パープル・ブレイン

アメリカン・リーファーマッドネッス ver 2.0

Source: AlterNet
Pub date: June 23, 2007
Subj: The Purple Brain: America's New Reefer Madness
Author: Marsha Rosenbaum
http://www.mapinc.org/norml/v07/n745/a02.htm?134


アメリカ人にカナビスと戦うことを後押しする新しい映画が公開される。だが、「脳がイカレル」 といった相変わらず根拠薄弱で失笑千万な代物になっている。

『パープル・ブレイン』 と題するこの映画は、反カナビス陣営にとっては、1936年に製作された有名なリーファーマッドネス以来70年以上も待ちに待った待望の映画で、前回と同様に観衆を笑わせながらも、カナビスに対峙して人々に戦うように仕向けることを目的にしている。

連邦政府のこの新しい宣伝映画では、現在の自分の子供たちと同じ年齢だった1970年代に何の悪影響も受けずにカナビスを体験した親たちが主なターゲットになっている。

ここでベースになっているメッセージは・・・ なるほど、みなさんのような40才代の人たちがかつて楽しんだカナビスは害がなかったかもしれない。でも、今日出回っているのは、「トレイン・レック」 とか 「AK-47(カラシニコフ)」 とか 「パープル」 といった如何にもといった名前の超強力な品種のカナビスなのです。みなさんの体験したものとは全く別物なのです・・・

ホワイトハウス麻薬撲滅室のジョン・ウォルターズ長官も、最近、「もはや60年代や70年代のカナビスとは全然違う・・・これは、『ポット ver2.0』 なのだ」 と主張している。

この脅しのメッセージの仕上げは、スーパーポットを使うと 「脳がイカレル」 というロクに根拠のない決まり文句で、親たちの注意を引きつけて徹底的に脅すための反カナビス・グループ用の新しいキャッチフレーズに仕立て上げられている。

だが幸いなことに、注意を引く割には簡単に誰からも疑われて、信頼されない内容になっている。

カナビスを売ることを商売にしている栽培者たちは、自分のカナビスに特別なニックネームを付けるのはごく普通のことだ。1970年代には、「アカプルコ・ゴールド」 とか 「マウイ・ワウイー」 などの品種が人気だった。今日においても同じことで、大半の名前は、競争の激しい市場において他の商品より少しでも魅力的に見えるように付けられた宣伝用の愛称に過ぎない。

実際、本当に強力な品種はほんの一握りで出回る量も少なく市場全体からすればほんの一部に過ぎない。しかも、誰でも買えるような値段でもなく、裕福な熱烈愛好家しか手が出せない。そうでない人たちは、昔と同じような比較的マイルドで平均的なものを使っている。効力が多少上がっていたとしても、その差はビールとワインの違いぐらいしかない。

いずれにせよ、主な活性成分のTHCが増えたと言われる最近のカナビスであっても、アルコールやアスピリンのようにオーバードーズで死ぬようなことはなく、加えて、カナビス・ユーザーは吸いながらカナビスの効力の違いを感じとって、必要な摂取量を安全に加減することもできる。

さらに、カナビスが脳を変えると言っても、驚くことに、いくらTHCの濃度が高くても大人ばかりか子供であっても毒性が認められていないという事実も忘れてはならない。

最近では、ネイサン・クライン精神医学研究所の研究者たちが、MRI(磁気共鳴画像)装置や最新の画像解析技術を利用して、若者の常習カナビス・ユーザーと非ユーザーの脳へのカナビス使用の影響を調べた結果、「脳萎縮症や大脳白質全体の発育不足などが起こるという証拠はない」 ことを見出している。また、カナビスの長期使用者の認知能力を調べた別の研究でも、何ら能力の低下は示されていない。

このように、高効力のカナビスが直ちに危険なわれてばないが、当然のことながら、カナビスは陶酔物なので、子供や若者は精神や身体が成熟する成人になるまでは使うべきではないのは言うまでもない。しかし、未成年者にカナビスをやめるように、あるいはもっと大きくなるまで待つように説得するのにあたっては、「ただダメと言おう(just say no)」 という過去20年間のドラッグ教育が生徒たちの信頼を得られなかったという事実も忘れてはならない。

結局のところ、ティーンたちが真実を学ぼうとするときに、『パープル・ブレイン』 のように誇張されたキャンペーンでは懐疑心を引き起こしてまう。彼らは、ドラッグについて大人たちが言っていることはデタラメではないかと思うようになり、かえって好奇心を焚き付ける結果になる。

われわれが本当に戦わなければならないのは、カナビスについて嘘を教えられたことに気付いた子供や未成年者たちが、コカインやヘロインのように真に危険なドラッグに対する警告を無視するようになってしまう事態なのだ。しかし、『パープル・ブレイン』 のシナリオの要はまさにそれを現実化するように書かれている。ホラー映画としか言いようがない。

著者のマーサ・ローゼンバウムは、ドラック・ポリシー・アライアンス のサンフランシスコ事務所の代表者で、ティーンとドラッグについて現実にもとづいたウエブサイト、『セーフティ・ファースト』 を運営している。

「パープル」 というのは、もともとは1960年代に盛んに使われたLSDのことで、錠剤の多くが紫だったことから名付けられた。やがて、カナビスも同じ意識拡大薬に属するものとして 「パープル・ヘイズ(紫の煙り)」 と呼ばれるようになり、同名のジミ・ヘンドリックスの曲で広く知られるようになった。

反カナビスの人たちは当時のカナビスが弱かったと主張しているが、その頃の若者はカナビスよりも圧倒的に強力なLSDを盛んにやっていたことも忘れてはならない。60〜70年代の若者が弱いドラッグの経験しかないという前提は正しくない。アップル・コンピュータのスティーブ・ジョブズも当時のLSD体験を 「人生で実行したとりわけ重要な2つか3つの事柄のうちの1つ」 と語っているのは有名だ。

注目すべきことに、「パープル・ブレイン」 は、イギリスの Talk To Frank のブレイン・ウエアハウスと全く同じコンセプトで作られていることだ。

双方とも、カナビスの効力が飛躍的に上昇しているので脳にダメージを与えるというストーリーになっているが、結局は、もはや反カナビス・キャンペーンでは、そのような嘘 を本当のことのように仕立てることしか材料がなくなっていることがわかる。