Weekly News

2007年2月15日


連邦議会、産業用ヘンプ農業法が再提案
カナビスの長期喫煙、呼吸器合併症は軽微で肺気腫は起こさず
コロラドの判事、カナビスの刑罰強化に抗議の辞職
カナビスの喫煙でHIVの神経障害疼痛が顕著に軽減
DEA判事、連邦の研究用カナビス独占供給体制に反対判決



●連邦議会、産業用ヘンプ農業法が再提案
2007年2月15日 - アメリカ・ワシントンDC発

ロン・ポール下院議員(テキサス、共和)は今週、9人の民主党議員と共同で、商用目的の産業用ヘンプの栽培を国が認可する権限を行使できるようにする法案を再提出した。ヘンプはカナビス・サティバの1種だが、精神活性物質THCの含有量が僅か(1%以下)しかなく、陶酔用カナビスとは 
明確に異なる品種 だとしている。

産業用ヘンプ農業法2007 と呼ばれる下院1009号法案では、連邦の規制薬物法を改めて、ごく僅かなTHCしか含まないカナビスを条文の「マリワナ」の定義から除外することを求めている。また、産業用ヘンプの商業製品をライセンスし規制管理する「独占的な権限」を国に認める内容になっている。

現在では、いくつかの州が、ヘンプの栽培を ライセンスして生産を認可 する州法を持っているが、それらの州でも農家は実質的に連邦の許可なしにはヘンプを生産できない。

議会調査部(CRS)が発行した2005年の 報告書 によると、「連邦麻薬取締局は、たとえ州法で認められた研究であっても、研究目的での小規模ヘンプ栽培要請に対してライセンスを認める意向を示そうとはしていない」 が、その理由として、当局は 「政府のドラッグに立ち向かう姿勢に対して、間違いなくアメリカ社会に悪いメッセージを送ることになる」 からだとしている。

下院1009号法案が通過すれば、こうした連邦のバリアが取り除かれ、ヘンプ生産に関する独占的な認可規制権限を国の法令が整うことになる。

「連邦政府がアメリカの農家のヘンプ栽培を妨げる合理的な理由はありません」 とポール議員は語っている。「産業用ヘンプ農業法が通過させることによって、下院議会はアメリカの農家を助け、納税者の税金を全く使わずに貿易赤字を減らすことができるようになります。」

議会調査部の報告は、「アメリカは、先進国の中で、産業用ヘンプを作物として認めていない唯一の国になっている」 と指摘している。カナダやEU諸国では、ヘンプを商業用に栽培して、繊維や種やオイルをさまざまな種類の産業用資材や食品などの生活消費財として利用している。

アメリカでも、NAFTA(北アメリカ自由貿易協定)やGATT(関税および貿易に関する一般協定)を遵守する立場から、とりあえず、ヘンプ繊維やヘンプをベースにした製品は合法的に輸入できるようにはなっている。



●カナビスの長期喫煙、呼吸器合併症は軽微で肺気腫は起こさず
2007年2月15日 - アメリカ・コネティカット州ウエストヘブン発

内服薬アーカイブ・ジャーナルの2月号に掲載されたレビューによると、カナビスの長期喫煙は、咳や痰、喘鳴といった呼吸器系の合併症を引き起こすリスクを高めるが、肺の機能を低下させることはないことが明らかにされた。

エール大学医学部の研究テームは、1966年から2005年までの間に発表された肺機能と呼吸器合併症に関するカナビス喫煙の影響を調べた研究を総合的に検証している。

その結果、気道過敏性や強制呼気量(FEV)などの測定データからは、短期的なカナビス喫煙では気管支拡張との関連は見られたものの、長期間のカナビス喫煙と気道閉塞(肺気腫)の関連を示すようなデータはなかったと報告している。

だが、研究者たちは、カナビスの長期的喫煙が、咳や気管支炎、痰、喘鳴などの呼吸器合併症のリスクを増加させることを見出しており、ほとんどの合併症は、タバコの喫煙による影響を補正除去した後でも残っている。

カナビスの長期喫煙に関しては、
以前行われたレビュー でも呼吸器合併症が起こると報告されている。しかし、カナビスの使用と肺や上気道消化管(UAT)のガンとの関連は 見つかっていない

筆者たちは、バポライザーなど特別の搬送システムを使ったカナビスの吸引では、別の結果が得られるだろうと指摘している。

バポライザーでは、カナビスに含まれるカナビノイドを180〜190℃で 蒸気の形態 に気化する。しかし、この温度では、カナビスは燃焼せず、発ガン性炭化水素などの毒による有害な煙が発生しないので、ユーザーは呼吸器系の毒を吸入しないようにすることができる。

薬理学ジャーナルに昨年発表された 臨床試験データ によると、喫煙による呼吸器へのリスクを回避しながら吸入による効果の迅速な発現を求める人にとって、バポライザーは「安全で効果的」なカナビノイド搬送システムだとしている。

「バポライザーでは、煙による呼吸器への悪影響を避けながらも、THCの肺への吸入量はカナビスを喫煙したときに劣らない」 と報告している。

For more information, please contact Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst, at (202) 483-5500.

Full text of the study, "Effects of marijuana smoking on pulmonary functions and respiratory complications: a systemic review" appears in the current issue of the Archives of Internal Medicine.

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7179


●コロラドの判事、カナビスの刑罰強化に抗議の辞職
2007年2月15日 - アメリカ・ワシントンDC発

コロラド州ボルダー郡の裁判所判事は、カナビス違反者に対する罰則を強化しようとして提出されているラファイエット市の条例に抗議して辞職することになった。

ラファイエット市のレニー・フリーリング陪席判事は、市議会がカナビスの少量所持に対する罰則を1000ドルの罰金と最高1年の懲役に改める条例を暫定的に認めたのにともない、8年間務めていた職から退いた。コロラド州の州法では、少量のカナビス違反は100ドル以下の罰金だけで懲役の対象にはなっていない。

「カナビスの所持に対する罰則が強化されることになれば・・・自分の道徳感や倫理感に反してまで市の判事として留まることはできないと決心した」 とフリーリング氏は辞表で表明している。フリーリング氏はNORMLの生涯メンバーで、同機関の 
法務委員会 の委員も務めている。

この法案をめぐっては、ラファイエット市議会は来週にも最終的な公聴会を開く予定になっている。

For more information, please contact Allen St. Pierre, NORML Executive Director, at (202) 483-5500
or visit: http://www.saferchoice.org.

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7178


●カナビスの喫煙でHIVの神経障害疼痛が顕著に軽減
2007年2月22日 - アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ発

神経学ジャーナルに掲載された臨床試験データによると、カナビスがプラセボに比較してHIVの神経因性疼痛を顕著に軽減し、利用にあたっては十分な安全性を持っていることが明らかにされた。

サンフランシスコ総合病院とカリフォルニア大学ペインクリニック研究センターの研究チームは、HIVに伴う感覚性神経障害に苦しむ50人の志願患者を対象に、カナビスの喫煙による効果を5日間の2重盲検プラセボ試験で調べた。その結果、低品質のカナビス(THC3.56%)であったにもかかわらず、1日3回の喫煙によって患者の痛みが34%軽減したと報告している。

「カナビス・シガレットを与えた無作為に選んだ25人のうち最終的に13人でベースラインよりに30%以上痛みが軽減したのに対して、THCが0%のプラセボ・シガレットの場合は25人のうち6人に軽減が見られただけだった」 としている。臨床的には、30%の痛みの軽減は著しい改善とみなされている。

さらに、「慢性的な痛みが1日目の最初のカナビス・シガレットで軽減した患者の割合は中央値で72%だったのに対して、プラセボ・シガレットでは15%の軽減にとどまった。5日目の最後の喫煙の直前では、その時点での慢性痛の強度の中央値もカナビス・グループはプラセボ・グループよりも低くなっていた。最後の1本を吸った後でさらに慢性痛が軽減した割合は、カナビス・グループが51%だったのに対してプラセボ・グループでは5%だけだった。」

結論では、「HIVに伴う神経障害に起因する慢性的な神経疼痛に対して、カナビスの喫煙は耐容性も良好で、経口投与型の薬と同じような経過で効果的な軽減をもたらした」 と書いている。

この研究を率いたサンフランシスコ総合病院のドナルド・アブラム博士は、HIV患者に対するカナビスの医療効果の可能性を調査するために、1994年以来、連邦政府に研究用の公式カナビスの供給を求めていたが、繰り返し 
拒否 され続けていた。今回の研究は、ここ20年間で、喫煙によるカナビスの効果を評価した臨床実験とすれば、アメリカで初めて行われたもの一つになっている。

この実験には、カリフォルニア大学 医療カナビス研究センター が資金を提供した。

カナビノイドを鎮痛剤として使った以前の臨床実験では、多発性硬化症糖尿病ガン関節リウマチ などに伴う神経障害の痛みを著しく軽減することが示されている。

神経障害性疼痛には、世界で人口の1%が苦しんでいると推計されている。この種の痛みに対しては、オピオイド系の薬やイブフロフェンのような非ステロイド系の抗炎症薬があまり効かないことが知られている。

For more information, please contact Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst, at (202) 483-5500, or California NORML Coordinator Dale Gieringer at (415) 563-5858.

Full text of the study, "Cannabis in painful HIV-associated sensory neuropathy," appears in the issue of Neurology.

Additional information about the study is available at: http://www.cmcr.ucsd.edu and on today's edition of NORML's daily AudioStash at: http://www.normlaudiostash.com

Source:  
http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7175


●DEA行政法判事、連邦の研究用カナビス独占供給体制に反対判決
2007年2月12日 - アメリカ・ワシントンDC発

連邦麻薬取締局(DEA)のメリー・エレン・ビッツナー行政法判事は、学術研究目的でのカナビスの自家栽培について、「公共の利益」に合致するものだという判断を示した。この判決は、マサチューセッツ大学アマースト校が連邦食品医薬品局(FDA)の認可した研究に使うためのカナビス栽培を認めるように申請したことに対して、2004年に麻薬取締局が 
拒否 したことは不適切だったと認定した。

ビッツナー判事は、「認可を受けた申請者の計画は、単一条約に矛盾するところはなく、申請を認めてもカナビスが別の目的に転用されるリスクはほとんどない。また、現在のところ研究目的に利用できるカナビスの供給が不十分で、そうした目的に使うカナビスの提供について争うことは不適切である。さらに、申請者は適用される法に従順で規制薬物に関連するいかなる法を一度も犯したこともない。従って、カナビスを栽培することに対する申請者の登録は公共の利益に合致している」 と結論を下している。

現在では、連邦が認めたカナビスの研究には、アメリカドラッグ乱用研究所(NIDA)が栽培し供給するカナビスを使わなければならないことになっている。これに対して、マサチューセッツ大学の申請 は、食品医薬品局が認可した臨床実験の使うカナビスを別の独立した供給源として提供できるように求めていた。

NORMLのアレン・ピエール事務局長は、この決定を歓迎して、「ビッツナー判事の判決は、研究用カナビスに関して長年続いてきたアメリカ政府の独占体制を打破する重要な第一歩と言えます。これが実現すれば、NIDAの供給する品質の劣った種類のカナビスを使って実験することを望まない臨床研究者や薬の開発研究者は、いずれ合法的な別の供給源に頼ることができるようになります」 と語っている。

最近では、カナビスの医療利用について臨床実験を計画しているアメリカ国内の研究者対して、NIDAがカナビスを提供したがらないという批判が起こっていた。これに対して、2004年、ノラ・ボルコウ所長が、「NIDAの使命はカナビスの医療利用を研究することではありません」 と書簡で 回答 を寄せている。

この回答を受け取ったNORMLの理事会のメンバーでもある サイケデリックス多分野研究連盟(MAPS)のリック・ドブリン 代表は、「今回の決定は、過去30年にわたり政府が妨害してきた科学研究が実施できるようになるための大きなステップです。もし、政府が判事の判決にNOと表明すれば、彼らの偽善的な対応が、むしろ国の医療カナビス政策の改革の動きを加速させる結果になると思います」 と述べている。

ビッツナー判事の判決に対する、麻薬取締局の異義申し立て期限は20日間になっている。その場合、判決は麻薬取締局のミッシェル・レオンハート副長官に委ねられることになり、判決が覆える可能性もある。当局の広報官は判決内容を検討して、異義申し立てするかどうか決定すると表明している。

For more information, please contact Allen St. Pierre, NORML Executive Director, or Paul Armentano, Senior Policy Analyst, at (202) 483-5500.

Text of Judge Bittner's ruling is available online at: http://www.maps.org/ALJfindings.PDF.
Additional information is available on today's edition of NORML's daily AudioStash at:
http://www.normlaudiostash.com

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7176