カナビスが合法化されたらどうなるか


ジョエル・スタイン

Source: Los Angeles Times
Pub date: 9 May 2008
This bud's for you, and you, and you too
Author: Joel Stein, columnist for the Los Angeles Times.
http://www.mapinc.org/newsnorml/v08/n474/a06.html


東海岸のニュージャージーから移ってきた自分には、カリフォルニア生まれのカリフォルニア人たちの行動が信じられないことがよくある。半分裸の女性が歩いていたり、ウエイターがお客さんに向かって 「あんた」 などと呼んだりする。

そして、医療カナビスが合法なのもそうだ。でも合法と言っても何がどのように合法なのかいまいちよく分からない。誰でもが買うことができるのだろうか? 癌やエイズや関節炎や緑内障でもなく、しかもカナビスを吸った経験のない自分でもOKなのだろうか?

医療カナビスは、本当のところは必ずしも合法というわけでもない。2005年の連邦最高裁で、州の医療カナビス法を無視して連邦の反カナビス法を執行できるという判決が出ているからだ。しかし、医療カナビスが合法化されているカリフォルニアをはじめとする12州は、そんなのはどこ吹く風で止めようとする気配もない。

ここロスアンザルスでは、医療カナビスを販売している店を見つけることは驚くほど簡単だ。200軒を越えると言われているディスペンサリーが郡のあちこちに散らばっているからだ。西ハリウッドの交差点周辺だけでも3軒ある。健康食品店や薬局と同じような感じだ。

だが、店に入るには医師の作成した正式な推薦証が必要だ。それを持ってさえいれば、8オンスまでのカナビスを所持していてもカリフォルニア州警察には逮捕されない。どうしてこの量が決まったのか知らないが、患者が長生きできるための必要量として控えめに見積もられたものなのだろう。

推薦証をもらうために医師のオフィスに行ってみた。最近出版されたシャーリー・ハルパリンが共著者になっている 『ポット・カルチャー ストーナ・ライフと用語のAからZまで』 という本の薦めに従って、医学の専門知識がどうのこうのよりも、ディスペンサリーとたくさんの台数の駐車場をシェアしているクリニックを選んだ。ストーナーたちは、無駄な努力を避けることにかけては本当に頭脳明晰だ。

狭い待合室で書類に自分の病歴を書きながら待っていると少しナーバスなったが、シャーリーによれば、断わられた人は見たことがないと言う。確かに、一緒に待っている人たちはみんな20才代の健康そうな若者ばかりだ。名前を呼ばれて診察室に入ると、これまでとは全く風景が違っていた。小さなデスクと椅子が2つだけで、小型テレビと消臭芳香剤が両側に置いてあるだけだった。おまけにドクターはアロハシャツという出で立ちだった。

ドクターは血圧を測ってから、どこが調子悪いのか尋ねてきた。「不安になる」 と答えてから、すぐに 「ときどき眠れなくなる」 とも加えた。これだけで納得してもらえるような感じだったが、うっかり 「頭痛」 とも言ってしまった。だが、人間ならば誰だって普通に経験することなので、「爪先を剥がされる時みたいな集中した痛み」 と強調してみた。

ドクターは、不眠が仕事や人間関係に影響していないか聞いて、精神科医を手書きでリストした書類のコピーを渡してくれた。6か月の推薦証をもらえることになったが、セラピストに見てもらえば1年に延長できるとも言っていた。診察の時間は全部で約4分だった。現金のみOKの受付に80ドル払うと、自分が医師の監督下で治療中であることを書いた書類が出てきた。カナビスを欲しがっているだけなどとは書かれていないところはさすがだと思った。

ディスペンサリーでは、制服ぽい服を着たガードマンが真新しい推薦証と運転免許証をチェックして中へ入れてくれた。内部は本当にナイスなコーヒーショップで、壁は値札の付いた絵画で飾られ、二階にはライブ用のドラム一式とソファーもあった。

カウンターでは、カナビス・ソムリエの美しい女性が巨大なメニューを開いて見せてくれた。上段はサティバ種、下段はインディーカ種に分かれていて、ブルードット・ポップコーン、ヒンズー・スカンク、パープル・アーケルなどという名前が並んでいた。超最高級茶の販売店のように、彼女はガラス・ジャーの中のカナビスを長い箸でつまみ出して、匂いをかがせてくれたり顕微鏡で見せてくれたりした。

どれもカリフォルニアでオーガニック栽培されたものだった。その中から名前が気に入って 「シュガー・クシ」 というのを1グラム買うことにした。でも、シュガー・クシ・マンチーになったらどんな種類のシリアルを食べたらおさまるのか考えてしまった。ハニー・バンチ・ファッジ? ミニ・フロスト・ミニ? それともカウント・プラークだろうか? 

次に、友達の患者に教えてもらった 「ザ・ファーマシー」 に行って食用に調理されたカナビスを買ってみた。この店はロサンゼルスでも最も有名はディスペンサリーで店舗は3軒ある。そのうちの2軒はホール・フーズの近くにある。

もう1軒は上品な健康食品店の兼ねていて、ビタミン類や地球上で一番栄養がある果実だと言われているゴジベリーなどもたくさん売っている。クリニックとは違って、ここの店員はみんな白衣を着ていた。初めてなので、まず目当てのカナビス入りロリポップを探して一回りして、ベジタリアン向けのチョコチップ・クッキーとチョコレートバーのメディシンも合わせて買った。ジェラート・アイスクリーム・メディシンまであるのには深く感心した。

いつもの自分と違って軽いノリで今回できたのは、2006年のハイタイム.マガジンのストーナー・オブザイヤーにも選ばれたコメディアンのダグ・ベンソンの電話して話を聞いていたからだ。

彼は、最近、『スーパー・ハイ・ミー』 というビデオ・ドキュメンタリーをリリースしたばかりだが、このビデオは、マクドナルドのファストフードだけを30日間食べつづけたモーガン・スパーロックの 『スーパー・サイズ・ミー』 のパロディで、ベンソンもいろいろな検査をうけながら、最初の30日間カナビスを一切中断してから、その後の30日間は途切れなくハイになり続けて体の状態を調べている。

ビデオではベンソンも医療カナビスの推薦証を取得しているが、そのときの様子について、「ドクターには、背中が弱く(a weak back)なったと言ったら、彼は、どのぐらいになりますかと聞いてきたので、1週間前(a week back)からと答えたんだ」 と話している。ドクターは、患者としてかそれともコメディアンとしてか分からないが推薦証を出している。このノリにはとても感心した。

聞いてみたら、今ではカナビスは全部ディスペンサリーから買うようになったと言っていた。ディーラーのものよりも消費税分高くなったとしても品質が一定しているからディスペンサリーのほうがいいと言う。「前は家まで来てくれるディラーがいたんだけど、結局ディスペンサリーのほうが便利なんだよね。」 どうしてと尋ねると、「ディーラー連中もよく集まっているからね。座っていればいろいろな話も聞けるしね。」 なるほど。

以前は、18才以上の成人が合法的にカナビスを買えるようになったならば何が起こるのだろうかと思ってきたが、実はもうすでに合法化されていて、特段何も起こらないと思うようになった。