カナビス・ディスペンサリー急増

対応に苦慮するカリフォルニア州の各自治体

Source: Daily Breeze
Pub date: 19 Aug 2007
Subj: Officials Weigh Boom In Pot Shops
Author: Harrison Sheppard http://www.mapinc.org/norml/v07/n973/a07.htm


1996年にカリフォルニアの住民投票で医療カナビスが合法化されてから10年以上経ってカナビス・ディペンサリーが急増し、それぞれの市や郡の対応は、許可、禁止、モラトリアム、未決、とまちまちで大混乱の様相を呈している。

ロスアンゼルスでは、以前は数軒しかなかったディスペンサリーがここ2年間で200軒以上に急増し、当惑した市議会は先頃、きちんとしたガイドラインが用意されるまでは新しい出店を一時中止するモラトリアム法案を通過させた。

デイリー・ニュースの調査によると、カリフォルニアの何百もの自治体が医療カナビス・ディスペンサリーにどう対応するかまだ全く決めていない。しかし、そこでも少なくとも28の店舗やディリバリーサービスがすでに始まっている。

こうした状況に対して、警察の当局者は、地域の管理規定がないためにディスペンサリーが学校や公園の近くに出店しても対応する方法がないと指摘している。

州の医療カナビス対策委員長も務めるモデスト市警察のロイ・ワスデン所長は、「多くの市町村が何も準備していないのですから、あちこちのディスペンサリーがオープンしたのを知って慌てふためくのも当然です」 という。


400軒以上、利用者20万人

医療カナビスの支援グループであるアメリカン・フォー・セーフアクセスによると、カリフォルニアでは、26市と8郡がディスペンサリーの出店を許可・管理する条例を持っている。

これに対して、出店を禁止しているのは55市と2郡で、トランス、ランチョー・パロス・バーデス、ローリングヒル・エステートなどが含まれている。また、リドンドビーチ、ヘルモサビーチ、マンハッタンビーチ、カーソン、ガーディナなどを含む、75市と6郡が一時的なモラトリアム状態にある。

カリフォリニア州は全体で478自治体と58郡から成っているが、上にあげた以外の約7割の322市と42郡は、医療カナビス・ディスペンサリーをどうするかについては何も決めていない。

州全体の医療カナビスディスペンサリーの数は少なくとも400軒以上で、そのほかに公にされていないのが数百あるといわれている。

州の医療カナビスIDカードの登録者数は約1万5000人だが、カードの取得は任意で、必ずして医療カナビスの入手に必要なわけでもないので、実際には何人が医療カナビスを求めているのか当局ですら把握しかねている。医療カナビス支援グループに推計では、5年前は3万人だったものが、現在では15万から20万になるとしている。


店舗周辺で犯罪が増加?

こうした状況に対して、警察当局は、許可を受けていないディスペンサリーのカナビスの在庫や売上金を狙った犯罪に神経を尖らせている。また、一部の店では、単に利益目的のために健常者か病人かにかかわらず、法外な値段でカナビスを売りさばいているという。

ロスアンゼルス市警によれば、一部の店舗の周辺で犯罪が増加しており、また、グレンバレーのグラント高校の学生が宣伝用の無料カナビスを手渡されたといった苦情が寄せられている。

しかし、医療カナビス支援グループや一部の学識経験者は、そのような指摘は大げさ過ぎると言っている。アメリカン・フォー・セーフアクセスのクリス・ハーマン公報担当は、「それは、恐怖を広げるための警察の戦術の一環だと思います」 と語る。

「市や郡は医療カナビス・ディスペンサリーを保護して、場合によっては適切な方法で管理することが求められていますが、警察は市や郡を威嚇することで邪魔をしようと画策しているのです。」

今年の始めにはリーズン・ファウンデーションは、1996年に215医療カナビス条例が通過して以降、カナビスに関連した犯罪は減少しているとする報告を発表している。

報告書を書いたスカイドラ・スミス・ハイスターさんは、「常識から言っても、きちんと規制管理されたディスペンサリーの周辺一帯に犯罪が魅き寄せられるなどということは全く考えられません。犯罪を引き起こしているとすれば、基本となるルールが用意されないままに運営を余儀なくされているという現状が唯一の理由です」 という。


予想外の展開でモラトリアム

医療カナビス・ディスペンサリーをどのように扱ったらよいのが最初に検討を迫られたのが、医療カナビス運動が昔から盛んなサンフランシスコ周辺のベイエリアだった。

しかし、最近ではその中心がロスアンジェルスに移動して、ディスペンサリーの数が急増している。たった3年前には1〜2軒が知られていたに過ぎなかったが、現在では、支援グループのまとめたリストには少なくとも150店舗が掲載されている。また、市や警察当局は、それどころではなく、200〜400軒あるのではないかと見ている。

NORMLカリフォルニア支部のデール・ゲイリンガー代表は、「すべては、サンフランシスコを中心とする北カリフォリニアが始まったのですが、ここ数年でその中心がロスアンゼルスにシフトしたのです」 という。

「ロスアンゼルス郡で最初に設立された本格的ディスペンサリーは西ハリウッド市の医療カナビス・クラブですが、ここを運営していたのはベイエリアからやってきた人たちです。」

「それから1〜2年もしないうちに、市の境界線を越えてロスアンゼルス市内に目をつける人たちが現れたのです。そして、いきなり隠されていたドアが開いて、ゴールド・カナビス・ラッシュが始まったのです。」

ロスアンゼルス市議会のメンバーは、他のサウスベイの市と同様に、総じて重病の病人を助けるディスペンサリーに同情的だったが、余りに急激な増加に驚き、先頃、悪の温床にならずに厳正に管理できる方法が確立するまでは新規店舗を認めないとするモラトリアム措置を取ることを決めている。


連邦との緊張拡大

カリフォルニア州で医療カナビス法が成立したのは1996年だが、しばらくはどのように法律を機能させるのかについて混乱が続いた。実際に医療カナビスが州内に広がり出したのはここほんの最近のことで、2003年に州が一連の細目規定を明文化した法律を作ってからだった。

しかし、2005年の連邦最高裁で、215医療カナビス条例の正統性は基本的に認められたものの、一方では、連邦政府が連邦法に基づいて医療カナビス患者を追訴することを認める判断を示した。このことが、各地で緊張を拡大することにもなった。

現在、ロスアンゼルスを中心とする地域で、連邦麻薬局(DEA)が盛んにディスペンサリーの強制捜査作戦を続けている。DEAロスアンゼルス地区のサラ・プーレン広報官は、「連邦法の執行を中止する予定はありません」 という。

ランド研究所の薬物政策アナリスト、ロザリエ・パクラさんによれば、現在9州で医療カナビス・ディスペンサリーが認められているが、特にカリフォルニア州が連邦に警戒されているという。

パクラさんは、カリフォルニアの州法が他の州よりも緩く書かれているために、患者が多量の医療カナビスを所持可能で、そのことがディスペンサリーの急成長につながっていると指摘する。「もし患者を本当に守りたいのであれば、量を少なくしておく必要があります。」

DEAの強制捜査を止めさせることについては、国会議員による取組もある。サウスベイのダナ・ロールバッハー議員(共和)とモールス・ヒンチー議員(ニューヨーク、民主)は共同で、DEAが医療カナビス患者やディスペンサリーを捜査する財源の支出を禁止する法案を提出している。しかし、通過するまでの支持は得られていない。


そっとしておいてほしい

しかし、そうした保護がない現状では、ディスペンサリーはいくらカリフォルニアの州法の下で合法的にビジネスをやっていても、常に連邦のエージェントの目を気にして目立たないようにすることを強いられる。

カノガパークにある非営利のホリスティク・アルタネイティブ・ディスペンサリーは、オープンして3ヵ月になるというのに、宣伝ができないために新規の顧客の獲得に苦労している。確かに、店頭に大きな看板を出したり、インターネットを使ったりすればもっといろいろな宣伝もできる。しかし、その分だけ連邦の目も厳しくなる。

共同オーナーの一人であるD氏は、名前を出さないことを条件に、医療カナビスを使っているパートナーと一緒に他の人も助けたいという思いからディスペンサリーを始めたと話している。

「そっとしておいてほしいと願っています。この店のお客さんは、大半が本当に病気に苦しんでいるのです。90%から95%の患者さんが重度の病気で本当に薬を必要としています。」

「もしこの店で手に入らなくなってしまえば、60才代や70才代の年配の婦人や紳士がストリートを彷徨って薬を探して歩かねばならなくなるのです。そんな姿はとても見ていられません。」


カリフォルニア州の
市および郡におけるカナビス・ディスペンサリーの状況

カナビス・ディスペンサリーの出店は許可されている 26 市  郡

出店は許可されているが、現在は一時的に停止状態 (モラトリアム中) 75 市  郡

カナビス・ディスペンサリーの出店は禁止されている 55 市  郡

未決定 322 市 42 郡


Photo Essay: Hollywood Medical Marijuana DEA Raid  (2007.7.27)   カナビス・ディスペンサリーに対する強制捜査の様子