カリフォルニア

カナビス医師たちを覆うリスク

州法と連邦法の矛盾に立ち往生する医療カナビス

Source: Baltimore Sun
Pub date: November 05, 2006
Subj: A Risky Practice For Pot Doctors
http://www.mapinc.org/norml/v06/n1509/a08.htm


モーリー・フライ医師(50)は、患者さんに痛みやうつ、吐き気などの症状の治療にカナビスをすすめる際に、わざわざそれをどこで入手したらよいのか教えるようなことは、ずっと考えてもみなかった。

だが、連邦の麻薬捜査官たちが彼女のオフィスと自宅を家宅捜査したときには、彼らは別のことを考えていた。昨年、彼女は、カナビス配布という共同謀議の重罪を犯した疑いで起訴されてしまった。

「私は、自分の名前の最後に付けられたM.D.(メデカル・ドクター)という称号の意味を、人々の健康状態についてどのように対処すればよいのか判断する権利が与えられていると解釈してきました。」

フライ医師は、1999年にサクラメントの北部に診療所を構えて以来、何千人もの患者にカナビスによる治療を奨めてきた。

10年前にカリフォルニア州でアメリカ初の医療カナビス条例が通過したが、医師の推薦証のもとでカナビスを栽培したり購入できるという条項の規定は、州法と連邦のドラッグ法の間に矛盾を抱え、医師と患者の関係に暗い影を落としてきた。

こうした膠着状態が続く限り、医師がカナビス治療を奨めることは不安と多大なリスクを伴う。医療カナビスを1度でも推薦したことのある医者は全体で1500人ほどいると推計されているが、その大半がガンやエイズの専門医で、フライ医師のように一人で多くの推薦証を発行している人は少ない。

推薦証の大半は、ポット・ドクと呼ばれるカナビスを専門にした15人の医師たちの手で発行されている。費用は150ドル程度で、カリフォリニア医師会によれば、「明らかに認められている行為と、明らかに認められていない行為との狭間にあるグレーエリア」 で診察が行われている。

州の法執行当局から要請されて、州政府の医師管理委員会(State Medical Board)は、ライセンスに適正と判断される医師と自制を求める医師を調べるために、15人の医師のほぼ全員に対して調査を実施した。その結果、4人が医療カナビス・コンサルタントとして活動してきたとして最終的に制裁措置が取られたほか、フライ医師にはライゼンスの一時停止措置が取られた。だが、これらの措置に対しては、州民から非難の声が寄せられた。

215条例として知られるカリフォルニア州の医療カナビス法では、カナビスが症状を緩和するとされる主な疾患ととして、ガン、拒食症、エイズ、緑内障、関節炎、偏頭痛を上げているが、医療カナビス法を持つ他の州と違って、「それ以外に、カナビスが医療効果を持つあらゆる疾患」 に対して医師が判断することを認めている。このことが、必要のない人にまで推薦証を出してしまう可能性を残している。

カリフィルニア医師管理委員会のデビッド・ソーントン事務局長によると、2年前に委員会がガイドラインとして「医療基準として受け入れるべき」要件の概要を発行する前までは、医師たちはほとんど自分たちの基準を明らかしてこなかった、と言う。だが、大半の医師が、そうした要件はそもそもリスクと言えるほどのものではないと指摘している。

4年前の連邦裁判では、患者にカナビスを奨めたという理由のみで、連邦麻薬局が医師を追求することはできない、とする判決が下されているが、医師免許委員会のガイドラインでは、この判決が直ちに、医師に対する起訴や懲戒措置の免責を保証するものではないと明記している。

また、医師管理委員会は、医師たちに対して、過去の医療記録を調べないで患者の訴えだけを頼りに医療カナビスを奨めるたり、独自の診察を行わなかったり、あるいは、他に医薬品が使えるかどうかを考慮しなかったりすれば、医療過失として追求される可能性があると注意を促している。

カリフォルニア医師会の指針は、もっと明確で、患者に対して、どこでカナビスを入手可能かを話したりすることは絶対にしてはならないと警告している。また、患者には副作用の可能性を忘れないようにしっかりと教えなければならないとしている。次に、摂取量や、カナビスを喫煙するほうがよいのか食べるほうがよいのかについて話合い、州の発行する医療カナビスIDカードの取得に必要な書類にサインするという手順を取るように定め、さもなければ制裁が科せられる可能性があると注意している。

バークレイのフランク・ルシード医師は、医師会の注意は十分に甘受しているとしながらも、多量のバイアグラや鎮痛剤、中毒性の医薬品などを処方している医者たちに比較したら、ポット・ドクたちはもっと高い基準で診療にあたっていると語っている。彼は、患者のおよそ30%に医療カナビスを奨めている。

公判を待つフライ医師は、今でも患者の推薦証にサインし続けている。栽培を始めるためのクローンの販売はさすがに今はやっていないが、患者自身でカナビスを育てるメリットについては気にすることなく語り続けている。

「医者になるときに何と宣言したと思います? 患者さんに害を与えることなく痛みや苦痛を取り除く、と誓ったのです。私は、その誓をどこまでも守ります。そのために刑務所に入れられるのであれば、喜んで行きます。」

アメリカでは州によって医療関係の法律が異なるために、医師免許は国家資格ではなく、州の医療関係の法律に従って州政府の医師管理委員会(State Medical Board)が発行するようになっている。

モーリー・フライ医師
フランク・ルシード医師

カリフォルニア州医師管理委員会医療カナビス・ガイドライン