力を増すカナビスのアルコール対比戦略

イギリスで飲酒問題がさらに深刻化

Source: MarijuanaNews.Com
Pub date: Aug 24, 2007
The Strategy of Comparing Risks of Cannabis and Alcohol.
Auther: Richard Cowan
http://www.marijuananews.com/news.php3?sid=900

アメリカ・コロラド州では、2006年秋の中間選挙(11/7)で 「修正44号条例」(アルコール・カナビス均等案)という住民投票が実施された。この住民投票では、州法を改正して、21才以上の成人が1オンス(約28g)までのカナビスを個人使用目的で所持・使用することができるように、州法のすべての犯罪および禁止規定の削除を求めていた。結果的には、条例案は否決されたものの41%の賛成票を獲得している。

この条例案を推進していたのが SAFER で、活動の中心に、「カナビスはアルコールよりも安全な選択」 というスローガンを掲げていた。アルコールとの対比で本格的にカナビスの安全性とその選択の正統性を訴える手法は、前年デンバー市で同内容の市条例を成立させてから特に大きな注目を集めるようになった。

SAFERは現在でもコロラド州ばかりではなく全国各地のキャンパスで勢力的に活動を続けているが、最近、その活動に弾みをつけるような報告がイギリスから相次ぎ、「カナビスはアルコールよりも安全。カナビスを合法化して規制管理すべき」 というSAFERの主張がますます説得力を増してきた。

2006年9月には、イギリス内務省のドラッグ乱用諮問委員会が 「イギリスにおける若者のタバコ、アルコール、その他のドラッグの有害使用問題」 という100ページ余りの詳細な報告書を発表し、若者の間では、どのドラッグよりも特にアルコールの使用が最も増加が著しく最も広範囲な問題を引き起こしていると警告しているが、こうした報告は今年になってからも続き、事態にはさらに悪化の様相を呈している。

最近、特にイギリスの政治家はカナビスが 「脅威」 になっていると盛んに強調しているが、これらの報告は、実際には現在のイギリスの最大のドラッグ問題がアルコール中毒であることを示しており、それから目を少しでも逸そうとする思惑から、カナビスの精神病問題を利用しているようにさえ見える。


●アルコール24時間販売許可で救急治療が3倍増
24-hour drinking casualties 'trebled'
Telegraph, July 19, 2007, Rebecca Smith, Medical Editor

2005年11月にアルコールの24時間販売を認める法律が施行されて以来、アルコール関連で事故および救急施設に収容された人の数が3倍も増加している・・・

本日発行された緊急医療ジャーナルに掲載された調査によると、2006年3月時点で1年前より、アルコール関連の暴行、怪我、入院者数が増加していることが分かった。

アルコール関連の来院者数は、2005年3月には2.9%だったが、2006年3月には8%に上昇している。またアルコール関連の暴行は27件から62件へと倍増し、飲酒運転による怪我は44件から129件、入院者数は24人から71人へとそれぞれ3倍増となっている。

アルコール関連の病気と怪我の治療にかかった国民医療サービスの費用は年間17億ポンドと見積もられているが、これに対して、アルコール関連の犯罪と障害が73億ポンドと考えられている。

研究者たちは、「イギリスでは、アルコール関連の暴力による事件は、毎週、2万3000件あまりも発生している・・・アルコールによる暴力の怪我は、イギリスの医療サービス全般で非常に大きな負担となっており、特に、緊急部門の負担は著しい」 と書いている。

イギリス内科医師会の代表を務めるイアン・ギルモア教授は、この研究のアルコール関連件数は少な過ぎるのではないかとしながらも、法律が変わってから3倍も増加したという事実は間違いないと思うと語っている。



●女子事務員はアルコール死亡リスクが高い
Female secretaries 'at risk from alcohol'
Telegraph, Aug 23, 2007, Rebecca Smith, Medical Editor

下働きの女子事務員は、飲みすぎによるアルコールでの死亡率が全体平均に比較して2倍近く高くなっていることが分かった。

これは国家統計局がアルコールによる死亡者数を職業別に比較分析した結果で、昔ながらの男性主体のヘビーな飲酒文化に染まった職場で、コピー取りや手紙の配達、データの入力といった下働きの女子事務員の飲酒リスクが高く、早死にすることが示された・・・

最もリスクが高くなっているのは、酒場や居酒屋、宴会場の男女スタッフで、アルコールの周辺で働いている人たちになっている。 その他の女性の職業では、女優の飲み過ぎによるアルコールでの死亡率が1.8倍で、次いで美容師が1.4倍で続いている。

また男性では、商船の船乗りが、アルコールが原因となった肝硬変、中毒、膵臓炎などで死亡する率が2倍になっていることも分かった。次いで、中堅の男性公務員が1.9倍、ミュージシャンが1.6倍、床やタイル職人1.6倍、セキュリティ関係の警備員や管理人が1.7倍になっている。軍関係では、陸軍の下士官やそれ以下の階級の人や、海軍の上級兵曹やそれ以下の人が1.4倍のリスクになっている。

こうした結果について、国家統計局の女性広報官は、この100年間でパターンがほとんど変化していないのに驚いたと語っている。

また、データでは、2001年から2005年までのアルコール関連の死者数が1万6666人としかなっていないが、本当の数字はもっとずっと高く、年間で2万2000人が死亡しているという指摘もある。さらに、今年の始めに発表された数字では、特にアルコールによる死者数が過去10年間で2倍になって目立っている。



●胎児性アルコール症候群の無知と悲惨な現実

妊娠中にアルコールを摂取した女性から生まれて胎児性のアルコール症候群を抱えた子供の数が、一般的な遺伝障害を持って生まれたの子供の合計数よりも多くなっている。しかし、この事実は一般にはほとんど知られていない。

胎児性アルコール症候群(FAS)は、妊娠中の母親の飲酒が原因で胎児がアルコールに晒されて引き起こされる疾患で、目が小さく唇が薄いなど顔つき、発育の遅れ、中枢神経の障害などの典型的な特徴を持っている。さらに、そうした典型的な症状がなくても、神経発達障害や内臓の先天異常などが引き起こされる場合もあり、全体を包括して胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)とも呼ばれている。

イギリスでは年間75万人の子供が生まれてくるが、FASDを持って生まれる子供の数は7500人に達している。100人に1人という割合は、筋ジストロフィー、二分脊椎、HIV、ダウン症を合わせた割合よりも高くなっている。

FASDの中でも、脳障害や著しい学習障害など最も深刻な症状の新生児の数は1000人に3人の割合と言われており、毎週約28人が深刻な状態で生まれていることになる。

しかし、悲惨なことに、医療関係者の中でもこの疾患を診断できる専門家が不足しているのに加えて広報活動も不十分で、何千もの妊娠中の女性たちが、胎児に確実なリスクになるとは知らずにアルコールを飲み、中には深酒を繰り返している人さえもいる。・・・

これに対して、先日、全国胎児性アルコール症候群の会(NOFAS)や労働党に一部の議員が、アルコール飲料の容器に妊娠中の飲酒の危険を知らせるラベルの添付を強制する法案を提出している。ラベルの強制は、すでにフランスやアメリカ、チリで実施されている。

この法案は政府の後ろ盾がなく成立の見込みがなかったが、下院の第2読会を反対無しで通過した。しかし、下院の本会議では、多くの議員が原因はそれだけではないはずだと主張して、結局葬り去られてしまった。・・・

イギリスの大酒飲み文化は、イギリス人の心の中にしっかり染み着いてしまっている。飲酒を続けて胎児をアルコールに晒し続けることはとてつもないリスクになるのにもかかわらず、それを知っている妊娠女性は全くと言ってよいほどいない。最近の研究では、61%の女性が全く酒量を減らしていないことが示されている。

また、ロンドンにある聖ジョージ病院の行った調査では、ティエイジャーの妊娠クリニックを訪れた母親のほぼ半数が一回の飲酒で4ユニット(ワイン2杯)以上を飲み、27%が時々へべれけになるまで飲んている、と報告している。

イギリスでは、政府がアルコール害削減戦略に200億ポンドも注ぎ込んでいるが、それにもかかわらず、テーンエイジャーの飲酒は男子よりも女子のほうが盛んで、20才未満のほぼ30%が1ヶ月に最低でも3回以上飲んでいることを認めている。



●イギリス、アルコールのよる肝硬変が急増
Britain seen at risk of cirrhosis epidemic
Wasington Times, Aug 19, 2007, MARIA CHENG, AP Medical Writer

「このところ、アルコールのよる肝臓疾患が恐ろしい勢いで増えています」 とイギリス内科医師会のイアン・ギルモア会長は警告している。

政府統計のよると、他の西側諸国はどこもさほど変化していないのに対して、イギリスではここ20年間で肝硬変による死者数が劇的に増加している。

イングランドとウェールスの場合、1987年の肝硬変による死亡者数が10万に8.3人だったものが、2002年には17.5人に増えている。スコットランドの場合はさらに劇的で、1987年の16.9人から2002年には45.2人になっている。

これに対して、アメリカ全体の肝硬変による死亡者数は逆に、1973年の15人から2004年には9人に減少している。また、EUの1980年代初頭は約20人だったが、2004年には13人まで減っている。双方とも、男女差は見られない。・・・

2003年にヨーロッパ全域を対象に実施された調査によると、イギリスの15才と16才の若者のおよそ3人に1人が、最近1ヶ月間に最低3回以上ムチャ飲みをしている。

法律で飲酒が認められている年齢は、イギリスでは18才になっている。

ムチャ飲みを抑制する試みも続けられているが、2005年に深夜12時以降のアルコールの販売が許可されてから、状況がさらに悪化している。ロンドンのある病院の医師たちは、アルコールのライセンス法が変更になってから、深夜のアルコール関連の救急対応が3倍に増えたと報告している。

過去10年間では、飲み過ぎによる救急治療の来院者数は、1995-1996年度の8万9000人だったのに対して、2005-2006年度は18万7000人で2倍に増加している。また、大半のヨーローパ諸国とは違い、イギリス人の飲酒は毎年のように増えている。

14才以上のイギリス人が消費するアルコール量で見ると、1960年の1人あたり1.5ガロンが、2004年には3ガロンに倍増している。これに対して、他のヨーロッパの諸国では消費量が減っており、とくに南部の国で顕著になっている。

以前は、肝硬変と言えば大半が60才代の人の病気だったが、現在では、性別に関係なく20才代から30才代の患者も多くなっている。肝硬変の症状は、疲労や性的な問題などごく普通で特徴がないために、肝臓の障害が回復不能な状態になるまで気が付かない人が多い。・・・

イギリス政府は、昨年から、若者にムチャ飲みの危険を知らせる啓もうキャンペーンを開始している。