イスラエル警視総監

ドラッグ初回所持では逮捕せずと発表

Source: Drug War Chronicle
Pub date: 28 September 2007
Subj: Israeli Police Will No Longer Arrest First-Time Drug Users
Author: Ron Jones Reporting
http://stopthedrugwar.org/chronicle/503/israel_no_arrest_first_time_drug_offenders


イスラエルでは、ドラッグ法執行のあり方についての見直しが進んでいるが、それに伴ってイスラエル警察のデゥディ・コーヘン警視総監は、今後、ドラッグの初回の所持違反者を逮捕しない と発表した。この動きは、昨年1年間にイスラエル警察によるドラッグ違反逮捕者数が所持で1万6000人以上、売買関連で8000人以上だったという報告を受けて出てきた。

イスラエルのドラッグの使用状況は、全般的にヨーロッパや北アメリカと同じになっている。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の 2007年世界ドラッグ報告 によると、イスラエルのカナビス使用率は8.5%で、ヨーロッパ諸国に比較すると、サイパス14.1%、イタリアとスペインの11.2%、スイス9.6%に次ぐものになっている。また、アメリカとカナダは、それぞれ12.6%、16.8%になっている。しかしながら、コカイン、ヘロイン、アンフェタミン、エクスタシーの関しては、イスラエルの使用率は西欧諸国の平均1%前後を軒並上回っている。

総監は、執行形態の変更が少年犯罪に対する社会実験の一環として開始することになったと語っている。今回の発表は、広範な視野からドラッグ戦争の無益さを批判したイスラエル・テレビのドクメンタリーが放送された数日後のことだった。

新しい政策では、違法ドラッグの規定量以下の個人使用目的については、初回は記録に残すだけで逮捕しないことになっている。各ドラッグの規定量は次のようになっている。

バッズ・マリファナ 15  グラム
ハシシ 15  グラム
オピアム  グラム
LSD  枚
エクスタシー  錠
コカイン 0.3  グラム
ヘロイン 0.3  グラム

「これは、ドラッグを合法化しようという話ではありません。使用者ではなく、ディーラーに焦点を絞るということです」 とコーヘン総監は話している。

コーヘン総監が統括している情報&捜査部の高官の一人は、「一匹づつ蚊を殺していくのではなく、蚊の発生する水たまりを干し上げてしまうほうが好ましいという警視総監の考えに従っています。新しいシステムでは、直接的にユーザーのドラッグ使用を減らすことを目指しているわけではありません」 と説明している。

「学生のような若者を捕まえて初犯の場合、これまでのやり方では、パトカーで署に連行してから、担当の調査官の仕事が一段落するまで長く待たされ、さらに長時間の取調べを受けた後でも、引受人を探して保釈するまでに相当の時間がかかっていました。書類を作成するのもほぼ1日がかりですが、大半は起訴にまで至りません。」

問題は無用な捜査に警察の時間が費され過ぎていることで、ドラッグ事犯をすべて起訴していたら、起訴の嵐になって裁判が詰まって解決までに何年もかかってしまう、と高官は話している。さらに、初犯者は、警察官と接触するだけで反省して生き方を変えることも十分にあるが、再犯者の場合は刑事裁判システムで対処することになる、と加えている。

「初犯者の大半は、警察官が関与してきただけでも恐怖を感じます。ですが、何度も捕まる人はドラッグに染まり過ぎていて、ドラッグの影響下で運転をしたり、買うための金ほしさに盗みを働いたりしますから、法律を最大限に使って起訴することになります。」


「乗るならGLP! NOパトカー!」

イスラエルでカナビスの合法化活動をしている グリーン・リーフ党 (GLP)は、こうした展開を歓迎しながらも、新しい政策の効果については疑問視している。結局は、禁止法を終わらせることが必要で、そのために今後も活動を続けていくと公言している。

「果して、この政策がカナビス・ユーザーにとって良いことなのかはっきり分かりません。1度目は呼び止めるだけだが、2度目は逮捕するというわけですから」 とグリーン・リーフ党のミシェル・レバイン公報官は指摘する。

「警察は、ディーラーに焦点を絞ると言っていますが、これまでのディーラーに焦点を当てたことなどないのです。また、1度目は逮捕しないとは言うものの、この声明では、今後に備えて詳細な記録を残すために根掘り葉掘り尋問すると言っているのです。このことは、今までと同様に、誰から買ったか白状するように強要されるわけですから、少量所持で初めて警察に捕まった人にとっては、現在までと比べて、単に連行・起訴されないということに過ぎないのです。」

グリーン・リーフ党では今後も合法化に向けての活動を続ける、とレバイン公報官は語っている。

「現在、グリーン・リーフ党では、カナビス政策と平和に関する第2回アラブ・イスラエル・ジョイントカンファレンスの準備など多くのプロジェクトを抱えて忙殺されていますが、警察が納税者の税金をドラッグ戦争に浪費していることへの追求を緩めるつもりはありませんし、選挙で選ばれた政治家たちに対しても、カナビス事犯で非暴力で愛国的な市民を投獄することを止めるように要求し続けていきます。」

イスラエル警察はドラッグの密輸に対する闘いを継続し、ネゲブ砂漠地区に新しいチームを立ち上げてヨルダンとの国境線の取締りを強化すると発表している。警察によれば、この地域は、アフカニスタンから送り出されたヘロインとハシシの主要な集積地になっているという。また、レバノン国境に展開しているチームは再編して、レバノン・ハシシやアフガンのヘロイン、南アフリカのコカインの流入を防ぐことに力を注ぐことになっている。

最後にレバイン公報官はドラッグ法を変えなければならないと繰り返し、知名度を増しつつあるグリーン・リーフ党のスローガンを唱えた。「乗るならGLP! NOパトカー!」

第1回アラブ・イスラエル・ジョイントカンファレンス
Middle East Peace and Drugs Conference Coverage  (Cannabis Culture Magazine, 2006.10.26)