イタリア、医療カナビス法をめぐる論戦
Source: Inter Press News Agency
Pub date: 08 Dec 2006
Subj: Medical Use of Marijuana Divides Italy
Author: Francesca Colombo
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12001
イタリアでは、現在までのところ、ちょうど10人の人が痛みの治療のためにカナビスを利用することを認可されているが、来月に行われる国会で、本来違法なカナビスを医療目的で使うことが認められば、その数はさらに増えることになる。
フェデリコ・ファントーニさん(58)は医者でもあるが、自分も四肢麻痺に苦しみ、この8年間は車椅子を使っている。病気が原因して腕の筋肉が収縮して痛みが襲ってくる。彼は、この痛みと闘うために、アペン系の貼り薬などあらゆる医薬品を試してみたが、どれも副作用が強く耐えられなかった。
だが、カナビスの医療治療について多くを知るようになって、自分でも使ってみることを決心した。「使った後の5時間は、すべての不快症状は消えていた」 と彼はイタリア医療カナビス学会で証言している。
イタリア医療カナビス学会は、国際カナビス医薬品学会(IACM)の下部機関で、カナビスの利用と薬効成分の治療応用ができるようにするために、世界的な合法フレームワークを構築することをグループの目標に掲げている。
イタリアでは、個人使用目的でのカナビスは1グラムまで容認されているが、公式統計によると、ユーザー数は300万人にのぼっている。承知のように、他の大半の国では、カナビスの精神作用やハードドラッグへのゲートウエイになることを理由に、カナビスの使用は禁じられている。
イタリアの医療カナビス合法化法案は、10月に閣僚会議から提示されたもので、政治家、専門家、市民たちに賛否の議論をするように促ながしている。
反対派の人たちは、カナビスに医療効果があるか疑わしく、ドラッグ全般の乱用を増やす可能性があるとして、法案に反対するように議員たちに呼びかけているが、代替医療クリニックや難病の患者さんたちは、カナビスには鎮痛効果があるとして、カナビスを使うことを擁護している。
「お医者さんたちは、カナビスの医療利用については余り知らないのです。薬理学の本などにも書かれていません。イタリアがカナビスの代替治療に関心を示し始めたのはヨーロッパの中でも最も遅い国の一つですが、その効果に気付き、生活が改善されたとするケースが既にいくつも知られています」 とコンシューマー権利協会のコンサルタント、ピエトロ・モレッティ氏は語っている。
カナビスを擁護する側は、カナビスがアルコールやタバコよりも害が少ないと主張している。イタリアでは、年間、タバコの喫煙では9万人、アルコールの乱用では2万人が死亡している。
「カナビスは、医療目的に使うことができます。もし、そうではないと科学的に明確に示されているのなら、このようなことは言いません。ですが、イタリアの政治家たちは、科学的なデータではなく、イデオロギーやプロパガンダで動いています。例えば、モルヒネはカナビスよりもずっと強い薬物ですが、末期患者に使われているのです」 と拳の中のバラ党(Rosa nel Pugno)のアレッサンドロ・リタ、ロンバルディア地区代表も話している。
数多くの研究も、ある種の病状に対するカナビスの効果を指摘している。1985年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)でも、ガン患者の化学療法で引き起こされる吐き気の治療薬として、カナビスの成分を化学生成した合成カナビノイドの販売を認可している。
イギリス医学会の発行する医学ジャーナルでも、さまざまな議論を踏まえて、カナビスには多発性硬化症患者の筋肉のけいれんで起こる神経性疼痛の緩和に効果のあることが示されている。また、カナビスは、エイズの治療に伴う痛みの緩和や、血圧を下げたり、肺を広げたりするためにも使われている。
ジアンピエロ・ティアーノさん(37、数学者)は、19才の時に自動車にひかれて2ヶ月間昏睡状態に陥り、1年後からてんかんの発作に襲われてようになった。1年間医薬品の治療を受けたが、カナビスにはてんかんの発作を抑える働きのあることを読んで、試してみる決心をした。1日8本のジョイントを吸い始めてから、以後4年間は発作に襲われることもなくなった。
しかし、1996年、ティアーノさんは自宅で11本のカナビスを栽培しているところを警察に見つかって逮捕された。2年後、彼は懲役18ヵ月の判決を受けたが、1999年の控訴審で、カナビスにはてんかんに治療効果のあることが認められて無罪になった
前ヨーロッパ議会議員で、カナビスの治療効果を調べているトリノのレモリネ病院のアントニオ・ムッサ腫瘍外科部長は、カナビスには患者さんの痛みを軽減したり、食欲を増進させたり、安堵感をもたらしたりする効果があると言う。
「余命を伸ばすことが無理でも、少なくとも生活の質の改善をすることは可能です。余命6ヵ月の患者さんに、中毒になるからダメなどと言っても意味ありません」 とイルマニフェスト紙のインタビュー(6月13日)に答えている。
一方、カナビスを医療目的に使うには別の問題もあると指摘する声もある。ミラノ大学の薬理学者マウリツォ・クレスターニ教授は、服用量がコントロールができないので、必ずしも鎮痛にはモルヒネよりも優れているとはいえないと語る。
「カナビスの活性成分に末期患者の苦しみを和らげる効果があったとしても、服用量をコントロールすることは困難です。私は、分別のない自由化には賛成できません。ブラックマーケットのドラッグ取引を招く恐れもあります。使えるとしても、特別なケースで医師が処方した場合に限るべきです。」
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