スイス連邦議会

カナビス合法化国民発議を否決

Source: PR-INSIDE
Pub date: 10 Dec 2007
Subj: Swiss parliament blocks initiative to legalize cannabis
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=13067


スイス議会は、月曜日、カナビスの合法化を求める住民発議案を106対70で否決する決定を下した。この発議案は、個人目的のカナビスの使用・所持・売買・栽培を非犯罪化することを求めたもので、2006年1月に10万人以上のスイス国民から請願を集めた後で議論が続けられてきた。

4年前にも同様の発議が国会で否決されているが、今回の反対票数は前回の96対89よりも増えている。

提案に賛成する議員たちは、禁止法が問題を解決するよりもより多くの問題をつくり出していると主張していたが、議会で多数を占める国民党など中道右派は、子供たちを守るために提案を拒否することを表明していた。

2003年には熱心な支持者であったパスカル・コーシェピン健康省大臣は、4年前には、カナビスやアルコールを禁止してもいつも失敗に終わることは証明されていると主張していたが、今回は、7人の閣僚の中でカナビス問題だけを例外扱いすることはできないとして閣僚の一員として反対の立場を表明して180度態度を変えている。

これに対して社民党や、コーシェピン大臣の中道急進民主党の一部は、禁止法がマフィアに支配された違法ドラッグのブラック・マーケットの活動に油を注ぐことになり、未成年者の健康を守ることに失敗するとして、国が市場を規制管理すべきだと主張していた。

スイスではカナビスは違法になっているが、多くのカントン(県)では、個人使用目的のカナビスの少量所持については実質的にほとんど容認状態になっている。

スイスはヨーロッパでもドラッグに最も寛容な国で、例えば、ヘロイン中毒に対しては犯罪としてではなく健康問題として扱われ、県の健康保険システムで支給されたヘロインを決められた場所で使うことのできるプログラムも運用されている。

スイスの制度では、全国にレファレンダムを呼びかけて、全国で過半数の賛成とスイス26県の半数で過半数を得れば今回の議会の決定を覆すことができるようになっている。

スイスの人口は約750万人で、50万人がカナビスの常用者またはオケイジョナル・ユーザーだと見積もられている。

選挙で選ばれた新人議員では、保守あるいは右翼政党であってもドラッグ政策にはリベラルな主張をしてきた人が多いが、今回は、主要政党の国民党、急進民主党、社会民主党、キリスト教民主党のうち、社会民主党以外がすべて反対を表明していた。

今回の決定に当たっては、1ヶ月半ほど前に行われた総選挙で中道右派の国民党が大きく伸びて第1党の地位をさらに強固にしたことが大きく影響している。国民党は2003年の総選挙で4位から第1党に躍進しているが、人種差別主義的との批判を受けるほど攻撃的な移民政策を掲げており、それが最近の移民に対する世論の反感と重なって支持を拡大している。

また、今回の決定が、カナビスに対する政策を緩和する代わりに厳しくすることを求めたものでないことにも注目しなければならない。スイス国民は、基本的にドラッグ政策を緩和することも厳格化することも求めていない。これは、厳格化を求めるイニシアティブも成立していないことを見ればわかる。

スイスではカナビスについてはすでに十分に容認されており、社会の関心は未成年者の飲酒や暴力問題に重点が移っているという 指摘 もある。

こうした点からスイス社会全体は、EUの加盟問題や通貨問題も含めて、もうしばらく現状を維持して様子を見ることを指向していると言えるのではないか?

今回の反対の背景には、子供へ悪いメッセージを送ることになるという従来からの主張に加え、最近、カナビスと精神病の結び付きを示す 研究 や、カナビス喫煙で気腫になったという 研究 が国内で発表されたことも懸念材料になっていた。

しかしながら、カナビスと精神病の調査では実際には内容的には従来の研究に比べて特に新しいことはなく、気腫になるという研究では、1日平均ジョイント6本を8年以上、またタバコを12年以上常用していた人たち17人を対象にした一般論としては通用しない調査になっている。だが、特に後者は反対キャンペーンに利用されやすいタイミングで発表されており、不自然で政治的な色彩が濃い(?)ようにも思われる。

スイスでは、今回のような国民発議(イニシアティブ)や国民投票(レファレンダム)制度が充実しており、国民が政治に直接参加する機会が多く与えられている。たとえ議会で決定された法律であっても、制定90日以内に5万人以上の署名を集めればレファレンダムを請求して覆すこともできるようになっている。

The Swiss experience  by Ed Rosenthal (01 Mar, 1999)
Swiss pot evolution  by Pete Brady (01 Aug, 2003)
Swiss cannabis grower makes a movie  by Pete Brady (03 Oct, 2002)
Green Goddess  (youtube)