イギリス・ブラウン首相

カナビスの分類再見直しを表明

CからB分類へ戻して罰則強化を

Source: Guardian Unlimited
Pub date: July 18, 2007
Subj: Brown announces fresh review into cannabis classification
Author: Haroon Siddique and Matthew Tempest
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12700


イギリスのゴードン・ブラウン首相は、本日、カナビスの現在の法的分類が危険性に見合っていないとして分類を再検討すると表明した。

現在、カナビスは刑罰の軽いC分類に区分されているが、2年前にもB分類に戻すべきかをめぐって見直しが行われている。その時は最終的に再分類は行われなかったが、今回、首相は質問に答えて再度検討することを約束した。

ブラウン首相が6月27日に就任して以来今回が議会での7回目の首相質問になるが、この決定は、先週のスーパーカジノ問題に続づく大きな政策見直し発表になる。

議会の夏休みを1週間後に控えたこの時期にもかかわらず、昨日、さまざまな政策方針に混じって犯罪減少政策が出されたばかりだったが、本日さらにカナビスの分類見直しまで言及したことについては驚きを持ってむかえられた。

また、ブラウン首相は、ジャッキー・スミス内務大臣がドラッグ戦略を再検討するためのパグリック・コメントを聞くための文書を来週中に出すことになっていると述べた。

「内務大臣のパグリック・コメントでは、ドラッグ教育についての改善や治療を受けている人々への支援、さらに、ドラッグ・ディーラーを追い出しだいと考えているコミュニティへの支援などについて意見を聞くことになっています。」

「昨日の閣議ではパグリック・コメントについての議論もおこなわれましたが、カナビスを現在のC分類からB分類に移すべきかどうかをドラッグ乱用諮問委員会(ACMD)に諮問することについても話し合っています。」

カナビスは、2004年に当時のデビッド・ブランケット内務大臣によってC分類にダウングレードされたが、それまではB分類に区分されていた。B分類のドラッグは、C分類に比べて、所持の罰則が厳しく懲役期間も長くなっている。

前保守党党首のイワン・ダンカン・スミス氏が昨年発表した「ブレイクスルー」報告でも、カナビスの分類を戻すことを提唱していた。

今回の見直し議論は、効力の強いカナビスのスカンクが精神病を引き起こすという懸念が背景になっている。2005年には、11才から17才の未成年1万人がカナビスの使用が原因で治療を受けており、その数は10年前の10倍になっている。

最近では、カナビスの活性成分であるTHCが高濃度に含んでいる植物の栽培が増加しており、そのために、中毒になりやすく、短期的な記憶減退、不安、統合失調症のトリガーになるパニックなどさまざまな症状が起こりやすくなってきている。

前内務大臣のチャールス・クラーク氏も2005年に見直しを諮問しているが、ドラッグ乱用諮問委員会は状況の変化を認めたものの、結局は分類の変更を必要とするほどではないという結論になった。

ドラッグ政策について提言しているトランスフォーム・ドラッグポリシー・ファンデェーションのダニー・クシュリック代表は、むしろカナビスの使用を禁止しないほうがよりコントロールが可能で管理ができると指摘して、ブラウン首相は大衆受けを狙っているだけに過ぎないと非難している。

「悲しいかな、科学的な事実は何も考慮しないで、すべてを反ドラッグに最も声高な人に委ねようとするダッチ・オークション状態になってしまっているのです。・・・新しいエビデンスは何も出てきていないのに、これがブラウン首相のドラッグ政策についての最初の議会声明なのですから、全く恥ずべきことです。」

メンタルヘルス・チャリティであるリシンクのポール・コリー代表は、カナビスの危険性についてもっと警告する必要があると強調しながらも、政府のやり方については間違ったところにエネルギーを注いでいると指摘している。

「カナビスを再分類しようとする試みは、いかなるものであれ時間と資源の浪費にしかなりません。エビデンスはどれも精神病のリスク を示していますが、また刑事システムで対応してもうまくいかないことも示しています。必要なのは、長期にわたって継続した公衆衛生キャンペーンを実施することなのです。」

「また、最も好ましくないのは、精神病になりやすいリスクを抱えた人たちを犯罪人扱いすることです。」

イギリスのカナビス政策を理解するうえで押さえておかなければならないのは、違法ドラッグが、危険と処罰刑量を組み合わせたABCの3分類で管理されていることだ。各ドラッグは、その時代の状況や要請によって属する分類が変更できるようになっている。

この変更は、法律の改正によるものではなく、科学者や医学関係者からなるドラッグ乱用諮問委員会(ACMD)の答申を経て、最終的には内務大臣一人の意志決定によって行われる。



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