Weekly News
2008年1月24日
●『噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用』、新研究を加えて改訂
2008年1月24日 - アメリカ・ワシントンDC発
本日、新しい臨床および臨床前研究の成果を加えたNORMLの 『噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用』 の 改訂版 が発表された。この最新版では、カナビスを利用した治療によって多発性硬化症やアルツハイマー、脳癌などを始めとする生命を脅かす各種の疾患の進行が抑制される可能性のあることが示されている。
今回のアップデートでは、カナビノイド治療有用性を調べた200件近い科学論文をレビューして、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、糖尿病、筋緊張異常症(ジストニア)、線維筋痛症、消化器疾患、神経膠腫症(グリオーマ)、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、高血圧症、失禁症、多発性硬化症、骨粗鬆症、かゆみ、関節リウマチ、睡眠時無呼吸症、ツーレット症候群、の17種類の疾患を取り上げている。
このレビューの著者で、NORMLの副事務局長も務めるポール・アルメンターノ氏は、「アメリカでは依然として医療カナビスの法的正当性についての政治的な議論が繰り替えされていますが、カナビノイドの医療利用に関する臨床研究は、過去の歴史にはなかったほど旺盛に行われています」 と語っている。
「実際、医学研究論文検索サイトの NCBI で、‘cannabinoids, 1996’ をキーワードにして登録論文数を調べてみると、1996年には約300件の論文が発表されたことがわかりますが、同じことを2007年で検索してみると5000件近い科学論文がリストアップされます。このように臨床および臨床前研究が噴出してきているわけですが、この事実は、カナビスやカナビノイドの治療利用に反対するアメリカ政府のスタンスが科学をベースにしたものではなく、政治的なものであることを浮き彫りにしています。」
またアルメンターノ氏は、最近発表された研究では、カナビノイドが多発性硬化症やALSなどの変性疾患に関連した症状を長期的に緩和することがわかってきていると言う。
「多発性硬化症のような病気は、慢性的な変性疾患で時間とともに症状が悪化していくことが知られていますが、このために、最初の症状レベルに保つには時間とともにカナビスの使用量も増やす必要があるとも言われてきました。しかし、一般的には摂取量が増えないことがわかってきています。このことは、カナビノイドの治療効果に耐性が生じないことを示していますが、この結果のさらに重要な点は、カナビノイドには一部の変性疾患の進行を遅くする機能が備わっていることを証明していることです。」
加えてアルメンターノ氏は、この1年間に発表された臨床前研究では、カナビノイドには著しい制癌特性のあることや、乳癌、 肺癌、 脳癌、 子宮頚癌、膵癌 などを始めとする各種の悪性細胞株の拡散を制限する働きのあることも示されいると言う。
「以前はカナビスが癌を引き起こすと言われて来ましたが、現在ではそれとは全然逆に、多くの専門家は、将来、カナビノイドが毒性のない新しい種類の制癌剤として、従来の化学療法の深刻な副作用や痛みを伴なわずに各種の癌の増殖を食い止めるようになると考えています。」
『噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用: 最新科学文献レビュー、2006-2008』 全文は、http://norml.org/index.cfm?Group_ID=7002 でアクセスできるようになっている。
●アイダホ州のヘイリー市議会、賛成多数の住民発議を認めず
2008年1月24日 - アメリカ・アイダホ州ヘイリー発
アイダホ州のヘイリー市議会は、先週、住民投票で認められたカナビスに対する法執行の緩和を求めた 発議 を無効とすることを決議を下した。
昨年の11月に住民投票で3種類の発議が認められていたが、市議会は、州法と連邦法に矛盾することを理由に法的に実施できないとしている。
発議のうちの一つは、地元警察による成人のカナビス・ユーザーに対する捜査・逮捕の執行優先順位を最も低くすることを求めたもので、同じ内容の非優先化条例に関しては、すでに、ワシントン州シアトル、カリフォルニア州サンタクルズ、モンタナ州ミズーラ、コロラド州デンバー、ミズリー州コロンビア など全国の都市で実施されているが、今回無効とされた。
また、2番目の発議は、認定を受けた医療カナビス患者に対する市の訴追を除外することを求めたもので、これも同じようにすでに12の州で実施されている。3番目の発議は、ヘンプの生産を農作物として合法化することを求めていた。
しかしながら、有権者の決めたいずれの発議対しても、ヘイリー市の法律事務所は、法的に受け入れることはできないと表明していた。
NORMLのアレン・ピエール事務局長は、市の決議を強く非難して、「これまでずっと民主主義の要とされてきた人民による人民のための政府という概念は、アイダホ州ではもはや通用していないことが明らかになったわけで、市議会の議員たちは、自らの有権者たちが示した民主的な決定をかなぐり捨てて、カナビス禁止法のもとに喜んでひざまづくことを選んだのです」 と語っている。
●カナビノイドには脳癌治療に新しい選択肢をもたらす可能性がある
2008年1月24日 - イタリア・ブストアルシーツィオ発
神経治療に関する専門家レビュー・ジャーナルの1月号に掲載された レビュー は、神経膠芽腫細胞株の実験でカナビノイドには抗癌作用のあることから、脳癌に対する治療に新しい選択肢をもたらす可能性があると指摘している。
インスービア(Insurbia)大学神経科学センターの研究チームは、「カナビノイドに関しては、実験で幅広い細胞株で抗増殖性効果のあることが示されている。中でも興味深いのは、試験管や動物実験の双方で神経膠腫の成長を大きく抑える能力が示されていることで、……さらに、カナビノイドには、形質が変化していない正常細胞に影響することなく膠腫細胞だけを死滅させる選択的抗腫瘍作用のあることも分かっている」 と書いている。
2006年には、スペインのコンプルテンセ大学の研究チームが、THCを人間の頭蓋内に投与したところ、再発性の多形神経膠芽腫の成長が抑制されたと 報告 している。
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Source: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7489