リスクが2倍になるとどうなるのか?
社会全体では重大な健康リスクとはいえない
カナビスによる統合失調症のリスクに関して、有力研究者たちが妥当としてあげている 2倍 という数字をもとに計算すると、実際にはどれだけ統合失調症の人が増えるのだろうか?
カナビス常用者が全体の5%と仮定して、1000人当たりで計算してみると、ノンユーザーの発症者数は950*0.01=9.5人、常用者の発症数者は50*0.02=1人で、全体とすれば11人になる。(通常の統合失調症の発症率を1%と設定)
つまり、統合失調症が増える人数は1000人中1人(0.1%)ということになる。さらに、リスクグループは未成年なので世代構成を10%とすれば、全人口1000人あたりでは0.1人(0.01%)という数字になる。このように、2倍という数字は印象よりも実際にはごく弱いもので、一般に思われているほど決定的なものとも言えない。
ニュージーランドの 遺伝子の研究 に加わったオダゴ大学のリッチー・ポールトン助教授も、「社会全体からすれば、カナビスに関連した精神病は重大な健康リスクとまではいえない」 と述べている。
また、イギリスでは、2003年にカナビスの分類がBからC分類にダウングレードされて非犯罪化されたが、その後、カナビスが精神病を引き起こすという新たな研究が多数発表されたとして、内務大臣は、元のB分類に戻すべきかどうかを政府のドラッグ乱用諮問委員会に検討させた。これに対して、2006年1月に、委員会は「現在の証拠からは、最悪に見積もっても、カナビスの使用によって統合失調症まで発展する生涯リスクは1%以下であると思われる」と答申し、分類を戻すことには反対している。
つまり、イギリスの実際の統合失調症発症率が0.8%程度であることから、カナビスによる上昇は最悪でも0.2%以下に過ぎないと認めたことになる。いずれにしても、この変動幅は、通常の統合失調症の発症率の変動幅(0.7〜2%、1000人中7〜20人)の中に埋没してしまうほど小さく、統計的に明確な差があるとはとても言えないことを示している。
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