英科学技術委員会

ドラッグ新分類を提言


カナビスはアルコールやタバコよりも害が少ない

Source: BBC News
Pub date: 31 July 2006
Subj: UK: Drug classification rethink urged
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=11548


イギリス下院の議員で構成される科学技術特別委員会(House of Commons, Science and Technology Committee)は、新しいドラッグ分類についての提言をまとめ、31日に報告書 を公表した。

委員会は、現在のドラッグ分類が科学的評価ではなく古い仮説をベースにしていると指摘し、現行のABC分類をもっとドラッグの害そのものを反映したものに変更すべきだと提言している。

報告書の分類システムによると、違法ドラッグの一部はアルコールやタバコよりも害のレートが低くなっている。報告書では、分類にアルコールとタバコを加えたのは、一般の人たちが「害の比較を実感できる基準」として理解しやすくするためだと説明している。

また、政府のドラッグ政策に科学的助言をするために設けられた内務省ドラッグ乱用諮問委員会(ACMD)が、現行の評価システムの 「深刻な欠陥 」を変更するように大臣に進言せず、「職務をきちんと果たしていない」 と非難している。

現在の規制薬物は、所持や売買の罰則レベルを反映させたABCというカテゴリーをベースに分類しているが、フィル・ウイリス委員長によれば、この分類は、「変則的な例外規定にあふれ」、「明らかに目的に合致していない。」

最も害のあるとされるA分類には、ヘロインやコカイン、エクスタシー、マジック・マッシュルームが含まれている。次のB分類には、覚醒剤やバルビツール酸系睡眠薬が含まれ、カナビスや一部の精神安定剤はC分類になっている。


現行のABC分類



系統的で科学的なアプローチ

フィル・ウイリス委員長は、「正確で現状を反映した唯一の分類システムは、罰則規定との連動することをやめて、害だけに焦点を絞り」、個人の害とともに社会に対する影響を考慮して決めるべきだと指摘している。

「ドラッグの分類に対しては、もっと系統的で科学的なアプローチを採用する時期に来ている。証拠に基づかない言葉では、どのように言ってみても若者たちにきちんとしたメッセージを伝えることはできない。」

さらに、ラジオ番組のインタビューに答えて、「ドラッグ分類が採用された1971年当時はそれが正しかったと言えますが、それ以後、社会情勢は非常に大きく変化しています。また、ドラッグをA分類にしたからといって、やめた人は誰もいないのです」 と語っている。

委員会では、現行のABC分類を今回のドラッグの引き起こす害をベースに一連の表にした分類に置き換えるべきだと主張している。チャールス・クラーク前内務大臣も分類法の見直しを提案していたが、棚上げにされたままになっている。


アルコールとタバコは害のレベルの指標

今回提言された新しい代替システムは、ドラッグ分類に関する諮問委員会のシニア・メンバーであるブリストル大学デイビット・ナッツ教授とイギリス医学審議会の委員長であるコリン・ブレイクモア教授が専門家の意見をまとめたもので、20種類の合法および違法薬物について、身体的害、依存性、家族やコミュニティや社会への影響など9つのカテゴリーにわたって科学的に査定を行っている。

表によると、最も害の大きい上位5位は、A分類のドラッグ3種とB分類1種、残りはアルコールとなっている。また、タバコは9位、C分類のカナビスは11位になっている。

おそらく最も意外に思われるには、A分類に含まれているエクスタシーやLSDが下位にランクされていることだろう。この位置はタバコやアルコールや大半のBやC分類のドラッグよりもずっと下になっている。エクスタシーやLSDに関連した死亡事故も知られているが、直接の死亡原因であったかについては明らかになっていない。また、マジックマッシュルームで死亡したという報告も知られていない。

アルコールは合法であるが、新しいスケールでは高い位置にランクされている。これは、病院などの救急部門や成形外科を訪れる人の半数がアルコール関連で、また、しばしば暴力に発展したり、多くの自動車事故の原因になっているためだ。一方、タバコについても、病院に訪れる病気の40%、ドラッグ厚生施設の60%が関連していると見積もられている。

今回の分類ではアルコールもタバコもB分類に相当することになるが、ブレイクモア教授は、アルコールとタバコをランク表に入れたのは 「害のレベルの指標」 にするためだと語っている。「アルコールを禁止すべきだと言いたいわけではなく、害の比較指標として一般の人にも実感してもらえるようにするためです。」

Drug classification: making a hash of it?  (今回の報告書全文)
MPS Call for Drugs to be Classified on basis of Risk Factors (参照別記事)

Misuse of Drugs - List of drugs currently controlled under the Misuse of Drugs legislation (1971年ドラッグ乱用防止法および2001年ドラッグ乱用防止規則の対象になっているドラッグ・リスト)
Convention on Psychotropic Substances 1971 (UNITED NATIONS)