From Hempire Cafe

次善のカナビス医療薬

サティベックスは妥協の産物

The Economist, 27th January 2006
Medical Marijuana Second Best
http://www.thehempire.com/index.php/
cannabis/news/medical_marijuana_second_best


イギリスの180万人ともいわれるカナビス常用者にとって、1月19日はいつもよりさらに混乱の渦に翻弄される一日となった。

チャールス・クラーク内務相が、カナビスの分類を戻して所持の量刑を引き上げないことにしたとは言いながらも、カナビスは非常に危険であると強調している時、その通りをはさんだところでは、カナビスを栽培することを許可された会社が、投資家たちに向かって事業は急拡大していると語っていた。件のGW製薬は、おそらく、この皮肉ともいえる状況ににんまりしていたに違いない。

カナビスを吸うことに対して敵対的な方針をとっている国で、もし、あなたが世界で唯一医薬品としてのカナビス抽出液を合法的に生産できるとしたら、それは願ってもないビジネス・チャンスを手にしていると言える。

GW製薬は1998年にイギリスでライセンスを取得したが、その理由の一つが多発性硬化症やエイズ、癌の痛みの緩和にカナビスを吸うことへの国の嫌悪感があった。「車いすに囚われた多発性硬化症患者たちが抗議して議会に大挙押しかけるという悪夢のような時期でした。」 とGW製薬の設立者ゲオフェリー・ガイは語っている。上院の長老たちさえ、医師がカナビスを処方できるように妥協をせざるを得ないと考えていた。

GW製薬によって開発された舌下スプレー・サティベックスは、患者と政治家の双方を助けることになると期待された。規制処方箋医薬品にすれば嗜好用途のカナビス・ユーザーに混同されて使われることもなく、政府はカナビスを解禁せずに患者たちをなだめることができることになる。

臨床試験は1999年から開始されて現在も続いている。海外からも関心を呼び、昨年カナダでは50万ポンド(約1億円)を売り上げた。スペイン政府も600人分のサティベックスを求めてGW製薬に接触してきている。

最も期待されているのはアメリカで、今月に入ってから食品医薬品局(FDA)は、癌末期の患者向け鎮痛薬としてGW製薬のカナビス・ベース薬品の臨床試験を許可している。全米では11州で医療カナビスが州法で許可され11万5000人が利用しているが、連邦政府は州からライセンスされた患者であってもカナビスを使えば逮捕すると脅している。

サティベックスは、現在認可されている合成THC製剤(マリノール)と違い、天然の植物から抽出した成分から作られているので誰にでも相性が良いと考えられている。しかし、品種のたくさんある天然の医療カナビスは成分ももっと多様性に富んでおり、それに対してサティベックスは価格も高くて通常のジョイントに比較しても効力が弱いと指摘する人もいる。

「サティベックスのセールチャンスは、政府が、マリファナを非常に危険なもので、しかもサティベックスのみが危険を回避できると人々に信じ込ませることができるかどうかにかかっています。」 と元ハーバード大学医学部精神学科教授レスター・グリンスプーン博士は述べている。

「最も根本的な問題は、利用できるどの医薬品よりも際立って害の少ない天然のカナビスをそのまま吸ったり蒸気にして吸引したりすることに比べて、サティベックスにはそれよりも優れている点がないことにあります。」

参考:  サティベックスはなぜ舌下スプレーなのか? by Dr. Lester Grinspoon MD