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2007年5月24日


タバコとカナビスの併用はタバコのみよりも肺に悪影響を及ぼす
カナビスの酩酊状態でも意思決定能力に悪影響はない
トッド・ミクリヤさんを惜しむ



●タバコとカナビスの併用はタバコのみよりも肺に悪影響を及ぼす
2007年5月24日 - アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ発

今週、アメリカ胸部学会の2007年国際カンファレンスで発表された臨床データによると、タバコとカナビスを日常的に併用している人では、タバコしか常用していない人に比較して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状がより悪化することが分かった。

カナダ・バンクーバーのセント・ポール病院の研究チームは、40才以上の人では、何も吸わない人に比べて、タバコのみを吸う人のCOPDリスクは2.5倍に増えるのに対して、タバコとカナビスを併用している人ではリスクが3.5倍になると報告している。

しかし、この報告では、カナビスのみを喫煙している人のCOPDリスクが、ノンユーザーよりも高くなるかどうかについては触れていない。

内科医学アーカイブの最近号に掲載されたメタ分析研究では、長期的なカナビス使用は、咳や痰や喘鳴といった呼吸器官の合併症のリスクは高まるものの、
呼吸器官の機能低下は起こらない と報告している。

また、今回のカナダの研究では、カナビスをバポライザーで吸引している人の場合、タバコとの併用の悪影響が減るかどうかについても触れていない。

サンフランシスコ総合病院の研究チームが先月発表した報告では、ボルケーノ・バポライザー装置を使ってカナビスを吸引すると、ガス化された燃焼毒や一酸化炭素の流入が 際立って減る ことが示されている。また、アルバニー大学で行われた別の研究でも、年齢・性別・タバコの使用の有無などの交錯因子を補正した後では、バポライザーを使っているカナビス・ユーザーでは、使っていないユーザーに比較して 呼吸器系の障害が大幅に少なくなる ことが報告されている。

発がん性のある炭化水素を含んだ毒性のある煙は230℃以上になると発生するが、バポライザー装置では、活性のあるカナビノイドを180〜190℃で気化して蒸気にして吸引するようになっているので、燃焼毒は生成されない。


For more information, please contact Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst, at: paul@norml.org.

Abstracts of the study, "The impact of cigarette and marijuana smoking in a chronic obstructive lung disease study in Vancouver, Canada," are available online at: http://www.thoracic.org/.

Additional information on the impact of cannabis smoking on the lungs is available in the NORML white paper, "Cannabis Smoke and Cancer: Assessing the Risk," available online at: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=6891

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7270


●カナビスの酩酊状態でも意思決定能力に悪影響はない
2007年5月24日 - アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク発

臨床・実験神経心理学ジャーナルに掲載された臨床実験データによると、経験の深いカナビス・ユーザーは、素面のときと同様に、カナビスを吸った後でも正確に作業を行っていることが明らかになった。

ニューヨーク州立精神医学研究所とコロンビア大学の研究チームは、36人の被験者を対象に、アイオワ・ギャンブル・パフォマンス・テスト法を使って、意思決定能力に対するカナビス酩酊の影響を調べた。被験者はテストを素面の状態で1回受けた後に、カナビスまたはプラセボを吸った状態でのテストを3回受けた。

その結果、カナビス酩酊状態では与えられた作業を完了するのにかかる時間は増加したものの、作業の正確性についてはネガティブな影響は見られなかった。

「アドバンテージのあるカードの選択と得られる金額の評価について調べたところ、カナビスで支離滅裂になるようなことは見られなかった・・・過去の調査データでは、テストの正確性は別にして、作業に早さについて見た場合にカナビス酩酊状態ではネガティブな影響を受けることが示されていたが、今回のデータでも結果は一貫している」 と結論を書いている。


For more information, please contact Paul Armentano, NORML Senior Policy Analyst, at:
paul@norml.org.

Full text of the study, "Acute effects of smoked marijuana on decision making, as assessed by a modified gambling task, in experienced marijuana users," appears in the Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology.

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7271


●トッド・ミクリヤさんを惜しむ
2007年5月24日 - アメリカ・ワシントンDC発

カナビス治療の世界的権威に一人として著名な 
トッド・ヒロ・ミクリヤ 医師が、長年のガンとの闘いのすえに5月20日の日曜日に亡くなった。73才だった。

ミクリヤ医師は、1967年に連邦精神衛生研究所でカナビスの研究主任に任命されて以降、40年以上にわたってカナビスの医療利用の研究にたずさわってきた。

1972年には、西洋社会でのカナビスの医療利用について書かれた歴史的論文やエッセーを集大成した 『マリファナ:メディカル・ペイパーズ 1839-1972』 を出版している。その後は、カナビス法改革運動に積極的にかかわり、1975年には、カリフォルニア議会に働きかけてカナビスの所持の非犯罪化を成立させる中心的な役割を果たした。

ミクリヤ医師は、不安、うつ、外傷後ストレス症候群、アルコール中毒などさまざまなの心身の疾患の治療にカナビスを利用することを積極的に推奨し、現在のカナビス運動家の中でも特筆する存在になった。

また、1996年のカリフォルニア医療カナビス住民条例215発議の草稿に加わり、医者がカナビスを推薦することを認める疾患の対象として 「カナビスによって癒されるすべての疾患」 という句を入れて称賛を浴びた。この句は、その後に成立した各州の医療カナビス法の中でも類例のないものになっている。

医療カナビス215住民条例が通過してからは、医療カナビスの推薦状を勢力的に発行する医師の一人となり、成立後10年間でカナビスをすすめた患者は9000人あまりに達した。だが、この姿勢を快く思わないカリフォルニア州政府の医師管理委員会や連邦政府から頻繁に攻撃を受けることにもなった。

2006年には、ミクリヤ医師は、ライフワークを通じて医療カナビスの合法化を支持したことを讃えられて、カナビス法改革に際立った貢献をした人に贈られるNORMLの 「レスター・グリンスプーン賞」 を受賞している。

カリフォルニアNORMLのデール・ゲイリンガー代表は、「トッドさんは、カナビスの医療利用に関する真のパイオニアでした。禁止法の影響でカナビスの医療利用が途切れた時代もありましたが、トッドさんは、忘れられていたカナビスの医学文献を再発見し、薬局方に戻すように積極的に訴えかけました。その後、215条例の草案作りに加わって、その実現のためにキャンペーンを繰り広げ、成立してからは、医療カナビスの現代的な応用分野のさらなる拡大に努めました」 と語っている。

NORMLは、トッド・ミクリヤさんのご家族や友人の方々に謹んでお悔やみ申し上げます。


A NORML AudioStash tribute to Tod Mikuriya's work and legacy may be downloaded at: http://audio.norml.org/audio_stash/NORML_Daily_AudioStash_05_23_2007.mp3

Source:  http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7272