ドラッグと若者に関するヨーロッパ会議

スペイン・マラガ

10月29日の夕方、ジョセ・モリナから電話があり、明日とあさっての2日間マラガでヨーロッパ・ドラッグ・カンファレンスが開催されると知らされた。ジョセもたまたま読んでいたプレス用の出版物で見つけたらしく、それ以上詳しいことは何も知らなかった。彼は、イェーバ・マガジンで取り上げればおもしろいのではないかと持ちかけてきた。私は写真担当が必要ならば やりたいとすぐ返事をした。

ジョセはイェーバに電話して、スペインのカナビス・カルチャーの声を代表としてわれわれをカンファレンスのプレス・メンバーに送り込めないか相談してみると言った。翌日の早朝、イェーバの働きかけが功を奏してカンファレンスを取材できることになり、開催場所の新しくオープンしたばかりのマラガ・コングレス・パレスに駆けつけた。

受付へ行き、記者証をうけとるために確認してもらった。

無事リストに登録されていて、記者証とカンファレンスの資料の入ったファイルを受け取った。私は今までカナビス文化のなかで実際にいろいろやってきたが、カナビス指向の雑誌の公式の代表として新たに加われることを嬉しく思った。

早速、ライオンの間に急いだ。そこでは、ドラッグとその使用の規則と運用についてプレゼンテーションが行われていた。ジョセの予想通り、カナビス関係のプレスの代表はわれわれだけだった。確かにこのカンファレンスはあまり広くアナウンスされたものではなかった。

ジョセはすべての発言者の発表を記録して多量のメモを作っていたが、私は写真係に過ぎないので写真を撮りながらただ話を聞いていた。ジョセの広範なレポートはイェーバ・マガジンにも掲載された。また彼の英語訳がイェーバのウェブサイトにも収録されている。 www.megamultimedia.com/yerba

以下のレポートは、コーヒーショップの経営者であり反禁止論者である私の個人的な見解であることをお断りしておく。

プレス・カンファレンスにも駆けつけたが、すでに始まっていて最後の数分間に間に合っただけだった。われわれの登場と存在はプレス・カンファレンスにショックを起こした。われわれの姿はそこに集まっている人たちの服装とはあまりに対象的で見下して見られた。しかしわれわれは惑わされず、ハイで明晰だった。私がもしこのレポートにタイトルを付けるとしたら

「ピッピー2人とペンギン200匹がマラガでドラッグ問題に向き合う」

記者証を持っていたので追い出されはしなかったが、カンファレンスの200人の黒いスーツとネクタイ姿の参加者からはあえて無視するようにといった空気が流れていた。そこにはヨーロッパのほとんどの国から、ドラッグの専門家、研究者、あらゆるレベルの政治家、ヨーロッパ議会のメンバー、反ドラッグ機関などが出席していた。残念ながらわれわれを代表するような人は見あたらなかった。彼らは身なりが気にくわないというだけで、彼らが問題にしているわたしたちのような人間とは本当に向き合うつもりなどなかった。

われわれは明らかに「敵」と見なされ、その瞬間からそう扱われた。アンダリシア州政府の禁止論者の筆頭のロブレス氏への質問は許されなかった。彼の秘書のパブロ氏は何とかしてみると言っていたが、結局彼がやったことと言えばわれわれが上司に近づかないようにしておくだけだった。有能な秘書だこと・・・

パブロ氏は電光石火、われわれの存在をボスのセニョール・ロブレスと他の2人の代議員に告げにいった。

われわれはプレス・カンファレンスから本会議の行われているカンファレンス・ルームに行った。後ろで空席を探しているとさっきよりもっと怪訝な視線が投げかけられたが、同時通訳システムは素晴らしく、私も英語ですべての情報を把握できた。

ジョセはいい席を確保しメモを取り始めた。息を入れるのは長いセッションが終了したときだけだった。発言者の持ち時間は10分に限定されており、議長は時間が来ると中途半端であろうとなかろうと途中で止めさせていた。研究者たちはプロジェクトに長い年月と多額の資金を費やしているのにもかかわらず小学校の生徒みたいに黙らされていた。その結果、次の発言者と交代しなければならないので結論だけを急ぐことになる。わたしはとても驚いたが、このやり方に文句を言う者はおらずすべての参加者によく浸透していた。

どの研究者も自分たちの統計やその集計方法を紹介していた。私は、フランス薬物戦略局、イギリス薬物研究所、スペイン薬物政策局、ドイツ薬物計画局、さらにEUに新規加盟したバルチック諸国を代表してハンガリー薬物報告局の調査結果も見た。

しかし、不思議なことに、オランダの代表は一人もおらずダッチ・モデルの発表や説明などはなかった。オランダの統計数字は私の見た他の国のものに比較してどれも良好に思えた。また、この会議では、ドラッグの使用に対するポジティブなアプローチとポジティブな結果の関連について考慮されておらず、ドラッグ問題やその防止方法や評価について語られるようになっていないのではないか、と思われた。

このスライドは聖ジョージ病院付属医科大学のファブリジオ・シィファーノ博士の発表だが、インターネットを使ったドラッグ売買についての研究だった。スライドでは、ワールド・ワイド・ウェブがドラッグ提供のより大きな情報源になってきていると指摘していた。彼は聴衆にそうした運営サイト見つけるのは大変だったと前置きして、4000以上のドラッグ関連サイトについて調査したと語っていた。

私は休憩のときにちょっとシィファーノ博士と話をした。ヘンプ・シティのサイトのアドレスを印刷したライターを渡して、サイトはとても情報量も多くカナビスについてのすべてを掲載していると伝えた。 彼は、私がオンラインでは販売していないと言うとがっかりした様子だったが、もっとコーヒーショップについて知りたいと名刺をくれた。彼は、お客さんがコーヒーショップで買ったカナビスを店でコーヒーを飲みながら一緒に吸えることすら知らなかった。

いろいろな機関が出しているブースにも行ってみた。ここはEMCDDA、つまりヨーロッパ・モニター・センター・フー・ドラッグ・アンド・ドラッグアデクションの展示。 www.emcdda.eu.int   そこでまとめた統計や事例と図表がすべてのヨーロッパ言語で揃っていた。興味深い内容!

これが2003年までの最新統計。すべての言語版があって持っていけるようになっていたので、私はオランダ語、英語、そしてスペイン語をもらった。

このパンフレットももらってきた。好奇心がますます沸いた。

ここはアンダルシア州議会のブース。ここの資料はEMCDDAよりももっと情報が濃かった。スペインではアルコールやタバコは他のどのドラッグよりも死亡者が多いので、それらもドラッグのリストに加えられている。

私は関係者たちに、若者たちがドラッグに近づくのを防止するためにこれらの資料を配付しているのか尋ねてみた。 若者たちが集まるバーやディスコなどでパンフレットやチラシを配っている、との返事だった。さらに質問を続けて、若者たちはたいていの場合すでにバーでアルコールを飲んだりタバコを吸ったりしているがそれはどのように防止しているのか聞いてみた。彼らから答えはなかった。

カンファレンスではスペインの別のスピーカーが、ドラッグ防止資料のもうひとつの配付方法として、若者たちがコンドームを買いにくる薬局でもらえるようにしていると指摘していた。州によるセックス・コントロールとドラッグ・コントロール・・・

アンダルシア州政府の膨大な量の防止資料。スペインはヨーロッパでコカイン消費が最も多く、アメリカとともに世界のトップにたっている。

この写真なカンファレンス2日目の様子。すでに多くの代表たちは帰ってしまっていた。セッションの最後にはハガリーの代表が自国とEU加盟予定国のドラッグ使用についてプレゼンテーションを行っていた。彼は、かつての東側諸国のドラッグ使用はこの4年間で西側のEU諸国に迫ってきたと報告していた。

彼が代表している国々では先進ヨーロッパ諸国の1995年から1999年の増加率より上回っており、EU加盟予定国でのドラッグの取引が通常の商品の取引よりも先行していることを示している。私は、シィファーノ博士がカンファレンスでの10分間のプレゼンで、インターネットのオンラインでドラッグを提供している人たちに触れていたことを思い出していた。「こうしたドラッグ取引業者を追跡することはとても難しく、彼らは工夫に長けている。」

全員の報告や見解の発表が終わった後、討論に時間になった。最後になって役に立ちそうな提案が幾人かからでてきた。しかしその頃はすでに半数の代表が席を後にしていたので、議長もこの討論をカンファレンスの始めにやれば良かった述べていた。

討論を聞いていてこの集まりにも分かっている人もいると思わせる幾つかの指摘があった。EU委員会のメンバー、コーレル・エドワードは明らかにその一人だった。カナビス使用についての大半の報告では、13才ころの早い時期にすでにカナビスをはじめている若者たちはたいていが24才前後でやめてしまうと報告されていることを指摘し、エドワードは 「多くのカナビス使用者が24才でやめてしまうのに何故カナビスの取締りにこれほどの金をかけ続けなければならないのか?」 と述べていた。

ヨーロッパ・ドラッグ及び中毒物質監視委員(OEDT)総裁マーセル・レイマンは、フランスをはじめいくつかの国ではドラッグ政策にこれ以上予算が出なくなっており、専門家たちは研究を続けられなくなっていると指摘していた。また同じグループのサンチャゴ・デ・トレスは、それぞれの研究者の結果が別々の年齢構成や期間でしかも異なる意図や質問の仕方をしていて比較ができないので、EUでのドラッグ使用で現実的な見識を得るのにあまり役に立たない、とも指摘していた。

以上のようなことがカンファレンスで私が耳にしたことだ。さらなる研究を行い評価してこのミーティングのような討論を繰り返さなければならないというのだが・・・

OEDT長官ジョージ・エスティベナントはカンファレンスの結果を総括して次のように述べていた。「われわれはドラッグ使用を減らずことができていません。そのために10億ユーロも費やしてきました。しかしそのお金はどこに消えたのか・・・ゴールにたどり着くために将来何をすべきかわれわれには分かりません・・・今までが間違っていたのではないかを自らに問いかけることが必要なのではないでしょうか?」

ヨーロッパ諸国やドラッグ研究機関は、高額な給料の専門家や研究者たちを雇い、あらゆるメディアを行使して何千もの防止メッセージを出し、さらにはドラッグの所持や使用の罰則強化に取り組んできたにもかかわらず、参加したどの国でもすべてのドラッグの使用が著しく増加している。しかも、このような無駄な努力に10億ユーロも費やして諸策を展開し実行していながらお金がどこにいったのかさえ見当がつかない、と言う。

ドラッグに係わるこのような役に立たない研究者たちを増やせば増やすほど費用が乱用され、役に立たない報告ばかりが増えてこのカンファレンスのように高額な費用がかかることになる。 それでいてEUでのドラッグの乱用に対する将来の戦いに向けての戦略さえ策定できないでいる。確かに、今までが間違っていたのではないかを自らに問いかけることが必要なのではないか?

ヨーロッパ議会のメンバーで自由と公民権委員会委員長のジョルジ・ハーナルデス・モラーは最後の総括スペーチを行った。私は彼の結論をメモした。曰く・・・

*カンファレンスの最初は荒天模様だったが後半には光がさしてきた
*このEUカンファレンスを毎年開催するように提案したい
*このカンファレンスはこのようなミーティングをもてたことで目標を達成した
*ドラッグ乱用の関心と責任は各国からEU全体で取り組むべきものに変わった
*カンファレンスは問題の理解に役立った
*各国は手綱を締めてより高いレベルの協力をしなければならない
*アルコールやタバコのような合法ドラッグと違法ドラッグの乱用の関連について明らかになった
*アルコールの使用、特にどんちゃん騒ぎは違法ドラッグの使用を促す(新ゲートウエイ?)
*すべてのドラッグでの主要関心事はカナビスとその乱用
*予防こそがゴールへの鍵
*合法非合法に係わらずあらゆる薬物が社会生活に悪い影響を及ぼす
*われわれ政治家はEUのドラッグ戦略を策定しなければならない
*EU加盟予定国を受け入れた後、さらに10のドラッグ問題も加わる
*われわれはEUからさらなる支援を必要としている

モラー氏はこのように述べてカンファレンスを締めくくった。私はただ唖然。彼はすべての防止措置が大失敗だったと聞いたばかりなのに、再び同じように何億ユーロも費やして高給の研究者や専門家に役に立たない研究をさせたがっている。


●私の見解

ハァー。これだけたくさんの図表、統計、防止の失敗、論評、こぎれいな人々・・・まったくため息が出る。このようなカンファレンスの参加者やみんなを代表する人々の高額な給料をまかなうために自分の収めたお金が使われていることを知って、もうこれからは税金を払うのを拒否すべきでないかとさえ思った。10億ユーロも使ってこんな惨めな結論しか出せない。

私の結論。大勢の人々がドラッグを使いたいと思っている事実をそのままEUは受け入れるべきだ。

多くの人がタバコとアルコールとカナビスに執着し、一部の人はエクスタシーのようなパーティ・ドラッグを好み、コカインやヘロインやクラックのようなハード・ドラッグを使う人もいる。EUの政治家や当局者たちは、自分たちの行った研究結果が示しているこうした事実をまず受け入れるべきだ。

論理的に考えれば、ドラッグ使用者たちを悪質なドラッグや危険なブラック・マーケットから護るために、害やリスクの軽減に焦点を合わせるべきなのだ。害の軽減とはドラッグを使う際の悪影響や副作用を減らすことを意味する。 ドラッグ使用でのネガティブな面はドラッグそのものにあるのではなく、その供給源や使用量や品質などにある。利用できるドラッグは研究所や専門家によって管理された可能な限り良質なものでなければならない。

リスクの軽減は害の軽減の一部ともいえるが、ドラッグを使うこと自体とは違う種類のリスクもある。 ドラッグが使われるにはそれ以前に違法な供給源からの売買がある。こうした取引には多くの危険が伴う。例えば、犯罪者がディーラーを装い、ユーザーは健康に極めて危険な悪質なドラッグを売りつけられることもある。供給源が警察の手入れを受ければユーザーは刑務所行きになってしまうこともある。

要するに、ドラッグは品質や安全性を保証する登録業者から入手可能にしなければならないのだ。

アンチ・ドラッグ政策はうまく機能しない。統計が示すように消費は着実に増加している。いまこそ事実と向き合いウイズ・ドラッグ政策を採用すべきときなのだ。禁止政策は失敗した。それに代えて、規制でコントロールすれば時間と多くの人々の生命が無駄にならないで済むようになる。

ノル・ファン・シャイク

P.S.
コンファレンスが終了するとジョセと私は同じマラガの別の場所で行われているカナビス競技会ラ・ベラ・フローに直行した。競技会はすでに始まっていた。わたしもコンテストに2種類のバッズをエントリーする・・・  次はそのレポート。


http://www.hempcity.net/travelreports/
spain2003/europeanconferenceondrugs/index.html