オランダのドラッグ問題対処法

Source: Expatica
Pub date: 15 Aug 2007
Subj: Dealing with drugs the Dutch way
Author: Natasha Gunn
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12791


オランダは、嗜好ドラッグに対して、他の国では見られないようなリベラルな政策を取っていることで知られているが、ドラッグのリスクを減らすための予防対策においてもユニークな姿勢を取っている。


オランダ最大のドラッグ問題は若者の飲酒

オランダで現在最も使われているドラッグはアルコールだが、最近大きな問題になっているのは、飲酒を開始する年齢が若くなっていることだ。

「アルコールを開始するには11才から14才で、週に1回は飲むようになるのは13才から16才の中学生のころからです」 とロエル・ケルスマーカーさんは言う。

彼は、アルコールやドラッグやギャンブルで問題を抱える人たちの治療を行っているジェリーネック協会で、シニア予防指導員を務めている。ジェリーネック協会には、アムステルダムを中心に、ヒルヴェルスム、カストリカム、テクセルなどにも支部がある。

「アルコールとカナビスを比較すると、16才の場合、最近1ヵ月間にカナビスを使った答ている生徒が15.6%なのに対して、アルコールでは77%にもなっています。」

ヨーロッパ・ドラッグ監視センター(EMCDDA)の報告書によると、1997年から2005年の間では、オランダ人の15才から64才までのカナビス、コカイン、アンフェタミンの最近1年間の使用率がほとんど横ばいなのに対して、テーンエイジャーのアルコール使用率だけが増加している。

この理由について、ハーグ、デルフト、ゴーダ、ライデン、ズーテルメールなどでドラッグの予防と治療を行っているパルナッシア協会のオードレイ・ウェイク予防指導員は、個人主義的傾向が強まって社会のコントロールやコミュニケーションが希薄になったことが、若者のアルコール使用の増加を招いていると指摘する。

「世の中の変化が早くハードになって、その流れにのるにはタフであることが要求されるようになってきています。人々はコンピュータを通じてバーチャルな生活をするようになって、親たちも子供の実生活をコントロールできなくなってきています。それに、家族同士のネットワークが弱くなったことも関係していると思います。」

若年層のアルコール問題に対処するために、遅ればせながらオランダでも他の大多数のEU諸国と同様に、ラジオやテレビでの夜9時以前のアルコールの宣伝を一部または完全に禁止することが今年になってから検討が始まり、6月には、政府も、ビールなどの飲酒最低年齢を16才から18才に引き上げる かどうかを決定する権限を地方自治体に与えることに同意している。

また、これまでの法律では、許可年齢未満の若者にアルコールを販売した場合は、販売店やカフェのオーナーだけが罰せられたが、今後は、本人が買ったり所持していた場合にも罰則を適応することも検討されている。


カナビスへの取組み

アルコールに次いでオランダ人が使っているのは相変わらずカナビスで、さらにエクスタシーが続いている。

生徒たちがカナビスを使い始めるのは14才から16才で、1996年から2003年までの間では変化していないが、ケルスマーカーさんは、「カナビスやそのリスクに対する世間の見方は、現在ではより現実的になってきています。カナビスは中毒になったり、喫煙が肺にリスクになるという認識が定着してきていますし、リスクについての情報も整ってきています。もちろんドラッグ教育でも教えています」 と話している。

リスクが現実のものとして認識されるようになってきたのは、おそらく、カナビスの中毒で助けを求めてくる若者の人数が増加している ためで、親たちも子供も、オランダのカナビス(ネダーウィード)が強くなってきていることを知る必要がある、とウェイクさんは言う。

研究では、ネダーウィードのTHCは輸入ものに比較すると14〜20倍も多いされている。オランダのホームグローン・カナビスのTHC平均濃度がピークになったのは2003年の20%で、その後2004年と2005年では18%で横ばいになっている。

ケルスマーカーさんは、「学校に通っている12才から18才では、9%が最近1ヶ月以内にカナビスを使ったと答えています。また、そのうちの20%、つまり全体のおよそ2%が1ヶ月に10回以上吸っています」 と言う。


必ずしもオランダのドラッグ使用率は高くない

オランダでは、ヘロイン、コカイン、クラック、アンフェタミンを使っている問題を起こしている長期ユーザー数は、住民1000人あたりで2.2から4.3人になっている。これに対して、イギリスの数字は8.9〜9.7人、スペイン7.1〜9.9人、オーストリア5.4〜6.1人、スエーデンではアンフェタミンのユーザーが大半で4.5人、フランス3.8〜4.8人、ドイツでは1.2〜3.0人になっている。

ケルスマーカーさんによると、15才から64才までのオランダ人で最近1ヵ月以内にカナビスを使った人は3.3%になっている。「この数字を他の国と比較してみますと、スペインが8%、オーストリア4%、アイルランド3%、ベルギー3%、ノールウエイとフィンランドが2%、アメリカでは10〜14%になっています。」

「また、15才から64才までのオランダ人で過去1ヶ月以内にエクスタシーを使った人は0.3%で、12才から18才の未成年に限れば1.2%になっています。クラブのメンバーになっている人では、昨晩はエクスタシーを使いましたか? という質問に8.2%がイエスと答えています。」


エクスタシーの70%はオランダ産

世界中で押収されたエクスタシー錠の約70%がオランダで製造されたもので、1億1200万錠から2億2400万錠になると見積もられている。ヨーロップのアンフェタミンとエクスタシーの流通は、輸出先のギャングと共同しながら、オランダの犯罪組織によってコントロールされている。(Huisman 2005)


選択のための情報提供

ドラッグの使用数を下げるためにオランダが採用している方法の要には、予防教育にあるように思える。

オランダのドラッグ教育では、個人の弾力的な対処能力を向上させて、いかにして一時的な感情や回りからのプレッシャーを上手に回避して自分の意思で選択するかを教えることに重点が置かれている。

このアプローチが最も効果的であることが証明されている、とケルスマーカーさんは言う。「リスクについては、あらゆる先入観を排して、科学的事実にもとづいた中立的で客観性のある情報を教えています。その上で、一人一人が自分で選択したことはそのまま受け入れています。」

オランダのこうした予防法と違う方法としては、恐怖話で警告するやり方や、編集したビデオなどで事実を見せる方法があると言う。


コーヒーショップのAHOJG規制

オランダでも、カナビスは一応違法にはなっているが、コーヒーショップでカナビスを売ることは黙認されている。しかし、コーヒーショップはAHOJGという規律を守ることが求められている。

Aは広告の禁止、Hはハードドラッグの販売の禁止、Oは迷惑や暴力の禁止、Jは18才未満の入店禁止、Gは1人1日5グラム以上の販売禁止を意味している。その他にも、アルコール販売の禁止や500グラム以上の在庫禁止などがあり、地域によっては、学校や国境近くの出店を禁止しているところもある。

「販売取引目的と個人使用目的の区別は、所持している量によって決められています。カナビスなら5グラム以下、ハードドラッグの場合は0.5グラムか1錠までが個人使用目的とみなされますが、それ以上所持していた場合にはディーラーとして扱われます」 とケルスマーカーさんは言う。


マジックマッシュルームは禁止させる?

オランダ政府は近々、マジックマッシュルームをどう扱うかについて新しい政策を出すことになっているが、ケルスマーカーさんによると、全面的に禁止 するのではなく、販売しているヘッドショップに新しい規制を設けて、18才未満への販売禁止や未成年店員採用の禁止、販売にあたっては使い方についての適切な情報を提供することなどが義務づけられる方向でまとまるのではないか、と言う。


予防効果の高いドラッグ分析サービス

ケルスマーカーさんとウェイクさんは、ジェリーネック協会やパルナッシア協会で提供している ドラッグ分析サービス が効果を上げていると強調している。

ドラッグ分析サービスは、マーケットで売られているドラッグの種類や品質を調べるサービスで、ユーザーが自分の持っているドラッグの調査を依頼すれば有料で分析してくれる。

ケルスマーカーさんは、このサービスを行うことで、生産者が危険なドラッグを市場に出さないように牽制する効果があるという。2006年にジェリーネック協会で調べた錠剤のうちで全くエクスタシーを含んでいない向精神薬は6.7%だけだったのに対して、80%がエクスタシーを含んだもので、1錠の平均含有量は74mgになっている。


オランダのドラッグ情報ウエブサイト(英語)

Report on the Drug Situation 2006 written for the European Monitoring Centre of Drugs and Drug Addiction (EMCDDA). (in PDF-format)

Netherlands Institute of Mental Health and Addiction
http://www.trimbos.nl/

Ministry of Health, Welfare and Sports
http://www.minvws.nl/

Ministry of Justice
http://www.justitie.nl

Jellinek Addiction Care Amsterdam
http://www.jellinek.nl
Reducing risks 窶 Cannabis
Reducing risks - Magic mushrooms

Centre for Drug Research, University of Amsterdam
http://www.cedro-uva.org

Municipal Health Service of Amsterdam
http://www.ggd.amsterdam.nl/

Statistics Netherlands
http://www.cbs.nl/

HIV Monitoring Foundation (HMF)
http://www.hiv-monitoring.nl/