統合失調症は

脳の遺伝的シグナル欠陥で起こる


Source: ScienceDaily
Pub date: 5, Mar 2009
Schizophrenia Could Be Caused By Faulty Signaling In Brain
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/03/090303082811.htm


分子精神医学ジャーナルに掲載された 新研究 によると、統合失調症は脳の欠陥のあるシグナリング機構によって引き起こされるらしいことが分かった。今回の研究はこの種の研究とすれば過去最大のもので、脳内で別々の働きを持った49種類の遺伝子を統合失調症患者と対照群から提供してもらって、その状態を比較して詳しく調べた。

この研究を行ったのは、インペリアル・カレッジ・ロンドンとグラクソ・スミスクラインの研究者たちで、対象となった遺伝子の多くは、脳内の細胞同士のシグナリンッグをコントロールすることに関与している。研究結果は、病気の原因が細胞同士の情報のやり取り異常で起こるとする理論を支持するものになっている。

統合失調症はおよそ100人に一人の割合で被患すると考えられている。症状はさまざまだが、典型的には幻覚、やる気の欠如、社会適応力の障害などがある。病気によって脳がフィジカルな変化を受けることはほとんでないためもあって、原因についてはほとんど知られていない。

一部の学者たちは、統合失調症の原因は脳が過剰にドーパミンを生成する結果起こるものだと考えている。これは、ドーパミンの活動をブロックする薬が症状の治療に役立つからだ。また、統合失調症患者では、神経細胞を覆っている脂肪質物質のミエリンが壊れているからだという説もある。

しかしながら、今回の研究では、ドーパミンやミエリンを生成する遺伝子の働きには、統合失調症患者と対照群の間に何の違いも見られなかった。

論文の共著者でインペリアル・カレッジ・ロンドンのジャッキー・デ・ベレロシェ教授は、「統合失調症治療でより良い結果を得るための第一歩は、どのような遺伝子が関与してどのような働きをしているのがを明らかにすることで、実際には何が起こっているのが理解することです。われわれの研究結果は、治療のターゲットを絞り込むのに役立つはずです」 と語っている。

今回の発見は、統合失調症の原因が脳細胞間のシグナリングの不調にあることを示しただけではなく、どのような行動をするかがベースになっている現在の診断のやり方に対しても新しい方法をもたらす可能性を持っている。

「大半の場合は、テーンエイジか20才代の初期に統合失調症の診断を受けますが、たとえ若くして診断されても、もっと効果的な治療を受けてより質の高い人生を送くれるのです。あまり効果のない薬を飲み続けるのではなく、早期に人生を変えることのできる可能性もあるのです。」

今回の研究で分析に使われた脳組織は、イギリスの統合失調症患者28人から提供を受けたもので、対照群はアメリカで行われた同等の研究で得られた23人のデータが使われた。今回の研究の対象になった遺伝子は、どちらの研究でも変化に共通性があるものが選ばれた。現在までのところ、統合失調症患者が対象にしたこの種の研究とすれば最大規模のものになっている。

また、脳サンプルは、統合失調症に関連した前頭皮質と側頭皮質2箇所の採取されたもので、タンパク質やDNAだけではなくmRNAについても調べている。mRNAは、タンパク質を生成する細胞のDNAの小領域をコピーするもので、DNAとは違ってmRNAは、異なったタンパク質が必要な体の部位に合わせて変わることができる。

今回の論文:
Analysis of gene expression in two large schizophrenia cohorts identifies multiple changes associated with nerve terminal function.   Maycox et al. , Molecular Psychiatry, March 3, 2009; DOI: 10.1038/mp.2009.18

Adapted from materials provided by Imperial College London

カナビスの使用が統合失調症を引き起こすという主張は現在でも根強いが、最近では、カナビスが統合失調症の原因にはならないという研究が多く発表されるようになってきた。

2008年11月に発表されたデンマーク・オルフス大学病院の 調査研究 でも、「統合失調症を発症する人は、カナビスを使っていたかどうかは関係なく」 、「カナビスで統合失調症になるのは、もともと精神脆弱性を抱えた人」 という以前からある主張を確認するものになっている。

今回の研究も結論的には基本的に同じであるが、それを遺伝子レベルで明確に示した点で画期的といえる。また、カナビスがドーパミンの生成に影響を与えて統合失調症を引き起こすとも言われたりもするが、ドーパミン説が否定された点でも注目される。

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