小規模臨床ケース・スタディ

THCが強固な統合失調症を改善

Source: IACM-Bulletin
Pub date: May 24, 2009
THC improved symptoms of schizophrenia
in a few patients in a clinical case series
http://www.cannabis-med.org/english/bulletin/
ww_en_db_cannabis_artikel.php?id=296#2


臨床精神薬理学ジャーナルに掲載された 報告 によると、経口THC(ドロナビノール)を投与した強固な統合失調症患者の症状が改善した。

この研究を行ったのはニューヨーク州オレンジバーグにあるロックランド精神医学センターの研究チームで、一人の患者の症状が劇的に改善したことから、200人の患者の中からリスク・ベネフィットアセスメントに合致し、しかもカナビスの使用で症状が改善すると自己報告している人を除いた5人の重度・難治性の患者を選んでさらに実験を行った。

THCの投与量は、最初の1週目には2.5mgを一日2回、2週目には5mgを一日2回、3週目には10mgを一日2回と順次増量した。

その結果、5人のうちの3人もTHCで症状が改善が見られた(最初の一人を加えると4人)。臨床的には目立った副作用は観察されなかった。また、一人については著しい改善が見られるまでには8週間を要したが、他の人たちはそれほど時間はかからなかった。

研究者たちは、「4人のうちの3人に見られた改善は、単に症状が鎮静化したのではなく、精神症の中核的な症状が弱まったことによってもたらされたと考えられる」 と書いている。

最近まで、カナビノイドが精神病を悪化させるという主張にもとづいて、カナビノイドをブロッカーするリモナバントを投与すれば統合失調症の症状を改善する効果があるのではと期待もあった。

しかし、「実際にはリモナバントでは改善しないことが報告されており、今回の結果はそれを逆の面から補完するものになっている。このことは、精神病にカナビノイドが果たす役割が従来考えられていたよりももっとずっと複雑であることを示唆している。今回の実験によって、統合失調症治療におけるカナビノイドの新しい可能性が示された。」

今回の論文:
Synthetic delta-9- tetrahydrocannabinol (dronabinol) can improve the symptoms of schizophrenia. Schwarcz G, Karajgi B, McCarthy R. , J Clin Psychopharmacol 2009;29(3):255-8.