痛みの強制が続く

連邦議会、医療カナビス弾圧費用支出停止法案を否決


ロレッタ・ナール

Source: Loretta Nall for Governor
Pub date: 29 June 2006
Subj: Pain Still Mandatory
Author: Loretta Nall
Web: http://nallforgovernor.blogspot.com/2006/06/pain-still-mandatory.html


2006年6月28日に開催された第109回アメリカ連邦議会は、11の州法で認められた医療カナビス患者と介護者に対して、連邦麻薬取締局(DEA)が家宅捜査、逮捕、起訴を今まで通り続けることを認める票決を行った。

5時間を審議を見ながら、このようなバカげたことに何十億ドルもの税金が使われていることにあらためてあきれ果て、自分のなかに、選挙民に選ばれた議員たちがどんな発言をしたかテレビ・ライブ形式で再現しながら、クール論評を加えてみたいという気持ちが自然と芽生えてきた。

まず最初に取り上げる人物は、「カナビスには医療価値はない。それは、ヘロインやコカインや覚醒剤など共に規制薬物のI類に分類されていることでわかる」 などと何もわかっていない発言をしていた。


スティーブ・キング議員(アイオワ州、共和)

「議長、私に発言の機会を与えてくれたこと感謝します。アイオワのラサム議員から伺ったところによると、連邦薬品医薬品局(FDA)ではカナビスをヘロインやLSDや覚醒剤やハシシなど規制薬物第I類に分類しています。これらは乱用される危険性が高いので、ほとんどの州では医者でさえ医療目的で処方することを禁じているほどなのです。これが国家の制定している基準なのです。」


この人はハシシがカナビスと別のドラッグのように言っているのはご愛嬌としても、連邦麻薬取締局(DEA)が掲載している分類表では覚醒剤はII類で、医療価値を認めていることも調べていない。それはDEAの規制薬物表 をみればすぐわかることだ。

覚醒剤は デソクシン という処方医薬品として販売されており、深刻なADHDやうつ病や肥満の治療に使われている。つまり、連邦薬品医薬品局(FDA)の能書によれば、覚醒剤は太っていたり、気が滅入っていたり、行動障害がある場合はOKで、ガンの激痛やエイズの苦しみには天然の植物であるカナビスを使うことはダメということになる。

なぜ一部の連邦を牛耳っている連中だけで医薬効果が有無を決めているのか? とうてい理解の範囲を越えているが、ひとつ言えることは、医師たちが規制薬物表を作ったわけではないということだ。彼らは自分から特定の薬物を処方できないように禁止したわけではない。これは、DEAが合法だと言っていた覚醒剤などを処方して逮捕や起訴される医師の数も異様なほど増えてきていることを見てもわかる。ご都合主義の規制薬物表の裏には、逮捕が増えていることを理由に逮捕を正当化するという循環論法が隠されていることに注意しなければならない。

また、特に薬物の使用・乱用・治療などに関する法律を決定する議員は、最低でも規制薬物表がどのようなものなのか知っておくことが強制されるべきだ。これが行き過ぎた要求とでも言うのだろうか? もし、キング議員のように何も勉強もしていない誤った思い込みで投票したりすれば、その票は無効にすべきなのだ。そして、不当で故意にいいかげんなことを言って審議を脅かしたことで投票資格を剥奪するべきなのだ。


次のはったり論者は、トム・ラサム議員(アイオワ州、共和)

「議長、ありがとうございます。私はこの法案には強く反対します。カナビスは、一部の人たちが主張しているような無害なものではありません。規制薬物法では第I類に分類されていることを見ても明らかなように、医療効果など認められておらず、乱用される可能性が高いものです。実際、カナビスはアメリカで最も広く乱用され続けているドラッグです。

カナビスには医療的恩恵があると主張する人たちは、THCとカナビスの区別もついていません。カナビスには何百もの成分が含まれていますが、大半は健康の害になります。連邦のいくつかの機関が行った検証では、カナビスの医療使用を支持するような科学研究はないと結論つけています。また、FDAは喫煙による医療使用法自体を合法として認めていません。

決定的なことは、カナビスがガンや呼吸器疾患をはじめ、免疫や生殖にも問題を引き起こす中毒性の薬物だということです。また、長年、ドラッグ問題に係わり、ドラッグ・フリー・アメリカのメンバーとして活動してきた私に言わせてもらえば、カナビスはどのみち覚醒剤のきっかけになり、ヘロインの使用を導くゲートウエイ・ドラッグになるのです。

われわれは、違法ドラッグに対するこうした闘いを続けてきましたが、若者たちにドラッグ使用のきっかけになるメッセージを送るすべての人は、このような修正法を持ち出してきたことに対して非難されるべきです。この法案は、カナビスがOKで社会的に許容されていると国民に思い込ませようとしているのです。いったん使い始めれば健康を害します。実際、カナビスは医学的にも科学的にも完全に悪いものなのです。

今日、この法案を通してしまえば、われわれは子供たちに対して、覚醒剤やヘロインのきっかけになるカナビスの合法使用を強く支持しているかのようなメッセージを送ってしまうことになります。私はここにいる議員のみなさんに、このとんでもない法案に反対票を投じることを強く要請します」 と言って毛嫌いするように何度も頭を横に振った。


ラサム議員の嘘を指摘するのは非常に簡単。例えば、「カナビスには何百もの成分が含まれていますが、大半は健康の害になります。連邦のいくつかの機関が行った検証では、カナビスの医療使用を支持するような科学研究はないと結論つけています。また、FDAは喫煙による医療使用法自体を合法として認めていません」 と言っているが・・・

最初のレッド・カードは、連邦の機関が信用できないという事実だ。彼らは、自分たちの目的に沿っていない研究を差別することで悪名高い。彼らは研究を委託しておいて、望まない結果を出してくるとその研究への資金提供を中止し、欲しい結果が出てきそうな研究にはどんどん税金を注ぎこむ。

また、食品医薬品局(FDA)が承認した医薬品について振り返ってみれば、関節炎治療薬ヴィオックス(VIOXX)では15万5000人もの人が死んだり障害を受けたりしている。他にも多数のFDA認証医薬品で同じようなことが起こっており、場合によってはさらに深刻なものもある。

これに対してカナビスでは今まで誰一人死んだことはない。このように、連邦の機関の出す評価はとうてい信頼できる代物ではない。


2枚目のレッド・カード。「決定的なことは、カナビスがガンや呼吸器疾患をはじめ、免疫や生殖にも問題を引き起こす中毒性の薬物だということです」 と言っているが・・・

ワシントン・ポスト などにも掲載されたが、最近の大規模研究で、カナビスの喫煙はたとえ常用あるいは過度に乱用しても肺ガンを引き起こすことはないという結論が出ている。これは当初の連邦の予想を裏切るもので、この研究を実施したカリフォルニア大学ロスアンジェルス校のドナルド・タシュキンですら 「予想外の結果」 と驚いている。

彼は、カナビスの呼吸器への影響を30年間も調べてきた人物として知られているが、「われわれは、カナビスと肺ガンの間には密接な関係があり、ヘビーなユーザーほど影響が大きくなるという仮説を立てて検証してきました。ですが、結論は、全く関係がありませんでした。むしろ、カナビスには肺ガンを防ぐ機能を示唆するデータさえ見られます」 と語っている。

連邦の保健衛生や麻薬取締当局は、タシュキンのこれまでの研究をカナビスの危険性の証拠としてひろく使い、彼が禁止論者たちの考えにフィットする信念を抱いている間は、彼の研究をまともで科学的なものだと持ち上げてきた。しかし、タシュキン自身は、まだカナビスに害があると信じているが、少なくともガンを引き起こす影響については以前考えていたよりも少ないことがわかった、と調子を変えると、禁止論者たちは彼の研究はもはやまともでも科学的でもないと言い出す。

当然、私は、アイオワから出てきた田舎政治家の言うことよりも、医学の学位を持った科学者の判断のほうが信頼できると思っている。正直なタシュキンに感謝。

もちろん、ラサム議員たちがアイオワから出てきたからといって善良な州民に罪はないが、もし、その田舎代表が自分の住むアラバマの選出だったりすれば言葉に詰まってしまうところだ。

私は、かって、わが州の上院議員であるジェフ・セッションがクークラックスクラン(KKK)の肩を持つ発言をしていたのに、彼らの一部がカナビスを吸っていることがわかると態度を変えたことを知っている。

わが州もこんな具合だから、アラバマの議員もとんでもないことを言い出すのではないかとヒヤヒヤしていた。だが、反対意見を言うために立ち上がった議員はいなかった。これがせめてもの救いだった。

3枚目のレッド・カードは誇大妄想。年老いたガン患者がカナビスを使っていたからといって、突然、コカインや覚醒剤をやりだすようになるなどと心配する人がいるというのか? それなのに、議会で修正法に反対していた議員たちは、まるで神の定めで、医療カナビスが他のドラッグの先導役になると決められているかのごとく主張していた。


この他にも反対意見を述べた議員はいるが、馬鹿げた詳細を繰り返してこれ以上読者をうんざりさせるのは控えたほうがいいだろう。反対に、この日の最も素晴らしかったウイスコンシンのデイブ・オベイ議員(民主)の意見を紹介しよう。

「仮りに私が末期的な病の患者だとすれば、その痛みとどのように闘うかべきを決めるてもらいにこの議場にくるべきなのか? ここに出席している議員諸氏には最大の尊敬を払ったとしても、それは断じて違う。私は司法省の許可を得るために政治の世界に入ったわけではない。私は司法省の許可や権威たちの承認を請うような真似は絶対にするつもりはない。

患者にどのように痛みや病に対処したらよいのかを説明することは、議会の仕事ではない。医者の仕事だ。私が末期患者なら、議会の ダフィー・ダック を信頼して自分のことを決めてもらうようなことはしない。医者に決めてもらう。

確かに、覚醒剤には嫌悪を感じる。特に私の地元である中西部では疫病神だ。しかし、何とかしてカナビスを覚醒剤のゲートウエイに仕立て上げようとする意見を聞いていると、悪辣なジョークにしか聞こえない。私は覚醒剤が病人や死期の迫った患者の痛みや苦難の緩和には何の役にも立たないことを知っている。何で患者がそのようなものを求めるようになるというのか。

プライベートな個人は自分の問題には自分で対処する権利を持っている。みなさんは、ホワイトハウスや司法省のお歴々や議会の議員なんぞの許可が必要などと思っているのか? いつになったら気がつくのか? 目を覚ませ!」


見事な啖呵!

私の意見もオベイ議員と同じだ。私もそんな連中に許可を求めるなんてまっぴら御免だ。許可を求めることは、相手にNOと言わせる口実を与えることになる。そして相手はNOと言い続ける。

議会の議員に電話し、メールを送り、訪ねてロビー活動をしてきたグループや個人の全ての努力を無駄にしてはならない。できればそのいくつかを紹介したいが、今はまず、奴隷の主人にひざまずいて痛みを和らげてくれるように懇願するような卑屈な態度とはきっぱり別れ、われわれの意識を変えて自分で決めるべき時なのだ。決めるのは彼らではないのだ。


最後に、修正法案の提案者モーリス・ヒンチー議員(ニューヨーク州、民主)とダナ・ロールバッハー議員(カリフォルニア州、共和)の提案説明を紹介しておこう。


窶「 モーリス・ヒンチー議員(ニューヨーク州、民主)

「この修正法案は2つの柱から成り立っています。一つは思いやりです。深刻な病に苦しむ人や死期の間近な人への思いやりです。苦しみを和らげる手段を提供することで、重篤な状態の中で生きる力を後押しすることです。また、もう一つは州の権利に関することです。それぞれの州がどのように医療ケアを提供するか決定する州の力についてです。

現在では、州民のエイズやガンや緑内障や多発性硬化症などの苦しみを緩和する目的で医療カナビスを認めている州は、アラスカ、カリフォルニア、コロラド、モンタナ、ネバダ、オレゴン、ハワイ、ロードアイランド、バーモント、ワシントンの11州に及んでいます。

この内の2州は州議会で法が制定され、9州は住民投票によって条例化されたものですが、連邦政府はこれらの州の法に執行を妨害し止めさせる決定をしています。この修正案は、そうした連邦の妨害をなくすことを目的としています。

この修正案の反対する人たちの間からは、カナビスが他のドラッグのゲートウエイになるという意見を耳にしますが、この修正案は断じてそのようなものではありません。また、ドラッグ中毒や乱用の危険性を引き起こすようなものでもありません。この法案が行おうとしているのは、医療管理法を制定する権利を州に保証し、連邦の妨害を受けずに、州が住民の苦しみを和らげることができるようにすること、ただそれだけに過ぎません。

この法案は非常にシンプルです。通すことに何の問題もありません。小さな政府を標榜する人たち、州の権利を優先させる考えの人たち、州政府とそこに住む住民が苦しむ患者の面倒を見る権利があると考える人たち、・・・同様に、ここにいるすべての人はこの修正案を支持できるはずです。」


窶「 ダナ・ロールバッハー議員(カリフォルニア州、共和)

「議長、ありがとうございます。私はこの修正案を強く支持します。この修正案は、医療目的でカナビスを利用することを認めた11の州の法律の執行を阻害するための司法省による資金拠出を禁止しようとするものです。提案者の私とヒンチー議員は政党の枠を越えた自由への意志でこの法案を共同提案していますが、この法案の根底にあるのは、苦しんでいる人たちへの思いやりと、個人の自由と連邦主義の原則への確固たる意志の表明です。」

窶「 「さまざまな疾患に苦しむ患者の苦痛を和らげるためのカナビスの医療使用については、メディアや医学誌で取り上げられることが増えてきて、現在ではよく知られるようになりましたが、カナビスを使っている人は、従来の医療では痛みを和らげることができなかった人たちなのです。

私は、ほんの最近、長年の友人であったリン・ノフィツガーを亡くしました。たぶんここにいる人なら知っていると思いますが,彼は、ロナルド・レーガンの最初の報道担当官でした。ガンの治療で入院していた病院では気分が良さそうな日も悪そうな日もありました。私は、最後の時を過ごすために病院から家へ戻った彼をお見舞に行きました。亡くなる1週間前のことです。

私が気分のことを訪ねると、「ときどき悪いこともあるけどそうでないこともあるよ。でも自分では食べることもできないし、この痛みは医者の手にも負えないんだ。」 私は聞きました、「前にもいろいろ話したことのある医療カナビスは試してみました?」 彼は目を輝かして「やってみたよ。食欲はもどったし、赤ん坊のようによく眠れたよ」 と言っていました。」

まさか、連邦の資金と資源を使う執行官を養うために犯罪を作り出す必要があるなどと言う人はいないと思いますが、もしそのために、医者の同意で医療カナビスの利用が認められている州までやってきて、リンのように苦しんでいる人たちのところへ乗り込むようなことが行われているとしたら、それは茶番です。

この修正案で護られるのは、有権者の投票などによって制定された州法で、医師の同意でカナビスを苦痛の緩和のために利用する権利が合法的に認められた11の州の人たちです。州の有権者が投票で決めたことに対して連邦政府が介入し、国民の貴重な資産を注ぎ込んで、苦痛の緩和に誰が何を使うかまで口出ししようとするのはお門違いです。

州優先は、アメリカが受け継いできたの伝統です。最高裁判事だったサンドラ・デイ・オコナーも言っていますが、新しいことを試して、どのような結果が得られるかを実験する場所としては州が最適なのです。連邦政府は、こうした実験を実施している11州にちょっかいを出すべきではないのです。

最高裁判所が最も最近出した結論は、連邦議会にボールを投げ返して、法律を再吟味せよということです。 ジョン・ポール・ステバンス判事は、「医療カナビスの合法化を求める有権者の声が議会に届く日がいつか来るでしょう。すでに11の州では実現されているのですから」 と明解に語っています。