主要論文

解説とダウンロード




カナビスが統合失調症を引き起こすと主張している主要論文
  1. Andreasson 1987 Cannabis and schizophrenia: A longitudinal study of Swedish conscripts
  2. Johns 2001 Psychiatric effects of cannabis
  3. J. van Os 2002 Cannabis Use and Psychosis: A Longitudinal Population-based Study
  4. Zammit 2002 Self reported cannabis use as a risk factor for schizophrenia in Swedish conscripts of 1969:historical cohort study
  5. Patton 2002 Cannabis use and mental health in young people:cohort study
  6. Arseneault 2002 Cannabis use in adolescence and risk for adult psychosis:longitudinal prospective study
  7. Henquet 2004 Prospective cohort study of cannabis use, predisposition for psychosis, and psychotic symptoms in young people
  8. Arsenbault 2004 Causal association between cannabis and psychosis:examination of the evidence
  9. Stefanis 2004 Early adolescent cannabis exposure and positive and negative dimensions of psychosis
  10. Fergusson 2005 Tests of causal linkages between cannabis use and psychotic symptoms
  11. Ferdinand 2005 Cannabis use predicts future psychotic symptoms, and vice versa
  12. Caspi 2005 Moderation of the Effect of Adolescent-Onset Cannabis Use on Adult Psychosis by a Functional Polymorphism in the Catechol-O-Methyltransferase Gene: Longitudinal Evidence of a Gene X Environment Interaction
  13. Henquet 2005 The Environment and Schizophrenia: The role of Cannabis Use
  14. Arendt 2005 Cannabis-induced psychosis and subsequent schizophrenia-spectrum disorders: follow-up study of 535 incident cases
  15. Favrat 2005 Two cases of "cannabis acute psychosis" following the administration of oral cannabis
  16. Ashtari 2005 The Impact of Recurrent Exposure to Cannabis on Brain Development in Adolescents with Schizophrenia and Healthy Volunteers
  17. Skosnik 2006 Psychophysiological Evidence of Altered Neural Synchronization in Cannabis Use: Relationship to Schizotypy
  18. Hickman 2007 Cannabis and schizophrenia: model projections of the impact of the rise in cannabis use on historical and future trends in schizophrenia in England and Wales
  19. Moore 2007 Cannabis use and risk of psychotic or affective mental health outcomes: a systematic review
  20. Gross 2007 Changing incidence of psychotic disorders among the young in Zurich
  21. Konings 2008 Early exposure to cannabis and risk for psychosis in young adolescents in Trinidad
  22. Miettunen 2008 Association of cannabis use with prodromal symptoms of psychosis in adolescence



  1. Cannabis and schizophrenia: A longitudinal study of Swedish conscripts
    Andreasson S, Allebeck P, Engstrom A, Rydberg U. Lancet, 1987, vol 2, 1483-1486
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=2892048


    Abstract: The association between level of cannabis consumption and development of schizophrenia during a 15-year follow-up was studied in a cohort of 45,570 Swedish conscripts. The relative risk for schizophrenia among high consumers of cannabis (use on more than fifty occasions) was 6.0 (95% confidence interval 4.0-8.9) compared with non-users. Persistence of the association after allowance for other psychiatric illness and social background indicated that cannabis is an independent risk factor for schizophrenia.

    カナビスと統合失調症、スエーデン新兵での長期的研究
    この論文は、カナビスと精神病問題では最もよく引き合いに出される「カナビスで精神病になる率が6倍に増える」という数字の出処になっている最も有名な論文。発表は1987年。

    スエーデン新兵4万5570人を対象に、入隊時(平均年齢18才)でのカナビス使用状況を自己申告させ、15年後に統合失調症の発症具合を調べた。入隊時にカナビス経験を持つ人は9.4%、50回以上のヘビーな経験者は1.7%になっている。

    15年後には、カナビスを使ったことのない人に比較して、少なくとも1回以上体験のあった人では統合失調症になった率が2.4倍に増え、50回以上のヘビー・ユーザーの場合は6倍になった。だが、ヘビー・ユーザーのおよそ半数(430/730)が入隊時以前に精神科の診断を受けていることを補正するとリスクは2.3倍になっている。しかし、ヘビー・ユーザーで統合失調症になった人の割合は3%に過ぎず、著者たちは、カナビスのよるリスクが精神病を発症しやすい精神脆弱性を持った人にだけ現れるのではないかとしている。(ジョーンズアーセンバウルト

    しかしながら、この研究には批判が多い。最も重大な欠陥は、調査時点が15年も離れているのに、その間のアルコール、アンフェタミンやLSDなどを始めとする統合失調症を起こすとされる他のドラッグ使用やカナビスの使用状況の変化などの調査が行われていないことが上げられる。また、統合失調症を、診断ではなく精神病院の入院歴でカウントしているという問題もある。

    こうした批判に対して、2002年に、同じチームがデータから問題のあるケースを取り除き、新たなデータも加えて再分析を行った別の論文を発表している。結論では、「カナビスの使用は精神病を発症するリスクを高めるという一貫した因果関係が存在する」と前回の同じようになっているが、内容的にはかなり異なり、新たな問題点も指摘されている。

    とは言え、カナビスに反対する人たちは、現在でも繰り返しこの研究を引用し続けている。さすがに、イギリスのリシンクのような分別のある団体では6倍という数字までは使っていないが、例えば、Schizophrenia.com という統合失調症全般の情報を扱ったサイトでは、カナビスのこととなると途端に科学的批判精神を忘れて、6倍を600%と大きく見えるように表記し、グラフまで使ってこの研究をページのトップに掲げている。

    逆にいえば、その後にカナビスと統合失調症の因果関係を主張する論文が多数出てきたにもかかわらず、今だこの論文に頼らなければならないほど、実際の論拠が弱いことを表しているとも言えるかもしれない。


  2. Psychiatric effects of cannabis
    Andrew Johns, The British Journal of Psychiatry (2001) 178: 116-122
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/full/178/2/116

    Untoward Mental Effects of Cannabis
    1. Psychological responses such as panic, anxiety, depression or psychosis. These effects may be described as ‘toxic’ in that they generally relate to excess consumption of the drug.
    2. Effects of cannabis on pre-existing mental illness and cannabis as a risk-factor for mental illness.
    3. Dependency or withdrawal effects.

    An appreciable proportion of cannabis users report short-lived adverse effects, including psychotic states following heavy consumption, and regular users are at risk of dependence. People with major mental illnesses such as schizophrenia are especially vulnerable in that cannabis generally provokes relapse and aggravates existing symptoms. Health workers need to recognise, and respond to, the adverse effects of cannabis on mental health.

    カナビスによる精神医学的影響
    この論文は、イギリス保健省が資金提供している委員会のメンバーの一人が、過去のカナビスと精神病の研究を包括的に検証したもので、多数の論文の概要を説明しながら、何がどう問題になっているのかを解説し、保健医療関係者がカナビスの精神への副作用について知る必要性を訴えている。

    カナビスの精神への好ましくない問題点としては、次の3点をあげている。
    1.オーバードーズによる急性のパニック、不安、うつや精神病的症状
    2.精神脆弱性のある人の発症のトリガーの可能性、既に精神病を発症している人の症状悪化や再発
    3.依存性や禁断症状

    現在行われている論争は大半がこの論文以降に発表されたものだが、問題点そのものは以前から指摘されていて何も変わっていないことがわかる。その意味で、この論文は、2000年以前の状況のみならず現在の状況を知るうえで非常に有益な情報源だと言える。


  3. Cannabis Use and Psychosis: A Longitudinal Population-based Study
    J. van Os, M. Bak, M. Hanssen, R. V. Bij, R. de Graaf, and H. Verdoux, American Journal of Epidemiology April 17, 2002 Vol. 156, No. 4
    http://aje.oxfordjournals.org/cgi/reprint/156/4/319.pdf

    Cannabis use may increase the risk of psychotic disorders and result in a poor prognosis for those with an established vulnerability to psychosis. A 3-year follow-up (1997-1999) is reported of a general population of 4,045 psychosis-free persons and of 59 subjects in the Netherlands with a baseline diagnosis of psychotic disorder.

    Substance use was assessed at baseline, 1-year follow-up, and 3-year follow-up. Baseline cannabis use predicted the presence at follow-up of any level of psychotic symptoms (adjusted odds ratio (OR) = 2.76), as well as a severe level of psychotic symptoms (OR = 24.17), and clinician assessment of the need for care for psychotic symptoms (OR = 12.01).

    The effect of baseline cannabis use was stronger than the effect at 1-year and 3-year follow-up, and more than 50% of the psychosis diagnoses could be attributed to cannabis use.

    カナビス使用と精神病:長期・人口統計研究
    この研究では、4000人余りのオランダ人を対象に3年間追跡調査をしている。この中で、カナビス・ユーザーは330人(約8%)で、何らかの精神病症状を発症した人は8人となっている。ノンユーザーでの発症者は30人。比率で見ると、カナビス・ユーザーのリスクはノンユーザーの2.76倍になっている。さらに、症状が深刻な場合について限って見ると24.17倍、医師による治療が必要な場合は12.01倍になっている。

    また、深刻な場合以上で見ると、発症者全体の50%以上をカナビス・ユーザーが占めており、この結果から、オランダにおける統合失調症事例の13%がカナビスに絡んでいるとしている。

    しかし、この研究の方法論については批判も多い。この研究では、幻聴とかパラノイドとかいった症状が一つでもあれば精神病としているが、こうした症状はカナビス・スモーカーが普通に体験するバッド・トリップなど状態とダブっており、調査した症状が本当に精神病の症状といえるかどうかはっきりしない。

    当然のことながら、ヘビーなカナビス・ユーザーのほうがいろいろが状態を経験しているので、調査結果により強く出てくる可能性がある。また、その傾向は使用が長期になるほど大きくなる方向性を持っている。この方向性を理由に自己治療説を否定しているが、もともとこの調査手法にはそうなりやすい必然が最初から組み込まれている。

    また、倍率ではなく絶対数でみれば4000人中8人というレベルに過ぎず、統計的な差を主張しても説得力に乏しい。さらに、統合失調症事例の13%がカナビスに絡んでいるということから、カナビスがなければ統合失調症が13%減ると主張する人もいる。

    13%という数字はインパクトがあるが、これをカナビス・ユーザーの絶対数330人で計算してみれば、カナビスが無い場合発症数は、330*0.75%=2.5人、リスクが13%増えれば、発症者数は330*(0.0075*1.13)=2.8人で、4000人に対して0.3人程度しか減らないことになる。実際には、この研究でも述べているように、発症の時期が遅くなることはあっても、交錯因子があるのでほとんど減らないと考えられる。(統合失調症が13%減る?

    カナビスと若年層の精神病リスク、強い証拠はないが、特定リスクグループで顕著


  4. Self reported cannabis use as a risk factor for schizophrenia in Swedish conscripts of 1969: historical cohort study
    Stanley Zammit, Peter Allebeck, Sven Andreasson, Ingvar Lundberg, Glyn Lewis, BMJ VOLUME 325 23 NOVEMBER 2002
    SelfReportedCannabisUseAsAFactorForSchizophrenia.pdf

    Discussion: Self reported use of cannabis in early adulthood was associated with an increased risk of developing schizophrenia. Risk increased in a dose dependent manner with increasing frequency of cannabis use, and this relation remained when analysis was restricted to subjects who had used only cannabis and no other drugs before conscription. The largest risk was seen in subjects reporting use of cannabis on more than 50 occasions. We found no association between cannabis and other psychotic illnesses, which implies that cannabis has a rather specific association with an increased risk of schizophrenia.

    1969年スエーデン新兵における自己申告カナビス使用と精神病のリスク、病歴コホート研究
    この研究では、軍事訓練に参加したスエーデン男子新兵5万87人(大半は18才から20才)を調査している。徴兵検査では、カナビスの使用を認めた者に対しては使用度合を申告させ、その後に精神病と診断された人数の割合をグループごとに分析している。

    この研究は、1987年に発表された過去の研究の調査手法の欠陥の指摘を受けて、徴兵前にカナビスのみを使って他の違法ドラッグは使っていない者だけを調査対象とし、重要な交錯因子の影響についても考慮して改良が加えられている。

    この結果、カナビスの使用頻度グループ別での精神病発症率は、前回の調査とは異なり、大半のグループが非使用グループと比較して統計的に目立った違いは認められていない。しかしながら、50回以上使ったグループでは精神病と診断される率が統計的に非常に顕著な増加が見られたとして、「カナビスの使用は精神病を発症するリスクを高めるという一貫した因果関係が存在する」という結論を出している。

    また、この論文の引用としてよく使われている数字に、カナビスがなくなれば統合失調症が13%減るというものもある。13%という数字にはインパクトがあるが、実際に計算してみると、統計的に明確な差があるとはとても言えないことがわかる。(統合失調症が13%減る?

    いずれにしても、この研究の最も根本的に奇妙なところは、カナビス・ユーザーとノンユーザーの全体の統合失調症の発症率に補正を加えると実質的な違いが見られなくなってしまうことだ。

    研究でまず気になるのは、ノンユーザーの発症率が36429人中215人で0.59%なっており、1〜0.7%と言われている一般的な率よりも非常に低くなっていことで (例えば、同年発表されたオランダの研究では0.83%)、実際にはカナビスを使っていてもそれを隠して嘘をついている人がノンユーザー・グループに相当まぎれて込んでいる可能性が考えられる。

    また、カナビスが統合失調症の原因にはならないと仮定すると、ユーザーの発症率は5391人中73人で1.35%になっているが、ユーザー5391人の0.59%(ノンユーザーの発症)の32人はカナビスを使っていなくても発症していたと看做せるので、それを組み換えれば、(5391-32)人中(72-32)人で0.76%となり、ノンユーザーの(36429+32)人中(215+32)人の0.68%との差はほとんどなくなってしまう。これに、ノンユーザー・グループに嘘申告者が1〜2%でもいればこの差すら全くなくなってしまう。


  5. Cannabis use and mental health in young people:cohort study
    George C Patton, Carolyn Coffey, John B Carlin, Louisa Degenhardt, Michael Lynskey,Wayne Hall
    BMJ VOLUME 325 23 NOVEMBER 2002
    CannabisUseAndMentalHealthInYoungPeople.pdf

    Conclusions: Frequent cannabis use in teenage girls predicts later depression and anxiety, with daily users carrying the highest risk. Given recent increasing levels of cannabis use, measures to reduce frequent and heavy recreational use seem warranted.

    コホート群による若者のカナビス使用と心の病気の研究
    この研究は、学校に通う若者をカナビスの使用状態で4つのグループ、つまり、使用していない、週1回以下、少なくとも週1回、毎日、に分けて調査が行われた。研究期間を通じて、鬱状態や不安が起こらなかったか聞き取り調査を行い評価している。

    各種の統計処理と調整(その大半については具体的な記述がない)の上で、「頻繁な使用は、ティーンの少女がのちに鬱や不安になりやすく、毎日使っていた場合にはリスクが最も高い」 とだけ結論を書いている。

    興味深いことに、データの解析では、頻繁にカナビスを使っている少年については鬱や不安になることが50%以上も減っていることが示されている。しかし、この数字は結論では触れられておらず、統計的有意性も語られていない。

    だか、それを補うかのように、心の病気を引き起こす原因としてカナビス以外の要因についても言及し、「社会心理的なメカニズム、例えば、カウンターカルチュアーのようなライフスタイルもその根底にあると思われる。頻繁な使用が招く社会的な影響としては、学業の挫折、ドロップアウト、失業、犯罪などがあるが、どれも心の病気の高いリスク要因になり得る」 とも書かれている。

    もしこの理論が正しければ、カナビスそのものが直接的に不安や鬱を引き起こすのではなく、むしろ、禁止法でカナビスを犯罪扱いしていることで、逮捕された者が解雇や追放という処分を受け、それが原因で不安や鬱が引き起こされる、と言うこともできるかもしれない。


  6. Cannabis use in adolescence and risk for adult psychosis:longitudinal prospective study
    Louise Arseneault, Mary Cannon, Richie Poulton, Robin Murray, Avshalom Caspi, Terrie E Moffitt, BMJ VOLUME 325 23 NOVEMBER 2002
    CannabisUseInAdolescenceAndRiskForAdultPsychosis.pdf

    Comment: Using cannabis in adolescence increases the likelihood of experiencing symptoms of schizophrenia in adulthood. Our findings agree with those of the Swedish study and add three new pieces of evidence.

    Firstly, cannabis use is associated with an increased risk of experiencing schizophrenia symptoms, even after psychotic symptoms preceding the onset of cannabis use are controlled for, indicating that cannabis use is not secondary to a pre-existing psychosis.

    Secondly, early cannabis use (by age 15) confers greater risk for schizophrenia outcomes than later cannabis use (by age 18). The youngest cannabis users may be most at risk because their cannabis use becomes longstanding.

    Thirdly, risk was specific to cannabis use, as opposed to use of other drugs, and early cannabis use did not predict later depression.

    Although most young people use cannabis in adolescence without harm, a vulnerable minority experience harmful outcomes. A tenth of the cannabis users by age 15 in our sample (3/29) developed schizophreniform disorder by age 26 compared with 3% of the remaining cohort (22/730). Our findings suggest that cannabis use among psychologically vulnerable adolescents should be strongly discouraged by parents, teachers, and health practitioners.

    思春期のカナビス使用が引き起こす成人期の精神症リスク、長期予測に関する研究
    この研究ではニュージーランド・ダニーデン生まれの759人を対象に、思春期のカナビス経験を、使用経験なし、15才から使用、18才から使用の3グループに分け、その後に精神病または鬱病になったかどうかを調べている。また、この調査では、被験者たちは11才の時点で精神病の症状があるかどうかテストを受けている。このような調査を行っている研究は他になく、研究の信頼性を高めている。

    筆者らは、鬱病に関しては具体的な影響があるとは記述していないが、「思春期のカナビスの使用が大人になってから精神病の症状を誘発しやすい」 と結論し 「15才までにカナビスを使い始めた人は、26才の時点で精神病と診断される率が、使っていない人よりも4倍も高くなっていると考えられる」 と指適している。

    しかしながら、18才でカナビスを使い始めたグループについては、精神病の障害に陥りやすいことを示す統計的優位性は示されていない。研究者たちはカナビス以外のドラッグについても調査比較しているが、全般に同じような結果になっている。

    実際にカナビスのヘビーユース(29人)が原因で統合失調症および統合失調症様障害になったと診断されたのは、15才以前にカナビスを使っていた若者の3人だけで、全体の0.4%に過ぎない。


  7. Prospective cohort study of cannabis use, predisposition for psychosis, and psychotic symptoms in young people
    Cecile Henquet, Lydia Krabbendam, Janneke Spauwen, Charles Kaplan, Roselind Lieb, Hans-Ulrich Wittchen, Jim van Os, BMJ, doi:10.1136/bmj.38267.664086.63 (published 1 December 2004)
    CannabisAndPsychosisPredisposition.pdf

    Discussion: Exposure to cannabis during adolescence and young adulthood increases the risk of psychotic symptoms later in life. The findings confirm earlier suggestions that this association is stronger for individuals with predisposition for psychosis and stronger for the more severe psychotic outcomes.

    Frequent use of cannabis was associated with higher levels of risk in a dose-response fashion. Associations were independent of other variables known to increase the risk for psychosis. Also, the effect of cannabis remained significant after we corrected for baseline use of other drugs, tobacco, and alcohol.

    Finally, the data did not support the self medication hypothesis as baseline predisposition for psychosis did not significantly predict cannabis use at follow up.

    若者のカナビス使用における精神病と精神病的症状の出現傾向に関する前向きコホート研究
    この研究は、ドイツ・ミュンヘン周辺に住んでいる14才から24才までのおよそ2500人の若者についての4年間追跡した調査。オランダのファン・オズのチームが、前回のオランダ国内での調査の続編として行ったもので、前の調査方法をさらに厳密に診断法や交錯因子を調整して解析をしている。

    結果は、調査手法が似ているために内容的に前回と余り変わっていないが、カナビスの使用が精神病的な症状を引き起こすとする因果方向性がより強く主張されているところに特徴がある。(自己治療説の否定)

    2つの研究を比較してみると、カナビスが容認されている国と禁止されている国に違いが表れているようにも思える。このミュンヘンの研究では、違法ドラッグについての聞き取り調査を理由に、90人が調査を拒否している。

    このことは、禁止されている国では、周囲に対する警戒心がより強くストレスになっていることを示しており、他人から信用されていないように感じたことがあるか、とか、他人に監視されたり噂されたりしていると感じたことがあるか、とかいったパラノイド的な体験の聞き取り調査ポイントが、カナビス使用経験の多いユーザーほどより高くなり、より強い因果関係になって現れたことも考えられる。

    カナビスと若年層の精神病リスク、強い証拠はないが、特定リスクグループで顕著


  8. Causal association between cannabis and psychosis:examination of the evidence
    Louise Arsenbault, Mary Cannon, John Witton, Robin Murray, British Journal of Psychiatry (2004), 184, 110-117
    CausalAssociationBetweenCannabisAndPsychosis.pdf

    • Cannabisusein adolescenceleads to a two- to threefoldincreaseinrelativerisk for schizophrenia or schizophreniformdisorder in adulthood. The earlier the age of onset of cannabis use, the greater the risk for psychotic outcomes.
    • Cannabis does not appear to represent a sufficient or a necessary cause for the development of psychosis but forms part of a causal constellation.
    • Aminority of individuals experience harmful outcome consequent to their use of cannabis.However, thisminority is significantboth froma clinical point of viewand at a population level. It is estimated that about 8% of schizophrenia could be prevented by elimination of cannabis use in the population.

    Conclusions: Cases of psychotic disorder could be prevented by discouraging cannabis use among vulnerable youths.Research is needed to understand the mechanisms by which cannabis causes psychosis.

    カナビスと精神病の因果関係、エビデンスの検証
    若者の大多数は未成年期にカナビスを利用しても害を受けることはないが、害は精神脆弱性を抱えた少数の人に出現する。疫学エビデンスは、精神的に脆弱を抱える未成年に対して、特に早い時期のカナビス使用を思いとどませるように親や教師や保健指導者が強く働きかける必要があることを示している。

    この論文は、メリー・キャノンとロビン・マリーという、この分野で最も指導的な二人が加わっていることが注目される。また主筆のアルセンバウルトはニュージランドの研究の指導者で、これらの研究者が発表したこの論文の結論と社会への提言は、非常に意味大きい。


  9. Early adolescent cannabis exposure and positive and negative dimensions of psychosis
    N. C. Stefanis; P. Delespaul; C. Henquet; C. Bakoula; C. N. Stefanis; J. Van Os, October 2004, Addiction,99,1333-1341(9)
    AdolescentExposureAndDimensionsOfPsychosis.pdf

    Measurements: Subjects filled in the 40-item Community Assessment of Psychic Experiences, measuring subclinical positive (paranoia, hallucinations, grandiosity, first-rank symptoms) and negative psychosis dimensions and depression. Drug use was also reported on.

    Use of cannabis was associated positively with both positive and negative dimensions of psychosis, independent of each other, and of depression. An association between cannabis and depression disappeared after adjustment for the negative psychosis dimensions. First use of cannabis below age 16 years was associated with a much stronger effect than first use after age 15 years, independent of life-time frequency of use. The association between cannabis and psychosis was not influenced by the distress associated with the experiences, indicating that self-medication may be an unlikely explanation for the entire association between cannabis and psychosis.

    未成年初期のカナビス使用と精神病の陽性および陰性症状
    この研究は、ギリシャで実施されている1983年4月生まれの人の長期追跡調査の一環として、19才時点でのアンケート調査に郵送で回答してきた3500人のデータを分析したもの。

    アンケートは40問から構成され、パラノイヤ、幻覚・幻聴、誇大感(Grandiosity)などの陽性症状、陰性症状、鬱などの無症状潜在兆候、および、ドラッグの使用について、家族の意見もまじえて調査している。

    その結果、陽性症状、陰性症状、鬱はカナビス使用とそれぞれ独立して関連していることが示されたが、鬱に関しては陰性症状を補正すると消失した。カナビス使用の開始時期については、使用の頻度にかかわらず、15〜16才の場合が最も強く影響を受けていた。また、カナビスと精神病の関連は、苦痛体験の有無や度合に影響を受けないことがわかった。このことは、カナビス自己治療説だけでは、すべてを説明できないことを示している、と結論づけている。

    しかし、この研究の原データは郵送したアンケートに答えるという方式で専門家がインタビューしたわけではなく、カナビスによる精神病的体験と本当の精神病的症状がダブっている可能性が非常に高く信頼性を欠いている。

    この研究の大きな特徴は、精神症状を分けて、それぞれについてカナビスの影響を調べている点にあり、今後のこの分野の研究全体に新しい展開をもたらすかもしれない。また、未成年のカナビス使用は、後年の鬱のリスクに関与していないという指摘も注目される。

    Letters to the Editor


  10. Tests of causal linkages between cannabis use and psychotic symptoms
    Fergusson, Horwood & Ridder, Addiction Volume 100 Issue 3 Page 354 March 2005
    TestsOfCausalLinkages.pdf

    Findings Regression models adjusting for observed and non-observed confounding suggested that daily users of cannabis had rates of psychotic symptoms that were between 1.6 and 1.8 times higher than non-users of cannabis. Structural equation modelling suggested that these associations reflected the effects of cannabis use on symptom levels rather than the effects of symptom levels on cannabis use.

    Conclusions: The results of the present study add to a growing body of evidence suggesting that regular cannabis use may increase risks of psychosis. The present study suggests that: (a) the association between cannabis use and psychotic symptoms is unlikely to be due to confounding factors; and (b) the direction of causality is from cannabis use to psychotic symptoms.

    カナビス使用と精神病症状発現の因果関係の検証
    この研究は、ニュージーランド生まれの1265人を25年間追跡調査した結果をもとに、カナビスの使用と精神病の間に因果関係があるかを検証している。

    その結果、カナビス常用者が精神病的症状を発症するリスクは、ノンユーザーの1.6〜1.8倍になり、また、カナビスの使用が精神病の症状を引き起こすという方向に因果関係が働いているとしている。

    しかし、この研究には、ファン・オズの研究と同様の批判がある。これらの研究では、実際にはカナビス・ユーザーに対する精神病の診断は行われておらず、いくつかの精神病的な症状を列挙したアンケート調査で、被験者にそれぞれの経験の有無を尋ねて統計的に分析している。

    質問は、「他の人には聞こえていない声を聞いたことがありますか?」 とか 「誰かが自分の思考をコントロールしていると思ったことはありますか」 といったものから、他人から信用されていないように感じたことがあるか、他人に監視されたり噂されたりしていると感じたことがあるか、他人に親近感を抱いたことは全くないか、自分の考えや信念が他人と共有できないと感じたことがあるか、といった具合になっている。

    集計結果では、25才時点での被験者の平均経験項目数は、カナビス経験のない場合で0.60、月間1回以下の経験者で0.93、最低週1回で1.15、毎日常用している場合は1.95、になっている。これに交錯因子の補正を加えると、リスクは1.6〜1.8倍になるとしている。

    だが、長くカナビスを使っているユーザーなら、特にバッド・トリップ中に質問のような体験をしていてもごく普通のことで、ポイントが高くなっても不思議はない。また、使用期間が長くなればなるほど体験のバリエーションも増えてくるのでポイント数も上昇する方向性があり、因果関係を示しているように見える可能性もある。

    Drug 'doubles mental health risk'  (BBC 2005/3/1)
    カナビスによる精神病、誇張と作り話 (2005/3/7)
    カナビスへの恐怖は如何にして作られるのか、精神病問題と科学の歪曲 (2005/3/21)


  11. Cannabis use predicts future psychotic symptoms, and vice versa
    Robert F. Ferdinand, Frouke Sondeijker, Jan van der Ende, Jean-Paul Selten, Anja Huizink1 & Frank C. Verhulst, Addiction Volume 100 Issue 5 Page 612 - May 2005
    PredictsFuturePsychoticSymptomsViceVersa.pdf

    Cannabis use, in individuals who did not have psychotic symptoms before they began using cannabis, predicted future psychotic symptoms (hazard ratio = 2.81; 95% confidence interval = 1.79窶4.43). However, psychotic symptoms in those who had never used cannabis before the onset of psychotic symptoms also predicted future cannabis use (hazard ratio = 1.70; 95% confidence interval = 1.13窶2.57).

    Conclusions: The results imply either a common vulnerability with varying order of onset or a bi-directional causal relationship between cannabis use and psychosis. More research on patterns and timings of these relationships is needed to narrow down the possibilities.

    カナビス使用と不使用での後年の精神病の発症
    オランダのゾイドホランド州で実施された、14年1580人の追跡研究。被験者の研究開始時における年齢は4〜16才で、無作為に選別された。

    その結果、カナビス開始以前に精神病的症状の見られなかった人が、将来、精神病になるリスクは2.81で、カナビスを全く使わなかった人の場合は1.79だった。つまり、カナビス使用のリスクは、2.81/1.79=1.58倍ということになる。

    このことから、未成年のカナビス使用を防止することで、リスクを下げることができると提言している。しかし、もともと精神脆弱性のある人では、カナビスを避けても、将来精神病になるリスクには余り変わらないかもしれないとしている。


  12. Moderation of the Effect of Adolescent-Onset Cannabis Use on Adult Psychosis by a Functional Polymorphism in the Catechol-O-Methyltransferase Gene: Longitudinal Evidence of a Gene X Environment Interaction
    Avshalom Caspi, Terrie E. Moffitt, Mary Cannon, Joseph McClay, Robin Murray, HonaLee Harrington, Alan Taylor, Louise Arseneault, Ben Williams, Antony Braithwaite, Richie Poulton, and Ian W. Craig, BIOL PSYCHIATRY 2005;57:1117窶1127
    COMTgene.pdf

    Conclusions: These findings provide evidence of a gene X environment interaction and suggest that a role of some susceptibility genes is to influence vulnerability to environmental pathogens.

    未成年でのカナビス使用開始が成人後の精神病発症におよぼす遺伝子の影響
    カナビスと精神病発症の関係は特定の遺伝子の配列に依存しており、その特定の組み合わせは全体の25%の人が持っている。しかし、そうした配列の人でも、カナビスに関連した精神症的な症状が出てくるのは15%だけで、未成年期にカナビスを使っていた場合に限られる。

    この研究については、「カナビス・ユーザーの25%は精神病のリスクが10倍」といった数字だけを強調して恐怖感を煽ることを目的とした報道が盛んに行われた。実際には、この数字の根拠と意味については、印象ほど決定的なものではない。(25%、10倍を参照)

    カナビスと精神病には遺伝子が介在している

    2007年10月に、COMT遺伝子はカナビス使用による統合失調症の発症には関連していないという研究も発表されている。


  13. The Environment and Schizophrenia: The role of Cannabis Use
    Cecile Henquet, Robin Murray, Don Linszen, Jim van Os, Schizophrenia Bulletin 2005 31(3):608-612;
    EnvironmentAndSchizophrenia.pdf

    Conclusion: The observed deleterious effect of cannabis use on the prognosis of patients with psychotic disorder may involve the same mechanism as the observed deleterious effect of cannabis use on the prognosis of individuals with high levels of liability to psychosis. Further study of gene-environment interactions is likely to help elucidate the exact role of cannabis in the onset and the persistence of psychotic disorders but there is an urgent need for human and animal studies examining the biological mechanisms involved.

    遺伝子環境と統合失調症、カナビスの使用が果たす役割
    この研究は、Zammit et al., 2002Van Os et al., 2002Arseneault et al.,2002Fergusson et al.,2003Stefanis et al., 2004Henquet et al., 2005 などのレビューを通じて、統合失調症とカナビスの関係を整理している。

    実際には、研究ごとに統合失調症の定義の幅が大きく異なり、追跡期間やカナビス使用のベースラインの設定もまちまちで、結果もばらばらだが、未成年のカナビス・ユーザーが統合失調症になるリスクはノンユーザーの2倍前後で、それほど大きな影響とも言えないとしている。

    また、カナビスが単独で統合失調症を引き起こすのではなく、遺伝子などの他の要因と結びついてリスクを高めるという考え方を支持して、遺伝子などとの関係を調査する必要があると訴えている。

    この報告書の著者たちは、いずれもこの分野では指導的な人物で、現在のカナビスと精神病問題に関する研究の状況が、一般に思われているほど確定的なものではないことがよくわかる。


  14. Cannabis-induced psychosis and subsequent schizophrenia-spectrum disorders: follow-up study of 535 incident cases
    Mikkel Arendt, Raben Rosenberg, Leslie Foldager, MSc and Gurli Perto, The British Journal of Psychiatry (2005) 187: 510-515
    CannabisPsychosisAndSchizophreniaSpectrumDisorders.pdf

    Results: Schizophrenia-spectrum disorders were diagnosed in 44.5% of the sample. New psychotic episodes of any type were diagnosed in 77.2%. Male gender and young age were associated with increased risk. Development of schizophrenia-spectrum disorders was often delayed, and 47.1% of patients received a diagnosis more than a year after seeking treatment for a cannabis-induced psychosis. The patients developed schizophrenia at an earlier age than people in the comparison group (males, 24.6 v. 30.7 years, females, 28.9 v. 33.1 years).

    Cannabis use in Denmark: The incidence of cannabis-induced psychotic disorders in Denmark was estimated to be 2.7 per 100 000 person-years. This confirms that such conditions are rare. In the interpretation of this number, it is important to note that in Denmark cannabis is predominantly smoked as hashish, which is more potent than marijuana. A recent publication from the Danish National Board of Health (2003) shows that 40.9% of all Danish citizens aged 16窶24 years have used cannabis at some point in their lifetime, and that 19.7% had used the substance in the previous month.

    カナビス誘発性精神病からその後の統合失調症へと続く連続的疾患:535症例の分析
    このデンマークの研究は、カナビス・ユーザー全体ではなく、カナビスで何らかの精神病的異常を抱えて病院を訪れた患者について分析したもので、そのうち約半数(44.5%)が統合失調症に発展した。

    この研究は病院内に限った事例分析でしかないが、数字が大きいのでインパクトが強く、報道もその部分だけを強調してカナビスの危険性を訴えている。しかし、現実には人口の約20%が精神病的症状を持ちながらも治療を求める人は20人に1人しかいないと言われていることを母数として考慮すると、数字は途端に数%でしかなくなる。

    実際、この論文では、そのことをきちんと意識しており、デンマークのカナビス誘発性精神障害は、10万人年あたり2.7人にしかならないと指摘している。

    Drug disorder schizophrenia link  (BBC 2005/12/1)


  15. Two cases of "cannabis acute psychosis" following the administration of oral cannabis
    B Favrat, A Menetrey, M Augsburger, L E Rothuizen, M Appenzeller, T Buclin, M Pin1, P Mangin, C Giroud, BMC Psychiatry 2005, 5:17 doi:10.1186/1471-244X-5-17
    TwoCasesOfCannabisAcutePsychosis.pdf

    We report two cases of healthy subjects who were occasional but regular cannabis users without psychiatric history who developed transient psychotic symptoms (depersonalization, paranoid feelings and derealisation) following oral administration of cannabis.

    カナビスの経口投与による「カナビス急性精神病」の2事例
    この論文は、THCによる運動神経と運転能力への影響を調べる実験中に遭遇した「カナビス急性精神病」の事例報告。

    被験者は8人。全員オケージョナル・ユーザーで、経口投与の経験はなく、実験前には尿テストで他のドラッグが残存していないかチェックを受けている。THCは、ドロノビノール20mgまたは、15.8mg相当のバング飲料で経口投与された。1時間ごとに血液検査で血中濃度を調べ、あわせて運転シュミレータで各種の運転能力の変化を調べている。

    そのうち2人が「カナビス急性精神病」に陥った。一人は、投与1時間後は盛んに笑っていたが、1時間半を過ぎると、現実感喪失や離人症的症状を伴う激しい不安に教われた。「ベッドに横たわっている自分を見ている」と何度も報告した。3時間後からは症状も弱くなったが、結局、運転実験は出来なかった。10時間後に、再び不可解な不安に襲われたが、そのまま寝込んだ。翌日には、元気に目覚めた。

    2例目に人は、実験中は疑い深くなり、検査担当者が何かを隠していると思っていた。運転実験は出来なかった。4時間後から、症状は弱くなった。翌朝は、再発もなく元気に目覚めた。本人によると、いつもの喫煙に比べて非常に不快な気分になったと報告している。

    この論文は、表題に「精神病」という言葉が使われていて、注目を集めることになった。しかし、ここで報告された事例は、実際には、経口摂取初心者の典型的なオーバードーズによる一過性のバッド・トリップで、カナビス・コミューニティではよく知られている例に過ぎない。

    研究者は20mgをマイルドな量としているが、ドロノビノール・カプセルが2.5mg,5mg,10mgであることを考えれば、決して少ない量とはいえない。(マリノール 対 天然のカナビス)また、1999年に発表された全米科学アカデミー医学研究所(IOM)の報告書にも、ドロノビノールはオーバードーズしやすく、使用した患者のおよそ3分の1に 「不安、離人症、めまい、多幸、情動不安、眠気」 などの副作用があると書かれている。

    この研究を統合失調症と結び付ける見方もあるが、バッド・トリップ体験中の本人は、普通、それがカナビスによって起こっていることを自覚しており、一過性でやがておさまることを認識できるので、そうした自覚もなく症状の継続する精神病とは明らかに違う。逆にいえば、この研究は、カナビスが「精神病的な症状」を引き起こすこともあるが、それが統合失調症とは直接結び付かないことを示しているとも言える。

    Cannabis medicine 'causes harm'  (BBC 2005/4/1)


  16. The Impact of Recurrent Exposure to Cannabis on Brain Development in Adolescents with Schizophrenia and Healthy Volunteers
    Manzar Ashtari, Sanjiv Kumra, November 30, 2005
    http://rsna2005.rsna.org/rsna2005/V2005/conference/event_display.cfm?em_id=4419258
    http://www.rsna.org/rsna/media/pr2005/Ashtari-Marijuana/ashtari.cfm(画像)

    CONCLUSION: These data suggest that cannabis use is associated with an exacerbation of abnormal developmental trajectories of prefrontal cortex in schizophrenia. The relationship between lower FA values in the SMA and working memory provide further support for a hypothesis that adolescence-related neurodevelopmental events may contribute to the pathophysiology of cognitive dysfunction in schizophrenia.

    未成年の統合失調症患者と健常者の脳発達に対するカナビス頻繁暴露の影響
    画像解析には、拡散テンソル画像装置(DTI)を使っている。この装置は、通常の静的な磁気共鳴画像解析をさらに高度化して脳内の水分子の運動をとらえて、脳細胞間の情報伝達を担う神経線維(白質)の縮退状態を調べることができる。

    この研究では、未成年の統合失調症患者と健常者28人づつをいろいろな条件で4グル-プに分けて比較したところ、カナビスの使用が、統合失調症患者の脳の前頭葉前野の繊維束の発達不良を促しているとして、病態生理学的に、未成年の神経発達過程で統合失調症に見られる認知機能傷害が起こるとしている。

    「この発見は、未成年期のヘビーなカナビス使用が、遺伝的に精神脆弱性のある人の脳の正常な発達を妨害して、統合失調症の発現を早める可能性を示唆している。」

    しかし、この研究は、サンプル数が少なく、特定の1施設の装置に限られていることなどの問題点のほかに、対象としている脳の位置が未成年期を通じて髄鞘形成過程にあるために、カナビスが髄鞘形成を阻害するのか、あるいは単に発達を遅くするだけなのかはっきりしていない。また、カナビス使用の程度や時期、現在は中断しているかどうかなどと発達異常の関係性も示されていない。

    また、脳の成長に損傷があったとする部分は臨床的には失語症を起こすことで知られているが、被験者の損傷の程度が非常に小さく失語症も見られないことから、必ずしも何らかの関連があるとまでは言えない。

    さらに、カナビス・ユーザーの異常は片側だけに起こっており、普通、両側に起こる統合失調症の場合とは異なっている。さらに大きな問題は、統合失調症の場合は脳の異常が全体にわたって見られるのに対して、この実験のカナビス・ユーザーでは小さな部分だけでしかない。

    同じようにDTIを使った研究で、異常は見られないとする報告 もある。

    Imaging Shows Similarities in Brains of Marijuana Smokers, Schizophrenics
    RSNA: Brain Scans Suggest Marijuana-Schizophrenia Link
    Instresting Fact About Marijuana


  17. Psychophysiological Evidence of Altered Neural Synchronization in Cannabis Use: Relationship to Schizotypy
    Patrick D. Skosnik, Giri P. Krishnan, Erin E. Aydt, Heidi A. Kuhlenshmidt, Brian F. O’Donnell, American Journal of Psychiatry 163:1798-1805, October 2006
    http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/abstract/163/10/1798

    CONCLUSIONS: These data provide evidence for neural synchronization and early-stage sensory processing deficits in cannabis use. This finding, along with the observed increased rates of schizotypy in cannabis users, adds support for a cannabinoid link to schizophrenia spectrum disorders.

    神経同期測定のよるカナビス・ユーザーの統合失調症との関連を示す精神性理学エビデンス
    カナビス・ユーザーとノンユーザーで、特定の聴力周波数で耳を刺激したときにあらわれる脳波を測定したところ、カナビス・ユーザーの脳波が統合失調症患者の脳波に近くなることから、カナビスが統合失調症を引き起こす率を高めることを示す証拠としている。

    しかし、この研究では、対象のカナビス・ユーザーは現行のユーザーであり、中断して十分に時間が経っている元ユーザーの場合はどうなるか検証していない。


  18. Cannabis and schizophrenia: model projections of the impact of the rise in cannabis use on historical and future trends in schizophrenia in England and Wales
    Matthew Hickman, Peter Vickerman, John Macleod, James Kirkbride & Peter B. Jones, Addiction, 102, 597窶606, 2007
    http://www.ukcia.org/research/ProjectionsOfImpactOfRiseInUse/

    AIMS: To estimate long-term trends in cannabis use and projections of schizophrenia assuming a causal relation between cannabis use and schizophrenia.

    CONCLUSIONS: Our data provide no direct evidence on whether cannabis use causes schizophrenia. They appear to confirm assumptions of substantial increases in cannabis use in the UK population over the last 30 years, and suggest a shift to more prolonged use initiated at younger ages. This shift is relatively recent and its full impact on population levels of schizophrenia, if cannabis use does cause schizophrenia, may not yet be apparent. However, this impact should become apparent within the next 5 years. Consideration of these questions is constrained significantly by the lack of reliable data on trends in both cannabis use and schizophrenia, emphasizing the importance that these data be collected in future through robust surveillance systems.

    カナビスと精神病、モデル予測によるイングランドとウェールズにおける統合失調症の将来の増加予測の分析
    この研究は、カナビスが統合失調症を引き起こすという仮定のもとで、そうだと仮定すれば5年後にはどれだけ統合失調症が増加するかをシュミレーションしたもの。カナビスが統合失調症を引き起こすと主張しているわけではなく、むしろ過去のデータでは否定的だが、近年、若年層のカナビス仕様が増加していることから、その影響を将来的注視する必要があるとしている。

    実際にどうなるかは5年後にならないと分からないわけだが、ニュースでは、カナビスが時限爆弾で、2010年の終わりまでには、新たに統合失調症になる4人に一人がカナビスの喫煙がトリガーになって引き起こされると断定的に伝えている

    この論文の著者に加わっているマクラウド博士は、カナビスと精神病について過去の代表的な論文を総合的に検証したことでも知られている。そこでは、カナビスと精神病の害の関連を示すエビデンスがあることは確かだが、しかしながら、このエビデンスの範囲や強度については一般に思われているよりも弱く、さらに、これらの因果関係については明確というにはほど遠い、と書いている。


  19. Cannabis use and risk of psychotic or affective mental health outcomes: a systematic review.
    MTheresa H M Moore, Stanley Zammit, Anne Lingford-Hughes, Thomas R E Barnes, Peter B Jones, Margaret Burke, Glyn Lewis, Lancet. 2007 Jul;370(9584):319-28
    http://www.ukcia.org/research/RiskOfPsychoticOutcomesReview.pdf

    Methods: We searched Medline, Embase, CINAHL, PsycINFO, ISI Web of Knowledge, ISI Proceedings, ZETOC, BIOSIS, LILACS, and MEDCARIB from their inception to September, 2006, searched reference lists of studies selected for inclusion, and contacted experts. Studies were included if longitudinal and population based. 35 studies from 4804 references were included. Data extraction and quality assessment were done independently and in duplicate.

    Findings: There was an increased risk of any psychotic outcome in individuals who had ever used cannabis (pooled adjusted odds ratio=1・41, 95% CI 1・20窶1・65). Findings were consistent with a dose-response effect, with greater risk in people who used cannabis most frequently (2・09, 1・54窶2・84). Results of analyses restricted to studies of more clinically relevant psychotic disorders were similar. Depression, suicidal thoughts, and anxiety outcomes were examined separately. Findings for these outcomes were less consistent, and fewer attempts were made to address non-causal explanations, than for psychosis. A substantial confounding effect was present for both psychotic and affective outcomes.

    Conclusion: we have described a consistent association between cannabis use and psychotic symptoms, including disabling psychotic disorders. The possibility that this association results from confounding factors or bias cannot be ruled out, and these uncertainties are unlikely to be resolved in the near future. Despite the inevitable uncertainty, policymakers need to provide the public with advice about this widely used drug. We believe that there is now enough evidence to inform people that using cannabis could increase their risk of developing a psychotic illness later in life. The evidence that cannabis use leads to affective outcomes is less strong than for psychosis but is still of concern. Although individual lifetime risk of chronic psychotic disorders such as schizophrenia, even in people who use cannabis regularly, is likely to be low (less than 3%), cannabis use can be expected to have a substantial effect on psychotic disorders at a population level because exposure to this drug is so common.

    カナビスの使用と精神疾患および感情障害出現のリスク、総合的検証
    この研究は、かなり古いものも含めて過去の35本の論文を検証し、そのうち7論文のデータセットをメタ分析したもので、カナビス使用による精神病全体のリスクは41%になる計算している。しかし、カナビスと精神疾患の間には、必ずしも十分な因果関係があることを示しているわけではないとも書いている。

    この論文の精神病には、統合失調症ばかりではなく、うつ病や感情障害、軽度の精神疾患も含まれている。また、統合失調症のような慢性疾患に関しては、生涯リスクは3%以下としている。

    ランセットの論文に寄せたデンマークの学者のコメントによると、イギリスでは、15才から34才の1550万人のうちカナビス経験率が40.2%で、リスクが40%増えれば、全精神病の14%がカナビスによって引き起こされることになる。だが、この数字を、統合失調症に限定して、デンマークのの発症実績の10万人中37人という数字を当てはめて見ると、イギリスにおけるカナビスによる統合失調症の年間発症者数は800人になるとしている。しかし、この実数は、全カナビス経験者620万人の0.00013%に過ぎず、ほとんどのカナビス・ユーザーは、カナビスで統合失調症にならないことを示している。

    いずれにしても、この論文の精度と作成理由についてこの研究を率いたザミット教授は、ランセットが配信しているポッドキャストのインタビューの中で、「カナビスの使用が本当に精神病のリスクを増加させるのでしょうか?」 という質問に対して、次のように答えている。(Soft Sercret Magazine Issue 6 - 2007 30p, Cannabis, Mental Health and the Media)

    「いいえ、そうとまでは言えません。……この論文の結果は、カナビスが精神病を引き起こすという因果関係まで示しているわけではありません。この種の疫学研究では、関連を説明するために他の要因を考慮する必要がありますが、考慮していない要因が絡んでいる可能性もありますので、交錯因子を調整した後でも他との関連を完全には排除できないのです。」

    「しかしながら、われわれの立場から社会に何らかのアドバイスをしようと思えば、たとえ現時点で入手できるエビデンスが不十分なことがわかっていても、近い将来に今より上質のエビデンスが得られるという確証がない限りは、結局のところ、その時に利用できる最善のエビデンスを使わざるを得ないのです。」

    また、この論文のメタ分析の手法デザインと評価基準については大いに認めているものの、ベースになっている前提そのものが信頼できないとして、結果についても否定的な見方をしている記事もある。
    前提が成り立たないランセット論文  (2007.7.30)

    この論文でメタ分析している過去論文については、2004年の マクラウド や ロビン・マリーら のレビューでもすでに取り上げられており、ロビン・マリーも、ランセットの論文にはカナビス使用と健康リスクの関連を示すような 新しい発見はほとんどない と語っている。


  20. Changing incidence of psychotic disorders among the young in Zurich
    Vladeta Ajdacic-Gross, Christoph Lauber, Inge Warnke, Helene Haker, Robin M. Murray, Wulf Rossler, Schizophrenia Research, Volume 95, Issues 1-3, September 2007, Pages 9-18
    http://www.sciencedirect.com/

    Abstract
    There is controversy over whether the incidence rates of schizophrenia and psychotic disorders have changed in recent decades. To detect deviations from trends in incidence, we analysed admission data of patients with an ICD-8/9/10 diagnosis of psychotic disorders in the Canton Zurich / Switzerland, for the period 1977窶2005. The data was derived from the central psychiatric register of the Canton Zurich. Ex-post forecasting with ARIMA (Autoregressive Integrated Moving Average) models was used to assess departures from existing trends. In addition, age-period-cohort analysis was applied to determine hidden birth cohort effects. First admission rates of patients with psychotic disorders were constant in men and showed a downward trend in women. However, the rates in the youngest age groups showed a strong increase in the second half of the 1990's. The trend reversal among the youngest age groups coincides with the increased use of cannabis among young Swiss in the 1990's.

    チューリッヒの若者の精神障害の発生率変化
    この研究は、スイス・チュリッヒ県で1977年から2005年までに統合失調症で初回入院した約8000人の患者のデータを分析したもので、1990年代になってから発生率が増えており、カナビスを最も使っているグループと重なっていると指摘している。このグループでは、15才から19才の男性で90年代以前よりも発生率が3倍、また20才から24才でも2倍になっているとしている。

    しかし、実際に統合失調症になった人のカナビス使用歴ついては何も調べておらず、また、女性については全体の発生率が減少していることや、80年代の中頃にも発生率の山が見られることから、このデータからは、ただちにカナビスが原因になって統合失調症が発生したとは言い難いと批判されている。

    Debate rages over cannabis-schizophrenia link  Swiss Info, 24 Jul 2007


  21. Early exposure to cannabis and risk for psychosis in young adolescents in Trinidad
    M. Konings, C. Henquet, H. D. Maharajh, G. Hutchinson, J. Van Os, Acta Psychiatr Scand. 2008 Apr 28 [Electronic publication]
    http://www.blackwell-synergy.com/doi/abs/10.1111/j.1600-0447.2008.01202.x

    Abstract
    Objective: Cannabis use increases the risk for psychosis, but psychotogenic effects of cannabis may be restricted to exposure during early adolescence.

    Method: Four hundred and seventy-two participants (aged 12窶23 years), randomly selected from the general population in Trinidad, completed questionnaires on past and current cannabis use and psychotic symptoms (using the Community Assessment of Psychic Experiences).

    Results: Cannabis use increased the risk of experiencing psychotic symptoms and this effect was conditional on early exposure, defined around the mean age of onset of cannabis use. Thus, exposure before but not after the age of 14 years predicted psychotic symptoms (respectively β: 0.71, 95% CI 0.22; 1.19, P = 0.004 and β: -0.11, 95% CI -0.57; 0.36, P = 0.66). The developmental effect of cannabis use was independent of use of other drugs or current use of cannabis.

    Conclusion: Early adolescence may be a critical period with regard to the psychotogenic effect of cannabis across geographical settings and ethnic groups.

    トリニダードの早期未成年のカナビス暴露と精神病のリスク
    オランダ・マーストリヒト大学のチームが中心になってカリブ海のトリダード島で行った調査。12〜24才の若者472人に現在および過去のカナビス使用と精神病の症状とを聞き取り調査したところ、14才以上では精神病のリスクは増えないが、それよりも早期に開始した人ではリスクが増えることが見出された。



  22. Association of cannabis use with prodromal symptoms of psychosis in adolescence
    J.Miettunen,S.Tormanen,G..Murray,P.Jones,P.Maki,H.Ebeling,I.Moilanen,A.Taanila,M.Heinimaa, M.Joukamaa,JVeijola, The British Journal of Psychiatry (2008) 192, 470窶471.
    http://ukcia.org/research/AssociationOfCannabisUseWithProdromalSymptoms.php

    Summary
    Recent interest has focused on the association between cannabis use and risk of psychosis. In the largest unselected, population-based study on this topic to date, we examined cannabis use and prodromal symptoms of psychosis at age 15窶16 years among 6330 adolescents. Those who had tried cannabis (n=352; 5.6% of the total sample) were more likely to present three or more prodromal symptoms even after controlling for confounders including previous behavioural symptoms (OR=2.23; 95% CI 1.70窶2.94). A dose窶途esponse effect was seen. We conclude that cannabis use is associated with prodromal symptoms of psychosis in adolescence.

    Heavy cannabis use is strongly suspected to be associated with both psychotic symptoms and schizophrenia. 1 Whether cannabis causes psychoses beyond intoxication, however, remains controversial, as some studies describing associations between cannabis use and psychosocial harm are subject to bias or confounding. 2 Our aim was to examine associations between cannabis use and prodromal symptoms of psychosis in a prospective general population-based birth cohort study.

    精神症の前駆症状を伴う思春期のカナビス使用
    イギリスで最大級のヘルス・サービス機関としているNHSのウエブサイトでは、「この類の研究の結果から因果関係まで言及するには無理がある…… この研究ではこの分野でのさらなる研究が必要だとしているが、この方法では、研究デザイン的にカナビスが精神病を引き起こすことを証明することはできない」 と指摘している。

    フィンランド、脆弱なカナビスと精神病の研究  (2008.6.14)





カナビスと統合失調症の関係に懐疑的または否定的な論文
  1. The House of Lords, Science and Technology Committee, 1998 Cannabis: The Scientific And Medical Evidence
  2. Hall 2000 Cannabis use and psychosis: a review of clinical and epidemiological evidence
  3. A joint international effort 2002 Cannabis 2002 Report: Ministry of Public Health of Belgium
  4. Degenhardt 2003 Testing hypotheses about the relationship between cannabis use and psychosis
  5. Grant 2003 Non-acute (residual) neurocognitive effects of cannabis use: A meta-analysis study
  6. Macleod 2004 Psychological and social sequelae of cannabis and other illicit drug use by young people: a systematic review of longitudinal, general population studies
  7. Schiffman 2005 Symptoms of schizotypy precede cannabis use
  8. Iversen 2005 Long-term effects of exposure to cannabis
  9. Mirken 2005 The Cannabis and Psychosis Connection Questioned: A Comment on Fergusson et al. 2005
  10. Hunt 2006 Cannabis and Mental Health: Responses to the Emerging Evidence
  11. Densona 2005 Decreased depression in marijuana users
  12. Harder 2006 Marijuana use and depression among adults: testing for causal associations
  13. Monshouwer 2006Cannabis use and mental health in secondary school children: Findings from a Dutch survey
  14. DeLisi1 2006 A preliminary DTI study showing no brain structural change associated with adolescent cannabis use
  15. Zammit 2007 Genotype effects of CHRNA7, CNR1 and COMT in schizophrenia: interactions with tobacco and cannabis use
  16. Dam 2008 Polydrug use, cannabis, and psychosis-like symptoms
  17. NIMH 2008 What causes schizophrenia?
  18. White 2006 The Schizophrenia Prodrome
  19. Costain. 2008 The effects of cannabis abuse on the symptoms of schizophrenia: patient perspectives.
  20. Arendt 2008 Familial Predisposition for Psychiatric Disorder
  21. Zammit 2008 Effects of cannabis use on outcomes of psychotic disorders: systematic review
  22. Wobrock 2009 Comorbid substance abuse and brain morphology in recent-onset psychosis
  23. Maycox 2009 Analysis of gene expression in two large schizophrenia cohorts identifies multiple changes associated with nerve terminal function.
  24. Schwarcz 2009 Synthetic delta-9- tetrahydrocannabinol (dronabinol) can improve the symptoms of schizophrenia
  25. Stokes 2009 Can recreational doses of THC produce significant dopamine release in the human striatum?
  26. Frishera 2009 Assessing the impact of cannabis use on trends in diagnosed schizophrenia in the United Kingdom from 1996 to 2005


  1. Cannabis: The Scientific And Medical Evidence
    The House of Lords, Science and Technology Committee, 4 Nov 1998
    Cannabis: The Scientific And Medical Evidence

    The harms must not be overstated: cannabis is neither poisonous nor highly addictive, and we do not believe that it can cause schizophrenia in a previously well user with no predisposition to develop the disease.

    イギリス上院科学技術委員会「カナビス、科学的・医学的証拠」
    カナビスの害を誇張してはならない。カナビスには毒性はなく、また中毒性は高くはない。事前に精神の障害が起こりにくい健康なユーザーでは精神病の原因になるとは考えられない。


  2. Cannabis use and psychosis: a review of clinical and epidemiological evidence
    Wayne Hall, Louisa Degenhardt Australian and New Zealand Journal of Psychiatry 2000; 34:26窶34
    CannabisUseAndPsychosis.pdf

    Objective: This paper evaluates evidence for two hypotheses about the relationship between cannabis use and psychosis: (i) that heavy cannabis use causes a ‘cannabis psychosis’, i.e. a psychotic disorder that would not have occurred in the absence of cannabis use and which can be recognised by its pattern of symptoms and their relationship to cannabis use; and (ii) that cannabis use may precipitate schizophrenia, or exacerbate its symptoms.

    Results: There is limited clinical evidence for the first hypothesis. If ‘cannabis psychoses’ exist, they seem to be rare, because they require very high doses of tetrahydrocannabinol, the prolonged use of highly potent forms of cannabis, or a preexisting (but as yet unspecified) vulnerability, or both. There is more support for the second hypothesis in that a large prospective study has shown a linear relationship between the frequency with which cannabis had been used by age 18 and the risk over the subsequent 15 years of receiving a diagnosis of schizophrenia.

    カナビス使用と精神病、臨床および疫学エビデンスのレビュー
    カナビスと統合失調症の関係について2種類の仮説モデルを使って、コホート調査結果を検証している。

    1.ヘビーなカナビス使用が「カナビス精神病」を引き起こす。つまり、カナビスを使っていなかったら精神病が発症せず、使っていた場合は、その使用状態と症状の間に何らかのパターンが見られる。
    2.カナビスの使用が、統合失調症の発症のトリガーになる。または、既存の症状を悪化させる。

    第1の仮説を支持する臨床エビデンスはごく限られている。もし、あるとしても、稀で、大量のカナビスを長期的に使用している場合か、潜在的な精神脆弱性を持っている場合、あるいはその両方の場合に限られている。

    これに対して、第2の仮説を支持しているエビデンスは多く、18才以下のカナビス使用の頻度と、それ以降15年間に統合失調症と診断されるリスクは比例している。

    この研究には、2002年以降に発表された因果説を支持する多数の論文の検証は含まれていない。同研究者は、それらを含めて2003年に、さらに仮説を細分化して検証し直しているが、結果は変わっていない。


  3. Cannabis 2002 Report: Ministry of Public Health of Belgium
    A joint international effort at the inititative of the Ministers of Public Health of Belgium, France, Germany, The Netherlands, Switzerland.

    Technical Report of the International Scientific Conference Brussels, Belgium, 25/2/2002
    Trinbos_Cannabis2002_Report.pdf

    Cannabis-induced chronic psychosis
    There is currently no clear evidence that cannabis use may lead to the persistence of a specific psychotic illness after abstinence, but the topic is controversial.Existing studies of ‘cannabis psychosis’ are undermined by methodological problems (imprecise characterisation of syndromes, lack of toxicological evidence and simplified models of causal associations) .

    The various studies generally mix up cases of shorter duration psychotic episodes (patients apparently suffering from toxic psychosis) with cases of chronic psychotic states. There is no clear evidence that the latter are not schizophrenic patients using cannabis . McGuire et al matched 23 psychotic patients who tested positive for cannabis in urinary screening with 46 drug-free controls, and found no difference in terms of their characteristic psychopathology and mode of onset.

    There have been some case reports of individuals displaying acute psychotic states after each cannabis use. These cases are generally interpreted as the triggering of an underlying vulnerability by cannabis use. It is difficult to establish whether such cases involve a repetition of toxic episodes, a specific chronic cannabis psychosis or an atypical sub-type of schizophrenia .

    カナビス・レポート2002:ベルギー・仏・独・蘭・スイスの厚生大臣による国際協力提言
    現在のところ、カナビスの使用を中断しても、特定な精神病が持続的に続くという明確な証拠はない。「カナビス精神病」を扱ったこれまでの研究には、症状の特徴の不明瞭さ、毒物学エビデンスの欠如、複雑すぎる因果モデルなどの方法論的に問題を抱えている。

    一般に多くの研究で、カナビスの使用による直接・短期的な精神病的症状のケースと、慢性的な精神病状態のケースを混在して扱っている。慢性的な精神病については、カナビスを使っている人と使っていない人の間に明確な違いを示すエビデンスは見付かっていない。

    カナビスの使用によって、一部の人に急性の精神病的症状が見られるケースが報告されているが、これは、潜在的な精神脆弱性が、カナビスの使用のトリガーによって出現したと考えられている。だが、そうしたケースが、特定の慢性カナビス精神病、あるいは非定型的な統合失調症のサブタイプとなって発現しているのかどうかを決めることは難しい。


  4. Testing hypotheses about the relationship between cannabis use and psychosis
    Louisa Degenhardt, Wayne Hall, Michael Lynskey, Drug and Alcohol Dependence 71 (2003) 37-48
    TestingHypotheses.pdf

    If cannabis use acts as a precipitant of psychosis, we would To model the impact of rising rates of cannabis use on the incidence and prevalence of psychosis under four hypotheses about the relationship between cannabis use and psychosis.

    (1) that there is a causal relationship between cannabis use and schizophrenia; (2) that cannabis use precipitates schizophrenia in vulnerable persons; (3) that cannabis use exacerbates schizophrenia; and (4) that persons with schizophrenia are more liable to become regular cannabis users.

    Results: There was a steep rise in the prevalence of cannabis use in Australia over the past 30 years and a corresponding decrease in the age of initiation of cannabis use. There was no evidence of a significant increase in the incidence of schizophrenia over the past 30 years. Data on trends the age of onset of schizophrenia did not show a clear pattern. Cannabis use among persons with schizophrenia has consistently been found to be more common than in the general population.

    Conclusions: Cannabis use does not appear to be causally related to the incidence of schizophrenia, but its use may precipitate disorders in persons who are vulnerable to developing psychosis and worsen the course of the disorder among those who have already developed it.

    カナビス使用と精神症の関係仮説の検証
    カナビスと統合失調症の関係について、次の4種類の仮説モデルを使って、コホート調査結果を検証している。

    1.カナビスが原因で統合失調症を発症する(因果モデル)
    2.カナビスの使用が精神脆弱性のある人の統合失調症のトリガーになる(トリガー・モデル)
    3.カナビスの使用が既に統合失調症の人の病状を悪化させる(悪化促進モデル)
    4.統合失調症の人が、カナビスを症状緩和に使い、ヘビーユーザーになる(逆因果モデル)

    オーストラリアにおいては、過去30年間に、カナビスの使用が急激に広まり、使用開始の年齢も低下しているが、その間に統合失調症の発症率が著しく増加したという証拠はない。統合失調症の発現年齢についても、データーには明確な傾向変化はみられない。しかし、統合失調症の人が、普通の人よりもカナビスを使うことが多いことは、一貫して観察される(○逆因果モデル)。

    カナビスの使用が、統合失調症を因果的に引き起こすは見られない(×因果モデル)。しかし、カナビスの使用は、精神脆弱性のある人の精神病発現を促進している(○トリガー・モデル)。また、既に発症している人では症状を悪化する(○悪化促進モデル)。


  5. Non-acute (residual) neurocognitive effects of cannabis use: A meta-analysis study
    Grant, I., Gonzalez, R., Carey, C., Natarajan, L., and Wolfson, T. (2003). Journal of the International Neuropsychological Society, 9, 679-689.
    348art2003.pdf

    In conclusion, our meta-analysis of studies that have attempted to address the question of longer term neurocognitive disturbance in moderate and heavy cannabis users has failed to demonstrate a substantial, systematic, and detrimental effect of cannabis use on neuropsychological performance. It was surprising to find such few and small effects given that most of the potential biases inherent in our analyses actually increased the likelihood of finding a cannabis effect.

    カナビス使用による非急性(残存型)神経認知機能への影響
    過去15論文のメタ分析。長期的デイリー・カナビス・ユーザーであっても、記憶や学習機能への傷害は非常に小さく、恒久的な脳へのダメージは出てこない。思考テストの点数は、カナビスを使っていない人と変わらない。

    Heavy Marijuana Use Doesn't Damage Brain


  6. Psychological and social sequelae of cannabis and other illicit drug use by young people: a systematic review of longitudinal, general population studies
    John Macleod, Rachel Oakes, Alex Copello, Ilana Crome, Matthias Egger, Mathew Hickman, Thomas Oppenkowski,Helen Stokes-Lampard, George Davey Smith, THE LANCET 窶「 Vol 363 窶「 May 15, 2004
    PsychologicalAndSocialSequelae.pdf

    Despite widespread concern, we have found no strong evidence that use of cannabis in itself has important consequences for psychological or social health. This finding is not equivalent to the conclusion that use of cannabis is harmless in psychosocial terms; problems with the available evidence render it equally unable to support this proposition. Better evidence is needed in relation to cannabis, which is widely used, and in relation to other drugs that, although less widely used, might have important effects.

    若者のカナビス等の違法ドラッグ使用による精神及び社会的続発症 - 系統的レビュー
    この論文では、上の掲載したものなどを含め過去の主要関連論文48件を総合的に検証している。

    カナビス使用と精神病問題の間には一貫した関係は見られない。関連がないとする研究がある一方で、使用量が増えれば問題も増加すると主張する研究もある。後者の研究でも、特定の精神症状に関連付けられるパターンについては一貫していない。精神病問題について扱った大半の研究は、自己証言の症状によるもので、標準的な診断基準にもとづいたものは一部にとどまっている。また、臨床的に統合失調症になったという結果を導き出した研究は1件だけしかない。

    カナビスと精神病の害の関連を示すエビデンスがあることは確かだが、しかしながら、このエビデンスの範囲や強度については一般に思われているよりも弱く、さらに、これらの因果関係については明確というにはほど遠い。

    カナビスと精神病関連を示す強いエビデンスはない


  7. Symptoms of schizotypy precede cannabis use
    Jason Schiffman, Brad Nakamura, Mitchell Earleywine, Joseph LaBrie, Psychiatric Research Volume 134, Issue 1, Pages 37-42 (30 March 2005)
    SchizotypyPrecedesCannabisUse.pdf

    Abstract: The current investigation uses a large non-clinical sample of undergraduate college students (N=189) to investigate schizotypal traits among cannabis and non-cannabis users, as well as the temporal order of the onset of these traits and cannabis use. Findings suggest that regular cannabis users are significantly more prone to cognitive and perceptual distortions as well as disorganization, but not interpersonal deficits, than non-regular users and those who have never used. Additionally, the onset of schizotypal symptoms generally precedes the onset of cannabis use. The findings do not support a causal link between cannabis use and schizotypal traits.

    統合失調症の症状はカナビス使用開始前から顕在している
    ハワイ大学の学生189人を対象にインタビュー調査した研究で、すでに統合失調症的な性格のある人が、カナビスを始めやすいのかどうかを検証した。インタビューでは、統合失調症的な特徴の見られる人に対して、そうした症状がいつごろ出てきたのか調べた。

    カナビスのレギュラー・ユーザーは著しく認知や知覚の歪を起こしやすく、秩序的な行動が乱される傾向が見られるが、ノン・レギュラー・ユーザーやノン・ユーザーに比較して、人間関係に欠陥が見られるというようなことはなかった。さらに、統合失調症の症状の出現については、通常、カナビスの使用開始よりも先行していた。こうした結果から、カナビス使用と統合失調症的性格の間には因果関係があるとは言えない。

    カナビスと統合失調症の関連がさらに不明確に (ニュー・サイエンティスト、16 April 2005)


  8. Long-term effects of exposure to cannabis
    Leslie Iversen, Current Opinion in Pharmacology 2005, 5:69窶72
    http://www.safeaccessnow.org/downloads/long%20term%20cannabis%20effects.pdf

    The long-term use of cannabis, particularly at high intake levels, is associated with several adverse psychosocial features, including lower educational achievement and, in some instances, psychiatric illness. There is little evidence, however, that long-term cannabis use causes permanent cognitive impairment, nor is there is any clear cause and effect relationship to explain the psychosocial associations. There are some physical health risks, particularly the possibility of damage to the airways in cannabis smokers. Overall, by comparison with other drugs used mainly for ‘recreational’ purposes, cannabis could be rated to be a relatively safe drug... A review of the literature suggests that the majority of cannabis users, who use the drug occasionally rather than on a daily basis, will not suffer any lasting physical or mental harm.

    カナビスの長期使用による悪影響
    カナビスの長期使用、とりわけ大量に使っている場合には、学業成績の不振や、時には精神病などのいくつかの心理社会的な悪影響が見られる。しかしながら、カナビスの長期使用が、永続的に認知傷害を引き起こすことを示す証拠はほとんどなく、心理社会的な関係が因果関係によって引き起こされているとする明確な証拠もない。

    身体的なリスクもあるが、特にカナビスを喫煙する者の場合には、呼吸器がダメージをうける可能性がある。全体としては、主にリクレーショナル用途で使われている他のドラッグと比較して、カナビスは比較的安全なドラッグと位置づけることができる。

    ・・・毎日のようにではなく、たまにカナビスを使う程度のユーザーでは、大多数が永続的な身体的あるいは精神的な害に苦しむようなことは全くない、と言うことができる。


  9. The Cannabis and Psychosis Connection Questioned: A Comment on Fergusson et al. 2005
    Bruce Mirken, Mitch Earleywine, Letter to editor in response taken from Addiction. 2005 May;100(5):605-11.
    ConnectionQuestioned.pdf

    One obvious question is raised by their use of ten items from Symptom Checklist 90 as the only assessment tool for symptoms of psychosis. The items assessed focus heavily on paranoid ideation, e.g. ‘feeling other people cannot be trusted’, ‘feeling you are being watched or talked about by others’, and ‘having ideas or beliefs that other do not share.’ This is of concern because it is well known窶背idely reported in the literature [2] and commonly referenced in popular culture for decades [3,4]窶 that paranoid feelings are a relatively frequent effect of acute marijuana intoxication.

    カナビスと精神病の関連に疑問、ファーグッソン論文批判
    この研究では、精神病の症状としては、SCL90(Symptom Checklist 90)と呼ばれているチックリストの10項目で測定されている。被験者はリストに従って、自分の考え方や感情、精神病に共通してあらわれる取付かれたような思い込みなどについて聞かれている。

    しかし、精神病の診断は実際には行われていないのに加えて、チックリストに掲載された症状は、公式の診断基準となっているDSM-IVのリストとは同じものでもない。いずれにしても、最も問題なのは、たった10個で必要な広範囲にわたる質問を「代表」させてしまっていることにある。

    これらの10の質問は、例えば、「他の人から信用されていないと感じる」とか、「誰かに見られていたり、噂されているように感じる」「他の人に受け入れてもらえないという思いや思い込みを持っている」などといったパラノイド症状に焦点が当てられている。しかし、このようなやり方には方法論的な問題がある。なぜなら、カナビスに酔ったときにはパラノイド的感覚をごく普通に誰でも経験することが知られているからだ。

    カナビスによる精神病、誇張と作り話


  10. Cannabis and Mental Health: Responses to the Emerging Evidence
    Neil Hunt, Simon Lenton, John Witton, BeckleyFoundation APRIL 2006
    BeckleyFoundation_Report_08.pdf

    Cannabis use is among the least visibly problematic forms of illicit drug use. Present evidence suggests that concerning the most serious drug-related harm - death - the role of cannabis is negligible compared to other legal, prescribed and illicit drugs (Blakemore 2003). Although it is increasingly clear that cannabis use incurs risks, including mental health problems, millions of people use the drug without obvious ill-effects. Regarding its potential to cause serious mental health problems, it is also of note that alcohol has the potential to cause a psychosis 窶 Korsakoff’s Syndrome; so in this sense, the hazards of cannabis use are not unique.

    カナビスと心の健康、頻出するエビデンスへの回答
    ここで検証した研究では、カナビスの統計的リスク・ファクターは軽微なものであることを示しており、圧倒的多数の若年カナビス・ユーザーについては精神症を発症するようなことはなく、ユーザーのうちでごく少数のグループだけがカナビスの影響を受けやすいという仮説を裏付けている

    カナビスは統合失調症になりやすい人でも軽微なリスクにしかならない


  11. Decreased depression in marijuana users
    Thomas F. Densona, Mitchell Earleywine, Addictive Behaviors June 20, 2005
    DecreasedDepressionInMjUsers05.pdf

    Discussion: Those who consume marijuana occasionally or even daily have lower levels of depressive symptoms than those who have never tried marijuana. Specifically, weekly users had less depressed mood, more positive affect, and fewer somatic complaints than non-users. Daily users reported less depressed mood and more positive affect than non-users. The groups did not differ on interpersonal symptoms. Our results add to the growing body of literature on depression and marijuana and are generally consistent with a number of studies that have failed to confirm a relationship between the two after controlling for relevant variables.

    カナビス・ユーザーのほうが鬱になりにくい
    一般的なうつ病判定方法(疫学研究センターの自己申告による数値判定基準)を用いて、成人4400人を調査している。

    「うつ病のすべての基準値で比較を行ったが、週1回以下の使用者ではうつ的な状態になることは少なく、むしろ良い状態であることが多い。また、非喫煙者に比較して、身体的な苦痛を訴える者は稀れにしか見られない。・・・毎日常用しているユーザーでも、非喫煙者に比べてうつ的な状態になることは少なく、むしろ良い状態を示している。」

    こうしたデータは、成人ではカナビス使用しても、うつ病のリスクが増えないことを明確に示している


  12. Marijuana use and depression among adults: testing for causal associations
    Valerie S. Harder, Andrew R. Morra, Jeremy Arkes, Addiction Volume 101 Issue 10 Page 1463 - October 2006
    http://www.blackwell-synergy.com/
    doi/abs/10.1111/j.1360-0443.2006.01545.x?journalCode=add


    Conclusions After adjusting for differences in baseline risk factors of marijuana use and depression, past-year marijuana use does not significantly predict later development of depression. These findings are discussed in terms of their relevance for understanding possible causal effects of marijuana use on depression.

    成人のカナビス使用と鬱:因果関係の検証
    過去17年にわたって8759人(29〜37才)の成人うつ病患者について調べた研究。 補正を加えていないデータで見ると、カナビスを使い続けている人とうつ病の間には強い関連がみられるが、継続している人と中断した人の違いを示すベースラインを注意深く補正すると、完全にはなくならいものの、ほとんど関連性は見られなくなる」 と結論している。

    さらに、「この報告書の結果は、カナビス使用とその後に出てきたうつ症状の間に見られる関連が、カナビスの継続使用そのものによるのではなく、カナビスを使う決心とうつの双方に共通して関連する第3の要因が働いている、ことを示唆している。

    成人のカナビス使用はうつ病を引き起こさない


  13. Cannabis use and mental health in secondary school children: Findings from a Dutch survey
    Karin Monshouwer, Saskia van Dorsselaer, Jacqueline Verdurmen, Tom Ter Bogt, Ron de Graaf, Wilma Vollebergh, British Journal of Psychiatry (2006), 188, 148-153
    CannabisUseAndMHInSchoolChildren.pdf

    Conclusions: In a country with a liberal drug policy like The Netherlands, cannabis use is associated with aggression and delinquency, just as in other countries. Cannabis use was not associated with internalising problems. Alcohol use and regular smoking were strong confounding factors

    オランダの中等学校生徒のカナビス使用と精神の健康
    オランダのようにリベラルなドラッグ政策を採用している国でも、未成年のカナビス使用は反抗や非行と結びついていることは他の国と同様であるが、カナビスの使用は心の問題とは関連していない。アルコールの使用やタバコの喫煙が強い交錯因子になっている。


  14. A preliminary DTI study showing no brain structural change associated with adolescent cannabis use
    L.E.DeLisi1, H.C.Bertisch, K.U.Szulc, M.Majcher, K.Brown1, A.Bappal1, B.A.Ardekani, Harm Reduction Journal 2006, 3:17 doi:10.1186/1477-7517-3-17
    http://www.harmreductionjournal.com/content/3/1/17
    画像

    Thus, these data lead to the likely conclusion that cannabis use, in at least moderate amounts, during adolescence does not appear to be neurotoxic, although we cannot exclude any adverse effects of heavier amounts than that used by the current subjects. These data are preliminary and need replication with larger numbers of subjects, although they do have implications for refuting the hypothesis that cannabis alone can cause a psychiatric disturbance such as schizophrenia by directly producing brain pathology.

    未成年のカナビス使用が脳の構造変化を引き起こさないことを示したDTI予備研究
    研究は、18才になる前の数年間に少なくとも週2〜3回はカナビスを使っていたが現在ではやめていると自己申告している被験者と、性別や年齢、社会層の重なるカナビス経験のないボランティアを対象にして実施された。診断には、脳細胞間の情報伝達を担う神経線維(白質)の縮退状態を調べることができる高度な磁気共鳴技術である拡散テンソル画像装置(DTI)を使っている。

    研究者たちは、「常習的なカナビス使用でも、通常は、若者の正常な脳発達の神経毒にならないと結論できる」 とし、さらに予見として、「カナビスが単独で脳へダメージを与え、統合失調症のような神経障害を引き起こすという仮説が誤りであることを示唆している」 と加えている。

    カナビスは若者の発達中の脳に害を及ぼさない


  15. Genotype effects of CHRNA7, CNR1 and COMT in schizophrenia: interactions with tobacco and cannabis use
    S.ZAMMIT, G.SPURLOCK, H.WILLIAMS, N.NORTON, N.WILLIAMS, M.C.O’DONOVAN, M.J.OWEN, The British Journal of Psychiatry (2007) 191: 402-407. doi: 10.1192/bjp.bp.107.036129
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/abstract/191/5/402

    Aims: To examine whether variants within the cannabinoid receptor (CNR1) and {alpha}7 nicotinic receptor (CHRNA7) genes are associated with schizophrenia, and whether these effects vary according to cannabis or tobacco use. We also examined a putative interaction between cannabis and Val158Met within the catechol-O-methyltransferase gene (COMT).

    Conclusions: Neither CNR1 nor CHRNA7 variation appears to alter the risk of schizophrenia. Furthermore, our results do not support the presence of different effects of cannabis use on schizophrenia according to variation within COMT.

    統合失調症におけるカナビノイド・レセプター内遺伝子の影響およびカナビス使用とCOMTの相互作用
    カナビノイド・レセプター内にあるどの遺伝子が統合失調症に関与し、カナビスの使用よってどのような影響を受けるのかを調べた。また、カナビスの統合失調症発症に介在していると考えられているCOMT遺伝子についてもその役割を検証している。

    その結果、カナビノイド・レセプターの遺伝子と統合失調症の間には関連性はなく、カナビス使用とも関係していないことが明らかになった。また、以前報告されていたようなカナビスの使用とCOMT遺伝子の間の関連についても追認することができなかったと報告している。この結果について、研究者たちは、カナビス使用とValMet・COMT対立遺伝子の間には関連性はなく、COMT遺伝子とカナビス使用の相互作用で統合失調症が発症するとは考えられないと書いている。

    カナビスと統合失調症、COMT遺伝子は発症リスクに無関係

    関連があるとした以前の研究
    カナビスと精神病には遺伝子が介在している


  16. Polydrug use, cannabis, and psychosis-like symptoms
    Nicholas T Van Dam, Mitch Earleywine, Greg DiGiacomo, Human Psychopharmacology: Clinical and Experimental, Published Online: 30 Apr 2008
    http://www3.interscience.wiley.com/journal/118935109/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0

    Methods
    Schizotypal Personality Questionnaire (SPQ) scores were compared in groups of people with different exposure to cannabis, with the use of other drugs serving as a covariate. Supplemental analyses compared users of legal and illicit drugs with cannabis use as a covariate.

    Results
    Weekly (n = 111) and monthly (n = 136) cannabis users had higher scores on the SPQ than former (n = 143) and non-users (n = 81). The use of other drugs accounted for the links between cannabis and schizotypy. Lifetime use of psychomotor stimulant drugs plus ecstasy accounted for associations between cannabis and scores on the SPQ and its different subscales. Dividing groups by type of drug use revealed that those who used only cannabis and legal drugs (CLDs) (n = 126) were no different from those who used only legal drugs (LDs) (n = 74) but both groups scored significantly lower on the SPQ than polydrug users (n = 247). When controlling for marijuana use in the last month, the significant difference across drug use groups remained.

    Conclusions
    The results suggest that research on marijuana and schizotypy requires careful assessment of the use of other drugs, especially psychomotor stimulants and ecstasy.

    ポリドラッグ・ユーズとカナビスの精神症様症状
    この研究はニューヨークのアルバニー大学心理学科の研究チームが行ったもので、統合失調症の人ばかりではなく普通の人の統合失調症的人格傾向を調べることのできるSPQ (Schizotypal Personality Questionnaire) と呼ばれる評価法を使って、アルコールなどの合法的なドラッグだけを使用している人と各種の違法ドラッグも併用している人を比較している。

    その結果、違法ドラッグとしてはカナビスだけを使っているグループでは、合法ドラッグだけを使っているグループよりもスコアが高くなることはなかった。これに対して、カナビス以外にもエクスタシーやコカインなどの違法ドラッグを併用している人ではスコアが高くなることが示された。

    カナビスの単独使用による精神病のリスクはほとんどない


  17. What causes schizophrenia?
    The National Institute of Mental Health (NIMH), page last reviewed: April 30, 2008
    http://www.nimh.nih.gov/health/publications/schizophrenia/what-causes-schizophrenia.shtml

    Substance abuse

    Some people who abuse drugs show symptoms similar to those of schizophrenia, and people with schizophrenia may be mistaken for people who are high on drugs. While most researchers do not believe that substance abuse causes schizophrenia, people who have schizophrenia abuse alcohol and/or drugs more often than the general population.

    Substance abuse can reduce the effectiveness of treatment for schizophrenia. Stimulants (such as amphetamines or cocaine), PCP, and marijuana may make the symptoms of schizophrenia worse, and substance abuse also makes it more likely that patients will not follow their treatment plan.

    Schizophrenia and Nicotine

    The most common form of substance abuse in people with schizophrenia is an addiction to nicotine. People with schizophrenia are addicted to nicotine at three times the rate of the general population (75窶90 percent vs. 25窶30 percent).

    何が統合失調症を引き起こすのか?
    統合失調症には誤解が多い。大半の専門家は、ドラッグの乱用そのものが統合失調症を引き起こすとは考えてはいない。しかし、カナビスは統合失調症の症状を悪化させる可能性がある。統合失調症患者が最も乱用しているドラッグはタバコで、75-90%の人が使っている。この率は一般の25-30%の3倍になっている。

    この記事には、統合失調症について素人に分かりやすく説明した25ページのリーフレット(pdf)が付属している。リーフレットは、Q&A形式で症状、原因、治療などについて書かれていてとても参考になる。
    Schizophrenia: what causes schizophrenia? Mental Health Information leaflet, Royal College of Psychiatrists


  18. The Schizophrenia Prodrome
    Tonya White, Afshan Anjum, S. Charles Schulz, Treatment in Psychiatry, 3 March 2006
    http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/163/3/376

    Conclusions
    Although the schizophrenia prodrome is associated with substantial diagnostic and management challenges, it is an area of intense study with considerable progress. The presentation of the young adolescent in the clinical vignette is characteristic of these challenges. The clinician’s most useful diagnostic tool窶杯he patient’s history of symptoms over time窶琶s limited in the early stages of the prodrome. In addition, developmental factors that can modulate the symptoms must be taken into account. For the patient in the clinical vignette, a diagnosis of a schizophrenia spectrum disorder would be premature, given the available history. However, she has a number of clinical features that place her at an increased risk. The timing and intensity of treatment in this case would be determined by weighing the effects of the prodromal symptoms on the patient’s developmental trajectory. After a thorough evaluation, this young patient would benefit from CBT with psychoeducation and possibly pharmacological intervention within an overall framework of a well-supported family network.

    統合失調症の前駆症状
    統合失調症の発症には、会話・運動機能発達の遅れ、独り立ち・歩行・トイレへの適応の遅れ、自閉症、注意欠陥、暗記力不足など早くからその前駆症状が現れている。

    最近では、カナビスを使用しているティーンエイジャーの分析などではなく、幼年期のビデオを調べたりして、統合失調症に発展しそうな幼年時の症状を特定して早期治療することが研究されている。ここでは、カナビスが統合失調症を引き起こす原因になるのではなく、統合失調症の前駆症状の一つとしてタバコやアルコール、カナビスなどのドラッグ乱用が現れるという考え方がベースになっている。

    統合失調症の政治学  (2007.8.18)


  19. The effects of cannabis abuse on the symptoms of schizophrenia: patient perspectives.
    Costain WF., Int J Ment Health Nurs. 2008 Aug;17(4):227-35.Click here to read
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18666905

    This study explored explanatory models used by individuals with schizophrenia in relation to continuing cannabis abuse. Cannabis is known to exacerbate positive symptoms, compound the effects of negative symptoms, and lead to relapse, having a negative effect upon quality of life. If this is so, why would people choose to continue the drug use? Most previous studies exploring this phenomenon have used quantitative methodology where the questions asked have been preset by the researchers and the subjective experience of the patient has been minimized. Qualitative methodology was utilized in this study in order to give voice to the patients' perspectives, and contribute to the knowledge of the frameworks of meanings employed by patients. The majority of participants in this study did not perceive that they had a mental illness and they held strong beliefs regarding the usefulness of cannabis. They gave explanations for their continuing cannabis use that expanded the understanding from previous studies. These included that they sought the drug effects of cannabis use for clarity of voices, control of symptoms, to feel normal, perceived improvement in cognitive function, reduced psychological pain and increased energy. These beliefs may influence a person's adherence with treatment and their future cannabis use. This research has implications for clinical practice as clinicians may lack insight into the importance of the phenomenological beliefs of a person with schizophrenia. This lack of insight by the clinician into the phenomenological beliefs may impact on the development of a therapeutic relationship.

    統合失調症患者のカナビス使用の効果、患者の見方
    統合失調症と診断された患者たちは、病気にともなうさまざまな症状をコントロールするためにカナビスを使えば効果が得られると感じている。

    南オーストラリア州のフリンダーズ大学の研究チームは、統合失調症とカナビス「乱用」の双方でDSM-IV診断基準を満たした18才から65才までの30人の患者にインタビュー調査を行った。

    その結果、半分以上の人が、統合失調症の症状をコントロールするためにカナビスを使っていると回答している。30人のうちで、カナビスを吸うと不安が緩和すると答えた人は25人で、カナビスが子供時代のトラウマを忘れさせてくれるとした人は21人いた。

    また、12人が、カナビスは 「スピリチュアルな意識を高揚」 させてくれると答えているほか、10人がカナビスを吸うと 「話声が大きくクリアに聞こえる」、8人がカナビスで 「認知プロセスが促進され」、5人が 「身体的精神的エネルギーが高まる」 と回答している。

    統合失調症患者は症状コントロールのためにカナビスを使っている  (2008.813)


  20. Familial Predisposition for Psychiatric Disorder, Comparison of Subjects Treated for Cannabis-Induced Psychosis and Schizophrenia
    Mikkel Arendt, MScPsych, PhD; Preben B. Mortensen, DrMedSc; Raben Rosenberg, DrMedSc; Carsten B. Pedersen, MSc; Berit L. Waltoft, MSc, Arch Gen Psychiatry. 2008;65(11):1269-1274.
    http://ukcia.org/research/familial-predisposition-for-psychiatric-disorder.pdf

    Patients:
    During the 21.9 million person-years of follow-up between 1994 and 2005, 609 individuals received treatment of a cannabis-induced psychosis and 6476 received treatment of a schizophrenia spectrum disorder.

    Results:
    In general, the rate ratios of developing cannabis-induced psychosis and schizophrenia spectrum disorder associated with predisposition to schizophrenia spectrum disorder, other psychoses, and other psychiatric disorders in first-degree relatives were of similar magnitude. However, children with a mother with schizophrenia were at a 5-fold increased risk of developing schizophrenia and a 2.5-fold increased risk of developing cannabis-induced psychosis. The risk of a schizophrenia spectrum disorder following a cannabis-induced psychosis and the timing of onset were unrelated to familial predisposition.

    Conclusions:
    Predisposition to both psychiatric disorders in general and psychotic disorders specifically contributes equally to the risk of later treatment because of schizophrenia and cannabis-induced psychoses. Cannabis-induced psychosis could be an early sign of schizophrenia rather than a distinct clinical entity.

    精神障害における家族の遺伝因子:カナビス誘発精神病と統合失調症の比較
    カナビス誘発精神病というのは実際には根拠ある正当な診断名ではなく、統合失調症の初期的な兆候の一形態に過ぎないと見ることができる。

    研究者たちは、カナビス誘発精神病で治療をうけた609人と、統合失調症やそれに関連する病状で治療をうけた6476人の家族歴を比較することによって、各々の疾患の遺伝的違いを割り出そうと試みている。

    その結論として、親や兄弟など第一度近親者で統合失調症になった人のいる割合は、カナビス誘発精神病で治療を受けた人でも、実際に統合失笑症の治療を受けた人でも変わりはなく、統合失調症の発症率はカナビス誘発精神病の有無には関係がないとしている。これは、カナビスの使用が精神障害の発症を増加させるするというエビデンスはないと言っているようにも受け取れる。

    この研究は、2005年12月の 『カナビス誘発精神病からその後の統合失調症へと続く連続的疾患:535症例の分析』 の続編になっている。前回の研究では、カナビス誘発精神病患者の約半数(44.5%)がその後6年以内に統合失調症を発症したとしているが、今回の研究でその理由がはっきりと示されたことになる。

    カナビスと統合失調症の新たな関係、カナビスで統合失調症の初期兆候が出現  (2008.11.6)


  21. Effects of cannabis use on outcomes of psychotic disorders: systematic review
    Stanley Zammit, Theresa H. M. Moore, Anne Lingford-Hughes, Thomas R. E. Barnes, Peter B. Jones, Margaret Burke, Glyn Lewis, The British Journal of Psychiatry (2008) 193: 357-363. doi: 10.1192/bjp.bp.107.046375
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/abstract/193/5/357

    Background
    It is unclear if research findings support clinical opinion that cannabis use leads to worse outcomes in people with psychosis, or whether this impression is confounded by other factors.

    Aims
    To systematically review the evidence pertaining to whether cannabis affects outcome of psychotic disorders.

    Method
    We searched 10 relevant databases (to November 2006), reference lists of included studies and contacted experts. We included 13 longitudinal studies from 15 303 references. Data extraction and quality assessment were conducted independently and in duplicate.

    Results
    Cannabis use was consistently associated with increased relapse and non-adherence. Associations with other outcome measures were more disparate. Few studies adjusted for baseline illness severity, and most made no adjustment for alcohol, or other potentially important confounders. Adjusting for even a few confounders often resulted in substantial attenuation of results.

    Conclusions
    Confidence that most associations reported were specifically due to cannabis is low. Despite clinical opinion, it remains important to establish whether cannabis is harmful, what outcomes are particularly susceptible, and how such effects are mediated. Studies to examine this further are eminently feasible.

    精神障害の発症におけるカナビス使用の影響: 系統的レビュー
    カナビスと精神病の関係を指摘する臨床的な意見が一般的にはなっているにもかかわらず、カナビスが精神病の人の症状をさらに悪化させるかどうかについては不明瞭なままで、他の交錯因子が原因になっていないかどうかについてもはっきりしていない。

    研究グループは、関連のあるデータベースを検索して1万5000件以上の文献リストを収集し、最終的には品質アセスメントに合致した13件の長期研究で検証を行っている。

    「疾患の重篤度についてベースライン調整をしている研究はほとんどなく、大半は、アルコールなどの交錯因子になりうる重要な要件についても調整していない。交錯因子のいくつかを調整している研究もあるが、しばしば、その結果は交錯因子の除去で元のデータが非常に大きく影響を受けている。」 このことは、交錯因子自体が原因になっている可能性すら示唆している。

    結論では、精神病の原因として特にカナビスが強く関連していると信ずべき理由は低いと書いている。


    論文の内容もさることながら、さらに興味深いのが、論文の筆頭著者がスタンレー・ザミット教授になっていることだ。ザミット教授は、2002年に発表された 1969年スエーデン新兵における自己申告カナビス使用と精神病のリスク、病歴コホート研究 や2007年7月にランセットに発表された カナビスの使用と精神疾患および感情障害出現のリスク、総合的検証 を主導したことでも有名で、どちらかと言えば、カナビスと精神病には強い関係があるというスタンスの研究が主だった。

    だがランセット論文については、データの収集や分析に不十分な点があることを認めて、「われわれの立場から社会に何らかのアドバイスをしようと思えば… その時に利用できる最善のエビデンスを使わざるを得ない」と語っている。

    しかしその後、COMT遺伝子がカナビスによる統合失調症発症に関与しており、カナビス・ユーザーの4人に1人は他の3人よりも10倍も精神病になりやすいとする 2005年の研究 の追認調査を行い、COMT遺伝子は発症リスクに無関係 だとする研究を発表している。

    今回の研究も、ランセット論文の根本的な見直しを痛感していて、自分が筆頭研究者になって取り組んだようにも感じられる。交錯因子の問題は、自分のスエーデン研究について 批判 を浴びている。

    最新研究 カナビスと精神病の関係は弱い  (2008.11.23)


  22. Comorbid substance abuse and brain morphology in recent-onset psychosis
    Wobrock T, Sittinger H, Behrendt B, D'Amelio R, Falkai P, Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 2009 Feb 4.
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/abstract/193/5/357

    The aim of the presented study was to compare schizophrenia and schizoaffective patients early in the course of the disease with and without comorbid substance abuse disorder (SUD vs. NSUD) with regard to brain morphology.

    In a prospective design 41 patients (20 SUD vs. 21 NSUD) diagnosed as recent-onset schizophrenia or schizoaffective disorder consecutively admitted to hospital received standardized psychopathological evaluation (BPRS, SANS, MADRS, CGI, GAF) and MRI scanning with volumetric measurement of superior temporal gyrus (STG), amygdala-hippocampal complex, and cingulum.

    Patients with SUD (primarily cannabis) were significantly younger, predominantly male and had a lower socioeconomic status. Despite less attentional impairment (SANS subscore) and elevated anxiety/depression (BPRS subscore) in patients with SUD compared to NSUD, no other psychopathological differences could be detected. There were no differences in the assessed temporolimbic brain morphology between the two subgroups.

    In conclusion, in this study substance abuse in recent-onset psychosis had no effect on brain morphology and the earlier onset of psychosis in patients with comorbid SUD could not be explained by supposed accentuated brain abnormalities in temporolimbic regions.

    精神病発症期におけるドラッグ乱用と脳形態変化
    統合失調症と統合失調性感情障害の患者の脳形態においては、カナビスを使用の有無は無関係であり、精神病の発症が、カナビスを使っていたことで脳に異常を起こしたとする考え方では成り立たないことが明らかになった。

    研究の対象となった患者は、最近、統合失調症または統合失調性感情障害を発症したと診断された41人で、そのうち20人がドラッグ(主にカナビス)を使っていた。この二つのグループに対してMRI画像診断で、上側頭回、扁桃体-海馬複合部、帯状束の容積測定を行った。

    ドラッグを使っていた患者たちは若い男性が顕著で、社会経済的な状態も低いという特徴が見られた。また、他の機能障害や不安やうつの傾向はわずかに見られたものの、その他の精神病理学的な作用には違いはなかった。さらに二つのグループ間には、側頭辺縁の脳形態には何らの違いも見出されなかった。

    こうしたことから、研究者たちは、精神病発症においてはドラッグの使用が脳の形態に影響することはなく、精神病の発症が側頭辺縁域のドラッグ使用による脳異常が関係しているとする主張では説明できない、と結論付けている。

    カナビスは精神病患者の脳形態に異常は起さない  (2009.2.15)


  23. Analysis of gene expression in two large schizophrenia cohorts identifies multiple changes associated with nerve terminal function.
    P Maycox1, F Kelly, A Taylor, S Bates, J Reid, R Logendra, M Barnes3, C Larminie, N Jones, M Lennon, C Davies, J Hagan1, C Scorer1, C Angelinetta, T Akbar, S Hirsch, A Mortimer, T Barnes and J de Belleroche, Molecular Psychiatry, March 3, 2009; DOI: 10.1038/mp.2009.18
    http://www.nature.com/mp/journal/vaop/ncurrent/abs/mp200918a.html

    Schizophrenia is a severe psychiatric disorder with a world-wide prevalence of 1%. The pathophysiology of the illness is not understood, but is thought to have a strong genetic component with some environmental influences on aetiology.

    To gain further insight into disease mechanism, we used microarray technology to determine the expression of over 30 000 mRNA transcripts in post-mortem tissue from a brain region associated with the pathophysiology of the disease (Brodmann area 10: anterior prefrontal cortex) in 28 schizophrenic and 23 control patients.

    We then compared our study (Charing Cross Hospital prospective collection) with that of an independent prefrontal cortex dataset from the Harvard Brain Bank. We report the first direct comparison between two independent studies.

    A total of 51 gene expression changes have been identified that are common between the schizophrenia cohorts, and 49 show the same direction of disease-associated regulation.

    In particular, changes were observed in gene sets associated with synaptic vesicle recycling, transmitter release and cytoskeletal dynamics. This strongly suggests multiple, small but synergistic changes in gene expression that affect nerve terminal function.

    大規模統合失調症患者グループにおける神経末端機能の多重変化と遺伝子発現の解析

    この研究によると、統合失調症は脳の欠陥のあるシグナリング機構によって引き起こされるらしいことが分かった。今回の研究はこの種の研究とすれば過去最大のもので、脳内で別々の働きを持った49種類の遺伝子を統合失調症患者と対照群から提供してもらって、その状態を比較して詳しく調べた。

    対象となった遺伝子の多くは、脳内の細胞同士のシグナリンッグをコントロールすることに関与している。研究結果は、病気の原因が細胞同士の情報のやり取り異常で起こるとする理論を支持するものになっている。しかしながら、今回の研究では、ドーパミンやミエリンを生成する遺伝子の働きには、統合失調症患者と対照群の間に何の違いも見られなかった。

    統合失調症は脳の遺伝的シグナル欠陥で起こる  (2009.3.05)


  24. Synthetic delta-9- tetrahydrocannabinol (dronabinol) can improve the symptoms of schizophrenia
    Schwarcz G, Karajgi B, McCarthy R. , J Clin Psychopharmacol 2009;29(3):255-8.
    http://journals.lww.com/psychopharmacology/Abstract/2009/06000/Synthetic__DELTA__9_Tetrahydrocannabinol.10.aspx

    We are reporting improvement of symptoms of schizophrenia in a small group of patients who received the cannabinoid agonist dronabinol (synthetic Δ-9-tetrahydrocannabinol).

    Before this report, cannabinoids had usually been associated with worsening of psychotic symptoms. In a heuristic, compassionate use study, we found that 4 of 6 treatment-refractory patients with severe chronic schizophrenia but who had a self-reported history of improving with marijuana abuse improved with dronabinol.

    This improvement seems to have been a reduction of core psychotic symptoms in 3 of the 4 responders and not just nonspecific calming. There were no clinically significant adverse effects.

    These results complement the recent finding that the cannabinoid blocker rimonabant does not improve schizophrenic symptoms and suggest that the role of cannabinoids in psychosis may be more complex than previously thought. They open a possible new role for cannabinoids in the treatment of schizophrenia

    経口THC(ドロナビノール)を投与した強固な統合失調症患者の症状が改善

    この研究を行ったのはニューヨーク州オレンジバーグにあるロックランド精神医学センターの研究チームで、一人の患者の症状が劇的に改善したことから、200人の患者の中からリスク・ベネフィットアセスメントに合致し、しかもカナビスの使用で症状が改善すると自己報告している人を除いた5人の重度・難治性の患者を選んでさらに実験を行った。

    THCの投与量は、最初の1週目には2.5mgを一日2回、2週目には5mgを一日2回、3週目には10mgを一日2回と順次増量した。

    その結果、5人のうちの3人もTHCで症状が改善が見られた(最初の一人を加えると4人)。臨床的には目立った副作用は観察されなかった。また、一人については著しい改善が見られるまでには8週間を要したが、他の人たちはそれほど時間はかからなかった。

    研究者たちは、「4人のうちの3人に見られた改善は、単に症状が鎮静化したのではなく、精神症の中核的な症状が弱まったことによってもたらされたと考えられる」 と書いている。

    小規模臨床ケース・スタディ、THCが強固な統合失調症を改善  (2009.5.24)


  25. Can recreational doses of THC produce significant dopamine release in the human striatum?
    Stokes PR, Mehta MA, Curran HV, Breen G, Grasby PM. , Neuroimage. 2009 Jun 17
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19539765

    Background: Cannabis use in early adolescence may be a risk factor for development of schizophrenia. In animals, Delta9-tetrahydrocannabinol (THC) increases the rate of dopamine neuronal firing and release in the striatum. Thus cannabis use may increase dopamine release in the human striatum leading to vulnerability to psychosis

    Aims: To investigate whether THC, the main psychoactive component of cannabis, can produce dopamine release in the human striatum.

    Methods: 13 healthy volunteers, with previous cannabis experience, underwent two [11C]-raclopride positron emission tomography (PET) scans to indirectly measure striatal dopamine levels following either 10mg THC or placebo.

    Results: Although THC markedly increased psychosis-like symptoms on the Psychotomimetic States Inventory (PSI), there was no significant effect of THC on [11C]-raclopride binding

    Conclusion: In the largest study of its kind so far, we have shown that recreational cannabis users do not release significant amounts of dopamine from an oral THC dose equivalent to a standard cannabis cigarette. This result challenges current models of striatal dopamine release as the mechanism mediating cannabis as risk factor for schizophrenia.

    THCのリクレーショナル使用量で人間の線条体のドーパミンが明確に増加するか

    これまでは、動物実験によって線条体のドーパミンが増えること示した実験を根拠に、カナビスによる線条体ドーパミンの増加が統合失調症のリスク・ファクターとなるとするモデルが広く信じられてきたが、今回の研究で、人間では必ずしも成り立たっていないことが示された。

    カナビスによって脳のドーパミン分泌は増えない  (2009.6.23)


  26. Assessing the impact of cannabis use on trends in diagnosed schizophrenia in the United Kingdom from 1996 to 2005
    Martin Frishera, Ilana Cromebemail, Orsolina Martinoaemail, Peter Croftcemail, Schizophrenia Research published online 29 June 2009.
    http://www.schres-journal.com/article/PIIS0920996409002692/abstract?rss=yes

    A recent systematic review concluded that cannabis use increases risk of psychotic outcomes independently of confounding and transient intoxication effects. Furthermore, a model of the association between cannabis use and schizophrenia indicated that the incidence and prevalence of schizophrenia would increase from 1990 onwards. The model is based on three factors: a) increased relative risk of psychotic outcomes for frequent cannabis users compared to those who have never used cannabis between 1.8 and 3.1, b) a substantial rise in UK cannabis use from the mid-1970s and c) elevated risk of 20 years from first use of cannabis.

    This paper investigates whether this has occurred in the UK by examining trends in the annual prevalence and incidence of schizophrenia and psychoses, as measured by diagnosed cases from 1996 to 2005. Retrospective analysis of the General Practice Research Database (GPRD) was conducted for 183 practices in England, Wales, Scotland and Northern Ireland. The study cohort comprised almost 600,000 patients each year, representing approximately 2.3% of the UK population aged 16 to 44.

    Between 1996 and 2005 the incidence and prevalence of schizophrenia and psychoses were either stable or declining. Explanations other than a genuine stability or decline were considered, but appeared less plausible.

    In conclusion, this study did not find any evidence of increasing schizophrenia or psychoses in the general population from 1996 to 2005.

    1996〜2005年間のイギリスにおけるカナビスの影響による統合失調症の発症傾向調査

    イギリスでは1996年から2005年の間に統合失調症と診断された件数は増えておらず、カナビス使用や効力の増加と統合失調症の発症は無関係であることが確認された。

    この調査は、イギリスのキール大学医学部の研究チームがイギリスの大規模診療データベース(GPRD、General Practice Research Database)をもとに分析したもの。

    イギリスの研究、カナビスが統合失調症を増加させている証拠は全くない  (2009.6.30)





社会政策
  1. ACMD 2002 The classification of cannabis under the Misuse of Drugs Act 1971
  2. ACMD 2005 Further consideration of the classification of cannabis under the Misuse of Drugs Act 1971
  3. Grotenhermen 2004 How to prevent cannabis-induced psychological distress . . . in politicians
  4. ACMD 2008 Cannabis: Classification and Public Health


  1. The classification of cannabis under the Misuse of Drugs Act 1971
    British Advisory Council on the Misuse of Drugs, March 2002
    ClassificationOfCannabisUnderMoDA1971.pdf

    Conclusions:
    6.1 Cannabis is not a harmless substance and its use unquestionably poses risks both to individual health and to society.
    6.2 Cannabis, however, is less harmful than other substances (amphetamines, barbiturates, codeine-like compounds) within Class B of Schedule 2 to the Misuse of Drugs Act 1971. The continuing juxtaposition of cannabis with these more harmful Class B drugs erroneously (and dangerously) suggests that their harmful effects are equivalent. This may lead to the belief, amongst cannabis users, that if they have had no harmful effects from cannabis then other Class B substances will be equally safe.
    6.3 The Council therefore recommends the reclassification of all cannabis preparations to Class C under the Misuse of Drugs Act 1971.
    6.4 If this recommendation is accepted, the Council has identified a number of issues that it believes, while not directly related to the scientific consideration, to be relevant and/or merit consideration. These are outlined in Annex A of this Report.

    イギリス、ドラッグ乱用諮問委員会報告書、薬物乱用法1971でのカナビスの分類
    カナビスはアンフェタミンなどよりも害が少なく、B分類からC分類へのダウングレードするのが妥当。


  2. Further consideration of the classification of cannabis under the Misuse of Drugs Act 1971
    British Advisory Council on the Misuse of Drugs, December 2005
    cannabis_reclass_2005.pdf

    7. Conclusions and recommendations:
    7.1 Cannabis is harmful and its consumption can lead to a wide range of physical and psychological hazards. Nevertheless, the Council does not advise that the classification of cannabis-containing products should be changed on the basis of the results of recent research into the effects on the development of mental illness. Although it is unquestionably harmful, its harmfulness does not equate to that of other Class B substances either at the level of the individual or of society.

    イギリス、ドラッグ乱用諮問委員会報告書、カナビスの再分類問題答申
    カナビスは、精神及び精神運動能力を害し、急性中毒症状を引き起こしたり、過去の心の病を再発させる可能性があるが、現在明らかになっている証拠によれは、カナビスが統合失調症まで発展する可能性は1%以下。

    害はあるが心の健康には打撃にならない、英、ドラッグ乱用諮問委員会


  3. How to prevent cannabis-induced psychological distress . . . in politicians
    Franjo Grotenhermen, THE LANCET 窶「 Vol 363 窶「 May 15, 2004
    http://www.thc-ministry.net/downloads/cannabis-comm.pdf

    We live in a time in which the unrealistic and unproductive paradigm of complete abstinence from drugs is slowly dissipating. Proponents of a drug-free society find this fact hard to accept, and responsible politicians and doctors can find achieving an appropriate position in the debate difficult. However, we must learn to deal with drugs and their possible dangers without fear.

    政治家のカナビス誘発性精神苦痛症候群の防ぎ方
    カナビスは、政治家たちの間で不安や苛立ちや怒りを引き起こす。このCIPDS(カナビス誘発性精神苦痛症候群、Cannabis-Induced Psychological Distress Syndrome)の結果、法律や政治が過剰反応を起こし、カナビスの使用と乱用の区別もつかなくなってしまう。

    カナビス誘発精神苦痛障害の防ぎ方、法と政治の過剰反応に見られる病理


  4. Cannabis: Classification and Public Health
    British Advisory Council on the Misuse of Drugs, April 2008
    ACMD: Cannabis: Classification and Public Health (2008)

    13. Conclusions and Recommendations
    Recommendation : Cannabis should remain a Class C drug.

    13.4.1 The most worrying individual harms are the effects on mental health but, since the Council’s previous review the evidence has become more, rather than less, confused. Although there is a consistent (though weak) association, from longitudinal studies, between cannabis use and the development of psychotic illness, this is not reflected in the available evidence on the incidence of psychotic conditions. The most likely (but not the only) explanation is that cannabis 窶 in the population as a whole 窶 plays only a modest role in the development of these conditions. The possibility that the greater use of cannabis preparations with a higher THC content might increase the harmfulness of cannabis to mental health cannot be denied; but the behaviour of cannabis users, in the face of stronger products 窶 as well as the magnitude of a causal association with psychotic illnesses 窶 is uncertain.

    イギリス、ドラッグ乱用諮問委員会報告書、カナビスの分類と公衆衛生
    報告書では、カナビスには 他の大半の違法ドラッグに見られるほどの健康リスクはなく、統合失調症のような 精神病のトリガーになることも余りない として、C分類のままに据え置くことを勧告している。この決定には、23人の委員のうちの圧倒的多数の20人が賛成している。

    しかし、イギリス政府は、この勧告を無視して罰則の厳しいB分類にアップグレードすることを決定している。 イギリス政府、カナビスを致死的だとして罰則強化を表明  (2008.5.8)





その他
  1. Piccinelli 1997 Gender differences in the epidemiology of affective disorders and schizophrenia
  2. Kendell 1993 The problem of detecting changes in the incidence of schizophrenia
  3. Boydell 2003 Incidence of schizophrenia in south-east London between 1965 and 1997
  4. Coffey 2003 Adolescent precursors of cannabis dependence: findings from the Victorian Adolescent Health
  5. EMCDDA 2004 An overview of cannabis potency in Europe
  6. Ditchfield 2004 Cannabis 窶 Proposals for a Harm Reduction Strategy
  7. Trimbos 2006The Netherlands National Drug Monitor Annual Report 2005
  8. Barnwell 2006 Confirming alcohol-moderated links between cannabis use and dependence in a national sample
  9. House of Commons Science and Technology Committee 2006 Drug classification: making a hash of it?
  10. Levitt 2006 The Evidence Base for the Classification of Drugs
  11. ACMD 2006 Pathways to Problems Hazardous use of tobacco, alcohol and other drugs by young people in the UK and its implications for policy


  1. Gender differences in the epidemiology of affective disorders and schizophrenia
    Piccinelli, M.; Homen, G. F, WHO, Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse 1997
    WHO_MSA_NAM_97.1.pdf

    To enhance the attention of the peple and government of the world to effects of mental health problems and substance abuse on the social well-being and physical health of the world's underserved populations.A first step is to increase awarness and concern of the omportance of mental health throuth a series of key high profile regional and internatinal events. Secondly, efforts will be devoted to building up the will of the key political authorities to participate. Thirdly, and finally, efforts are to be directed as securring political commitments by decision makers.

    心の病と統合失調症の性別による疫学的相違
    この報告書では、各国の研究者による膨大な精神病の調査研究を検証し、疾病の発症年齢や治療開始年齢、生涯発症率などを表にまとめている。特にカナビスに絞って論及したところはないが、統合失調症の発症年齢が男性25才、女性27才前後になっており、カナビスを最も使う年代(18〜25才)の後になっていることが注目される。

    カナビスによる統合失調症の発症については、カナビス使用開始の影響で未成年の発達中の脳が変化し数年後に発症すると言われているが、これは単に時期的なずれでそう見えやすいことも関係している可能性も考えられる。


  2. The problem of detecting changes in the incidence of schizophrenia
    RE Kendell, DE Malcolm and W Adams, The British Journal of Psychiatry 162: 212-218 (1993)
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/abstract/162/2/212?
    ijkey=530c7bc920e0ecd77c015f3f5e1670a75e7af483&keytype2=tf_ipsecsha


    Despite reports of falling first-admission rates for schizophrenia in the UK and other Western countries, it would be rash to conclude that the incidence of schizophrenia is falling. An attempt was made to tackle the many methodological problems and sources of bias influencing the relationship between admission rates and incidence in an analysis of inception rates for schizophrenia and other psychoses in Edinburgh between 1971 and 1989.

    However it was calculated, the inception rate for schizophrenia fell significantly, but because there was evidence that diagnostic criteria for schizophrenia had narrowed between 1971 and 1989, and because a substantial and changing proportion of recorded first admissions were not true first admissions, it was impossible to conclude that the incidence of schizophrenia had fallen.

    Changes in the incidence of psychiatric syndromes are difficult to establish, particularly in retrospect, and future studies must pay more attention to the many possible confounding influences.

    統合失調症発症の検知方法の変化と問題点
    近年、イギリスや他の西側諸国では統合失調症で初回入院する人の数が減っているが、それを統合失調症が減少しているととらえるのは早計すぎる。そこには多くの方法論的な問題があり、元になるデータにはバイアスがかかっている。

    確かに、統合失調症の初回診断率は著しく下がってはいるが、1971年〜89年の間に統合失調症の診断基準が狭められたことや、初回入院の記録が多量に書き換えられたことが影響しており、統合失調症が減ったとはとても言えない。

    このことが、特に過去との比較を行う精神医学関係の研究を難しくしている。将来の研究においては、こうした影響について十分な注意を払う必要がある。


  3. Incidence of schizophrenia in south-east London between 1965 and 1997
    J. Boydell, J. van Os, M. Lambri, D. Castle, J. Allardyce, R.M. Murray, The British Journal of Psychiatry (2003) 182: 45-49
    http://bjp.rcpsych.org/cgi/content/full/182/1/45

    Results There was a continuous and statistically significant increase in the incidence of schizophrenia, which was greatest in people under 35 years of age and was not gender-specific. Conclusions The incidence of schizophrenia has doubled in south-east London over the past three decades.

    ロンドン南東地域における1965年から1997年の統合失調症の発症率
    当然のことながら、もしカナビスが統合失調症のリスク要因であれば、カナビスの使用が増加に伴って統合失調症の発症率も増えることが予想される。しかし、カナビスの有無にかかわらず、地域で発症率が増えたという報告そのものが余りない。

    その僅かな例外がロンドンのカンバウェル地区のこの研究で、過去30年間に統合失調症の発症率が2倍に増たとしている。このために、この現象とカナビスの使用率の増加を指摘する声が上がった。

    しかし、カナビスの使用率がこの地区だけが特に高いことが示されない限りは、むしろカナビスと統合失調症の発生の間には関連がないことを示していることになる。実際、この研究ではカナビスとの関係については何も言及していない。この研究には、ファン・オズも加わっていることから、実際には説得力のある材料がないことがうかがえる。

    カナビスによる精神病因果説モデルには、カナビスの使用率増加に精神病発症率が伴っていないという現実を説明できない決定的な欠陥があり、このような僅かな狭い例外であっても持ち出さざるを得ないところにそれがよく表れている。


  4. Adolescent precursors of cannabis dependence: findings from the Victorian Adolescent Health
    Carolyn Coffey, John Carlin, Michael Lynskey, Ning Li, George Patton, British Journal of Pychiatry (2003), 182 , 330-336
    AdolescentPrecursorsOfCannabisDependence.pdf

    Conclusions: Weekly cannabis use marks a threshold for increased risk of later dependence, with selection of cannabis in preference to alcohol possibly indicating an early addiction process.

    未成年におけるカナビス依存症の兆候
    未成年においては、カナビスを週に1回使うかどうかが、以後に依存症に陥るかどうかの分岐点になっている。アルコールよりも先にカナビスを選択するようであれば、初期に中毒になる可能性がある。


  5. An overview of cannabis potency in Europe
    European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (EMCDDA) 2004
    Overview_Cannabis_Potency_EU.pdf

    The conclusion of this report is that there have been modest changes in THC levels that are largely confined to the relatively recent appearance on the market of intensively cultivated domestically produced cannabis. Cannabis of this type is typically more potent, although it is also clear that the THC content of cannabis products in general is extremely variable and that there have always been some samples that have had a high potency.

    A clear need exists to develop monitoring systems that can assess the market share of different cannabis products and track changes over time. Currently this information is to a great extent lacking. This is important, as a concern exists that hydroponically produced cannabis grown in the EU may be increasing its market share.

    ヨーロッパのおけるカナビスの効力の変化
    一部の国では、比較的最近、自国内で強力なカナビスを栽培するようになってきたが、その範囲はごく限られており、ヨーロッパ全体のTHCレベルは余り変化していない。しかし、今後は、水耕栽培によるカナビスが増加すると思われ、監視が重要になる。


  6. Cannabis 窶 Proposals for a Harm Reduction Strategy
    J. Ditchfield, S. Lucas Brewer, www.budbuddies.com, October 2004 Revised April 2005
    ProposalsForHRStrategy.pdf

    カナビスの害とその削減対策
    カナビスを使うと不安やパラノイアやパニックになりやすい人への最良のアドバイスは、カナビスの使用を中止させることだ。

    しかし、使い続けることを選んだのなら、適切なセッティング・ガイドラインを設けるようにする。1回のカナビスの限度量を決め、不安を助長するような他のドラッグとの併用は避けて、安全な場所で信頼できる安心感のある友人と一緒に使うようにすれば、深刻な悪影響の発現はある程度抑えられる。重要なことは、例えそのような不快な状態になったとしても、たいていは数時間でもとに戻るということだ。

    統合失調症の人や精神症になりやすい人の場合は、不安やパニックなどの症状が増幅されたり、以前経験した症状がぶり返しやすい可能性があることを心得ておく必要がある。大半のユーザーでは使用量を控えれば軽い精神的な不快感なら緩和されるが、特にこのグループに属する人の場合は使用を中止することが最善の害削減といえるだろう 。

    カナビスの害とその削減対策、医師からの助言


  7. The Netherlands National Drug Monitor Annual Report 2005
    Trimbos Institute, Utrecht, 2006
    2005 annual report of the NDM

    It is not known exactly how many people develop problems related to cannabis use. There is no universally accepted definition of problem cannabis use. In international research, a diagnosis of cannabis dependence is often based on the DSM psychiatric classification system. By comparison with nicotine, heroin and alcohol, cannabis is not very addictive. However, the risk of dependence increases with long-term frequent use and is often accompanied by dependence on other substances. Younger people are more susceptible to this than older people.

    オランダのドラッグ使用モニター・年次レポート2005
    カナビスの使用に関連した問題を起こした人の数について正確には知られていない。カナビスの使用による問題が何なのかについて周知一貫した定義は存在していない。国際的には、カナビスの依存についてはDSM精神症区分にもとづいて診断されるが、カナビスの場合は、ニコチンやヘロインやアルコールに比較すると非常に中毒性は少ない。しかしながら、依存のリスクは長期で頻度の高い使用ほと増え、しばしば、他の薬物の依存に伴って起こっている。この傾向は、若者ほど多く見られる。

    オランダのカナビス人口は40万8000人。カナビスの乱用や依存で一般病院の入院記録が残されている人数は、カナビスが1次的原因の人が56人、2次的な原因の人が322人になっている。また、外来で手当てをうけた患者は1次原因と2次原因が約5000人ずつで、症状は深刻なものではなく、アムステルダムの病院の例では、気分の悪化と不安が44%、動悸が20%、吐き気が15%、血圧や運動神経の低下による影響で転倒して怪我したのが14%で。精神病的な症状が認められたのはカナビス関連患者全体の4%に過ぎない。

    カナビスと統合失調症との関連については、ファン・オズらの研究の一般論(未成年、精神脆弱性、多量使用)に触れているが、具体的な数字は書かれていない。


  8. Confirming alcohol-moderated links between cannabis use and dependence in a national sample
    Smucker Barnwell, Earleywine M, Gordis EB., Addict Behav. 2006 Sep;31(9):1695-9.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?
    cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=16414201&dopt=Abstract


    The present study confirmed findings that alcohol moderates the link between cannabis use and dependence. The study examined a large, diverse national sample of 856 people who consumed cannabis and alcohol at least twice per week. The study possesses several methodological improvements over past research, including less subjective measures of cannabis use and interview-based data collection. Cannabis use and alcohol consumption interacted to predict cannabis dependence symptoms. Cannabis use covaried with cannabis dependence particularly in people who consumed greater amounts of alcohol. These data further support the hypothesis that alcohol increases problems associated with cannabis use.

    カナビス使用と依存性に対するアルコールの関与
    常習的併用あるいは多量のアルコールの使用は、カナビス・ユーザーをカナビス依存症にするリスクを増やす可能性がある。また、カナビスに関連した問題をアルコールが促進させるという仮説を裏付けている。カナビスを安全に使うためには、依存症状が出るのを避けるためにアルコールの消費を制限すべき。

    アルコールとの多量併用はカナビス依存性のリスクを高める


  9. Drug classification: making a hash of it?
    House of Commons Science and Technology Committee. Fifth Report of Session 2005窶06, 18 July 2006
    Making_Hash_of_It_31_07_06_HoseOfCommonsReport.pdf

    Benefits of a more scientifically based scale of harm
    • 48. A more scientifically based scale of harm than the current system would undoubtedly be a valuable tool to inform policy making and education. (Paragraph 104)
    • 49. It is vital that the Government’s approach to drugs education is evidence based. A more scientifically based scale of harm would have greater credibility than the current system where the placing of drugs in particular categories is ultimately a political decision. (Paragraph 105)
    • 50. In our view, it would be unfeasible to expect a penalty-linked classification system to include tobacco and alcohol but there would be merit in including them in a more scientific scale, decoupled from penalties, to give the public a better sense of the relative harms involved. (Paragraph 106)

    イギリス下院科学技術委員会、ドラッグ新分類提言
    委員会は、現在のドラッグ分類が科学的評価ではなく古い仮説をベースにしていると指摘し、現行のABC分類をもっとドラッグの害そのものを反映したものに変更すべきだと提言している。「正確で現状を反映した唯一の分類システムは、罰則規定との連動することをやめて、害だけに焦点を絞り」、個人の害とともに社会に対する影響を考慮して決めるべきだと指摘している。

    「ドラッグの分類に対しては、もっと系統的で科学的なアプローチを採用する時期に来ている。証拠に基づかない言葉では、どのように言ってみても若者たちにきちんとしたメッセージを伝えることはできない。」

    英科学技術委員会、ドラッグ新分類を提言、カナビスはアルコールやタバコよりも害が少ない


  10. The Evidence Base for the Classification of Drugs
    Ruth Levitt, Edward Nason, Michael Hallsworth, Published 2006 by the RAND Corporation
    EvidenceBaseForClassification.pdf

    This report, prepared for the House of Commons Select Committee on Science and Technology, presents the results of four case studies examining the evidence base for the classification of illegal drugs in the context of the 1971 Misuse of Drugs Act. The objective is to identify the main evidence base on the selected drugs and to examine the use of that evidence in classifying each drug. The report also briefly examines the classification systems in three other countries, to provide a context through other drug classification systems.

    • an introduction describing the history of drug classification in the UK and general issues surrounding the types of evidence used in classifying drugs;
    • four individual drug case studies (amphetamines and ecstasy, cocaine, magic mushrooms and cannabis) examining the evidence of physical, social, psychological and economic harm associated with each drug and the use of evidence in government policy;
    • an international learning section examining the classification systems in three other countries (the USA, the Netherlands and Sweden) and the penalties and treatment regimes associated with them.

    ドラッグのエビデンス・ベースによる分類
    この報告書は、イギリス下院科学技術委員会の報告から派生したもので、イギリスでのドラッグ分類の歴史、個々のドラッグのエビデンス検証の他に、アメリカとオランダとスエーデンのドラッグ政策の根本的な考え方の違いについて解説している。


  11. Pathways to Problems Hazardous use of tobacco, alcohol and other drugs by young people in the UK and its implications for policy
    British Advisory Council on the Misuse of Drugs, September 2006
    Pathwaystoproblems.pdf

    Numbers
    • In the UK at present, 20窶25% of 15-year-olds are regular smokers, with females now outnumbering males; around 40窶50% are drinking alcohol at least weekly; and 20窶25% are using other drugs 窶 mainly cannabis 窶 at least monthly.
    • Among the 6.8 million 16窶24-year-olds in the UK, there are an estimated 2.1 million daily smokers, 1.9 million who drink more than twice the recommended daily alcohol limit at least once a week and 1 million who have used another drug in the past month. Because many young people use more than one drug, there is much overlap between these groups.

    Findings
    • There are many factors which influence whether or not young people will use tobacco, alcohol or other drugs hazardously. The most important of these include early life experiences, family relationships and circumstances, and parental attitudes and behaviour. It is difficult to predict who will develop serious problems.
    • While many young people first use tobacco, alcohol or other drugs in their early and mid-teens, hazardous use often starts in the late teens or twenties.
    • Of all drugs, the use of alcohol has shown the greatest recent growth and causes the most widespread problems among young people in the UK today. It is also the least regulated and the most heavily marketed.
    • Most schools in the UK provide drug prevention programmes. Research indicates that these probably have little impact on future drug use.

    イギリスにおける若者のタバコ、アルコール、その他のドラッグの有害使用問題
    現在のイギリスでは、15才以上の20〜25%がタバコを常用し、40〜50%が週1回はアルコールを飲み、20〜25%が月1回は主にカナビスなどのドラッグを使っている。

    最も問題なのは、初期体験の定年齢下、家族関係と環境、両親の対応や振舞が上げられる。誰が深刻な問題に陥るか予想することは難しい。多くが15才までに初体験をするが、害を引き起こす使用を始めるのは、ティーン後半から20代に入るころが多い。

    イギリスの若者の間では、すべてのドラッグの中でも、特に、アルコールの使用が最も増加が著しく、最も広範囲な問題を引き起こしている。





論文検索

  1. Cannabis and Mental Health, Reading List of DrugScope Library March 2006
    Cannabis and Mental Health. Information & Library Service

  2. UKCIA 文献リンク一覧 安全性
    Research library - Safty


統合失調症全般

  1. Rethink
    http://www.rethink.org/how_we_can_help/campaigning_for_change/
    cannabis_and_mental_illness/index.html
     (カナビス関係)

  2. Schizophrenia.com
    http://www.schizophrenia.com/prevention/streetdrugs.html (カナビス関係)

  3. Oxford University
    Oxford Journals