ドラッグ強制捜査で潤うNY警察


Source: The Buffalo News
Pub date: 23 Aug 2008
Drug raids help enrich New York police departments
Author: Ronald Fraser
http://www.buffalonews.com/149/story/421263.html


ニューヨークの警察所長は何十年にもおよぶストリートでのドラッグ戦争では負け続けてきたが、皮肉にも、ドラッグの強制捜査という戦争の打出の小槌を使って、管区司令部の執行予算を膨らませている。

多くの州法では、警察部門の行き過ぎを警戒して、押収した資産から得られた利益は教育や非営利目的の事業に使うことを要求しているが、1984年に連邦の総合犯罪規制法(Comprehensive Crime Control Act)の制定により、そうした州法を回避するために抜け道も整備された。

州や地元警察が連邦当局と協力して地域のドラッグ捜査を行った場合は、押収した現金や資産は、一旦「連邦化」される。しかし、連邦側の取り分は最低で20%で、残りの80%は州や地元の警察にバックされ、州法の制約を受けないことになる。

連邦の統計によると、ニューヨーク警察当局が得た取り分は、2000年に3100万ドルだったものが、2007年には3400万ドルに増加している。

もちろん、どの警察署もこのドラッグの強制捜査という旨味を享受しているわけではないが、その利益は半端でもない。例えば、本誌の地元であるエリー郡では、郡保安官事務所では、2000年に3万9000ドルだったものが2007年には2万1000ドルに減っている。しかし一方では、バッファロー警察署は27万2000ドルから30万6000ドルにまで増えている。

また、アーマスト警察署は、200年が7000ドルしかなかったが、2007年には3万7000ドルになっている。チークトワガ警察書でも同様に、1万7000ドルが2万2000ドルになっている。反対に、ハンブルグ・タウン警察署の場合は、2007年は2700ドルだけで、2000年の1万8000ドルから大きく減っている。

州レベルで見ると、ニューヨーク州警察のドラッグ強制捜査による収入は、2000年の240万ドルから、2007年には690万ドルにまで急増している。ニューヨーク州立大学地域のバッファロー警察の場合ですら、2007年に1682ドルを得ている状態になっている。

犯罪には直接関与していない不動産の所有者は必ずしも罪に問われることはないが、ドラッグ取引に使われていた不動産は、民事没収法では「犯罪」を犯したとして没収対象になることもある。

例えば、モーテルのオーナーが犯罪の防止に努力していたとしても、もしそこでドラッグ取引が行われていれば差し押さえられる。また、捜査によってボートや飛行機が捜索を受けて何のドラッグも出ずに損壊を受けた場合でも、政府による補償はない。また、押収された現金を取り戻すためには、長く費用のかかる法廷闘争が必要で数年もかかる。

ある研究によると、アメリカ国内の地元警察の40%が予算補填のために押収資産からの利益に頼っているが、このことが悪いニュースである理由は、警察の活動内容が以前とでは変わってしまったことを示しているからだ。

以前は、警察が資産を押収するもっとも大きな理由は違法ドラッグの供給ルートを断つためだった。だが、今日の目標の大きな部分が、自身の予算調達のために行われるようになってしまった。

市民は、なぜドラッグの強制捜査を行っているのかを地元警察に問い質すべきだ。町にドラッグが溢れているためなのか? それとも、本来警察が守るべき罪のない人々を傷つけても、特別の収入を簡単に得ることができるからなのか?

今回の記事は、特にニューヨーク州だけに成り立っているわけではなく、同じ著者が書いた アリゾナ・バージョン などもある。

しかし、ニューヨークに関しては、別の研究者がさらに詳しい調査を行っており、警察の仕事の実態が明らかにされている。この調査 によれば、ニューヨーク市のカナビスの逮捕者数が1997年以降の10年間で急激に増えている。特に黒人に対する逮捕が増えており、2007年には4万人以上にもなっている。

ニューヨーク市の1997〜2006年の10年間のカナビス逮捕者数は36万2000人で、この数はその前の10年間の10倍近くに急増している。この増加には、実際にはカナビス使用人口はむしろ減っており、さらに白人の使用者の方が多いのにもかかわらず、逮捕者は圧倒的に黒人が多くなっているという特徴が見られる。


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この調査を行ったハリー・レバイン氏によると、この急激な変化は共和党のジュリアーニ市長が誕生してからのことで、警察にとってより多くの人を逮捕することがある種のアドバンテージになっているからだと言う。その理由は3つある。(カナビス禁止法の文化、ピーター・コーエン、ゲント大学専門家会議での講演

  1. 生産性の指標を上げるための重要な方途になっている。警察では、管理手法として生産性統計を使うことを要求されているので、高い数字を出す必要に迫られている。

  2. 警察官にとっては、比較的簡単で安全な仕事で超過勤務手当ての支給が受けられる機会になっている。

  3. 年間3000人のカナビス・ユーザーの逮捕、書類の作成、犯人の拘留、裁判、罰金、釈放などのために多数の警察官の雇用の確保して、必要に応じてどこにでもすぐ配備できる体制になっている。悪く言えば、スタンバイ時に何の生産性にも寄与せずに暇をもて余さなくても済むように仕事を割り当てるための手段になっている。

この例は、今回の記事とともに、禁止法を執行する組織にとっては、禁止法から著しいアドバンテージを受けていることを示している。

警察は本来、例えば、テロで増員された後でその脅威が薄くなればその分だけ規模を縮小してもよいはずだが、パーキンソンの法則で示されているように、「役所の仕事はそれ自体の仕事を見つけようとする」。あるいはもっと単純に言えば、仕事がなくなって失業することを恐れる役人たちは職業的関心から何らかの新しい「仕事」を作り出して永久化しようとする。

そのためには、武力で反攻してくるような危険のない若者のカナビス所持者をターゲットにすることが大きなアドバンテージになる。しかも、若者を守るという「社会正義」を理由に掲げて。しかし、カナビスの場合は直接的な被害者が存在しないので被害届も出てこないので、実際には、警察は盛んに密告を奨励するようになる。

結局、転身の難しい彼らにとっては、職業の確保が第一で、社会正義や、密告社会が良いか悪いかどうか、あるいはカナビスがアルコールよりも安全かどうかなどは関係がない。