変革を誘発する医療カナビス


Pub date: Feb 2, 2005
Author: Dau, Cannabis Study House


カナビスが多発性硬化症や緑内障などの難病の治療に有効なことは専門家ではもはや疑う人のほうが少ない。今では各国において医療用カナビスの合法化を求める活動が活発に行われている。

カナビスの先進国オランダでは2003年9月から正式に薬局で医療用カナビスの販売が認められた。画期的なことではあったが、その後の動向はあまり評判はいいとは言えない。薬局などにとってはいろいろな薬の一つに過ぎないのでそれほど熱心ではなく、また販売に必要な知識も乏しいかった。さらに、当初は保健の補助も適用されなかったので高額で患者に敬遠されてしまう結果になってしまった。

認可1年を経て、保険会社の補償率も改善され患者の経済的な負担は軽減されたが、それでも評判は悪く、コーヒーショップのカナビスに比べて値段ばかりではなく品質も劣っていて、当初の販売見込みの40%にも達せず政府と医薬品業界の思惑は全く外れた。

アメリカやカナダ、日本などほとんどの国では一般のカナビス解禁に先駆けて医療カナビスの合法化を求める運動が行われているが、オランダでは一般の使用が容認されているなかで医療カナビスの合法化が行われた。すでに存在する市場に医療カナビスを法的な後ろ盾を与えて参入させたことになる。

そのぶん医療カナビスの合法化がもたらした別の社会的な側面があらわになってきた。多くの場合がそうであるように、規則を作る側は患者のことより医薬品業界の意向を優先させてカナビスの生産の独占と他の医薬品の売上げに影響がないように価格を操作していた疑いがあり、患者にメリットをもたらすものではなかった。

普通の医薬品と同様にオランダでも医薬品としての均一性や安全性が医療カナビスを合法化の理由になったが、カナビスの場合は摂取してから効果が出てくる時間が短く、例え品質が均一でなくとも患者は自ら必要な摂取量をコントロールしやすく、また致死量が知られていないほど安全性が高い。さらにカナビスは一粒の種さえあれば誰でも簡単に栽培できるのだから、処方医薬品として製薬会社に独占を与えて管理しようとすること自体が不自然だったのだ。

このオランダの経験は、カナビスが禁止されている国で合法化を求める際に医療用カナビスを前面に打出す戦略の難しさを示唆している。特許と独占しか頭にない製薬会社は、カナビスを利用した医薬品を開発して特許で固め、安定供給を理由に栽培の独占を狙うに違いないし、政府は医療用のカナビスを認めて譲歩することを理由に医療用以外の栽培や使用の禁止を徹底する可能性が高い。

現在、有力な製薬会社がスプレー・タイプのカナビス医薬品を開発しているが、もともと摂取法が多様なカナビスをスプレーだけというような一方的な押しつけでは多様な患者に対応できないだろう。 もともとカナビスの活性成分であるカナビノイド類の構成比率は植物の種類によって多様で、病状とは相性がある。

患者は自分に合ったカナビスを見い出すためにも、自分で栽培したり知り合いと分け合ったりして、知識と体験と現物を共有できるようになければならない。医療カナビスの合法化には、結局、一般のカナビスの合法化も不可欠なのだ。