カナダ、開発進む新しいヘンプ技術

石油依存製品から脱却、新製品続々

Source: Business Edge
Pub date: 22 Dec 2006
Subj: Hemp Grows With Technological Advance
Author: Sharon Adams
http://www.mapinc.org/norml/v06/n1731/a05.htm?134


急成長するカナダのヘンプ産業

カナダでは、今年ヘンプの生産が2倍に増えた。以前はニッチ商品に過ぎなかったが、美味なヘンプ・オイルやヘンプ・プロテイン、ヘンプ・シードなどが開発されて食品の主翼商品の列に加わった。ヘンプ繊維の生産も同じく急成長しており、持続可能な商品に対する消費者の需要も世界中で増加している。

「全国のヘンプの栽培面積は、2005年には2万2000エーカーでしたが、今年は4万5000エーカーに大きく増えています」と、サスカチューワン州を本拠もするカナダ・ヘンプ取引アライアンスのアーサー・ハンクス代表は語っている。「われわれの市場は力強さをもっています。」 一部では1ブッシェル当たり38ドルも稼ぎ出して、「ヘンプは儲かる」と考えられていると言う。


現在では食品が主体

実質的には、現在カナダで栽培されているヘンプのほとんどは、ヘンプ・オイル、ヘンプ・ナッツ、ヘンプ・プロテインといった食品に加工されているが、そのどれもが、高プロテイン、高品質必須脂肪酸やアミノ酸といった特徴を備えている。カナダで産業用ヘンプが合法化されたのは1998年で、それ以来、市場は強い成長を続けている。

マニトバ・ハーベスト社では、ヘンプ・オイル、ヘンプ・ナッツシーズ、乳製品を使わない飲物、プロテイン・パウダー、ヘンプ・バターなどを、北アメリカや日本、ヨーロッパにある3000の自然食品店に送り出している。毎年50%の成長を続け、今年1年間だけでも売上げは300万ドルに達している。

2006年のシード生産農地の契約は6000エーカーで4倍に増え、25農家から有機・非遺伝子組み換え(non-GMO)シードの供給を受けている。「彼らは先頭を行く農家ですが、だからと言って例外的なわけでもありません」 とハンクス氏は言う。


市場競争でも優位に立つカナダ

カナダのヘンプ食品は、市場競争でも優位な位置に立っている。

産業用ヘンプには、ハシシやカナビスに含まれるTHCが少なく、精神効果を持っていないが、アメリカでは、ディーラーたちが産業用ヘンプに紛れて強いカナビスを栽培することを恐れて未だに産業用ヘンプは違法のままになっている。

国境をはさんで、アメリカの生産者たちも法律の変更を働きかけているが、カナダのヘンプ産業には、高価で先細り必至の石油代替品の研究やエコロジーへの負荷がより少ない作物の開発といった世界的な潮流の変化に対して、時間も資金も有利に作用している。


食品以外にもさまざまな用途

ヘンプは、技術的進歩によって、さまざまな産業用途において石油ベースの製品に太刀打ちできるようになってきている。新技術を利用して、ヘンプからは成形プラスチックやバイオ合成素材が製造され、メルセデス・ベンツなどの自動車会社でも車内の内装パネルなどに使っている。

ヘンプからは、また、バイオ燃料をはじめ、調理台、断熱材、ストローベイル建材なども作られている。さらに、天然衣料品市場では、ヘンプはコットンの代替品にもなっている。

栄養的な面の他にも、作物の健康や環境保全に優れていると言われている。ヘンプは害虫に強く、成長もはやく、お互いに密生させて栽培できるので、農薬や除草剤、肥料などが削減できる。また、アルファルファなどの作物の周囲にヘンプを植えておくと、土中のチッソ成分が固定して肥料が長持ちする。

根が深く成長するヘンプは、窒素の流出を防ぎ、養分を土に戻すので連作することもできる。灌漑に必要な水も少なく、植物全体が利用可能で作物に無駄もない。


着実な成長を続ける売上げ

世界では、数十ヵ国で60万エーカー以上が栽培されており、その中では中国が最も多くなっている。カナダでは、ヘンプ作物の半数がマニトバ州、3分の1がサスカチューワン州で栽培されている。

ハンクス氏によれば、世界のヘンプ総売上げは、石油が暴騰し始める前までの2002年に2500億ドルだった。現在の北アメリカ市場の売上げはおよそ400億ドルだが、需要は引き続き上昇を続けると見込まれている。

イギリスのロンドン近郊のタビストックのオンタリオ・ヘンプ・アライアンス支部をあずかるゴードン・シャイフェール代表によれば、カナダのヘンプ食品や産業用資材、副産物などの輸出は、アメリカが栽培を認めるようにならない限り着実に伸び続ける、と言う。「ヘンプ食品市場が今後も伸びつづけますよ。一時的な流行ではありません。時代の流れなのです」とハンクス氏も語っている。


旺盛な研究開発

彼は、また、国中の企業家や研究者、投資家たちがヘンプ繊維産業の立ち上げにも取り組んでいる、とも指摘している。

1990年代からヘンプ作物の合法化にかかわってきたシャイフェール氏も、「科学的な面からも、客観的にもそのように判断しています。カナダにとっての新しい作物の開発が対象になっています」と述べている。「ですが、今後どのようになって行くかについては不透明です。懸念や批判も多く、今のところ収まる気配はありません。」

懸念の多くは、産業全体を根本から構築しなければならないことから来ている。作物を合法化することから始まって、さまざまなカナダの地域の気候・土壌・水の条件に敵する品種の改良、食品・産業用資材・建材などの研究開発に加えて、消費者教育も課題になる。

しかし、現在では、国中の生産者や何十もの企業が、政府の上層部とともに取り組んでおり、投資家も研究や商品開発、生産設備の建設に資金を提供している。


ヘンプ繊維産業

ナチョラリー・アドバンスト・テクノロジー社のジェリー・クロール取締役代表は、250億ドルの綿(コットン)産業について、「綿産業は、地球上の化学薬品や殺虫剤の使用に対して大きな責任があります」と問題点を指摘している。

さらに、綿花の栽培には多量の水資源が必要で、「綿のTシャツ1枚で6587リットルもの水を使う」ために、水不足に悩む東アフリカなどの経済にとっては大変な重荷になっている、と言う。

しかし、カナダで開発された新しい技術を使えば、経済的に見ても、綿繊維からヘンプ繊維に転換できる、としている。


酵素を利用した新技術

今月の始め、ナチョラリー・アドバンスト・テクノロジー社は、コストを大幅に下げて短時間でヘンプから布を作ることのできる酵素を利用した技術の使用権利を獲得している。

現在までのところでは、ヘンプ繊維からきちんとした布を製造するのに60日を要していたが、この酵素技術を使えば約5時間で済む。登録商標になっているクライラー(Crailar)は白くソフトな布で、綿の4倍の強靭さをもっている。

また、クライラー1ポンド当たりの製造経費は、綿の62セントに対して42セントしかかからない。


2007年は飛躍の年

会社では、2007年に、ハイエンド・ファッションと環境に敏感な消費者向けに販促キャンペーンを繰り広げ、布とカライラー衣料品の限定販売を開始する計画を立てている。

「2007年にブレイクさせることは難しくないと思っています」とクロール氏は語る。2006年の売上げは100万ドルの大台に乗ることが見込まれている。昨年は2004年の15%増だったが、96万ドルで大台には及ばなかった。

「ヘンプは、カナダのとって最大の輸出作物の一つになりつつあります。いよいよ大きな転換点も目前です。」


カナダの代表的なヘンプ・リーディング・カンパニー

  • ヘンプライン(Hempline): オンタリオ州デラウエア。自動車など合成樹脂の強化に使う細かいヘンプ繊維の製造や、動物用寝床のスポンジ素材、庭用チップ材。

  • アバンティー・ポリマー(Avanti Polymers): 本拠カルガリー。調理台などの軽量で丈夫な家具の製造。アメリカ国境近くの南ウイニペグ・グレトナに製造拠点を置いている。現在は、レジャーや商用車の内壁パネル・システムの開発にも取り組んでいる。

  • パークランド・インダストリアル・ヘンプ・グロワー(Parkland Industrial Hemp Growers Co-op Ltd): マニトバ。 ヘンプ穀物、鳥の餌の生産。シード・ストックと苗床システム。関連会社のパークランド・バイオファイバー社では、7月に、ウイニペグ北西約300kmのドーフィンにヘンプ・バイオファイバー生産施設建設に向けて非営利団体のSDTC(Sustainable Development Technology Canada)から300万ドルの資金提供を受けた。ヨーロッパの技術を使って、バイオファイバー断熱材を始め、動物の寝床や園芸用不織布マットなどの生産を行うことになっている。

  • マニトバ大学スマートパーク・コンポジット・イノベーション・センター(The Composite Innovation Centre at the University of Manitoba's Smart Park): カナダ農務・農産食品省から、バイオ素材研究と商品化のために75万ドルの助成金を受けている。

  • ナチュラリー・アドバンスト・テクノロジー(Naturally Advanced Technologies、 旧Hemptown ) : ブリティシュ・コロンビア。アルバータ州に2000〜3000万ドル規模の繊維処理プラントの建設に向けて調査を進めている。