南オーストラリア州上院
カンク議員が医療カナビス法を提案
Source: South Australian Democrats
Pub date: 24 July 2008
Ideological, illogical war against cannabis
Author: Sandra Kanck
http://cannazine.co.uk/cannabis-news/australia/ ideological-illogical-war-against-cannabis.html
私は、この度、指定された病状に苦しむ人が個人的にカナビスを栽培し使用しても罰しないようにする法案を提出しました。条件としては、医療専門家が正式な書類で、カナビスまたはカナビス樹脂を喫煙や調理して摂取することで病状の緩和が見込めると認めた人に限っています。
南オーストラリア州では、カナビスは規制薬物で通常の状態においては違法ですが、この法律では、カナビスを勧めた医療専門家も保護されるようになっています。
人によって薬の効き方が違う
カナビスはあらゆる文化の文献の中に登場します。中国では、薬草として5000年前から使われていたと言われています。また、アメリカでは、1896年版の薬局方にその使い方が20ページにわたって記載されています。その後、1934年までは、カナビスはアメリカでも医薬品として広く使われていました。イギリスのビクトリア女王も月経痛の緩和のために使っていたとも伝えられています。
カナビスを病気に対抗する武器の一つと考えるべきなのは、同じ薬でもそれぞれの人によって効き方が違うからです。従来から普通に使われている化学合成された医薬品では効果が得られない人もいます。
例えば、ヨーロッパの多発性硬化症患者の場合、30%以上の人が症状緩和のためにカナビスを使っています。イギリスの研究では、多発性硬化症に苦しむ人がカナビスを使うことで、歩行速度の改善や筋肉けいれんの減少、痛みの緩和、睡眠の改善することが示されています。
また、化学療法にともなう吐き気や嘔吐、あるいはエイズで消耗症候群になった人たちは、カナビスで吐き気や嘔吐が抑えられることを知っています。その他にも、緑内障、うつ病、滑液包炎、てんかん、脊髄損傷による神経因性疼痛などのも効果があることが知られています。
カナビスに含まれているTHCには肺の気道を一時的に拡張する効果もありますから、喘息の発作にも役立ちます。ただ、この効果については、日常的にカナビスを使っている人では耐性ついて効かなくなるとも言われています。
カナビスの副作用
どの医薬品とも同じように、カナビスにも副作用があります。従って、医療目的でカナビスを使う場合には、他の薬と同様に慎重にとコントロールすることが欠かせません。しかし、カナビスの副作用で死亡するようなことまでは知られていません。
オーストラリアでは、毎年、タバコの使用で1万9000人、アルコールで2000人、カナビス以外の違法ドラッグでは合計で1000人の人が亡くなっています。その他にもアスピリンを含む鎮痛剤で400人が死亡していますが、オーストラリア統計局の数字ではカナビスによる死亡例は報告されていません。
カナビスと精神病についても、単なる相関関係ではなく因果関係を示した文献はありません。確かに、精神病の人のはカナビスを自己治療で使う傾向のあることが示されていますが、カナビスには統合失調症の症状を抑えるカナビジオール(CBD)という成分が含まれていますから、それに気づいた精神病の人たちが症状緩和のために使っているという興味深い指摘もあります。
精神病を扱ったウエブサイト(psychiatrictimes.com)の中で、エール大学のシュリル・デスーザ博士とアシフ・マリク博士は、もしカナビスが精神病そのものの原因になるのならば、カナビスの使用率が増えた分だけ発生率も高くなるはずだと書いています。
その点では、オーストラリアのカナビス使用率は明らかに増加していますが、精神障害の人の発生率はそれに見合って増えてはいません。さらに、カナビスを使い始める年齢が下がってくれば、精神病の発症年齢も低下してくると考えられますが、それを示すようなエビデンスは見られません。
他の医薬品の副作用
私は、法案の草稿のコピーをオールトラリア医師会にも見てもらおうと思ったのですが、安全上の懸念から受け取りを拒否されてしまいました。しかし、興味深い事実も知ることができました。それは、製薬会社の処方医薬品には同じような懸念を示していないように見えることです。
例えば、睡眠薬や抗不安剤としてよく処方されている薬にベンゾジアゼピンがあります。この薬と老人の股関節の骨折の関連について調べた研究も多数ありますが、ハーバード大学のエイリーン・ミング博士の研究では、毎年、長期医療施設の入居者の45〜70%が転倒しており、1000人当たりでは1600回になるとしています。これに対して入居者でない人は224回に過ぎません。
転倒すると1〜2%の人が股関節の骨折を起こします。股関節の骨折のリスクは年齢とともに急激に高くなり、60〜64才に比較して、80〜84才で100倍にもなります。また、通常の場合の死亡率は8%ですが、骨折を起こすと翌年の死亡率は23%に上昇します。さらに50%の人が自力歩行が困難になり、地域住居者の3分の1が長期的な介護が必要になります。多くの人が再び転倒することを恐れて何もできなくなります。
ベンゾジアゼピンでは、たとえ正常な人であっても、基本的な精神運動機能が損なわれて姿勢が傾くようになることが分かっています。その副作用は、少なくとも4週間の連続使用で持続するようになり、服用量が増えれば損傷も大きくなります。鎮静剤の場合でも、反応時間が遅くなり、位置認識力や俊敏さが低下し、転倒時の防御反応が遅くなり過ぎて股関節の骨折を防げなくなります。
特に老人の場合は、こうした精神作用薬によってバランスを失い、転倒して股関節を骨折するという破局的な副作用に見舞われる恐れがあり、そのリスクは精神作用薬を使っていない人の1.5〜5.8倍になります。
カナビスの必要性
また、注意欠陥多動性障害(ADHD)の合法医薬品として知られているストラッテラは、自殺念慮、体重減少、胸痛、精巣膨張などの副作用が知られていますが、それでも医師たちは処方しているのです。
サリドマイドも非常に危険な薬の一つです。この薬については多くの人が1960年代に起こったことを悲劇を憶えていると思います。つわりの苦しむ妊娠中の女性に処方されたのですが、その結果、サリドマイド特有の奇形児が生まれることになってしまったのです。しかし、そうした危険性があるにもかかわらず、現在でも医師たちは血液癌やハンセン病に処方し続けています。
また、モルヒネも多量に処方されています。激しい痛みの緩和に重要な役割を果たす薬だからです。しかし、違法な状態で使われた場合にはどのようなことが起こるかは誰でも知っています。
従って、いずれの場合も代替になる別の薬が必要なのです。不眠症もADHDもつわりも、あるいは痛みにしてもカナビスに効果があることが知られています。しかも、全米科学アカデミー医学研究所の報告にも書かれているように、「喫煙による害を別にすれば、カナビスによる副作用は他の医薬品で容認されている範囲内」 にあります。
アメリカの状況
他の国の医療カナビスの状況ですが、アメリカでは、現在12の州でカナビスの医療目的での使用が州法によって認められています。また、今度はさらに、医療カナビスを認める州が増えていく情勢にあります。
1995年に行われた世論調差では、アメリカ人の3分の2が医療カナビスには正当性があると回答しています。翌年の1996年にカリフォルニア州で実施された住民投票で、医療カナビス215条例が56%の賛成を獲得して成立しています。これによって、アメリカで初めてカナビスの医療使用が認められました。
医療カナビス法の施行にあたっては、12州の多くが認定患者にIDカードを発行しています。大半の州では、カナビスの入手方法については何も触れていませんが、患者が所持できる量や自分で栽培する場合の本数については制限規定を持っています。
自分で栽培しない場合は、他の人から買ったりすることになりますが、ニューメキシコ州では昨年知事自らの発案で、医療カナビスの生産を民間団体に委託するライセンスを州が発行して保護する法案を通過させています。このプログラムが実現すれば、患者は正規のルートを通じてカナビスを入手できるようになりますが、まだ実現には至っていません。現在では150人の患者が認定されており、自身やケアギバーの手で栽培されています。
一方、カリフォルニア州では、何百軒もの医療カナビス・ディスペンサリーがさまざまな品種のカナビスを販売しています。そこでは、専門の担当者が患者それぞれの症状にどの品種が一番適しているかをアドバイスしてくれます。しかし、ディスペンサリーはもともと自然発生的に出現したもので、現在では各自治体の権限下で管理されており、州が正式に認めた状態にはなっていません。
連邦政府の対応
これに対して、アメリカのブッシュ政権はカナビスの合法化につながるすべての動きを抑え込もうとして、州議会議員でも加担すれば逮捕すると脅しています。カリフォルニア州法では医師がカナビスの処方箋を書くことは認められていませんが、その代わりに、認定患者にカナビスを使うことを推薦した書類を出しています。これは、今回私が提案している法案のやり方と同じです。
いずれにしても、アメリカの連邦法では、医療目的であるかにかかわらずカナビスの栽培・所持・供給・使用のすべてを禁じたままになっていることは変わっていません。連邦麻薬取締局(DEA)は、医療カナビスが合法化された州でも強制捜査やディスペンサリーの閉鎖を行うことができるようになっており、実際に頻繁に行われています。
しかしながら、今年は、連邦レベルでも共和党の大統領候補だったロン・ポール下院議員が中心になって医療カナビスを合法化する法案が提出されています。
また、民主党の大統領候補に決まっているバラク・オバマ上院議員は、春にオレゴン州で行われたインタビューで、大統領に選ばれたら医療カナビスの栽培場や施設へのDEAの強制捜査を止めるかどうか問われて次のように答えています。
「連邦当局は、例えば、犯罪者を捕まえたり、テロを防いだりするようなより質の高い仕事をしなければならないと考えています。医療カナビスの問題に対しては科学的にアプローチしたいと思っています。もし、信頼に耐えうる科学データが医療カナビスの使用を支持し、他の処方医薬品と同じように管理され処方できるのならば、われわれはどうすべきか考慮する必要があります。」
その他の国の状況
イスラエルでは、限定的ながら、元兵士たちの心的外傷性ストレス障害(PTSD)の治療にカナビスが使われていますが、最近ではそれに加えてさまざまな試みも行われおり、イスラエル保険省では、カナビスを栽培して、癌・エイズ・腸の慢性炎症障害などで登録された150人以上の患者に配布しています。また、栽培場をさらに拡張して、政府認定の病院を通じて配布することや、民間の薬局で販売することも考えられています。
カナダでは、連邦政府が規制薬物法の下でカナビスを規制管理しています。特定の疾患の苦しむ患者は、医師の推薦状があれば、個人の医療目的でカナビスを所持・栽培することを認めています。また、自分で栽培できない場合は栽培者を指定して用意してもらうこともできるようになっています。
オランダでは、政府の認定栽培者が品質を標準化した医療カナビスを栽培しています。慢性疾患や終末期の患者は、医師の処方を受けて薬局で購入できるようになっています。ですが、オランダの場合はコーヒーショップでもっと安価なカナビスを買えるようになっているので、保険省のプログラムはあまり機能していないという面もあります。
さまざまな団体が医療カナビスを支持
アメリカでは、医療カナビスを支持する団体や機関も増えています。その中には、統一メゾジスト教会、アメリカ聖公会(Episcopal Church)、統一キリスト教会、改革派ユダヤ教連合、プログレッシブナショナルバプテスト連盟、長老派教会、ユニテリアン・ユニバーサリスト協会なども含まれています。
オーストラリアでも同様で、医療カナビスを支持する団体はたくさんあります。現在、その数もさらに増えてきています。例えば、癌の化学治療を受けている人たちにカナビスを試しているオーストラリア女性協会、ニューサウスウエールズ癌協会、ビクトリア・エイズ協会、南オーストラリア自発的安楽死協会なども医療カナビスを支持しています。
イデオロギーの戦争
現在のカナビスに対する戦争はイデオロギーによるものです。問題は、どの薬がその症状に適応して価値があるかということなのです。西洋社会においては、天然の薬は良くないが合成した薬は良いという見方が支配的です。ですが、医療カナビスの使用については、人道的で温情ある社会の一部として受け入れるべき時期が来ています。
もし、ある薬が人々の健康を改善することが分かっていて、それでも使ってはいけないと禁止し続け、しかも、多くの人が深刻な副作用になくそれを違法に使っているとすれば、その禁止議論は、科学とはまったく関係のない別の動機に根ざしたものです。
医療カナビスに対する要求も少しづつではありますが、その医療効果が知られるようになるにつれて世界中で広がってきています。
南オーストラリア州議会への医療カナビス法の提案は今回で2回目になります。確かに、この議会の大半の人が 「ドラッグに強い姿勢」で対応すると言っていますのですぐに通過するとは思ってはいません。ですが、今回で最後にするつもりもありません
ドラッグに強い姿勢で対応していると自負している議会のほとんどの人たちは、その一方ではアルコールを飲み、一部にはタバコを吸っている人さえいるのです。こうした偽善の中にあっても、女性が参政権を獲得した時のように、いずれ医療カナビスが支持される時をむかえて、法案が通過する日が来ると確信しています。
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南オーストラリア州は、隣接するニューサウスウエールズ州とともに現在リーファー・マッドネスの真っ只中にあり、つい先ごろ、カナビス栽培に使う 室内照明器具の販売や所持を禁止 したりしている。