カナビスはゲートウエイにはならない

ティーンは他のドラッグ乱用には進まない

Source: Science Blog
Pub date: 04 Dec 2006
Subj: Study say marijuana no gateway drug
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=11962


アメリカ精神医学ジャーネルの今月号に掲載されたピッツバーク大学の12年間の研究によると、カナビスを使っても、中毒性の高いドラッグに次第に移行する「ゲートウエイ」にはならないことが示された。この研究結果は、60年間も政府の政策の中心になってきたゲートウエイ理論の抑止効果や、子供の部屋でカナビスを見つけたときの親たちのパニック対応が、本当に正しかったのかどうか疑問を投げかけている。

研究者の調査は、開始時点では10才〜12才で、その後、全員が合法あるいは非合法のドラッグを使い始めた214人の少年を対象としている。22才になったときに、各人は、アルコールとタバコだけを使っているグループ、アルコールとタバコからカナビスを使うようになったグループ(ゲートウエイ順)、アルコールとタバコを使い出すより前にカナビスを使っていたグループ(逆ゲートウエイ順)の3つに分類された。

いずれかの時点で合法および非合法のドラッグの両方を使っていた人は全体のおよそ4分の1で、そのうちの29人がアルコールやタバコより前にカナビスを使っていた逆ゲートウエイ順グループに属していた。このグループでは、伝統的なゲートウエイ順でアルコールやたばこから違法ドラッグを使い始めた人たちよりも、ドラッグの乱用を起こしにくいことが分かった。

「ゲートウエイ順に進むのが最も多いパターンですが、それが唯一の順番というわけでもありません。それと、実際のところ、逆順パターンの人の場合は、ドラッグ依存症に発展するリスクをより正確に限定して予想することができるのです」 と研究のリーダーを務めるピッツバーグ大学薬学部教授ラルフ・ターター博士は語っている。

研究者たちは、ゲートウエイ仮説が、その他の説よりもドラッグの乱用をより的確に予想できるのかどうかについて調べるために、ゲートウエイ順を取ったユーザーと逆ゲートウエイ順のユーザーの違いを特徴づけている要素について分析を行っている。全体では35の要素について比較してみたところ、特徴的な違いは3つの要素についてしか見られなかったが、逆順パターンのユーザーは、不便な環境に暮らしていることが多く、近所にドラッグの使用が見られやすく、親たちが子供を単に子供扱いしていない場合が多かった。

また、依存症に陥らない最も重要で一般的傾向とすれば、制約の多い行動を強いられる状況に置かれていないことで、この傾向はゲートウエイ順にかかわらず、早い時期に行動に制限をかけられた人ほど、あらゆる違法ドラッグに手を出しやすいことが明確に示された。

ゲートウエイ理論では、タバコやアルコールがカナビスを導くといった特定の順序で進むリスク要因が各々のドラッグに備わっていると仮定しているが、この研究では、そうした要因ではなく、どのドラッグを使うようになるかは環境因子に強く影響を受けていることも分かった。

つまり、ティーンがビールよりもカナビスを手に入れやすい環境にあれば、カナビスを使うようになりやすい。これは、いわゆる統一責任モデル(common liability model)として知られている説で、今回の研究はそれを裏付けたものになっている。この説は最近頻繁に唱えられるようになった理論で、違法ドラッグを使うようになる傾向は、前にどのような特定のドラッグを使っていたかによって決定されるのではなく、ユーザー個人の嗜好や環境の状況によって決まる、としている。

「これまでは、ドラッグ政策や防止プログラムの決定にあたっては、要因として、個人の行動様式よりもドラッグそのものの性質が強調されてきましたが、もっと効果的にドラッグの乱用に対処するためには、友達や近所の環境に気を配るだけでななく、特に子供の行動を様式を育てる親のスキルを向上させるといったもっと多角的な取組みを行う必要があります」 とターター博士は述べている。

実際、今回の研究結果によれば、子供の行動の改善には、現在の反ドラッグ的なやり方よりも多角的な面に取組むほうがより効果的な防止戦術になることを示している。例えば、特に近所の環境リスクが高い場合などでは、親のためにガイドラインを用意して、子供たちがカナビスを始めやすくなる要因を数値化できるようにすれば、どのように世話のスキルや子供との絆を高めたらよいのか指導することができるようになる。また多角的な取組みのでは、たとえドラッグを使う前でも、子供の不良の兆候を早い時期に気づくこともできるようになる。

今回の研究は、間違いなく、ドラッグ乱用防止のやり方に対して多くのヒントを持っているが、ターター博士は、研究に不十分が点があることも認めている。その一つは、今回は男性の行動に限定していることで、女性でも同じことが言えるかどうかはさらなる研究が必要だとしている。また、ゲートウエイ順を検証するためにアルコールとカナビス以外にもを対象を広げて行動調査を行う必要があるとも指摘している。

研究には、ターター博士の他、同大学薬学部のミッシェル・バニューコフ博士、モーリン・レイノルド博士、レバント・キリスキ博士、またダンカン・クラーク医学部教授が加わっている。研究資金は、アメリカドラッグ乱用研究所(NIDA)から拠出されている。