イギリス

タブロイド・ジャーナリズムが全開

Source: NORML Blog
Pub date: Feb 29, 2008
Tabloid ‘Journalism’ Hits New Low
Author: Paul Armentano
http://blog.norml.org/2008/02/29/tabloid-journalism-hits-new-low/#more-22


今後放送される予定になっている番組のヘッドライン一覧サービスによると、イギリスの BBCドキュメンタリー で、女性ジャーナリストがスカンクと呼ばれているカナビスの主要活性成分を注射して、その体験をもとに、カナビスの 「恐ろしく劇的で不快な効果」 訴える番組が放送されることになっている。

イギリスの事情に詳しくない人に説明しておくと、イギリスで盛んに使われている 「スカンク」 という用語は、必ずしもカナビスの品種の一つとして知られているスカンクではなく、最近のカナビスの効力が増えて 最高度に危険なドラッグ に変貌したとして、禁止論者たちが新しいコンセプトとしてそう呼ぶようになった。

アメリカでは1937年にカナビスが禁止されたが、そのまで使われていたカナビスやヘンプという言葉に替えて、「マリワナ」 という用語が使われ始めたのとよく似ている。当初より、政府は、マリワナはこれまでになかった全く新しい危険なドラッグで人を殺人鬼にすると盛んに宣伝することで、カナビスの禁止に成功 している。

それから70年余り、今度はイギリスの政府や警察やマスコミが、THC含有量の高い超強力なカナビスである 「スカンク」 を吸うと、精神病 や 自殺 から、レイプや 殺人 のような凶悪犯罪まで、ありとあらゆる悪害をを引き起こすと非難するようになった。

だが、実際には何も心配することはない。最近の調査研究では、いわゆる 「スカンク」 と呼ばれるカナビスはイギリスのカナビス市場の ごくわずかな部分 を占めるに過ぎないことが報告されている。

また、最近のイギリスのティーンエイジャーのカナビス使用率は、このところ 最低を記録 している。

さらに、医師の処方で 合法的に入手できるカナビス・ピル (マリノール)は、100%の純粋THCでスカンクよりもはるかに含有量は高いが、副作用リストには精神病、自殺、レイプ、殺人などは含まれていない。

そして最も重要なことは、イギリスばかりではなく世界中どこであっても、「スカンク」の主要な活性成分、つまりTHCを注射するカナビスユーザーなどは実際には一人もいないことだ。注射器を使ってそれらしく見せかけたホラー話などは、事実とはかけ離れている。

当然のことながら、このいかさまドキュメンタリーも最近のスカンク・ヘッドラインのラッシュに添ったもので、そのどれもが、カナビスの少量所持の再犯罪化を画策しているゴードン・ブラウン首相 の狂気な計画の一部を担っている。それに逆らってまで真実を知らせるチャンスは政府の人間にはない。

ここで取り上げられたBBCドキュメンタリーは、『Should I Smoke Dope?』 というタイトルで2008年3月26日夜に放送された。ほぼ1時間の番組で、アムステルダムのコーヒーショップ体験やさまざまな人や専門家へのインタビューも含まれている。

最後に出てくるのが、THCのみと、THC+カナビジオールをミックスした溶剤を注射する実験で、後者の場合は気持ちよさそうな笑いを伴った体験をするものの、前者では恐ろしいパラノイヤに襲われ、主人公は 「精神をずたずたにされて、もうこりごりだ」 と語っている。番組では、THCのみ=スカンク、という図式を与えることで、スカンクは危険だという結論を誘導している。


  1. http://jp.youtube.com/watch?v=gyl4AH6GCi4
  2. http://jp.youtube.com/watch?v=NPLWu_2QJ3o
  3. http://jp.youtube.com/watch?v=n8i-9HGo4bA
  4. http://jp.youtube.com/watch?v=RYx0I0tAexI
  5. http://jp.youtube.com/watch?v=VLejxGd6Pn0

この実験でどの位の量のTHCを使ったのか、血中濃度変化、チェックリストのスコアなどの詳細については、守秘義務があって明らかにされていない

しかし、はっきりしていることもいくつかある。その一つは、もし実験をした医師やBBCのスタッフが最初からカナビスの注射が非常に危険だと認識していれば、このような人体実験をするはずがないということで、安全性について十分な自信を持っていたことを示している。

実際に、注射を受けたジャーナリストは、「精神をずたずたにされて、もうこりごりだ」 と語っていながらも、その精神症症状を引きずることなく翌日にはいつもの状態に戻っている。

つまり、ここでの体験は単なるバッドトリップでその人に合わなかっただけに過ぎない。このことはごく普通のことで、強いカナビスを嫌うユーザーは決して少なくもない。特に、強力な抽出液であるハニーオイル(オランダでは販売が認められていない)などは、絶対にやらないという人は多い。

この番組の真の教訓は、「スカンク=危険」 ということではなく、自分に合わないカナビスはやらないほうがよいというイロハを再確認したことにある。

イギリス政府の言っている 「スカンク」 は、これまでのカナビスと違い、新たに開発されたTHC%が高く危険な新品種の総称ということになっているが、実際にスカンクと呼ばれている品種は古くからある。

最初のスカンクは1970年代にカリフォルニアで開発されたもので、アフガン・タイ・メキシコの品種を25-25-50%で交配してつくられた。その後、背丈が高く成育期間の長くなるタイ種は背丈が低くく室内栽培に向いたコロンビア種に置き換えられた。現在では、さらに他の品種と交配された○○スカンクという名称の付いた種子がシードバンクで20種類以上販売されている。

基本的に、スカンクはサティバ種とインディーカ種の交配なのでTHCだけが特筆して多いわけでもなく、カナビジオールも多く含んでいる。

イギリスにおいて 「スカンク」 が特別な意味で使われるようになったのは、それ以前のイギリスでは高度なシンセミラ技術もなく、カナビスがあまりにも貧弱で効力が弱かったからに過ぎない。

オランダでは、何百年も前からチューリップ栽培などで発達してきた高度な技術を応用して、1980年代からシンセミラの開発が始まっているので、ずっと以前からTHCの含有量は現在のイギリスよりも高かった。

実際、2008年5月に発表されたイギリス政府のドラッグ乱用問題指紋委員会(ACMD)の報告書に掲載されているTHC含有量の調査とオランダの調査を比較してみると、イギリスのシンセミラのTHC含有量は10〜14%で、オランダの18%よりも随分低いことが分かる。


ACMD: Cannabis: Classification and Public Health (2008)



The Netherlands Drug Situation 2006  (Trinbos)


また、この2つの表の比較でとても興味深いのは、イギリスのハシシや従来のハーバル・カナビス(マリファナ)のTHCがオランダに比べて圧倒的に低いことで、特にハシシについては産地がモロッコなどに限られている点では両国とも同じでありながらも、最終的には全く違った製品になっていることがわかる。

イギリスの場合は、ハシシは ソープバー とも呼ばれ、非常に多くの化学物質や薬品類が混ぜられていることが知られている。また、粉状のマリファナについてもハーブなどが混ぜられている可能性が高いが、それがTHC含有量の低さにつながっていると考えられる。

この点では、スカンクのシンセミラ・バッズは植物の穂先の形状を保っており、一般的に異物混入のリスクが低い。また、カナビスは、吸いながら摂取量を簡単に自己調整できるので、効力が強ければその分だけ吸う必要量が少なくなる。つまり、スカンクのほうが、異物が混入されたTHCの低いソープバーやマリファナよりも安全性が高いということができる。

もし、イギリスのスカンクで精神病になるのなら、オランダはそれ以上に精神病になった人が多くなるはずだが、そのような報告は全くない。また、オランダ政府の医療カナビスのベドローカンはTHCが18%で、とても医療には使えないことになるが、実際には精神病の問題などは出てきていない。こうしたことから、イギリス政府の主張は全く根拠を欠いていることがわかる。