2700年前のカナビスが中国で出土

シャーマンの死後の精神作用目的


Phytochemical and genetic analyses of ancient cannabis from Central Asia
写真の説明

Source: TheStar.com
Pub date: 27 Nov 2008
2,700-year-old marijuana found in Chinese tomb
Author: Dean Beeby, THE CANADIAN PRESS
http://www.thestar.com/sciencetech/article/544684


実験植物学ジャーナル2008年11月号に掲載された 論文 によると、中国の辺境地域にある墓の中から、世界でもっとも古いカナビスが発見された。埋蔵されていたカナビスはおよそ2700年前のもので、布や食物用ではなく明らかに 「精神活性の目的で栽培」 されていた。

発見されたのは789グラムの乾燥カナビスで、中国北西部トルファンに近い墳丘墓に埋葬されたシャーマンらしき明るい茶系の髪と青い目をしたコーカサス男性(推定45歳)の傍らに置かれてあった。アルカリ質の土壌の中で極めて乾燥した状態で保存されていために状態は非常よく、調査チームは詳細な分析を行うことができた。香りの風合いは失われていたものの、緑の色合いは残されたままだった。

論文の筆頭著者でアメリカの神経学者としても有名なエサン・ルッソ博士は、「われわれが知る限りにおいては、カナビスの薬理学的な活性成分を扱った文献としては、今回の調査が最も古いカナビスを扱ったものになっている」 と書いている。これまでも、古代エジプトなどでカナビスの断片がいくつか発見されたり、ギリシャの歴史家であるヘロドトスの記述なども残されているが、今回の埋葬品ほど古く、しかもその特徴を詳細に分析できたものは他には全くない。

18人から構成された研究チーム(大半は中国の研究者たち)は、発見されたカナビスについて炭素による時代測定や遺伝分析などさまざまな測定を行ったほか、成功しなかったものの100粒の種子を発芽させることも試みた。また、サンプルとしてはあまりにも古いために正確な%は割り出すことはできなかったが、カナビスの主要な精神活性成分であるTHCの含有量については比較的高いことも明らかにされた。

カナビスが喫煙によって吸引されたのが食べることで摂取されたのかについても調べられたが、墓の中にはパイプなどの関連用具などは何も発見されず不明のままになっている。また、カナビスは革製のバスケットと木製のボウルに入れられていたが、量が多いことから、シャーマンが死後の世界でも使うためだったのではないかと考えられている。


ルッソ博士は電話インタビューで、「この物質がカナビスであることには疑いの余地はありません。これほど古いもので、今回のような詳しく調べられたものは今までにありません。通常、埋葬されるのは死後の世界でも必要とされる品々ですが、布や食物のためのヘンプや種は入っていないので、カナビスは医薬品か精神効果のために用意されたと考えられます」 と答えている。

墓にはその他にも、馬具、弓、ハープなども埋葬されており、この男性の社会的な地位が高かったことを示している。

研究を率いたルッソ博士は、普段は、天然のカナビス・ベースの医薬品として知られるサティベックを開発・製造しているイギリスのGW製薬でフルタイムのコンサルタントとして活動しているが、今回の分析は会社の設備を利用して行われた。

サティベックスはすでにカナダで多発性硬化症や癌の痛みの治療薬として認証を受けているが、カナビスの栽培と製造はイギリス南部の秘密の場所で行われている。品質を高度に監視するためにカナビスのテストラボが併設されているが、分析は会社の同意を得てこの施設の測定器具が使われた。墓から出土したカナビスのうちの11グラムが中国からイギリスへ運ばれたが、手続きなどに10か月を要した。

今回の多分野にまたがる学際的研究は、イギリスを本拠とする植物学ジャーナルで発表されたが、当然のことながら、内容の正確性と客観性を保証するために、独立した査読者のチェックも受けている。

発見された場所は墳丘墓地帯でおよそ500の墓があるとされているが、カナビスが見つかっているのはそのうちの2カ所だけで、このことは、カナビスの使用がごく僅かな人に制限されたいたか、あるいはシャーマンによって医薬品として患者に投与されていたかを示唆している。

ルッソ博士は20年以上にわたって神経学の研究に携わっているが、以前にはカナビスの歴史について調べた研究もいくつも発表している。「今回の発見は、カナビスが何千年もさまざまな目的で使われていたことを明確に示している。… 今回の件については、政治的な厄介事などを起きないことを願っている」 と論文に書いている。

カナビスが発見された墳丘墓のある中国新疆ウイグル自治区は、世界中に広まったカナビス品種の多くの原産地であるとも考えられている。