ニュー医療カナビス・コネクション

連邦の妨害に挑戦するニューメキシコ州政府

Source: ABC News
Pub date: July 5, 2007
Subj: New Mexico's Pot Connection
Author: Brittany Bacon
http://www.mapinc.org/norml/v07/n805/a03.htm


ニューメキシコ州は、アメリカで医療カナビス法を持つ12番目の州として今月から法律が発効したが、自らカナビスの栽培と配付を行うのは最初の州になる。しかし、いったんカナビスの種を蒔けば、連邦麻薬局(DEA)に封鎖される可能性をはらんでいる。

民主党の大統領候補でもあるビル・リチャードソン知事が今年の4月に医療カナビス法に署名し州法となったが、その中で、10月1日までにカナビスを栽培して患者に配布する仕組みを整えるように州保健局に求めている。この新しい州法は、州法に拘束されない連邦法と正面から対立することになる。連邦法では、いかなる目的であれカナビスの栽培を強く規制しているからだ。

州のゲイリー・キング法務長官でさえこの計画の将来を保証していない。「この件に関しては、私たちは何の後ろ盾にもなれません。私たちが求められている仕事にはこの問題は含まれていませんし、法務長官の扱える守備範囲でもありません」 と法務長官事務所のフィル・シスネロス公報担当官は牽制している。

彼は、州法では、カナビスの使用者や供給者を連邦法の訴追から守ることは保証できないと言う。これは、カリフォルニア州の医療カナビス・クラブの状況を見れば明らかで、連邦の麻薬捜査官は、医療カナビス患者以外の誰にでもカナビスを販売しているとして何十というクラブを家宅捜査して閉鎖に追い込んでいる。

ドラッグ関連の法律の緩和を求めてロビー活動を展開しているドラッグ・ポリシー・アライアンスの法律担当責任者のダニエル・アブラハムソン氏は、「これは政治的な問題で、病気の人たちに医療カナビスを提供しようとしている州の試みを止めさせるために、連邦政府が当局にどれだけリソースを注ぎ込もうと考えているかにかかっています」 と指摘する。


煙が立ちこめる州法の先行き

アブラハムソン氏によれば、州が確実に連邦の訴追を免れることができるのは、患者や介護者に対して自分でカナビスを栽培するように認めた場合に限られている。しかし、州自身がカナビスの栽培者や供給者になった場合は連邦法と衝突することになる。

ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)のラファエル・ルメートル広報官は、連邦のカナビス法では、大学の研究が免責の対象にはなってきたが、ニューメキシコ州の計画には当てはまらないだろうと述べている。

連邦法では、カナビスの製造・所持・配付を規制している規制薬物法で免責を得るには、それを麻薬取締局(DEA)に登録することが義務付けられている。

DEAのガリソン・コートニー広報官は、登録認証にあたっては、それが何というドラッグで、どのような目的で使われ、さらにセキュリティ・コントロールがどうなっているかについて審査することになっていると言う。だが、これまでDEAはカリフォルニアなどで、一見セキュリティが厳重で合法的に見えても実際は患者以外にもカナビスを販売していた医療カナビス・クリニックを何軒も手入れしてきたと指摘する。

通常、DEAが対象としているのは大規模なドラッグ取引で、個人ユーザーについては大半が地元の州当局に任されているが、連邦政府側から見れば、ニューメキシコのシステムがいかなるものであれ、その先行きは不透明だとコートニー広報官は話している。


カナビスをめぐる政策議論

ニューメキシコ州保健局は、厳格な取扱いと徹底した品質管理がされたセキュアで確かな供給元から医療カナビスを提供して、患者自身がブラックマーケットでカナビスを買うような苦労と屈辱をさせないようにすることが目標だと表明している。

「カナビスを使ってもよいと言いながら、合法的に入手する方法を用意せずにドラッグ・ディーラーに頼るなど、ナンセンスとしか言いようがありません」 とドラッグ・ポリシー・アライアンス・ニューメキシコ支部のリーナ・シチェパンスキー代表が言う。彼女は、この3年間、患者さんが地元の薬局で安全に適正な価格で医療カナビスを買える日がいずれ来ることを願って、新しい法律の制定に向けてロビー活動を展開してきた。

だが、連邦の関係者のなかには、これまでに医療カナビス法を通過させた11の州が、社会に悪いメッセージを送る結果になっていると批判する人もいる。

ONDCPルメートル広報官は、医療カナビス法を持つ州、特にカリフォルニアでは甚だしいシステムのでたらめな運用を招いていると指摘して、「この問題は、医師が患者の痛みを緩和しようとするのとは関係ありません。病気で苦しみ死にそうな人たちを隠れ蓑にして、ドラッグの合法化を目論むグループが言い立てていることなのです」 と批判する。

例えば、カリフォリニアの北ハリウッドでは、現在、医療カナビス・クラブの数はスターバックスの店よりも多くなっている。ほんの2年前にはロスアンジェルス全体で4軒のカナビス・ディスペンサリーしかなかったが、今年の数はすでに100軒を越えていると広報官は言う。

一方、医療目的でカナビスを使っている人たちは、ニューメキシコの州法のやり方を待ち望んでいる。先日放送されたABCニュースでは、多発性硬化症で医療カナビスを使っている女性が、「州によって管理された配布システムができることは非常にありがたいことです。これでギャングと取引しないで済むようになります。いままではディラーを見つけられなくて痛みを抑えることもままならなかったのですから」 とほっとした面持ちで語っていた。

今月の一日から始まったニューメキシコの医療カナビス・プログラムでは、IDカードの登録を受けた認定患者は、3ヵ月分で最高6オンスまでのカナビスを所持していても州からは訴追されないことになっている。

認定を受けるためには、ガン、緑内障、多発性硬化症、脊椎神経損傷に伴う重度のけいれん、てんかん、HIV・エイズで苦しみ、医療カナビスによるリスクよりも恩恵のほうが多いと主治医に認めてもらう必要がある。

「これは温情政策の問題なのです。ブッシュ政権がイラクでの戦争にますますのめり込んでいるこのような時にこそ、このシステムが生き延びてほしいと思っています」 とドラッグ・ポリシー・アライアンスのアブラハムソン氏は語っている。