カナビスの副作用

カナビス・ドクターたちの証言

Source: CounterPunch.org
Pub date: November 17, 2006
Subj: The Adverse Effects of Marijuana
Author: Fred Gardner
http://www.hempevolution.org/media/counterpunch/c061118.htm


カリフォルニアで医療カナビス条例215が制定されてから、医師たちがカナビスの推薦証を発行した患者数は少なくとも35万人にのぼる。その間、医師たちは、カナビスの副作用としてどのようなケースに遭遇したのだろうか?

19人のカナビス医師たちが組織しているSCC(Society of Cannabis Clinicians)でのインタビュー調査によれば、カナビスの副作用は、比較的稀れで、程度も軽く、一過性で、死亡事故はなく、大きな副作用も1例を除いて見られない。例外的な1例は、SCCの医師からではなく、大学の精神科医からのもので、抗うつ薬のレクサプロや抗精神薬ジプレキサを処方していた18才の少年の精神病の症状が、SCCの医師の奨めたカナビスによってを悪化した、というものだった。

各医師からは次のコメントが得られた。


フランク・ルシード医師: 
副作用の訴えは稀れです。その理由として、医療カナビスの相談に来る患者がすでにカナビスを経験していて、そのメリットに気づいていることが大きいと思います。この10年間に診察した患者さんで、カナビスが未経験だったり、あるいは、何年もカナビスを使っていなくて現在の病気に本当に効くかどうか疑問を持っていた患者さんは、たぶん10人ぐらいしかいません。仕事の生産性が落ちたという理由で止めた患者さんは2人いますが、圧倒的多数の患者さんたちは、カナビスで症状をコントロールすることが出来るようになって、生産性が増したと報告しています。

ロバート・サリバン医師: 
普通ありません。あっても1%程度で、深刻なものはありません。体重増加、耐性、自分で栽培しているカナビスが盗まれるのではないかといった疑念、口の乾き、短期的な記憶減退、不安、赤目、といった副作用が見られますが、どれもこちらから質問して返ってきた返事で、自発的に訴えてきたものではありません。カナビスを止めたというケースは今までありません。

モーリー・フライ医師: 
最もよく見られるネガティブな反応は、投獄されるのではないかという恐怖からきています。これは、当局側がカリフォルニアの法律を遵守しようとしていないことに原因があります。

ウイリアム・トイ医師: 
最も重大な副作用は、喫煙に伴う呼吸器系の問題です。ですが、呼吸器系の問題を抱える患者さんの大半はバポライザーを使ったり、食用でカナビスを摂取しています。患者さんは、どの方にもバポライザーの使用を奨めていますので、現在では喫煙する人はごく僅かです。今でも吸っているのは、大半が30〜40年間もカナビスを吸ってきた患者さんです。もっとも、こうした人では、一日に1、2服といった程度で吸う量は非常に少ないのが実状です。

フィリップ・デニー医師: 
法的な問題を除けば、副作用の報告は実質的に何もありません。患者さんたちは、ドラッグテストがあったり、旅行したりするときには、何の苦痛もなく使用を中断しています。食用によるオーバードーズでは、不快な状態が6〜8時間継続しますが、実際に起こることは稀れで、一過性で症状を引きずるようなことはありません。

デビット・ベアマン医師: 
ときどき咳の苦情が出ますが、もっと多いのが合成THCのマリノールについてです。天然のカナビスに比較すると、情動不安になりやすく、効力も弱く、しかも値段が非常に高いという苦情が寄せられてます。

トム・オコーネル医師: 
最もよくあるのはパラノイドです。このケースで特徴的なのは、カナビスでハイになっている時に、回りの人たちがカナビスを使っていることに対して白い目を向けているような後ろめたい観念を抱くようになることです。こうした状況は、ほとんどの場合、予想外の事態に陥ったような時に起こります。正確にはよく調べてみる必要もありますが、どのような状況であれ、カナビスを使うことを嫌がれた患者さんにとっては、相手が認めてくれるまで待っているわけにもいきませんから。

ウイリアム・コートニー医師: 
私のところの中年の患者さんのほとんどは、若いころに追い求めていた「ハイ」のような精神高揚などにはもはや執着がありません。現在の関心事は不快にならないことなのです。例えば、けいれんや痛みに見舞われるのではないかといった不安に耐えるためにカナビスを使っています。ガンと闘うためにやむおえず吐き気の伴う化学療法を受けた患者さんたちも同様です。幾人かの患者さんたちは、不安を伴わないで自分が楽になれる特定のカナビスの品種があることを見出していますし、また、カンビジオール(CBD)の多いカナビスで1日を無痛感覚で過ごしたり、意識の変容を伴わずに免疫機能を自立的に調節できるようになることに大きな関心を示す患者さんもいます。

Dr.A: 
突然低血圧を起こして失神したという報告がいくつかあるようですが、私の患者さんでは非常に稀れで、1回だけです。普通、このような症状は、大量の食事を食べて腸管が拡張し、多量の血液が一気に送り込まれたような場合に起こります。

ジェフリー・ヘルゲンレーター医師: 
酔っ払った感覚はネガティブな反応と言えるがどうかわかりませんが、問題があるとしても、1時間以上続くことは滅多にありませんし、ベテランのユーザーよりも初心者に多く見られる傾向があります。一部の患者さんで見られる症状とすれば、口の乾き、赤目、歩行のふらつき、方向感覚の軽い混乱、短期的な記憶障害などがありますが、どれも一過性で、通常の処方医薬品の場合に比べれても取るに足りません。

確かに、カナビスの使用は社会に着実に受け入れられてきてはいますが、やはり、たいていの職場では、仕事中に使うことは不適切とされたままです。特に、パイロットや運転手、指令系の仕事、交換手、などのような複雑な作業に従事する人の場合は、カナビスで酔った状態で作業することをよいと思っている人はまずいませんので、仕事が終わってから使うように言っています。

以上の調査結果は、オシャンネッシー・ジャーナルの次の号に掲載するために実施したものを予稿としてまとめたものだが、必ずしも正確性を期したものではない。

当然のことながら、副作用を経験した人でも、推薦証を得るために医師の前ではそれを言わないことも十分考えられる。また、ルシード医師らも指摘しているように、この10年間では、推薦証を求めてきた人たちのほとんどが、既に自分でカナビスを使ってみてよい効果が得られることを事前に知っており、全く初経験という人は珍しい。さらに、強い副作用を経験した人たちは、そもそも推薦証の再交付を求めて戻ってくるとは考えられないので、そうした副作用の苦情が上がってこない可能性もある。

カナビスが、18才の少年に精神症の症状を引き起こして悪化させたという例外的ケースについては、スタンフォード大学のDr.Pから、カリフォルニア州の医師管理委員会(State Medical Board)に提出されたもので、カナビス医師が推薦したことが原因になっているとしている。「THCが抗うつ剤の働きを阻害して少年のうつ症状を悪化させて、精神症を引き起こしたのは明らか」で、「少年は精神的にも身体的にもカナビスに依存症状を示しており、やめるように説得しても止めようとせず、合法的に常用するために医療カナビスの推薦証をもらうとまで言っている」 と申し立てている。

カナビスが身体的依存性を引き起こすという主張には科学的な根拠がない。Dr.Pの使っている 「とまで言っている(even admitted)」というフレーズには、告発しなければならないという気持ちが表れている。彼女は、カナビスで合法的に不安を和らげることができるという一般常識では考えられない感覚をカナビス医師たちが持っていることに戦慄を覚えたのかもしれない。少年には、Dr.Pによる診察で、反カナビスの説教と彼女のお気に入りの医薬品を押し付けられるているという反発が感じられる。

処方されたレクサプロは、フォーセット製薬が製造しているSSIR(選択的セロトニン再取り込み阻害系)抗うつ剤で、製薬会社やそこから資金を得ている大学の研究者たちは、ことあるごとに異議を唱えているのだが、医学文献によれば、SSIR関連の医薬品はゆっくりでも確実に自殺衝動に結びつくとされている。

カナビスの使用が患者の精神病を引き起こし悪化させるというDr.Pの主張は、現実的には証明することも否定することもできない。一部には、カナビスの使用と統合失調症に間には関係があるとする研究も発表されてはいるが、必ずしも因果関係を示しているわけでもない。

例えば、回りから攻撃されていると感じたり、声で命令されたりしていると感じるたりする人がカナビスを使っていることがあるが、このようなケースでは、カナビスがそのような症状をもたらしたのではなく、カナビスを使えばそのような症状が鎮まることを知っていた場合もある。そこには、相関関係はあっても、カナビスの使用が症状を引き起こしたとする因果関係はない。

統合失調症の発症率は、人口あたりのカナビスの使用率とは無関係で、どのような国や地域・文化でもほぼ1%で変わらない。合成THCであるマリノールを使った10代のガン患者の治療でも、統合失調症の発症率が増えるという結果は得られていない。

最後に、カナビスの副作用のコントロールという面からから見ると、コートニー医師も指摘していたが、現行制度のもとでは、患者の使っているカナビスに含まれるカナビノイドの割合を医師が知ることができないという問題がある。

カナビジオール(CBD)には、鎮静・鎮痛効果や抗精神作用があると考えられているが、皮肉なことに、現在、カリフォルニアの患者たちは、CBDが少ない品種しか入手できないでいる。医師たちは、この10年間にTHC含有量の高い品種とCBDの高い品種との効果の違いを知り、CBDの高い品種が利用できるように口を揃えて望んでいるが、禁止法が研究を阻んでいる。