国土交通省近畿地方整備局主任が官舎で大麻を栽培し、近畿厚生局麻薬取締部に逮捕された。その事件をMSN産経ニュースは次のように伝えた(捕まった人の氏名は各社の報道に本名が書かれているが、以前、別の大麻事件の記事を引用した際、容疑者の親族から名前を伏せてほしいという連絡があったので、今後も含め、当サイトでは名前は伏字にすることにした)。
自宅官舎で大麻草栽培 国交省主任を逮捕 「妻と吸った」
2008.7.9 13:40
国土交通省近畿地方整備局の主任が大津市内の自宅官舎で大麻草を栽培していたとして、近畿厚生局麻薬取締部は9日、大麻取締法違反(栽培)の現行犯で大津市一里山、同整備局大戸川ダム工事事務所用地課主任、◇◇◇◇容疑者(43)を逮捕した。調べに対し「密売人から買うと捕まる可能性があるので、2年前から自分で栽培を始めた。これまでに2回収穫し、妻と一緒に吸っていた」と供述しているという。
調べでは、◇◇容疑者は9日、大津市の自宅官舎で大麻草55本を栽培していた疑い。麻薬取締部が同日朝、家宅捜索し、大麻草を発見した。麻薬取締部は、大麻の使用容疑でも調べるとともに、大麻草の種子の入手経路などを追及する。
◇◇容疑者は平成2年、同整備局に採用され、17年4月から大戸川ダム事務所で買収済み用地の管理業務などに従事していた。同事務所によると、最近は休みがちで、今月に入ってからはほぼ1日おきの勤務だった。8日朝に本人から欠勤の連絡があったが、9日は朝から連絡が取れていなかったという。
木下誠也・近畿地方整備局長の話 「職員が逮捕されたことは国家公務員の信頼を傷つける行為であり、極めて遺憾。事実関係について確認し、厳正な措置を講じるとともに改めて綱紀の保持を徹底したい」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080709/crm0807091341016-n1.htm
記事には「大麻の使用容疑でも調べる」と書かれている。産経には前にも同じことを伝えているが、大麻に使用罪はない。同じ事件を伝える他社の記事も見たが、「使用容疑でも調べる」と書いているのは産経だけだった。
以前、電話対応した産経の担当者は、大麻に使用罪はあると言い張った。
参照:産経新聞は明らかな誤報を訂正しないのだろうか?(2007-12-26)
産経新聞は一般社会と違う法体系で統治されているのだろうか。産経社内ではともあれ、ふつーの日本社会では、大麻取扱者免許を持っている者が目的外に使用することは禁じられているが、吸引という意味での使用を罰する規定は大麻取締法にない。
この事件をマスコミに公表した近畿厚生局麻薬取締部(以下「キンマ」)に電話で確認した。大麻に使用罪があるのかと訊くと、キンマの担当者は「ありませんねえ」と答えた。産経の報道を見ると、「使用容疑でも調べる」と書かれているが、これはキンマがそのように情報を出したのかと問うと、「こちらでそういう発表をすることはありませんので、それは書くほうが間違ったと思われますが」とのこと。大麻の取り締まりを強化する目的で、キンマが意図的に誤った情報を産経に書かせたということはないのかと訊くと、「いえいえ、そいうことはありえませんので」と電話の向こうで苦笑していた。では「使用容疑でも調べる」というのは誤りですね?と確認すると、「そうですね、誤りですね」と答えた。
産経の大阪に電話して、記事に誤りがあることを伝えた。いろいろ説明したが、ウェブは東京で管理しているとのことで、東京にかけ直し、「使用容疑でも調べる」というのは捕まえた当局の人も誤りだと言っているので修正するよう求めた。以前のように、大麻には使用罪があるとか、自社ニュースとして出しておきながら事実関係は確認できないとか言い張るかと思ったが、記事を書いた記者に確認のうえ、対応するとのことだった。どのような対応をするのか確認したいと言うと、2時間ほど時間がほしいとのこと。3時間以上経ってからになったが、改めて記事を見ると、「大麻の使用容疑でも調べる」と書かれていた箇所が、「大麻の使用状況などについても調べる」と修正されていた。ので、確認の電話はしなかった。
このような、マスコミによる明らかな誤りは、しつこく訂正を求めたいと思う。読者に間違った認識を与えないためでもあるし、それより何よりまず社会部記者の認識を改めてもらう意味もある。
産経新聞社にも国内法が適用になったらしいのは幸いだった。
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