From Hempire Cafe

カナビスが腸の炎症を緩和

炎症性腸疾患治療に希望

Source: The New Scientist
Pub date: 5 June 2006
Subj: Cannabis May Soothe Inflamed Bowels
Web: http://www.thehempire.com/index.php/
cannabis/news/cannabis_may_soothe_inflamed_bowels


イギリスの研究チームが発表した報告によると、カナビスをベースとした医薬品が、腸の炎症に苦しむ人の治療に希望をもたらすかもしれない。

炎症性腸疾患(IBD)を患うカナビス・スモーカーの間では、ジョイントを吸うと症状が軽減されると、これまでもしばしば言われてきた。これを確かめるために、イギリスのバース大学とブリストル大学の研究者たちは臨床ベースで調査してみることを決めた。

「カナビスを使うと、クローン病や潰瘍性大腸炎の痛みや頻度が緩和するといった話が非常に多くあるので、どういうことなのかはっきりさせることにしたのです」 「歴史的にみれば、インドや中国では何世紀も前にカナビスが胃腸の薬として吸われていたのです」 とバース大学の薬理学者カレン・ライト語っている。

炎症性腸疾患と総称して知られる慢性的な病気は、免疫システムの過剰活動が原因で発生し、消化管周辺に激しい炎症を引き起こす。イギリスでは、現在、18万人以上の人々が大腸炎やクローン病による痛み、急激な下痢、強い疲労感、体重減少などの症状に苦しんでいると考えられている。こうした症状に繰り返し襲われると、腸が焼けただれ、広範囲が線維症となって腸が狭まくなり、やがて狭窄を起こすようになる。これに対する治療は腸を切除する以外には知られていない。


カナビノイドによる細胞修復

これまでも、カナビスが炎症性腸疾患を和らげるとすれば、腸の壁面にもカナビスの成分である分子に反応するカナビノイド・レセプターが存在している可能性があると指摘されていた。ライトたちは、人間の腸の断片を取り出し、試験管内で成長させて調べた。

驚くべきことに、腸内の内皮細胞のあちこちから、脳内に存在することが知られているCB1カナビノイド・レセプターが発見された。「これは、内皮細胞が損傷されたときに、その修復に関与しているのではないかと考えられます」 とライトは話している。

また、腸内の細胞を故意に傷つけて炎症を起こし、合成カナビノイドを投与したところ、「腸が回復を始めたのです。壊れた細胞が修復され、裂け目がくっついてきたのです」

こうしたことから、ライトは、健康な腸の中では、傷つくと内皮細胞から内因性のエンドカナビノイドが放出され、CB1レセプターと結合して傷の回復が始まる、と確信している。「カナビスを吸ったときも、カナビノイドが同じレセプターに結合していたのです」


過剰細胞の一掃

以前行われた研究でも、腸内の神経細胞にあるCB1レセプターがカナビノイドに反応して腸の運動を遅する結果、下痢にともなう筋肉の収縮の痛みが緩和されることが示されている。

だが、ライトらのチームは、炎症性腸疾患の患者の腸内にもう一つのカナビノイド・レセプターであるCB2レセプターも発見している(健康な腸にはCB2は存在しない)。CB2レセプターは主に免疫システムに関係していることが知られているが、どちらのレセプターもカナビスの成分に反応し、細胞のアポトーシス(自然死)に関係していると見られている。ライトは、この2つのレセプターが免疫システムの過剰活動を抑え、過剰な細胞を一掃して炎症を緩和するのではないかと指摘している。

「長期間の炎症で調節不全になった体内のエンドカナビノイド・システムが機能を回復できるようになることが理想です。そのためには、このシステムが実際にどのように働いているのか知ることが、治療法確立の目標になります。」 「ですが、私たちはカナビスの使用を奨励しているわけではありません。多くのカナビス・スモーカーがカナビスとタバコを混ぜて吸っていますが、とくにタバコはクローン病を悪化させますからカナビスの喫煙にも同じことが言えます」

全国炎症性腸疾患の会(National Association for Colitis and Crohn’s Disease)の広報官は、この研究に対して 「炎症性腸疾患に苦しむ患者にとっては、希望をもたらしてくれるニュースはどれも良いニュースです」 とコメントしている。