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翻訳ニュース記事アーカイブ

03/11/02 オランダ、語られ始めた精神病神話
04/01/30 カナビスが息子を殺した、だから合法化すべき、うつ病で自殺した息子を思う父親の訴え
04/05/17 カナビスは社会心理的な害とは無関係、長期研究論文の検証結果、強い証拠はない
04/05/25 カナビス誘発精神苦痛障害の防ぎ方、法と政治の過剰反応に見られる病理
04/08/20 カナビスと統合失調症は無関係、オランダの研究報告
04/12/09 カナビスと精神病の関連を示す強いエビデンスはない、カナビス48論文 検証レビュー
 
05/02/16 ジェフリーとの旅路
05/03/07 カナビスによる精神病、誇張と作り話
05/03/20 カナビスの効力が飛躍的に上昇? 効力の強いカナビスは危険か?
05/03/21 カナビスへの恐怖は如何にして作られるのか、精神病問題と科学の歪曲
05/03/23 英、緩和カナビス法を再見直しへ
05/03/23 カナビスと若年層の精神病リスク、強い証拠はないが、特定リスクグループで顕著
05/03/25 英、緩和カナビス法を再見直しへ、NZの精神症増加研究を根拠に
05/03/25 精神分裂症の研究に疑問
05/04/29 カナビスと精神病には遺伝子が介在している
05/06/04 カナビスが精神障害を緩和する
05/07/07 カナビス・ユーザーはうつになりにくい
05/07/27 カナビスの規制・合法化に賛成、統合失調症患者の母親の訴え
05/12/01 カナビスには精神病を抑える効果もある、オーストラリアの動物研究
 
06/01/19 エンドカナビノイドの生成が気持ちを和らげる
06/01/19 アルコールとの多量併用はカナビス依存性のリスクを高める
06/01/21 害はあるが、心の健康には打撃にならない、諮問委員会答申
06/02/02 カナビスと攻撃性の関連情報に証拠で論駁
06/03/02 カナビスで 「非動機症候群」 にはならない
06/03/09 カナビスを常用しても脳の認知機能は低下しない
06/05/04 カナビスは統合失調症になりやすい人でも軽微なリスクにしかならない
06/05/11 カナビスは若者の発達中の脳に害を及ぼさない
06/07/08 カナビスは第一選択薬、子供の精神障害
06/09/21 うつ病 と そう病、気分障害に揺れるカナビス
06/09/28 成人のカナビス使用はうつ病を引き起こさない
 
07/05/03 カナビスの使用は統合失調症の症状に悪影響を及ぼさない
07/05/17 カナビスの使用が統合失調症患者の認知機能を改善する
07/07/27 専門家、カナビスの分類変更に反対、イギリス政府の罰則強化策には科学的根拠なし
07/07/28 データを曲解し誇張するカナビス報道、カナビスと精神病をめぐるランセット論文
07/08/18 統合失調症の政治学
07/09/16 カナビスが統合失調症患者の認知機能を高める
07/10/31 カナビスと統合失調症、COMT遺伝子は発症リスクに無関係
07/11/08 カナビスの使用で統合失調症患者の認知機能が高まる
 
08/05/01 カナビスの単独使用による精神病のリスクはほとんどない
08/06/14 フィンランド、脆弱なカナビスと精神病の研究
08/08/13 統合失調症患者は症状コントロールのためにカナビスを使っている
08/11/06 カナビスと統合失調症の新たな関係、カナビスで統合失調症の初期兆候が出現
08/11/12 カナビス精神病という疾患は無実体、統合失調症の初期兆候が現れたもの
08/11/23 最新研究 カナビスと精神病の関係は弱い
 
09/01/27 統合失調症は5000人に一人、カナビスの健康リスクは増えてはいない
09/02/15 カナビスは精神病患者の脳形態に異常は起さない
09/03/05 統合失調症は脳の遺伝的シグナル欠陥で起こる
09/05/24 小規模臨床ケース・スタディ、THCが強固な統合失調症を改善
09/06/23 カナビスによって脳のドーパミン分泌は増えない
09/06/30 イギリスの研究、カナビスが統合失調症を増加させている証拠は全くない



カナビスによる精神病を伝える一般記事

  1. カナビスは心の病を悪化させる

    今回の研究の中心的な結論の一つは、未成年のときにカナビスを始めた人が、数年して精神病問題に発展するリスクが最大になる点だ。別の研究チームは、イギリスでカナビスの使用を無くすことができれば、統合失調症の発生件数を13%減らすことができると見積もっている。
    この記事は、イギリス医学ジャーナルに同時掲載された3件の論文、オーストラリアスエーデンニュジーランドの研究をレビューした同誌の論説を紹介したものだが、記事の冒頭で、論説自体には書かれていない 「統合失調症を13%減らすことができる」 という別の研究の話を持ち出して読者を誘導することから始まっている。

  2. カナビスは精神病のリスクを上昇させる

    研究は、未成年期や青年期に頻繁にカナビスを使うと、何年か経ってから精神病の症状に悩まされるリスクが増えることを示している。リスクは、遺伝的に精神病になりやすい脆弱性を持った若者でいっそう高くなる。リスクが増えるのは、心的状態に重要な役割を果たしている脳内のドーパミンのバランスが乱されるためだと考えられている。
    オランダの研究を紹介したものだが、研究の方法や結論の検証よりも、結論に沿った前提で、社会がどう対応すべきかといった識者の一般論を中心にまとめられている。研究の紹介はその導入部に過ぎず、研究方法を問題にしている意見などは掲載されていない。

  3. カナビスが精神病のリスクを押し上げる

    約2500人の若者を対象に調査した研究によると、未成年期や青年初期にカナビスを使うと精神病的な症状に見舞れるリスクが増加することが明らかにされた。特に、既に精神的な問題を抱えている人では、カナビスは際立って大きなリスクになる。
    ファン・オズ・チームのオランダの研究 と ドイツの研究を一括りにして紹介したものだが、インパクトのありそうな数字だけを列挙している。しかし、カナビスを合法化してきちんとした品質のものを流通させたほうのが、精神病の害削減になるという精神学者の意見も紹介している。

  4. マリファナの使用が精神病のリスクを押し上げる

    マリファナを頻繁に使うティーンや青少年は、数年後に精神病的な症状に陥るリスクが高くなることが分かった。オランダの研究者たちは、14才から24才までの若者2437人を対象に精神病になりやすい傾向があるかどうかを調べた。参加者たちには、4年間にわたって、カナビスの使用状態などについて質問して追跡している。
    上の記事を書き直したもの。タイトルもほとんどそのまま。

  5. カナビス・ユーザーの25%は精神病のリスクが10倍

    ロンドンにある精神医学研究所のカプシ教授に率いられたチームの研究で、生物精神医学ジャーナルに掲載されることになっている。研究者たちは、カナビスがトリガーになって引き起こされる精神病が、統合失調症の人に多く見られるCOMTという特定の遺伝子に関係しているのではないかを調べた。COMT遺伝子は、valとmetと呼ばれる2種類の基本配列が2つ組み合わさってできている。この遺伝子は、脳内のドーパミンを遮断するが知られており、特にval同士の組み合わせは統合失調症のリスクに結び付いている。

    研究者たちは、このval同士の配列遺伝子を持った人がカナビスを使うと、精神病になるリスクが10.9倍になることを示した。
    この記事は、ニュージーランド・デニーデンの調査結果をもとに、イギリスで分析された研究を扱ったものだが、何に対する倍率なのか説明が不完全で、数字だけを強調して恐怖感を煽ることが目的になっている。実際には、この数字の根拠と意味については、印象ほど決定的なものではない。(25%、10倍を参照)。

    また、2007年10月には、COMT遺伝子とカナビス使用による統合失調症の発症は無関係とする研究も発表されている。(カナビスと統合失調症、COMT遺伝子は発症リスクに無関係

  6. 若者のカナビス流行を警戒

    フォールカーク高校のイーストン先生は、「カナビスはヘロインやコカインほど悪くはないかもしれませんが、無害で安全というにはほど遠いと言えます。最近の医学研究では精神病を引き起こすことが示されています。ですが、多くの若者たちは、副作用や退学になるの可能性について気づいていません。35年前に自転車置き場の裏でタバコをやっていた生徒たちと変わりません」 と語っている。
    生徒たちの間でのカナビス蔓延が大きな問題となっている現状について、ダウングレードを合法化と勘違いしている生徒が多いと懸念しているスコットランドの校長会と、きちんと合法化したほうが害削減できてよいというスコットランド社会党の意見を併記。

  7. イギリス政府、カナビスの精神衛生リスクを精査

    政府は、カナビスの使用が精神衛生の問題の関連しているとするすべての学術および臨床研究について検証する意向を表明している。また、保健省も、カナビスが精神病の「重要な原因の一部」になっているという認識は医師達の間で当たり前になっていると指摘している。カナビスで統合失調症になって自殺した息子を持つ運動家のテリー・ハモンド氏は、「・・・ロシアンルーレットなのです。一部の人たちにとっては痛みを緩和することもあるかもしれませんが、別の人には決定的な災難になることもあるのです」 と語っている。
    ダウングレードを決定したデビット・ブランケット内務大臣のスキャンダル辞任に危機感を持った政府が、再びカナビスへタフな姿勢を見せるようになってきたことを背景に、保健省も科学研究の全面見直しを約束し、政治的潮目の変化をよく伝えている。「ロシアンルーレット」という極端な意見と合わせて、再分類ではなく合法化すべきだという意見も書かれている。

  8. カナビスで精神病のリスクが2倍

    本日発表された最新の研究によると、カナビスを使うと統合失調症のような精神疾患になるリスクが約2倍になることが明らかにされた。ニュージーランドの研究者たちが25年にわたって収集したデータを分析したもので、脳がカナビスから受けた影響で精神病の率が高くなるのではないかと説明している。
    この記事で紹介されている研究 は、ダウングレード見直し決定へのダメ押しになった研究で、長期の及ぶフォローアップ調査が行われていたためにより信頼できる研究としてもてはやされることになる。リスクは1.7倍となっていたが、メディアはどれも2倍と書いて危機感を煽った。この短い記事は、その第一報。

  9. カナビスが精神病のリスクを2倍にする

    カナビスを使うと、統合失調症のような心の病に発展するリスクが2倍になる。ニュージランドの研究者たちは、この研究結果について、カナビスに喫煙で脳内の化合物が変化するために起こるのだろうと語っている。この研究は、中毒ジャーナルに発表されたもので、1977年以来25年間にわたって1000人以上の人を追跡調査したもの。
    上の記事よりも詳細な内容を伝えている。しかし、この研究は発表されたばかりで、他の研究者による内容の検証が行われていない段階で、セイン(sane)などの精神病チャリティが 「我々が長年主張してきたことが遂にこの研究で確かなものになった」 と興奮して語っている。だか、1週間後には、研究の方法論的不備を指摘する批判が現れている。

  10. クラーク大臣、カナビス分類の再検討を指示

    クラーク内務大臣は、新しい研究でカナビスと精神病との間には強い関連があることが示されたとして、ダウングレードされたカナビスの分類を再検討するように指示した。カナビスは、昨年の1月に、ドラッグ乱用諮問委員会の勧告に従ってB分類からC分類にダウングレードされている。
    新しい研究結果踏まえて、カナビスと精神病の問題を科学的に再検証すると言いながら、この記事に登場する人物の発言はどれも政治的な思惑しか感じられない。結局、見直しの意志決定が政治的な意図で行われ、科学が政治の道具に使われている構図がよくわかる。

  11. カナビス医薬品で害が起こる

    カナビスをベースにした医薬品が一部の人にパラノイヤや不安を引き起こすことが明らかになった。スイスの研究者たちは、8人の男性に カナビスの活性成分であるTHCを含んだ薬を与えたところ、2人に精神病の症状が見られた。
    この記事の研究では、血液中のTHCやTHC代謝物の濃度変化を調べるために、合成カナビノイドのドロノビノールを経口投与したところバッド・トリップになった被験者が出た。研究者は驚いたが、カナビス・コミュニティでは経口投与ではバッド・トリップしやすいことは常識なので、研究者たちのカナビスに対する知識がこの程度しかないのかと逆に驚いた。1999年に発表された全米科学アカデミー医学研究所(IOM)の 報告書にも、ドロノビノールはオーバードーズしやすく、使用した患者のおよそ3分の1に 「不安、離人症、めまい、多幸、情動不安、眠気」 などの副作用があると書かれている。

  12. カナビスは時限爆弾

    2010年の終わりまでには、新たに統合失調症になる4人に一人がカナビスの喫煙がトリガーになって引き起こされるという研究が発表された。

    研究者たちは、直接の原因になるのかどうかについて未決着だが、カナビスの常用者はノンユーザーにくらべて6倍以上も統合失調症になりやすいと述べている。保健省でも、現在では、医師たちの間で「カナビスが精神病の重要な原因要素」になるという認識で一致している、と述べている。
    ここで取り上げている研究は、カナビスが統合失調症を引き起こすという仮定のもとで、そうだと仮定すれば5年後にはどれだけ統合失調症が増加するかをシュミレーションしたもので、カナビスが統合失調症を引き起こすと主張しているわけではない。予測モデルにもとづいたシュミレーション結果を断定的に書いた明らかな曲解記事だが、元の論文を読まない限りダマされる。

  13. カナビスのジョイント1本でも吸えば、精神病のリスクが40%増える

    恐ろしいことに、カナビスのジョイント1本でも吸えば統合失調症のリスクが40%以上も増える、と警告する論文が発表された。

    これまでも、政府の委員会が、カナビスを常用していると申告な精神病になるリスクが2倍以上になることを見出しているが、今回のランセットに掲載された論文でも、統合失調症などの生涯を破壊する精神病の7件に1件がカナビスのために起こっていると報告している。

    テーンエイジャーのカナビス使用とその後の精神病発症との関連を示すこの悲惨な最新統計は、イギリスのブラウン首相が、カナビスをダウングレードして深刻度の最も低いC分類にした過去の決定を見直してB分類に戻すことを検討するようにあらためて命じたほんの数日後に発表された。
    ここで取り上げている研究は、 過去の35本の論文を検証し、そのうち7論文のデータセットをメタ分析したもので、カナビス使用による精神病全体のリスクは41%になると計算している。 この論文の精神病には統合失調症ばかりではなく、うつ病や感情障害、軽度の精神疾患も含まれているが、この記事では統合失調症とうつ病も区別もしないで、すべて統合失調症と誇張している。

    また、論文では、カナビスと精神疾患の間には、必ずしも十分な因果関係があることを示しているわけではないと書かれている。実際、この研究を率いたザミット教授は、マスコミのヘッドラインとは裏腹に、ランセットのポッドキャストのインタビューの中で、「カナビスの使用が本当に精神病のリスクを増加させるのでしょうか?」 という質問に対して、次のように答えている。(Soft Sercret Magazine Issue 6 - 2007 30p, Cannabis, Mental Health and the Media)

    「いいえ、そうとまでは言えません。……この論文の結果は、カナビスが精神病を引き起こすという因果関係まで示しているわけではありません。この種の疫学研究では、関連を説明するために他の要因を考慮する必要がありますが、考慮していない要因が絡んでいる可能性もありますので、交錯因子を調整した後でも他との関連を完全には排除できないのです。」

    「しかしながら、われわれの立場から社会に何らかのアドバイスをしようと思えば、たとえ現時点で入手できるエビデンスが不十分なことがわかっていても、近い将来に今より上質のエビデンスが得られるという確証がない限りは、結局のところ、その時に利用できる最善のエビデンスを使わざるを得ないのです。」

    また、この記事では、ロビン・マリーらの言葉を引用しながら因果関係が明確にあるようなニュアンスで書かれているが、ロビン・マリー自身はこの論文について、カナビス使用と健康リスクの関連を示すような新しい発見はほとんどないと語り、カナビスの分類をBに戻すことは正しくないと主張している。

  14. ティーンがカナビスを吸っていると、将来、深刻な精神病になるリスクが高まる

    研究チームによると、ティーンエイジのカナビス・ユーザーでは、将来、本格的な精神病に陥るリスクが高くなることを示す精神症状が多く見られることが分かった。……頻繁に使っているユーザーほどリスクは高まるが、早い段階でちょっと手を出した場合であっても悪い影響を受けやすくなる。

    また、研究者たちは、思春期カナビスを使っていると、大きくなってから使い始めた場合よりも統合失調症になりやすいことも見出している。
    ここで取り上げている研究はフィンランドで行われたもので、6000人以上の未成年にアンケート調査し、カナビスの使用と精神病の前駆症状の関連について調べている。しかし、研究デザイン上の問題で因果関係は示すことができず、母集団も調査に協力しなかった人が3分の1もいるという信頼性に乏しいものになっている。 フィンランド、脆弱なカナビスと精神病の研究  (2008.6.14)



リーファー・マッドネス記事

  1. カナビスの精神障害は統合失調症にまで発展する
    Drug disorder schizophrenia link  (BBC 2005/12/1)
    http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4486548.stm

    イギリス精神医学ジャーナルに発表されたデンマークの研究で、カナビスに関連した精神障害で治療を受けているおよそ半数が統合失調症に発展し、パラノイド型統合失調症が3分の1を占めることが明らかにされた。また、ニューヨークの研究者たちは、DTIと呼ばれる精巧な画像診断装置を使ってカナビスのヘビーユーザーであるティンエイジャーの脳を調べたところ、言語と聴覚に深く関与している領域で統合失調症患者と同じような異常が見られることを発見した。
    デンマークの研究に関しては、「精神障害者患者の約半数が統合失調症になる」と報道されているが、この数字は来院したもともと重い患者だけについて分析した比率で、カナビス・ユーザー全体から見れば全く意味がない。この記事が分類見直し答申の1ヵ月前に書かれたもので、BBC的な節度は感じさせるものの、この時期のとにかく悪い内容は何でも取り上げるという報道の加熱ぶりの一端を表している。DTIの研究についてもセミナー発表当日にすでに疑問が出ている。

  2. カナビスを使う子供たちの間で精神病問題が急増
    Mental problems soar among children using cannabis  (The Sunday Times 2005/9/18)
    http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1785508,00.html

    有数のドラッグ・チャリティであるアダックション(Addaction)によると、政府がカナビスの分類ををダウングレードして以来、カナビスの喫煙が原因となって精神障害を起こして治療を受けた子供の数が4倍も増えている。警察がカナビスの少量所持では逮捕しなくなってから3ヵ月経った昨年の4月以降、成人の含め治療を受けた全ユーザー数は42%も増加している。

    しかし、子供に限って見てみると最高度の警告水準に達している。アダクションでは、2004年4月から2005年の4月までに、精神病問題を抱えたカナビス・ユーザー1575人を治療し、そのうち181人が15才以下の子供で、昨年よりも136人増えている。
    この記事に対しては、引用されたアダクションが、数字は誇張で間違っているとする非難声明を出している。

    サンデータイムスの記事は、「曲解し、事実上間違っている」
    Sunday Times report on mental health and cannabis was a “distortion and factually wrong"  (Addaction, Press Release, 2005/9/21)
    http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/
    sunday_times_report_on_mental_health_and_cannabis_was_a_distortion_and_fact/


    アダックションのロジー・ブロックルハースト広報担当官は、「カナビスに関連した精神病は大変深刻な問題にはちがいありませんが、先日のサンデー・タイムスに掲載された記事で、われわれアダクションの集計だとして引用された数字は全く根拠がなく、このような報道がなされたことも深刻な問題です。われわれは、サンデー・タイムズが、ドラッグ乱用諮問委員会の審議を直前に控えて、何らかの影響を及ぼしたいという意図があったのではないかと疑っています」 と語っている。

  3. カナビスは精神病に最悪のドラッグ
    Cannabis 'Worst Drug For Psychosis'  (News.com Au 2005/11/21)
    http://www.thehempire.com/index.php/cannabis/news/cannabis_worst_drug_for_psychosis/

    オーストラリア・ニューサウスウエールズ州のメンタル・ヘルス医事審判所のアンドリュー・キャンベル医師は、ソフトなドラッグと言われているカナビスによる精神病が水面下で蔓延し、ヘロインより危険だと警告を発している。「ヘロインのほうがよほど安全です。ヘロインなら90才までも生きられますから」 とキャンベル氏は言う。

    ニューサウスウエールズにおいて、医療施設に来たり、強制措置が必要とされた精神病患者を5年にわたって調査したところ、5人のうち4人が未成年期にカナビスを常用していたことが分かった。

    「75%から80%の人が良くなる見込みのない長期的な精神病に陥っています。未成年期に健康だった5人のうち4人が、自分にカナビスが悪いことを知らずに吸って、問題を起こしているのです。問題の精神病が発病するのは5、6年後なのです。こうしたケースが異様に多いのですが、気がつかないだけなのです。」

    キャンベル氏は、こうした手のつけられない患者の病歴の調査して記録し続けているが、その結果から、ティーンエイジャーのカナビス使用に伴う健康問題と危険性について全国的なキャンペーンが必要だと強調している。
    この記事全体は、未成年のカナビス喫煙には精神病のリスクがあるという趣旨で書かれており妥当性があるのだが、ドラッグ乱用諮問委員会の答申まで1ヶ月足らずとなったこともあって、ヘロインとの比較や、数字の特殊事情には触れずに 「5人のうち4人」 というフレーズを繰り返して、未成年のカナビス・ユーザー全体の80%が危険な状態にあるように思わせて恐怖を煽ろうとしている意図がうかがえる。

    キャンベル医師はこの記事の1年ほど前に、同様の趣旨の コメント を学会誌に寄せているが、専門家相手だけにもっと慎重な表現をしている。この記事の発言は、科学というよりも、現在のオーストラリア・ニューサウスウエールズ州の政治的な思惑がにじんでいる。

  4. オーストラリア保健相、カナビスはヘロインと同じくらい危険
    Australia: Health Minister Says Marijuana as Dangerous as Heroin -- Calls for National Toughening of Laws  (2006/5/19)
    http://stopthedrugwar.org/chronicle-old/436/christopherpyne.shtml

    オーストラリア連邦政府のクリストファー・パイン保健政務次官は、すべての州と地区政府が、カナビスの撲滅を一貫とする連邦政府の厳しい統一カナビス法の策定計画に同意したとする声明を発表した。声明の中でパイン次官は、カナビスがヘロインやコカインにようなハードドラッグと同様に危険だと主張して驚かせた。

    オーストラリア政府はかねてより、証拠は薄弱なのにもかかわらず、カナビスの使用と精神病の結び付きについて度々言及しており、実際、今後4年間に2100万ドルを費して 「違法カナビスと精神病の関連について社会に警告を発していく」 ことを準備している、とパイン次官は語っている。
    カナビスをヘロインやコカインと同様な危険ドラッグと位置付けて、禁止政策を押し進めようとするのは、アメリカでカナビス禁止法が制定される際に、ハリー・アンスリンジャー が、「カナビスはヘロインやコカインより危険なドラッグ」 と主張して以来定番となっているが、いずれも精神病問題を理由としている。オーストラリア政府も、例のスエーデンの研究の 「6倍」 を盛んに繰り返して、センセーショナルな恐怖物語で世間を煽っている。

    オーストラリア政府、州の非犯罪化法の転換を要請

  5. カナビス、ヘロインよりも危険なドラッグ
    Cannabis: a drug more dangerous than heroin  (The Herald 2006/10/19)
    http://http://ccguide.org.uk/news/shownewsarticle.php?articleid=11801

    若者によるカナビス使用が危険なことは数年前から歴然としている。心の病の問題に遭遇するティーンエイジャーの数は増加を続けている。家族は苦悩しながら答えを求め、そして歓迎せざる真実に気づいて愕然とする。ヘビーなカナビス使用と様々な精神病が結びついていることを示す状況証拠は溢れている。こうした問題に巻き込まれた家族にとって最も痛ましいのは、いったんダメージをうければ後戻りする道がないことを嫌でも思い知らねばならないことだ。

    これには共通したパターンがある。明らかに何の精神的な問題にない快活な子供が、10代に半ばを過ぎるころになると突然に学校の成績が悪くなり始める。秩序立ててものを考えることができなくなり、授業をさぼり、友達から孤立するようになる。やがて、みんなが影でこそこそ噂をしていると苦情を漏らすようになる。こうした傾向は女子よりも男子に表れやすい。
    この記事は、これまでに使い古された議論や最近の記事をそのまま流用しながら、著者自身のイメージと独りよがりの正義感でまとめあげている典型的なリーファー・マッドネス記事。元論文などを確認していないのは明らかで、自分に都合のよい文・文脈を孫引きするだけで仕上げられている。ちょっと詳しい人ならば、もとネタがどの記事なのかさえ容易に想像がつく程ひどい。

    一時代前ならば、文句なく通用していただろうが、今では、さっそく専門家から誇張と嘘ばかりだと反論されるようになってきている。しかし、オーストラリアのサウスウエールズなどまだ十分に議論が尽くされていない地域では、この手の記事が繰り返されている。『誇張記事はどのように作られるのか』 では、この記事を詳しく分析して、リーファー・マッドネス記事作成の手法を検証している。

  6. カナビスでハイになっている時に首吊り自殺
    Depressed mum hanged herself while on cannabis  (Eastbourne Herald 2009/05/13)
    http://www.eastbourneherald.co.uk/hailsham-news/Depressed-mum-hanged-herself-while.5260493.jp

    ロンドン郊外のヘールシャムの沼地で犬と散歩に出かけた女性(33)が、カナビスでハイになっている時に橋から首を吊って自殺した。彼女は、うつ病を抱えていた…

    中毒学者のピーター・シャープ博士は、彼女がカナビスでハイになっている時に死亡したとする報告をしている。東サセックスのアラン・クレイズ検死官は、「カナビスでは予想できないようなことも起こります。専門家たちは、特に若い時から強いカナビスを使うようになって、それが長期化すれば精神病になる人も増えると考えています。今回のケースでカナビスが精神病のトリガーになったか聞かれれば、私は十分にあり得ると思う」 と語っている。

    この記事では、彼女が17年間もカナビスを吸っていたとしているが、その間には特に何らか問題を起こしたとは書かれていない。一方、最近ではアルコール中毒に悩まされ、前日に精神科医から、自殺の引き金になることも知られている抗うつ剤のSSRIを処方されている。当然、自殺の原因としてはこれらのほうが可能性が高い。

    また、自殺したときにカナビスでハイになっていたと述べているが、そのようなことをどうして言えるのかという疑問がある。その時にハイだったかどうかを調べるには、直後の数時間以内に血液を採取して検査しなければならないが、自殺の場合は一般に交通事故と違って発見や対応に時間がかかるのでそれは難しいからだ。

    だが、この記事はそのような疑問点には触れず、最初からカナビスが原因だとする憶測で書かれている。



親の嘆き

  1. カナビスが息子を精神病にした

    パラノイド型の統合失調症で入院し、退院直後に殺人を犯した息子を持つ父親が、カナビスの精神病を起こす危険性に警告を発している。

    アイボル・キングさん(62)の息子リチャードは、2004年にシェリンガムで、ジョン・ゴースティ・ウエストを刺し殺して期限未定の有罪判決を受けたが、キングさんは、1年程前に、デビット・ブランケット前内務大臣がカナビスをB分類から処罰の緩いC分類にダウングレードしたことが二人の息子を統合失調症に追いやったとして、カナビスの分類見直しを掲げるチャールス・クラーク内務大臣にカナビスをB分類に戻すように訴えている。

    「精神分析医から聞いたところでは、二人の息子が同時に統合失調症になる確率は9億分の1しかないそうです。調べた限りにおいては、自分の家族や別れた妻(デビットとリチャードの母親)の家族には、精神病歴を持った人は一人もいませんでした。カナビスと統合失調症には明確な関連があります。私は内務大臣にお願いしたい。どうか、カナビスをダウングレードしたままにしないでください。」

  2. カナビスが息子を死に追いやった、両親の訴え
    Parents' blast after cannabis led to son's death  (Burytimes 2006/4/15)
    http://www.burytimes.co.uk/search/
    display.var.731523.0.parents_blast_after_cannabis_led_to_sons_death.php


    昨年の7月15日、6年ちかく統合失調症と闘ってきたリーさんは、自宅付近の森の中で首をつっているのが発見された。嘆き悲しむ両親は、カナビスが24才の息子さんを死に追いやったに違いないと語っている。

    ウエルロック夫妻は、リーさんがティーンエイジャーのころからカナビスの常用者で、それがトリガーになって統合失調症を発病し、自殺を犯すまでになってしまったと主張している。「もし、リーが10代の終わりにカナビスを使っていなかったら、統合失調症にもなっていなかったし、自分の命を断つこともなかったはずです。」

    「私たちは、カナビスが触媒になって一連の出来事が引き起こされ、リーの死にまで至ったのだと強く信じています。カナビスを吸う子供たちは、自分の命をロシアン・ルーレットに晒しているのです。特に、精神病になりやすいリスクを持っていればなおさらです。政府は、カナビスが危険なものであることをみんなに知らせなければなりません。」

  3. 聡明な公立学校の少年が、いかにしてカナビスで統合失調症になったのか
    How cannabis turned a bright public shoolboy into a schizophrenic  (Daily Mail 2006/8/1)
    http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/
    health/healthmain.html?in_article_id=398519&in_page_id=1774


    何の不安もなく裕福な環境に恵まれ、皆に愛されたいたマーク・ワトソン少年の前には、輝かしい将来が約束されていた。しかし、16才になったとき、彼の行動が変わり脅迫的になり始め、統合失調症と診断された。

    彼の父親のデビッド・ワトソンさん(63、一般医)は、息子の病気がカナビスの使用がトリガーになったと信じている。2番目の妻リンさん(50)と暮らすワトソンさんは、ウイルトシャー州の校長先生でもある。自分の遭遇した痛ましい家族の物語を振り返って語ってくれた。