迅速効果を約束する「喫煙型」鎮痛薬
Source: Reuters
Pub date: 31 Jan 2007
Subj: "Smokable" pain drugs promise faster action
Author: Toni Clarke
http://today.reuters.com
今日の鎮痛剤はどれもが「すぐに効く」ことを謳っているが、誰でも、すぐと言う意味が15分から1時間かかることを当たり前のように思っている。
しかし、片頭痛や痛み、パニック、急性興奮などの医薬品を開発しているアレックサ製薬にとっての 「すぐ」 は、数秒以内を意味している。
カリフォルニア州パロアルトを本拠にするこの会社では、肺を通じてほとんど瞬間的に血液に吸収されるタバコのニコチンのように、「喫煙」することのできる医薬品を開発に取り組んでいる。
興味を示す投資家たち
アレックサ製薬の株価はここ5ヵ月間で約60%上昇し、同時期のナスダック・バイオテクノロジー株価指数の15%を大幅に上回る動きをしている。
1年前に株価8ドルで公開するのに尽力したJMP証券の投資アネリスト、チャールス・ダンカン氏は、「この話が興奮させてくれるのは、応用範囲が非常に広い可能性を秘めているからです」 と語る。
アレックサ製薬は、ニコチン・パッチ開発会社アルザを創業したことでも知られるバイオテクノロジー起業家アレハンドロ・ザファロニー氏のよって設立された。
もっとも、吸入式の治療法を開発しているのは彼のベンチャーだけというわけでもなく、ネクタール製薬とアルケルメスは粉末のインスリンを開発している。だが、アレックサ製薬の薬を熱して蒸気や煙にするというアイディアを採用しているのは、ここだけしかない。
会社取り組んでいる商品は、激しい吐き気を治療するために液状や経口あるいは坐薬として現在使われているプロクロルペラジンを蒸気バージョンにしたもので、片頭痛用に開発を進めている。
病院では、しばしば、急性の片頭痛患者には点滴で対応しているが、薬の搬送システムとすればいつも頼れるとは限らない。
携帯型フラスコ吸入器
アレックサ製薬が目指しているのは、同じ効果が得られる携帯型の吸入器で、ハンドバッグや車のダッシュボードに入るようなミニュチュアのウイスキーの小瓶にような形で、薄くコーティングした薬を内蔵電池で熱して蒸気にして、肺に吸い込むようになっている。
「この処方が好ましく頻繁に使えかどうかは病気にもよりますが、搬送システムとしては有効な方法といえます」 とコロンビア大学精神学部長のジェフリー・リーベルマン博士も語っている。
会社では、片頭痛治療薬の中間臨床試験の最初の結果を3月末までに発表することを計画している。すべてが計画通りにいけば、2010年には、アメリカの認可当局から市場投入の許可が得られることが見込まれている。また、会社では、統合失調症患者の痛みや不安、興奮などの吸引治療薬の試験も進めている。
だが、リーベルマン博士は、片頭痛やパニックや痛みの患者には有効だろうが、興奮した統合失調症患者に対しては、薬の投与には協力的ではないために余り向かないのではないかと疑問を投げかけている。
「パニック症候群の患者さんたちは、迅速な効果を望むので非常に協力的です。錠剤では効くまでに1時間もかかってしまうのを知っていますから。医薬品の投与法としては、喫煙はよくないとされていますが、患者さんの状況を考えれば、この方法は何の非難を受ける筋合のものではありません。」
アレックサ製薬の最高経営責任者トーマス・キング氏は、今年前半までに少なくとも1種類の薬を開発するために、大手製薬会社か専門特化型の製薬会社、あるいは医療器機会社のいずれかと提携関係を結んで発表したいと語っている。
「要は、この技術に対して同じような情熱をもっているパートナーを探し、われわれがやっていることを如何に伝えられるかにかかっています。」
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この記事では直接言及していないが、薬を蒸気や煙にして吸引する方法として、カナビスやカナビノイドも念頭にあるのは間違いないだろう。
アメリカでは、現在、カナビスは医療効果のないドラッグとして規制薬物の第1種に分類されているが、吸う方法が医薬品には適していないとされていることが大きな理由のひとつとなっている。
これは、タバコの喫煙によるタールが肺ガンを引き起こすことが明らかになって、喫煙法自体に悪いイメージが付きまとっていることが関係している。カナビスの喫煙についても、タバコよりもタールが多いとして盛んに危険性が叫ばれた。
しかし、最近の 大規模研究 で、どんなにカナビスを吸っても肺ガンになるリスクは増加しないことが明らかにされ、また、今日では、安全な蒸気を吸うことのできる バポライザー の利用も当たり前になってきて、カナビスの喫煙法の悪いイメージも払拭されつつある。
今回、アレックサ製薬のような会社が注目を集めるようになったことは、時代が動き出したことを感じさせる。煙で吸う医薬品を認めようとしないアメリカ政府の背中にもいよいよ火の粉が降り掛かる格好となってきた。