カナビス政策の「欺瞞」に翻弄される

オランダ・テルヌーセン市の苦悩


オランダ最大のコーヒーショップ チェックポイント

Source: DE STEM, BREDA
Pub date: 7 June 2007, update 6 January 2008 by encod
Netherlands: Coping with a Hypocrit Policy
Author: Raymond de Frel
http://www.encod.org/info/COPING-WITH-A-HYPOCRIT-POLICY.html


チェックポイント・コーヒーショップとテルヌーセン市は、オランダのカナビス政策の 「欺瞞」 に翻弄されている。この6月1日にはゼーランド州警察の手入れで、合計で約100キロのカナビスが応酬された。

オランダ南部にあるテルヌーセン市(人口6万)は、スヘルデ川をはさんでベルギーと陸続きになっている。川沿いに位置するチェックポイントは、1日に2000人から2500人以上が訪れるオランダ最大のコーヒーショップとして知られている。お客さんの大半はベルギーとフランスからやってくる。

交通渋滞などの迷惑問題も大きいが、お客さんに提供するカナビスの量が半端ではないために、いわゆる 「バックドア」 の問題が特に大きな問題になっている。

オランダでは、コーヒショップでのカナビスの5グラムまでの少量販売は容認されているが、商品を仕入れることは禁止されている。一応、店には500グラムまでのカナビスを在庫してもよいことになっているが、2000人以上のお客さんが訪れるチェックポイントでは、ほぼ1時間ごとにバックドアから500グラムを補給しなければならないことになる。

在庫制限があるために、店は売り場の窓口を増やすこともできずに番号表示器でお客さんを整理するというクレージーな状態になっているが、いずれにしても、1日で10キロ近くのカナビスを仕入れるためには地下の違法栽培組織から調達することを余儀なくされる。

このような状態が将来も続くとは考えられず、どうしたら続けられるのか、あるいは止めざるを得なくなるのか、店は混迷を深めている。頭を痛めているのはヤン・ロニク・テルヌーセン市長も同じで、ちょうど1ヶ月前には市議会で将来コーヒーショップを市内に増やすか郊外に移転するかすることを決めていた。

実際問題として、チェックポイントの問題もテルヌーセン市の問題も根っこは同じであり、「偽善」 に邪魔されないような道を求めることにある。しかし、現状のオランダのカナビス政策の下では非常に難しく、不可能であるとさえ言える。誰が考えても、チェックポイントのような大型店では、正式に認められている500グラムの在庫量を厳守しながらやりくりするのはどうやっても無理だ。

店の手入れでは、店内から5.1キロ、近くにあるストックハウスから92.2キロのカナビスが押収されたが、ロニク市長は特に驚かなかった。市長は、オランダのカナビス政策から起こるべくして起こったものだと指摘して、「偽善」 という言葉を使って政府の政策を非難した。この言葉は、手入れ直後にチェックポイントのフランク・デイジ広報も使っていたほか、コー・ファン・シャイク副市長も昼前にそのような表現を使っていた。

1990年代にテルヌーセン市では、違法なドラッグ・ディラーたちが引き起こす迷惑や隠れたディーラーハウスの存在に対応するために、2軒のコーヒーショップの営業を認めることにした。その1軒がチェックポイントで、もう1軒がやや規模の小さいマイアミで、通りを挟んで向かい側にある。

問題の根本は、オランダの法律では依然としてドラッグの搬送や納入が違法になっていることで、フロントドアでは、地方自治体が少量のカナビスを販売するライセンスを発行しても、バックドアでは、司法当局がカナビスの流通を監視するという整合性のない構造になっている点にある。

ロニク市長は、今週イタリアのボローニャで開催されたドラッグ政策会議で、チェクポイントに対する警察の行動がテルヌーセン市の運営を一層難しくすることになったとして、今後もゼーランド州の司法当局と歩調を合わせて作戦を行うようなことはしないと明言している。

一方、今月、市政府は、独立系シンクタンクの提言にもとづいて、コーヒショップ訪問客の引き起こしている交通問題を解決するために、2軒のショップを市の郊外に移転することを決定している。市議会も今月末にはこの提案を支持することが見込まれている。

この点では、チェックポイントの手入れはタイミングが良かったともいえる。しかし、今回は警告だけで済んだが、再び手入れを受ければ店の閉鎖という事態にまでなる可能性もある。もしそのようなことになれば、マイアミだけでは、毎日押しかけてくるベルギーやフランスからのお客さんには対応しきれなくなる。

同時に、警察のほうでも何もしてこないことはとてもありそうにない。


チェックポイントは、当初よりテルヌーセン市議会とは良好な関係を築いて様々な問題を協力しながら解決してきた。このアプローチは、カナビス容認政策の成功例に一つとして賞賛されてきたが、今回のゼーランド州警察と司法当局の横槍は、このプロセス阻もうとする州の勢力の戦略を反映している。

ダッチ・エクスペリエンス 第7章 順番表示機のあるコーヒーショップ、チェックポイント