アムステルダム最新報告

NORML・センシブル・アムステルダム・ツアー2008


リチアード・コーワン、マリファナニュース・コム

Source: MarijuanaNews.com
Pub date: 28 Jan 2008
Subj: NORML Sensible Amsterdam Tour A Success.
So Is The Coffee Shop System. Seeing Freedom Work.
Author: Richard Cowan
http://www.marijuananews.com/news.php3?sid=967


1月18日から25日にかけて行われた NORML・センシブル・アムステルダム・ツアー・2008 から戻ってきた。ツアーではガイド役を仰せつかったが、苦労の甲斐あって参加したみんなには喜んでもらえた、……と言いたいところだが、実際はアムステルダムでみんなに喜んでもらうにはたいした苦労もいらない。

われわれを招いてくれたコーヒーショップでは、次から次へとサンプルを見せてくれた。参加者の中には、配偶者が医療カナビスを使っている人もいたが、連れて来ることがかなわず代わりに熱心に質問したりしていた。店の人も喜んで対応してくれた。

また、地下のガーデンでカナビスを栽培しているところを見学できる カナビス・カレッジ も訪れた。レッドライト地区の運河に面した古い建物にあるカナビス・カレッジは、非営利の教育機関で、ボランティア・スタッフが訪れた人にカナビスについていろいろな知識や情報を熱心に教えてくれる。

今回のツアーで私のとって最も勉強になったのは、アムステルダム警察署の巡査部長とコーヒーショップ・オーナー協会の公報代表を招いて行われた座談会だった。

アムステルダム警察のロン・ビークメイヤー巡査部長は20年のベテランで、レッドライト地区と市内全域のコーヒーショップの担当責任者を務めている。また、コーヒーショップ・オーナー協会のミカエル・ベーリング氏は、カナビス・カフェで有名な420カフェのオーナーで、現在のオランダの中道右派政権政党のキリスト教民主党に所属して政治活動にも熱心に取り組んでいる大変興味深い人物だ。
この座談会では私が司会を務めたが、この二人からは現在のコーヒーショップがどのように機能しているか詳しく聞くことができた。

まず、オランダでもカナビスの所持や販売は基本的には違法になっているが、なぜコーヒーショップがあるのかについて質問すると、カナビスは国際条約で禁止されてはいるが、加盟国には自由裁量の余地も残されており、オランダは一定の条件下では法を執行しないことを選択したという説明があった。
現在の規制リミットについては、コーヒーショップでお客さんが買うこともできる量が1日5グラムまでになっていることはよく知られているが、個人所持の限度は30グラムになっている。また、店が在庫できる量は500グラムまでになっているが、多くの品種を用意して手広くビジネスを展開している店では、補給を絶やさないためには神経衰弱のようなバランスが要求されて問題になっている。現在、在庫の限度を増やすべきたという議論も行われている。

ビークメイヤー巡査部長は、カナビスの全面合法化して、少なくとも供給側のいわゆるバックドア問題を解決してコントロールできるようにすることに賛成しているとしながらも、現在の政治状況では難しいと言う。

その理由としては、現在の連立政権はオランダ的な意味からすればいくぶん禁止論者寄りで、既成の枠組みを越えていこうという考えはないこと、前政権では大多数が供給についても前向きだったが、それでも実際には実行されることはなかったことを上げていた。
かつてマーク・テウェインは、「私の死亡記事は大きく誇張され過ぎている」と言ったが、オランダのコーヒーショップ・システムは死んだという最近よく見掛ける記事が、今回のツアーでまたまたテウェインの言う通りだということが確認できて胸を撫で下ろした。

10年以上もマリファナニュース・コムをやってきて、オランダがついに外国の圧力に屈したという記事には何度も遭遇してきたが、オランダでは、たとえ現在のシステムを好ましく思っていない人であっても、実際には他のどのような代替案よりも今のほうがうまく機能していることを認めている。

アメリカ人などの外国人がコーヒーショップから締め出されたというのも繰り替えされてきた噂話の一つだが、これは、ドイツやベルギーが、自国民が国境を越えてカナビスを持ち帰って迷惑しているのでコーヒーショップから外国人を締め出せという主張に尾びれが付いたもので、実際には外国人が締め出されたというようなことはない。これは、オランダの国境の町では交通渋滞の深刻化に対処するために、店を国境のすぐそばに移転して外国人の中心部への流入を防ごうとしている事実を見ればわかる。
もともとオランダは歴史的に都市の独立性が強く、政府の決めた政策であっても各都市はその執行方法について大きな力を持っているが、特にアムステルダムの場合は常に独自のやり方を押し通してきたという歴史がある。
最近、アムステルダムが寛容政策を厳しくして、レッドライト地区の飾り窓を閉鎖したり、コーヒーショップの数を減らしているといった記事をあちこちで見かける。

例えば、1月7日のロサンゼルス・タイムズにはジェラルディン・バウム記者が書いた、「セックスとドラッグの見直すアムステルダム」 という記事が掲載された。

バウム記者は、これまでにも宗教右派のキリスト教連盟の公報のために少ななからぬ記事を提供してきた。私もキリスト教徒なので、連盟の人たちをどう思っているかいうのは控えるが、幸いなことに、オランダではキリスト教連盟は非常に小さい。バウム記者や連盟の人たちは、道徳的な観点からカナビスも売春も同じものだとみなして両方に反対しているだけのように見える。

だが、実際にアムステルダムのレッドライト地区で起こっていることは、アメリカ人がいうところの 「再開発による高級化」 で、全体の中で3分の1の飾り窓が閉鎖されるが、オーナーは3500万ドルの補償を受けている。確かに、犯罪組織による女性たちの搾取ということも理由にはなってはいるが、アムステルダム市は女性たちを路頭に迷わせようとはしていない。

コーヒーショップについても同様で、地区の高級化にふさわしくないとされた粗末な店は移転や閉鎖の圧力がかかっている。しかし、アムステルダム市のジョブ・コーハン市長は、ツーリスト・ビジネスを潰したり、コーヒーショップを閉鎖し過ぎてカナビスのストリート販売が増えるような事態にはしないと明言している。

アムステルダムの古いコーヒーショップには、規制以前からアルコールの販売免許を持ったいわゆるカナビス・カフェが残っていたが、2006年には数十軒の店がアルコールかカナビスのどちらか一つを選ぶように最後通告を受けている。だが、カナビス販売を放棄した店はほんの僅かだけだった。

ドライ・ビジネス(カナビス)とウエット・ビジネス(アルコール)の分離というのは長い間取り沙汰されていたことで、そのことがオランダ的な開発に拍車をかけることにもなっている。ブルドッグやグラスショッパーのような大型店は、店を仕切ってそれぞれのスペースでカナビスとアルコールを販売するようになったが、多くのコーヒーショップが近くでバーやレストランを始めるようになった。

実際、座談会をやらせてもらったバーニーズ・アップタウンは新しくできた美しいバー&レストランだが、かつてはバーニーズ・ブレックファースト・バーと呼ばれた店が分離して道の反対側にできた店で、元の店舗は現在ではコーヒーショップのバーニーズになっている。このようなバーやレストランの多くは、食事やお酒を飲みながらジョイントも吸えますといった看板を店の窓に掲げている。

コーヒーショップの中でアルコールを販売していた時代であっても、アルコールだけの普通のバーのような厄介な問題はほとんど起こらなかった。これは、カナビスが吸えるバーでも同じだった。そうした現実を考えれば、同時販売しているカナビス・カフェをやめさせることは、もともと存在していない問題を解決しようとしているようにしか見えない。政府は分離にやたらこだわっているのだが……

これからのコーヒーショップがどうなっていくかについては、バーニーズの周辺に一つの将来像が見える。バーニーズのある場所はアムステルダム駅から西に伸びるハーレメルメール通りにあるが、南にある中心から外れているのでこれまで余り注目されていなかった。しかし、バーニーズの成功で周辺が見直されて、最近新しい洒落たコーヒーショップがいくつかオープンしている。グリーンハウスの店などは、ガラスの床に下が魚の水槽という奇抜なデザインになっていたりする。

また、この7月から始まることになっている公共スペースでの喫煙禁止で、コーヒーショップでもカナビスが吸えなくなるという話もあったが、そのようなことにはならないことが決っている。

ツアーの最後には、オランダのドラッグ政策についていっそう理解を深めるために ネイチャー・コール という小さいが美しいスマート・ショップを訪れた。店では、生のマジック・マッシュルームやサルビアのようなマイルドな幻覚剤を販売している。オーナーのパトリックはいろいろ興味深いことをたくさん話してくれた。

乾燥させたマッシュルームについては以前から販売が禁止されているが、最近、生のマッシュルームも禁止されると盛んに伝えられている。これは、精神が不安定なフランフの若い女性が、アルコールや他のいろいろなドラッグを使った後でマッシュルームを食べて運河に跳び込んで死んだことから、マッシュルームを禁止すべきだという議論が起こった。

禁止論者の政治家やセンセーショナルなマスコミは、マッシュルームのせいだと非難している。何か起こると、自分たちに馴染みの少ないものを標的にするのが常だが、この件では、明らかにアルコールとの併用による悪影響があったと思われる。アルコールは、カナビスとの併用でも精神に悪影響を及ぼすことがあるが、特にイギリスなどでは決まってカナビスが悪玉にされている。

マシュルームを禁止しようとする動きに対しては、アムステルダムではもっと冷静な反応が大勢を占めており、禁止に対抗するには大掛かりなデモが役に立つと思われている。アムステルダム市では、禁止する代わりに適切な情報を書いたパンフレットを添えて販売する方法を提案している。パンフレットには、アルコールとの同時に使うことに対して目立つ警告を載せることなどが含まれている。これぞ本物のドラッグ教育ではないか!

禁止論者たちのグループの間ではオランダを悪者扱いすることが定番になっているが、オランダは、現在それなりに機能している政策を放棄して、機能しないとわかっている政策に変えようなどとは思っていない。