医療カナビスに民事裁判の可能性

患者の共同栽培をめぐる親展開

Source: Chico Enterprise-Record (CA)
Pub date: June 9, 2007
Subj: Medical marijuana suit could break new ground
Author: Heather Hacking/MediaNews Group
http://www.mapinc.org/norml/v07/n699/a10.htm


サンフランシスコの北150kmにあるビュート郡チコの州最高裁判所で、医療カナビス事件を民事裁判で争えるかどうかという裁判が行われている。この訴えは、医療カナビスを押収されて破棄された人から、当局側に損害賠償を請求する民事裁判を起こすための前段階として起こされた。

金曜の朝に始まった裁判の冒頭で、バーバラ・ロバート裁判官は、「ここでは、前例のない全く新しい決定を求められている」 と語った。

この事件は、二人とも医療カナビスの処方を受けているデビッド・ウイリアム夫妻が、郡保安官代理から、栽培しているカナビスの本数が多すぎるとして押収されたことで始まった。ウイリアムさんは、「コレクティブ・メディカル・ガーデン」 で、他の5人患者からの依頼も含めて42本のカナビスを栽培していた。

医療カナビスとその研究の支援運動を展開しているアメリカン・フォー・セーフアクセスのジョー・エルフォード弁護士によれば、コレクティブは2002年3月に立法化されて認められていると言う。

医療カナビスの栽培を規制はそれぞれの郡の政策にまかされているが、もともと州法の 「コレクティブ」 の定義は曖昧で、州内の58郡でも明確に定義付けしているところはない。

大半の郡では、医療カナビス登録患者ひとりあたり、最高で6本の成熟植物と6本の未成熟植物の栽培まで認められている。ビュート郡では、それに加えて1ポンド(450g)までのカナビスの所持も認められている。(郡保安官事務所の ウエブサイト には、医療カナビス政策に関する詳しいガイドラインも掲載されている。)

ウイリアムさんのケースでは、郡保安官代理が彼と妻のふたり分の12本を除いて残りを放棄するように求めた。ウイリアムさんはこの命令に従い、刑事訴追はされなかった。しかしながら、その後、ウイリアムさんは、その損害の賠償を求めて郡を相手に民事訴訟を起こした。

エルフォード弁護士によれば、コレクティブの構成要件についての意見は分かれていると言う。一部の郡では、患者の代わりに栽培できるのは、患者の身の回りの世話や介護を直接行っている「主介護人」だけだとしている。

ビュート郡の弁護士事務所でも、郡を弁護する立場から、介護人以外の人の栽培は州の医療カナビス215条例では認められていないという見解を取っている。

弁護士事務所のブラッド・ステファン補佐官は、医療カナビス栽培事件を民事で争うのは住民投票で成立した条例の精神に反するもので、認定患者が守られるのは刑事訴追だけに明確に限られている、と語っている。

続けて、条例では、医療カナビスの使用については非常に限定的に書かれており、もし、民事でも争えることになってしまえば、当局を訴える新しい糸口になり、かえって、現在のように植物を破棄することで大目に見ている状況から、当局側は厳しく対処するようになって刑事訴追するようにになってしまう、と指摘している。

さらに、しばしば当局側にとっても、患者個人が使う植物の本数については、販売に回されている部分があるかどうかの判断が難しいことがあり、きちんとした基準を設ける必要がある、とも語っている。

これに対してエルフォード弁護士は、患者たちの間で、収穫物が破棄される恐れなく医療カナビスの栽培を都合し合えるようにするために、民事事件として扱えるようにすることが重要だと指摘している。

ロバート裁判官は、今後数ヶ月で、民事事件として扱えるかどうかを判断するものと見込まれている。

スペインでは、2006年8月に行われた裁判で、カナビスを共同で育てるカナビス・クラブの合法性が確定している。
スペイン、カナビス栽培クラブの合法性が確定、ベルギーでも追随の動き  (2006.8.20)

EUの対応は、違法ドラッグの商業売買については、国連条約やEU法に基づいて訴追する加盟国が義務を負うものの、個人使用を目的に結成された消費者組合に対してはその義務はない、という立場を取っており、規制するかどうかはそれぞれの国に委ねられている。

こうしたことから、ヨーロッパではカナビス・クラブの結成の動きがでてきている。カリフォルニアのコレクティブの事情とはだいぶ異なるが、カナビス・クラブが単一条約などの国際条約の制約を受けないという事実は、コレクティブの動きとして今後の展開が注目される。

カナビス・ソーシャル・クラブ