カナビスが

インシュリン受容体を活性化する


Source: IACM
Pub date: 12 April 2009
Diabetes, cannabis extract on insulin
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin/
ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=293#1


フィトメデシン2009年4月1日号に掲載された データ によると、カナビスの主要活性成分であるTHCにはインシュリン受容体(レセプター)の活性を促して糖尿病を抑制する効果があることが示された。

世界では、慢性的な疾患である糖尿病(2型)におよそ1億5000万人が被患していると考えられているが、その原因は、体内で生成されるインシュリンの量が不足したり、あるいはインスリンがあるにもかかわらず糖分(グルコース)を十分に分解できなくなったために起こる。

これまでには、カナビスの喫煙で血糖値が下がったことを示す報告はごく僅かしかないが、南アフリカのネルソン・マンデラ・メトロポリタン大学の研究チームは、カナビスの抽出成分がインシュリン耐性脂肪細胞に対するインシュリン取り込み感度にどのような影響を与えるかを調べた。

インシュリン耐性は、インシュリンがあるのにもかかわらず糖分を吸収できない現象で、サイトカインの一種で腫瘍壊死因子として知られるアルファーTNFのレベルが上昇することでインシュリン受容体の働きが抑制されるために発生するとされている。

この研究では、前駆脂肪細胞培養株(3T3-L1)を使って油溶性のカナビス抽出成分が脂質生成にどのような影響があるかを調べて、インシュリン耐性の脂肪細胞に対するインシュリン感度を測定している。

細胞は、10%のウシ胎児血清をDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)で培養して分化し、インシュリンを含んだ分化細胞と含まない分化細胞それぞれにカナビス抽出成分を与えて、脂質量に続いてグルコースの取り込み量を調べた。

その結果、THCの濃度が増加するのにともなって脂質生成率が減少して、インシュリンによるグルコースの取り込み量が増えた。これは、THCには抗糖尿病特性が備わっていることを示唆している。

今回の論文:
Biological effects of THC and a lipophilic cannabis extract on normal and insulin resistant 3T3-L1 adipocytes. Gallant M, et al., Phytomedicine 2009 Apr 1.

糖尿病には、膵臓の重度の障害で体内でインシュリンがほとんど生成されない1型と、そうではない2型があり、後者が全体の95%を占めている。

2型については、インスリンの生成が少ない、インシュリンの活性が悪い、インシュリン受容体がインシュリンを受け付けない、といった原因に大別することができると言われている。

従来は、単にインスリンの不足によって糖尿病が引き起こされると考えられていたが,最近では,インシュリンは生成されても、その状態やインシュリン受容体の機能に問題がある場合についても糖代謝が正常に行われなくなって糖尿病になることが分かってきた。

このために、糖尿病の薬には狙いの異なったさまざまなものがあり、人によって効果があったりなかったりする。

そうした中で重要なことは、インシュリン不足や活性不足には注射で外部から補うことができるが、細胞のインシュリン・レセプターそのものが機能しないといくら外部から補っても効果が得られないという点にある。

レセプターの機能改善(GTF)についてはクロムなどに効果があることが確かめられているが、一般に体内への吸収が非常に悪いという欠点もある。

今回の研究も、THCによるレセプターの機能改善という範疇に属するが、摂取法なども含めて実際にどれほどの効果が得られるのかについてはまだ未知数だと言える。