カナビスの記憶撹乱がてんかんを防ぐ

Source: LiveScience.com
Pub date: November 19, 2006
Subj: Why Marijuana Impairs Memory
Author: Charles Q. Choi, Special To LiveScience
http://cannabisnews.com/news/22/thread22393.shtml


ニュージャージー州ラドガー大学の研究者たちは、カナビスが脳の記憶に障害を起こし、なぜ脳内に自然に生成される体内カナビノイド(エンドカナビノイド)にはてんかんを防止する可能性があるのかを明らかにした。

正確なメカニズムについては未だ不明確とはいえ、カナビスの活性成分であるTHCが海馬(ヒポカンパス)など脳の記憶を司る領域と結合すると、記憶が障害を受けることは以前から知られているが、神経学者のデイビット・ロブとジョルジュ・ブザーキーが率いる研究チームは、それを詳しく解明するためにラットの海馬の活動の様子について調べた。

その結果、正常時にはこの部位の脳細胞の電気信号はほぼ同期を取りながら活動しているのに対して、ラットにTHCや同種の合成化合物を注射すると、海馬の正常な同期が乱れて混乱状態になり、その間は、てんかんを引き起こす神経刺激を発火(てんかん放電)してもタイミングがずれてうまく発火しないことが分かった。

この現象についてブザーキー博士は、耳を塞がれて、指揮者が見えないように目隠しされたオーケストラみたいなものだと説明している。

「そのようにしても、各プレイヤーは自分の受け持ったパートを演奏し続づけることができるわけですが、他のプレイヤーの楽器の音や指揮者の示指をフィードバックできませんから、自分の感覚だけで演奏することになってしまいます。たとえ楽譜に従って演奏したとしても、音を外すか、完全に調子ぱずれになってしまいます。何が欠けているかと言えば、その都度同期を取りながら協調するということができなくなるのです。これと同じようなことが、カナビスの影響で、海馬の回路にも起こっていると考えられます。」

ラットの海馬の記憶状態をテストするには、迷路の中に置かれた水の位置を繰り返し憶えさせて、早く到達できる度合を計るのが標準的な方法となっている。実験では、海馬の記憶がTHCなどで乱されると、同期性が低下してラットのミスの回数も増えた。このことは、脳細胞における同期的な活動が、記憶の形成に決定的な影響を与えていることを示しており、THCが脳の同期活動を乱して記憶に障害を起こすことを示唆している。

一方では、研究者たちは、THCが脳細胞の同期活動を乱すことが、発作を抑える可能性につながっているとも指摘している。発作が起こっている間は、脳の活動が異常にまで同期して共鳴してしまうが、以前行われた研究では、脳内のエンドカナビノイドが発作を抑えることが示されている。

だが、カナビスについては、てんかんに本当に効くのかどうかははっきりしていない。効いたとする症例は何世紀も前から語られているが、動物実験では逆にひきつけを促進させるという結果も報告されている。

今回の研究報告は、ネーチャー・ニューロサイエンス・ジャーナルの12月号に掲載されることになっている。

てんかんは、多くの場合、けいれんなどを伴ない、記憶が乱れたり、突然意識を失ったり、昏倒する場合もある。発作は一過性で、数分〜十数分程度で回復する。発作は、主に意識と随意運動に現れ、呼吸などの不随意運動はあまり影響しない。

記憶が障害を受けるという話になると、すぐに、カナビスが脳障害を起こすという神話を思い起こす人がいるかもしれない。しかし、この研究では、カナビスが脳細胞を回復不能にまで破壊するすると言っているわけではなく、カナビスの影響下で記憶に乱れが生ずるということを示しているだけで、時間とともに影響がなくなれば乱れもおさまり、記憶力も元にもどるというモデルになっている。

参考:
神話 8 マリファナは脳障害を引き起こす (カナビス神話を暴く 1995)
政府の詭弁 7 マリファナが脳障害を起こす (NORML、真実の報告 2005)