日本の公的大麻情報を巡る取り組みの経過と展望(2)

投稿日時 2008-11-28 | カテゴリ: 白坂の雑記帳

06年6月12日、ほぼ2年ぶりにダメセンに電話をし、『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』に書かれている大麻情報を、現在の科学的知見に基づいた記述に改めるよう糸井専務理事に要望した。
糸井氏は、警戒しながらも、こちらから具体的な指摘を申し入れれば、厚労省の担当者に申し送ると回答した。
●(財)麻薬・覚せい剤濫用防止センターへの電話インタビュー

二日後、さっそく記述の誤りを指摘しようとダメセンに電話をしたところ、糸井専務理事は不在だったが、資材販売担当の方に驚くような話を聞くことができた。
糸井氏が「読本」やダメゼッタイ大麻情報の出典だと説明した「ドラッグ エデュケーション マニュアル」とは、ダメセンが10年前までアメリカから輸入していた薬物標本レプリカの説明書だというのだ。
●スクープ!!「ダメ。ゼッタイ。」サイトの大麻に関する記述

私は、既に販売していないという「読本」を、資材担当者にお願いして、本当は買いたくなかったが、購入した。
●薬物乱用防止教育指導者読本

その「読本」と、ウェブで公開されているダメセン大麻情報を読み比べると、「読本」では翻訳者の感想として書かれている注釈が、ウェブでは翻訳者の感想であることが隠蔽されている。が、それを除けばウェブの大麻情報は、検挙者数年次統計などを除き、「読本」をそのまま転載していることが分かる。
●日本の公的大麻情報

しかし、その「読本」にも、「大麻精神病」の根拠を示す出典は示されていない。
当時、ダメセンのトップページには、「このホームページは厚生労働省の委託を受けて運営されています」と明記されていた。以下はInternet Archive: Wayback Machineから抽出した、2007年3月16日時点での、ダメセンのトップページだ。分かりにくいが、赤い矢印を付した箇所に「厚労省の委託を受けて運営されています」と書かれている。

「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ 070316


06年6月15日、私は厚生労働省に電話して、『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』の委託を担当している部署に転送してもらった。担当は「医薬食品局監視指導・麻薬対策課」だとのことで、担当者として電話に出たのは私が逮捕されたときにガサに来た近畿厚生局麻薬取締部(略称「キンマ」)の麻薬取締官(略称「マトリ」)、秋篠氏だった。驚いた。異動になったのだそうだ。
●厚労省監視指導麻薬対策課への申し入れ(1)

私は、出典不明で根拠も示せないダメゼッタイ大麻情報を見直して欲しいと伝えた。秋篠氏は、見直す必要があるかどうか確認し、連絡をくれると言った。

私は、これまで、秋篠氏のことを、「嘘つきは麻薬取締官の始まり」などと批判(≒罵倒)してきた(ごめんね)。が、正直に言うと、、、、捕まったほうが言うのもなんだが、、、彼は悪い人ではない。私が大阪拘置所に護送された時、車のなかでキャスターマイルドを勧めてくれたりもした。根は優しい人だと思う(多分)。取り調べを受けた際の雑談などでも、彼の実直さというか、人の良さを私は感じていた。もし彼が尊大で、頭から国民を見下すような人であれば、ダメセン大麻情報を見直す必要があるかどうかを確認して連絡をくれるなどという対応はしなかっただろう。適当にあしらって電話を切れば済むことだ。現ダメセン渡り専務理事・冨澤正夫氏のように。

ほぼ1週間後の06年6月23日、秋篠氏から電話があった。「読本」、つまりは「ダメセン大麻情報」の出典について、改めてダメセンに確認したところ、根拠文書が出てきたという。ただ、原本は残っておらず、英語原文のコピーをダメセンからファックスで送ってもらったそうだ。その英語原本のコピーがダメセン大麻情報の根拠論文だと秋篠氏は説明した。しかし、その英語原本にも「大麻精神病」などの医学的根拠を示す研究論文の出典は明示されていないとのこと。それでは情報の出典が明らかになったとは言えない。私はダメセン大麻情報に書かれている内容の根拠を示す研究の出典を示すよう改めてしつこく求め、秋篠氏は調べて回答すると言った。根は実直な人なのだとこのときも思った。
●監視指導麻薬対策課の回答

私は気長に待つことにしたが、2ヶ月が過ぎても連絡がないので、06年9月5日、どうなっているのかを電話で確かめた。秋篠氏は、同僚にも手伝ってもらって調べているが、英語原文に書かれている大麻情報を裏付ける研究論文について、未だに分からないのだと弁明した。

私は、『読本』と『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』を読み比べていた。そして、「読本」では翻訳者の感想として注記されている、大麻は『蓬を燃やした時のような一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じました』という箇所が、ダメセンのウェブでは翻訳者の感想であることが隠されていることを秋篠氏に問い質した。
知人の盲の鍼灸師に話したら、灸に使う艾(もぐさ)の原料である蓬を燃やしたようでクサイとは差別的であると激怒し、訂正しなければ然るべき措置を取ると言っていたと、秋篠氏に伝えた。・・・ごめんね、これ、ボク、嘘つきました。知り合いに盲の鍼灸師はいるけど、そんな話をしたことはないです。そー言ったほうがマトモに対応するだろうと思って・・・。マトリを騙してすいません。
この差別的な表現をどうするのだ、訳者の注記はウェブから削除せよ、と責め立てる私に、秋篠氏は、課内で検討して回答すると言ってくださりました。

ほぼ1週間後の06年9月15日、秋篠氏から電話を頂き、蓬を燃やしたようでクサイというのは不適切だから修正するとの回答だった。作戦成功。1週間もあれば修正は完了するとのことだった。だが、翻訳者の感想でしかない部分を1行削除するだけなのに1週間もかかるというので、私がやってあげようと申し出たが、断られた。
●厚労省監視指導麻薬対策課への申し入れ(3)

しかし、2週間が過ぎても修正はされなかった。何度か電話して確認しても、こればかりやっているわけではない、この情報を放置したからと言って人が死ぬわけではない、などと、秋篠氏は言い訳をした。

06年10月10日。課長に文句を言おうと思って電話をし、窓口に課長を出せと伝えたが、出たのは秋篠氏で、ようやく修正の手続きをし、ダメセンにも連絡したと言った。
●約束を守らない麻薬対策課秋篠氏との対話

しかしまあ、修正された文言は、「蓬」は削除されたものの、「クサイと感じる人もいます」はそのままだったのである。やられた。
その後、秋篠氏はどうしたわけか電話に出なくなり、情報係長の藤原氏が対応した。この藤原氏は、桂川さんが逮捕されたときに、ガサを仕切っていたキンマ(私称「キンタマのタ抜き」)の親方格だった。
●豪傑逮捕 2003.07.14/嗜好目的大麻免許申請記

麻薬対策課情報係長の藤原氏は、あっさりと、公的大麻情報に根拠がないことを認めた。そして、「読本」で翻訳者の感想として書かれていることを、ダメセンのウェブで誤魔化して書いても、そもそも出典を示していないのだから改竄ではないと言った。
●麻薬対策課情報係長藤原氏との対話

(つづく)





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