反応のなかった人よりも事故を起こしやすいといった事実はないことが分かった。研究は、1997年から2001年までに自動車事故で病院に搬送された2405人のドライバーについて調査している [1]。
研究では、一つ一つの事故の状況を検証して、どちらのドライバーに過失や責任があったのかを調査している。その結果、カナビス陽性のドライバーは、ドラッグ・フリーのドライバーよりも過失責任が大きいようなことはなかった。また、衝突過失では、どの年齢でもアルコールとの関連が最も強く、コカイン・ユーザーの場合も、特に21〜40才では衝突過失が高くなっている。
さらに特徴的なのは、41才から60才までのドライバーでは、カナビスを使っていた人は、ドラッグ・フリーな人よりも統計的に事故の過失が少なかったことが示されている。その理由として、カナビス・ユーザーは、危険と遭遇したときにスヒードを落とす傾向があるからではないか、と指摘している。
このエビデンスは、トッラクやバスのドライバーに対して、侵害的な抜打ちドラッグ・テストを広範囲に実施しようとしている政府の政策の合理性にはっきりと異義を唱えている。この他にも2件の研究で、尿検査カナビス陽性のドライバーの事故率が高くなることを否定している [2]。
こうした否定的な結果が出てくる根本的な原因は、カナビスの検知を尿テストに頼っていることに関係している。カナビスを喫煙してしばらくすると活性成分は非活性の代謝物に変化するが、この代謝物は何日も体内に残留する。だが、尿テストはこの残留物に対する検知方法なので、運転時点での能力の低下状態を調べるにはあまり役に立たない。
これに対して、血液検査は精神活性物質のTHCの存在を測定することができるので、運転時点での影響を調べるのにはより適している。ヘビー・ユーザーの場合は1〜2日にわたって低レベルのTHCが血液中に検出されることもあるが、通常の場合は、喫煙後数時間しか陽性にならない。すべてではないが一部の研究では、血液中にTHCの認められたドライバーのほうが事故率が高くなると報告しているものもある。
フランス政府の恥ずべき暴走
最も最近の研究としては、フランスの研究者たちが、自動車事故死にからむ10748人のドライバーに対して血液中のドラッグとアルコールの残存量を調査している [3]。この研究の規模は過去最大になっている。
その結果、血液中にTHCが残っている場合は、事故を起こす可能性が若干高くなっている。だが、それでもアルコールに比較すればはるかに低い。リスクの程度はTHCの量が増えると大きくなり、リスク・スケールでは1.6から最高で3(血中1mgあたりTHC5ナノグラム)の範囲になっている。
これに対して、アルコールのリスクは、最低で3(血中アルコール濃度0.05%)から最高は40を超えている。
フランス政府のカナビス反対派は、実態も検討せずに、血中にわずかでもTHCが検出されれば違反とするゼロ・トレランス型酔っぱらい運転法を拙速に通過させてしまったが、この研究は、そうした動きが恥ずべき暴走だったことを証明している。
実際のところ、血中THCのリスク・レベルは、アルコール血中濃度に換算すればフランスで容認されている0.05%より低くなっている。アメリカの場合、酒気帯び運転とされるのは0.08%以上で、それを基準にすればさらに低くなっている。
他でも、カナビスの運転によろ害がアルコールに比較すれば著しく低いことを示した研究は数多くある。大半の専門家は、現在の科学的エビデンスからは、血中THCに対してゼロ・トレランス基準を適応するのは明らかに公正を欠くものだと考えている。
フランジョ・グロテンハーマン博士が座長を務める国際カナビス医薬品学会(IACM)の専門部会では、関係論文をレビューして、運転能力に対する閾値としては、概ね血液1mgに対してTHC3.5〜5ナノグラムが適当だと結論を出している [4]。一方、低レベルの血中THCでは、ドライバーはより安全運転するようになることを示したエビデンスも少なくない。
REFERENCES
[1] Carl Soderstrom et al, “Crash Culpability Relative to Age and Sex for Injured Drivers Using Alcohol, Marijuana or Cocaine,” 49th Annual Proceedings of the Association for the Advancement of Automotive Medicine, Sept. 13-14, 2005.
[2] Lowenstein and Koziol-McLain “Drugs and traffic crash responsibility: a study of injured motorists in Colorado,” J Trauma 50(2):313-30 (2001); and KLL Movig et al, “Psychoactive substance use and the risk of motor vehicle accidents” [in the Netherlands], Accident Analysis and Prevention 36: 631-6 (2004).
[3] Bernard Laumon et al, “Cannabis Intoxication and fatal road crashes in France: population based case-control study,” British Medical Journal, Dec. 2, 2005. doi:10.1136/bmj.38648.617986.1F
[4] Franjo Grotenhermen et al., “Developing Science-Based Per Se Limits for Driving under the Influence of Cannabis: Findings and Recommendations by an Expert Panel,” (International Association for Cannabis Medicine, 2005) posted online at http://www.canorml.org/healthfacts/DUICreport.2005.pdf.
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