From Hempire Cafe

合法化はうまく機能するか?

ENCODの提唱する実現可能なシナリオ


Joep Oomen (ENCOD)

Source: cafebabel.com
Pub date: 4th July 2006
Subj: Would legalisation work?
Author: Joep Oomen
http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/would_legalisation_work


ドラッグ戦争は多くの善良なヨーロッパ市民を不必要に犯罪人のリストに加えてきたが、その一方で、犯罪組織に対しては膨大な利益をもたらし続けてきた。こうした現実があるにもかかわらずドラッグ政策は顧みられず、ドラッグ使用ばかりが増え続けている。今こそ、これまでとは違う道を探るべき時にきている。

現在では、明らかに、ドラッグ問題は国際的な問題として対処しなければならなってきているが、根本的な論点は、ドラッグの生産や流通を今まで通り禁止し続けるべきか、それともドラッグ戦争が破綻している事実を受け入れて合法的なドラッグ市場の枠組を作るべきか、という点に絞られる。EU各国はこの重大問題により協調しあったアプローチを取って、その答えを探る必要性に迫られている。

ヨーロッパではこれまで国ごとにそれぞれ異なったドラッグ政策を採用してきた。その違いは、オランダの寛容政策からスエーデンやフランスのゼロ・トレランスまで幅広い。幸いEUでは、ヨーロッパ・ドラッグ乱用監視センター(EMCDDA)が各国の政策などを年次報告で集約してくれているので、その政策の違いがもたらした結果を比較すれば、答えを探る手がかりが得られる。


めざましい結果

その比較結果にはめざましい特徴が現れている。実は、採用しているドラッグ政策とドラッグ使用のひろがりの間には何ら明確な違いは見られないのだ。リベラルな政策の国では、厳しい国よりもドラッグ使用のひろがりが大きくなっているというような事実はない。

例えば、2003年のヨーロッパ27ヵ国について調べたEMCDDAの調査によると、15〜16才の未成年でのカナビス利用度、つまりカナビスを家庭や学校近くで「極めて簡単に入手できる状況」に関しては、成人のカナビス購入が認められているオランダは、カナビスの販売が全面的に禁止されている他の9ヶ国よりも低くなっている。

また、ドラッグ関連問題の発生を軽減または回避することを第一に考えた政策の国では、公衆衛生や安全の問題で好ましい結果が得られている。

例えば、多くのヨーロッパの都市では、エイズの蔓延を防止するためにクリーンな注射針の配布を行っているが、それによってヘロインの流通をコントロールしてユーザーが生活を建て直すことに役立っている。また、オランダ100都市におけるコーヒーショップの存在は、カナビスの違法販売に関連した犯罪や社会の混乱の発生を抑えている。


禁止のコスト

実際には、ドラッグに関連した問題の大半はドラッグそのものにあるのではなく、違法であるという事実から派生している。ドラッグの生産や販売・消費が禁止されている状況下では、どうしてもドラッグの品質は悪く高額になってしまうので、生産者と消費者の双方にいろいろネガティブな影響が出てくる。

一方では、犯罪組織には多額の利益をもたらす結果になっている。国連の数字 によると、その収入は年間で300〜400兆ユーロ、つまり1秒間に1万ユーロに達している。当然、こうした利益は他の犯罪やテロのような破壊活動の資金にもなっている。

また、禁止を維持するためのドラッグ戦争に費される社会の負担は、EUだけで年間6.5兆ユーロに達していると見積もられている。それにもかかわらず、違法ドラッグの密売に対する効果は微々たるものに過ぎない。密売にうまみを無くすためには取引量の75%を押収する必要があるとされているが、ヨーロッパでは15%を越えたことはない。

こうした現状を見て、現在のドラッグ政策が非生産的で無策な時代遅れなものになっていると考える専門家や市民がますます増えている。そうした人たちの間では、ドラッグを合法化すれば問題が削減でき、社会に大きな利益をもたらすようになるという認識が共有されている。

例えば、ENCOD (適正で効果的なドラッグ政策をめざすヨーロッパ協議会)は、合法化後のシナリオを描いてヨーロッパの現状に対処するように働きかけている。そこでは、まずカナビスなどのソフトドラッグの合法化に取組み、最後にはそれをハードドラッグにまで広げることを提唱している。


可能なシナリオ

現実的で実現可能なシナリオとすれば次のようなステップが考えられる。

成人の個人使用目的のカナビスの栽培を完全に認め、団体の利益目的の栽培については、個人栽培をしないメンバーの使用を充当する量に限って代替栽培ライセンスを与えて、大がかりな供給目的での栽培はできなくなるする。次に、適正な運営を続けてきた団体には、オランダのコーヒーショップのような少量販売ができるようにする。

化学合成ドラッグの製造については、社会団体・公衆衛生専門家・研究者・地域および国当局などで構成された委員会がコントロールできるようにして、私企業が生産できるようにする。適正な品質を保証し、取引を透明化すれば、違法市場への漏洩を避けることができる。

成人が化学合成ドラッグを入手できるようにする方法には次の2つが考えられる。一つは、薬局や特別なメディカル・センターで販売履歴を確認して販売し、法で認められた限度量以上を望む場合には医師の処方箋で入手できるようにする。もう一つは、成人がその場所でだけドラッグを使えるカジノのようなクラブを作る方法が考えられる。

いずれのモデルでも好ましくないことが必ず発生するので、原因や責任を明確にしながら、導入には時間をかけて信頼のできる水準にもっていく必要がある。

以上のような方法でドラッグを合法化すれば、卸売りや小売りがより透明になって品質や価格のコントロールが可能となり、不健全な使用を減らすことができるようになる。確かに違法ドラッグ市場が完全になくなることはないだろうが、現在よりはずっと小さくなり、犯罪組織の介在は壊滅的にまで減らすことができるはずだ。


前を見つめる

合法化に反対する意見としては、法的に認めてしまうとドラッグの使用が増えるという主張があるが、カナビスの販売を容認して30年以上になるオランダの数字は逆に減少する結果になっている。

別の反対意見には、ドラッグを密売していた犯罪者はただ新しい市場に移動するだけだという主張もある。確かにそのことは否定できないが、だからといって、大きな恩恵をもたらす合法化に否定する理由にはならない。

例えば、今後5年以内に上のようなシナリオやそのバリエーションがヨーロッパで実現するかどうかは、今度、ドラッグ政策について民主的な議論や決定がどの程度行われるかにかかっている。現在までのEU当局はこの問題を先送りしてオープンで広い議論を避けてきた。

しかしながら、いずれはこの議論をはじめなければならない日が必ずやってくる。そして、ヨーロッパでドラッグの合法化が実現した時にはじめてこの議論が終わる。

The Gray Zone: An ENCOD Report on Cannabis Policies in Europa 2004.10
A Snapshot of European Drug Policies
ドラッグと若者に関するヨーロッパ会議

ENCOD は、EUの首都のあるベルギーに本部を置き、ドラッグ問題の解決にむけてヨーロッパの各地で活動する120のNGOや専門家と協力して、EUにロビー活動を行うほか、各種のイベントやミーティングを通じて活発に広報につとめている。

この記事を書いた代表のオーメンさんは、たくさんの言語を駆使しながら各国を飛び回っている。また、ENCODの支援会員になると、ヨーロッパの各地での活動の模様を伝えるDVDが送られてくる。


http://www.encod.org/freedomtofarm.pdf