カナビスがアレルギー性皮膚炎を緩和

国際研究チームが分子メカニズムを解明

Source: RxPG News
Pub date: 17 Aug 2007
Subj: Role seen for cannabis in helping to alleviate allergic skin
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12793


ドイツ、イスラエル、イタリア、スイス、アメリカの国際研究グループは、カナビスの生成する物質が、体に自然に備わった保護機構を助けてアレルギー性(接触)皮膚炎の症状を緩和することを明らかにした。

アレルギー性皮膚炎は、特定の物質が皮膚に直接接触することで起こるが、アレルゲンとなる物質にはさまざまなものがある。通常、それらの物質は大半の人には何の問題も引き起こさないが、皮膚が過敏であったりアレルギー体質だったりすると、わずかな接触でも発疹ができて、時には非常に深刻な状態になる。先進工業国でアレルギー性皮膚炎になる人は男性で5%、女性で11%で、職業病としては最も多い一つになっている。

ドイツのボン大学のアンドレア・ツインマー博士に率いられた国際チームは、先頃、体内のエンドカナビノイド・システムがアレルギー性皮膚炎を緩和するという論文をサイエンス・ジャーナルにを発表した。チームには、カナビノイド研究で著名なイスラエル・ヘブライ大学薬学部のラフェエル・マッカラム教授も加わっている

マッカラム教授の研究グループは、以前の研究で、体内で生成される2種類のカナビノイドを発見し分離に成功している。その一つは脳から見つかったものでアネンダミドと命名された。アナンダミドという名前はサンスクリッド語のアーナンダから付けられたもので、法悦を意味している。もう一つの物質は、腸で発見されたもので2AGと呼ばれている。

これら2種類の内因性カナビノイド(エンドカナビノイド)は、そのレセプターと反応して、さまざまな酵素を結合したり分解したりするエンドカナビノイド・システムを形成している。カナビスから製造されるハシシやマリファナの活性成分は、体内に摂取されるとエンドカナビノイドと同じような働きをすることが知られている。

エンドカナビノイド・スステムについては、世界中のグループが研究に取り組んでおり、体内の生理過程の多くに関与していることが明らかになっている。哺乳類の体に備わっている防御反応もその一つで、多発性硬化症、アルツハイマー、パーキンソン病などの神経性の疾患などさまざまな病気や症状に関係している。

今回発表された論文では、マウスを使った実験で、エンドカナビノイド・システムがどのようにして、皮膚接触過敏症の調整に主要な役割を果しているのかを詳細に説明している。例えば、カナビノイド・レセプターの欠如したノックアウトマウスでは、アレルゲンで炎症を起こす皮膚反応が促進されることが示されている。

こうしたデータは、エンドカナビノイド・システムの活動を刺激することで皮膚の接触過敏症を抑えることができることを示唆しているが、研究者たちは、カナビスの活性成分であるTHCなどを動物に投与してアレルギー反応を調べた結果、未投与のマウスに比較して著しくアレルギー反応が減ることを確認している。

さらに、レセプターのないノックアウトマウスで皮膚の過敏が大きくなることを分子レベルで調べるために、一連の実験を行ったところ、マウスの皮膚細胞がケモカインという特殊な化合物を生成して過敏症を起こしていることを発見した。また、エンドカナビノイド・システムを活性化させた皮膚にアレルゲンを接触させた実験では、ケモカインの生成が抑えられてアレルギー反応が低下することも明らかにされた。

今回の結果は、皮膚の接触アレルギーに対して、エンドカナビノイド・システムが保護機能を果たしていることを明確に示しており、カナビスから生成したカナビノイド化合物をベースにした薬を開発すれば、治療効果が飛躍的に高まる可能性がある。





偽薬ではなかった

古来からのカナビス皮膚ローション

Source: Earth Times
Pub date: 25 Jun 2007
Subj: Granny's cannabis skin ointment really did work, new study shows
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12648


100年前、カナビス抽出液は湿疹やアレルギー性の皮膚炎用の家庭常備薬として薬局で市販されていた。だがその後、にせ薬だとして市場から追いやられた。

しかし現在になって、ドイツの研究者たちが、カナビスによって本当にかゆみやアレルギー性の皮膚発疹が軽減されることを再発見し、グラニー時代の家庭常備薬を再評価するように呼びかけている。

研究はマウスを使って行われたもので、炎症を起こした皮膚に対する新しいカナビス・ベースの薬の治療可能性を調べている。

炎症治療用のカナビス抽出薬は20世紀のはじめ頃までは薬局でも販売されていたが、カナビスのハイが暴力を引き起こすという恐怖が語られ出すようになると、未認定の医薬品の効能に疑いが持たれるようになって1930年代に事実上販売が禁止された。

今回の研究で、かつて湿疹の治療にカナビス溶液を使っていたハーブ愛好家たちがその効果を本当に知っていたことが明らかになった。また、カナビス・スキン・ローションにすれば、カナビスのハイをもたらすよりもはるかに少ない量で安全に効果が得られることも分かった。医薬品として復活する可能性も十分あることも示された。

ドイツのボン大学の研究チームは、以前にマウスの脳の研究をしている時に、偶然カナビスの活性成分であるTHCに抗炎症作用があることに気づいていたが、今回も、THCなどのカナビノイドに反応しない遺伝子操作マウスを使った実験で耳にクリップを挟んだところ、予期せぬことに皮膚は赤くなり痛みが起こっていることを見つけた。

こうした結果から、研究者たちは、カナビノイドがブレーキのように働いて、免疫システムがコントロールを失って炎症を引き起こすことを防いでいるに違いないと確信するようになった。

この20年間に、脳がTHCに似た物質を自分自身でつくり出していることが知られるようになってきたが、その理由はまだ十分に解明されていない。体内で生成されたカナビノイド(エンドカナビノイド)は、精神に影響したり、骨の成長に関係していることが明らかになっているが、現在では免疫システムの調整に関わっているのではないかと考えられるようになってきた。

今回の実験で研究者たちは、アレルゲンに接触したマウスの皮膚にTHC溶液を一塗りすれば効果が現れるはずだと考えた。チームを率いているトーマス・タティング教授は、「マウスの皮膚にアレルゲンに接触する直前や直後にTHC溶液を一塗りすると、通常で起こる発疹よりもはるかに少なくなります」 と語っている。

「THCそのものはカナビノイド・レセプターの結合して、レセプターを活性化させますが、その結果できた活性物質がアレルギー反応を抑えるわけです。」

また、教授は、アレルギー性皮膚炎の治療に必要なTHCの量は、ハイを引き起こす量よりもはるかに少ないと話している。

その他の治療オプションとしては、脳内のエンドカナビノイドの生成が減ってしまうのを予防する薬を開発することが考えられている。